2018年05月31日

リコ・ロドリゲス アンリリースド・アーリー・レコーディングス:シャッフル&ブギー 1960

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リコ・ロドリゲス・アンド・フレンズ/アンリリースド・アーリー・レコーディングス:シャッフル&ブギー 1960
(Federal Records)


このクソ梅雨時のジメジメした時期に素敵なイベントにおでかけして

「あぁ、思い出した思い出した、コレ好きなんだ!」

と、ジャマイカ・オーセンティック・スカの巨匠、リコ・ロドリゲスの代表作を紹介したら思わぬ反響がありました。

「いや〜、私も実はスカとか聴いてみたかったのですが、正直スカタライツぐらいしか知らなくて、他にどんなのを聴けばいいのかと悩んでましたー」

おぉ、おぉ、いいですね、素晴らしいですね。ありがとうございます。このブログはジャンルを問わず音楽の素晴らしさを、それもなるべく紹介したアーティストや作品を知らない人に聴いて頂くとすごく嬉しいブログです。こういう風に読んでくださった方が音楽との出会いに繋げてくださると、もう書いてる方も冥利に尽きるし、やる気も出るってもんです。

リコ・ロドリゲスの音楽は、その音楽的な仕組み云々はさておいて、音楽が醸し出す壮大な愛と平和のフィーリングみたいなもんが素晴らしい。

同じ事はボブ・マーリィにもオーガスタス・パブロにも言えることですが、さて、アタシが前回紹介した『マン・フロム・ワレイカ』




http://soundspal.seesaa.net/article/459661895.html

を聴いて、もしかしたら「これスカじゃないじゃーん、もっと泥臭いやつが聴きたーい」と思う方もいるかも知れません。いるかも知れませんので今日は

「リコ、それだけじゃないもん」

と言える初期の泥臭い音源を紹介します。


はい、リコ・ロドリゲスの出回っている音源というのは、実はイギリスに渡って、しかも売れないでくすぶっている時期から復活してのものが非常に多いのです。

長い雌伏の時代、彼が音楽的にも精神的にも鍛練を重ね、桃源郷とも言っていい素晴らしい音世界を作り上げたのは、これは紛れもない事実でありますが、オーセンティック・スカの観点から音源を探せば、やっぱり初期、それもジャマイカに居た頃に仲間達と試行錯誤でジャマイカに元々あったカリプソや、アメリカのジャズやR&Bなどから受けた影響を捏ね上げてスカという音楽を徐々に形作っていったその頃の演奏というものがどうしても聴きたくなってきます。

という訳で、最近発掘された貴重な貴重な初期音源がコレです。





【収録曲】
1.South Of The Border(Rico Rodriguez)
2.Monaco Boogie(Rico Rodriguez)
3.I've Got A Secret (Hortense Ellis)
4.Sirent (Rico Rodriguez)
5.Funny Thing To Say(Federal Singers)
6.You'd Better Marry Me (Federal Singers)
7.Sinclair Special(Rico Rodriguez & Herman Hersang)


1960年に録音された未発表音源集、ということは当然彼がジャマイカに居た頃で、まだソロ名義のLPとかも全然出していなかった頃の、これ本当に貴重な音源でありますね。

ディスコグラフィを見れば、リコのレコーディング・キャリアは1959年にスタートしたのを確認できますが、それはローランド・アルフォンソをフィーチャーした”マタドール・オールスターズ”での、つまりはサイドマンとしての録音で、その後ソロとしてリコの名前が出てくるのは「Moonlight Cha Cha」という曲が「多分1960年か61年なんだけど、リリースされてたかどうかよくわからない」というシロモノであり、えぇ、これには事情がありまして、つまりそのジャマイカという国では「カネのかかるLPよりとにかく7インチのシングル盤」という趣向があって、ここまでは5o年代のアメリカン・ミュージックとほぼ一緒なんですが、ジャマイカの場合はとにかく音源の管理とか記録とか、そういったものがほとんど省みられることはなかったんですよ。

いやほんと、その昔買取りにもちょろっと関わってたことあったんですが、ジャマイカ盤はほんとヒドかったですね。

ジャケットがないのはまぁ普通で、ラベル見て判断するんですけど、ラベルにはきったない字でアーティスト名を殴り書きしてあって曲名が書いてないとか、ドーナツ盤の穴がズレてる(!)とか、プレスミスでA面とB面の曲が一緒とか・・・まぁ分かりやすい範囲でそんなことはザラにありました。

これがもし国内盤や、アメリカ、イギリス、ヨーロッパのレコードだったらもう不良品として大問題になるところですが

「ジャマイカ盤だからいいんだ」

と、先輩達はみんな冷静でフツーに受け止めて値段付けてました。

まぁそんなお国柄ですから、アーティストの未発表音源は鬼のように埋もれてるはずであり、しかも埋もれていたとしてももうどこにあるか分からずそのまんま消えてるとか、倉庫のボロボロの段ボールの中に無造作に投げ込まれている(床とかに散らばってるかもしれん)「表記一切ナシ」のレコードの山から、恐らく泣きたくなるほどの苦労の末に、このリコの音源は世に出てきたんだと思います。

内容はリコ・ロドリゲス名義のものが3曲、リコがバックに付いたフェデラル・シンガーズの曲が2曲、そしてアルトン・エリスの妹(か姉)のホーテンス・エリスの曲と、ハーマン・ハースサングとのコラボ曲が1曲ずつの計8トラック収録されており、そのいずれもが、まだ形になる前の、R&Bの香りが色濃いヴィンテージ・スカ。

1曲目『South Of The Border』は1939年に公開されたアメリカ映画の主題歌です。原曲はカントリー・シンガーのジーン・オートリーが歌い、後にフランク・シナトラが軽妙なジャズジャズとしてカヴァーしてヒットしたことから、ジャズの演奏が多いのですが、ここではゆったりとしたルンバのリズムに乗って気持ち良〜く鳴り響くトロンボーンのまろやかな美しさに酔いしれます。

2曲目はオリジナル曲『Monaco Boogie』50年代アメリカで流行したシャッフル・ビートですね。このテのリズムが後のロックンロールに発展して行きます。短いソロを弾くギターもどことなくブルース風ですが、スチャスチャと裏を刻むギターのカッティングがスカ。この曲もインストで主役はリコのトロンボーンです。

ホーテンス・エリスがそのチャーミングな豊かさを持つ声で魅了する『I've Got A Secret』も、リズムはユルめの裏打ちシャッフルで、コード進行や曲の展開が完全にブルース。いや、聴いてみたらほとんどブルースでいいぐらいなんですが、この「もうちょっとでスカになりそうでならない感じ」

再びリコのソロ名義5曲目『Sirent』も、シャッフル・ビートのブギウギです。ほわーんとトロンボーンが勢い良くイントロを吹いてから、若干長めの間奏を挟んでのソロが、ジャズやブルースの影響を感じさせつつしっかりとしたオリジナリティがあって良いですね。


フェデラル・シンガーズの6曲目『Funny Thing To Say』と7曲目『You'd Better Marry Me』はグッとポップな初期ロックステディのそのまんまステディな雰囲気が良いですね。ちょっとおどけた声の男性シンガーが歌うEに、その男性シンガーと女性シンガーが「結婚するの?しないの?」のコミカルな掛け合いを聴かせるF、いずれもヴォーカルに千鳥足で絡む酔っ払いのような絶妙なトロンボーンです。

ラストの『Sinclair Special』は、リコのトロンボーンによるアドリブと、コクのあるブルージーなギターの絡みが良い感じにユルくアツいインスト・ロックステディの、これはもう名演ですね。こういうもっさりしたリズムの塊がスピーカーから「もわっ」と跳ねてくる感じがアーリー・スカ/ロックステディの醍醐味であります。ところで初期ジャマイカん・ポピュラー・ミュージックのカリスマとして「ハーマン・ハーシング&ザ・シティ・スリッカーズ」を率いていたハーマン・ハーシングはずっとオルガン奏者だと思ってましたが、もしかしてこのギター???


レコーディングに関しては相変わらず謎も多いのですが、ありそうでなかなかない、ジャマイカ時代のリコ・ロドリゲスがまとまって聴ける貴重なCDとして、また、スカになる前のスカがどんな感じだったか分かりやすく知ることが出来る一枚として、このアルバムはリコファンやスカファンにぜひ持ってて欲しいとは思いますが、単純にイカしたR&Bとして、ブラック・ミュージック好きがダラ〜っと聴いても全然楽しめると思います。




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 23:58| Comment(0) | レゲエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする