2018年05月14日

ジョニー・ウィンター サード・ディグリー

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ジョニー・ウィンター/サード・ディグリー
(Alligator/Pヴァイン)


奄美地方、今年もゴールデンウィーク開けから順調に梅雨入りしているんですが、いや暑い。しかも、これも毎度のことなんですが、梅雨入り宣言が出されたからといって、本土のようにずっとしとしと雨が降っている訳じゃなく、ギラーッと晴れてる日も結構あって、空気がギトギト熱いんで、もう気分は真夏であります。

アタシは暑いのも熱いのも苦手です。

だもんで毎年この時期になると「梅雨の鬱陶しさを吹き飛ばそう!」とのたまって、梅雨の鬱陶しさを吹き飛ばしてくれそうな音楽作品を紹介します。

はい、今日はギンギンに暑苦しいこと梅雨や真夏に劣らない男、いや”漢”、ジョニー・ウィンターでございますよ。えぇ、名前がWinter(冬)なのにご本人がそりゃもうこれでもかと弾きまくるギターにも、親の仇みたいなキョーレツながなり声にも冬要素は皆無なんでございまして、実に実に実に夏が似合うんですね。


という訳で本日はジョニー・ウィンターの1986年リリースの『サード・ディグリー』でございます。


はい、通称”百万ドルのギタリスト”、テキサスの火の玉野郎、ブルースをガソリンに暴走するブルース大型トレーラーとか、最初のやつ以外はアタシが勝手にそう呼んでおりますが、とにかくもうジョニー・ウィンターといえば、そこらのブルースロックなんてメじゃないぐらい体にキョーレツに染み付いたアメリカ南部のブルース魂を感じさせるロックンロールを、やり過ぎな勢いで弾きまくり、ガラの悪い声で叫びまくる人です。

ブルースといえば、やれ情感だの風情だの、人生の悲哀だの、そういう所に話が行ってしまい、えぇ、アタシはもちろんその辺の話大好きなんですが、この人の情緒なんざクソくらえな突き抜けた暴れっぷりを聴いてしまうと、ホント細かいことなんかどーでもいい、酒もってこい酒ーー!!となってしまうからその勢いの説得力たるや相当なものでございます(※アタシはお酒がのめません)。


さてそんなジョニー・ウィンター、1969年当時イギリス勢に若干押され気味だったブルース・ロックの期待の新星としてデビューしました。




このファーストは、ウィリー・ディクソンやビッグ・ウォルター・ホートンなど、ホンモノのシカゴ・ブルースの猛者達をゲストに迎えた骨太なブルース・アルバムで、その中身の濃さはにはもうグウの音も出ないほどの作品だったのですが、コレがホンモノ過ぎてロック市場では大コケしてしまいます。

そこから「ぬがー!あったまきた!!じゃあワシゃあ本気のロックやったるわい!!」と奮起したジョニーは、よりサウンドを先鋭化させて、ロックンロールからブルース飛び越してハードロックなアプローチもガンガン入れてセールス的にも徐々に挽回し、その勢いで70年代を駆け抜けたのです。

が、やはり「オラぁなんにも考えねーでブルース弾きまくりたい!」という衝動はずっと衰えなかったのでしょう。

CBSの子会社のブルーススカイというレーベルで「好きにしていいよ」と言われ、ブルース・アルバムを再びリリースしたり、親父と慕うマディ・ウォーターズのアルバムをプロデュースしたり、そらもうやりたい放題やります。結果マディのアルバムがグラミー賞を受賞したり、ブルースという音楽を広く世に知らしめる事に大きな功績を残すんですが、やっぱりメジャー・レーベルって所は窮屈だと、マディが亡くなった1983年の翌年84年に「親父への義理も果たしたし、オレもっと売り上げとかそんなのに気を使わないでいい所で自由にやるべ」とばかりにインディーズ・レーベル”アリゲーター”へと移籍します。

さてこのアリゲーターというレーベルは、1970年代にブルース・イグロアという熱狂的なブルース・マニアが「ハウンドドッグ・テイラーのアルバムを出したいから」という理由だけで設立したレコード会社です。

もちろんそのハウンドドッグ・テイラーはいい感じに売れてレーベルの活動も軌道に乗り、この頃にはベテランから若手まで、腕は確かな連中が多く所属しておりました。

根っからの無頼漢であったジョニーにとっては

「ブルースのヤツしかいないってのも、あのイカレたハウンドドッグ・テイラーのレコードを出したいからとかいうクレイジーなレーベルってのもオレ好みだ。いいんじゃね?やったるぜぇ」

だったんではないでしょうか。

で、アリゲーター側にしても、メジャーで大暴れして、しかもついこの前まで”あの”マディ・ウォーターズのプロデュースをしてたような凄い人です。

「あーオレオレ。ちょっとお前んとこでレコード作りたいんだけどいい?あ?CBS?んなもん契約破棄したに決まってんだろうが、てかオレと契約すんのかよしねーのかよ、契約するんだったらサインしに行ってやるぜ、契約しねーんなら火ィ点けに行ってやる!」

ぐらいの勢いで(いや、ホントにこんな感じの人でしたから・・・)ポンと言ったら、レーベルとしては

「どうぞどうぞ、契約はこちらからお願いしたいぐらいです。何なら火も点けてください」

ぐらいの粋な返しをしたんだと、勝手に妄想します。

アリゲーターに移籍したジョニーは、水を得た魚と・・・。いや、ガソリンを得たチェンソーの如く、それまでの鬱憤を晴らすかのように、持てる力の全てを気持ち良くブルースに全振りして大暴れ(!)

このレーベルから出している3枚のアルバムは、どれも甲乙付け難いほどアツい衝動が尋常ならざるサウンドでたぎりまくっておりますが、今日はあえて3枚目の『サード・ディグリー』をご紹介。





【収録曲】
1.Mojo Boogie
2.Love,Life And Money
3.Evil On My Mind
4.See See Baby
5.Tin Pan Alley
6.I'm Good
7.Third Degree
8.Shake Your Moneymaker
9.Bad Girl Blues
10.Blake And Loney


何でこのアルバムをジョニーのアリゲーター盤オススメのその1に選んだかというと、それまでの彼のキャリアの総決算のような作りになっているからです。

まずはゲスト陣、トミー・シャノン(ベース)とアンクル・ジョン・ターナ(ドラム)をCGIの3曲で、ニューオーリンズの大物で、この時ライヴでも見事なデュオを披露していたドクター・ジョン(ピアノ)がADの2曲で参加。

ドクター・ジョンは完全に目玉のゲスト枠で分かるのですが、トミー・シャノンとアンクル・ジョン・ターナは、ファースト・アルバムで共にブルースした、いわば昔馴染みの仲間であります。

そして、ブルースに全振りした楽曲(!)

ジョニーといえば、親指にサム・ピック付けての畳み掛けるような単音ソロも必殺ですが、実はスライドの名手でもあります。

そんなスライドを大々的にフィーチャーしたのが『Mojo Boogie』『Evil On My Mind』『Shake Your Moneymaker』『Bad Girl Blues』の4曲と大判振る舞いなんですよこれ。

のっけから血圧が上がるノリノリの『Mojo Boogie』と、スライドの狂犬ハウンドドッグ・テイラーのカヴァーである『Shake Your Moneymaker』は、エレキによる極め付けで、ギャインギャインと凄まじい押しっぷりにひたすら圧倒されます。

ジョニーの本質というは「ブルースのコアを燃焼させて暴れる根っからのロックンローラー」というのがアタシの見解でありますが、いやもうこの2曲の、情緒も余韻もクソ食らえ!ブギーは勢いでなんぼじゃい!なノリの痛快さ、これだけで他はもう何も要りません。

と、思ったら今度はアコギ(共鳴板付き金属リゾネイターギター)で、多重録音されたフレーズ同士が金属音を響かせながら激しく絡み合う『Evil On My Mind』『Bad Girl Blues』の2曲が、エレキとは全く違うアプローチで耳を侵食します。

曲自体はトラディショナルな戦前のものに近いブルース・スタイルなんですが、ジョニーのギターは何て言うんでしょう。アコギを引かせても衰えない、むしろ歪んでない分生身の衝動を伴ってギラついているサウンドゆえに演奏そのものが全く古臭くなくて、トンガっています。

更にこのアルバムの凄さはスライドだけじゃない(ヒイィ!!)酸いも甘いも嚙み分けた辛口のスローブルースでの「いやしかしギターソロは猛烈弾き倒し」のスローブルース『Love,Life And Money』『See See Baby』『Tin Pan Alley』『Blake And Lonely』もしっかり入っております。

特にドクター・ジョンのピアノが、弾きまくりジョニーをしっかりとしたフレージングでサポートしている『Love,Life And Money』と、骨太なシカゴ・ブルース・スタイルの『Tin Pan Alley』は、ジョニー・ウィンターのと思わずとも、これは80年代のブルースの演奏としてはもう殿堂入りしてもいいぐらいの名演だと思います。

スローブルースでも、エモーショナルな吐き捨てるような歌唱で一切妥協を許さないヴォーカルと、サウンドもフレーズの荒れ具合もピッタリ呼応しているギター。ええ、もうこれですよ、この小細工とは全く無縁の体当たりのガチンコ、理屈とは最も遠い本能からそのまんま取ってぶつけるかのようなストレートな表現をぶつけられたら、こっちも理性とか全部かなぐり捨ててノックアウトされるしかない訳であります。

どこを取ってもジョニーの”やりたい放題”がすこぶるカッコ良くビシッ!と決まったこのアルバム。実はアリゲーターの3枚は、好きなことを好きなようにやっただけなのに、メジャー時代の作品より売れて、契約が終了する頃には、それまで「ブルースのルーツを持つ、個性的な弾きまくりギタリスト」「硬派なロックファンには人気だけど、物凄く売れまくってる訳ではない」ぐらいだった評価はあっという間に覆り、アルバムはいずれもCBS時代より好調なセールスを記録して、ジョニー・ウィンターといえば「80年代ブルース・シーンの超が付く大物で圧倒的なテクニックとフィーリングを持つスーパーギタリスト」という世界的な評価も確立したのでした。

何でそうなったかって?そりゃアナタ、この”好きなことを好きなようにやっただけ”が死ぬほどカッコ良かったからですよ。



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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 23:58| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする