2018年06月24日

ミーターズ ニューオリンズ・ファンクの覇者

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ミーターズ/ニューオリンズ・ファンクの覇者
(Reprise/ワーナー・ミュージック)


はぁい皆さんこんばんは、この時期の軽い体調不良にヤラレておりましたので、今日はアタシにも皆さんにも、何かこう元気になるものを紹介したいと思います。

で、皆さん、元気な音楽といえばこれはもうファンクですよ。

どんなにヘバッている時でも、最悪体を動かないような時でも、頭の中で「ちゃか、ん、ちゃか、ちゃかちゃか、ん、ちゃん♪」とファンクなギターを鳴らして、ゴキゲンな16ビートでリズムを補完すれば、心はウキウキ言葉はオーイェ〜ってなるってもんですよ。

さて皆さん、よく「ファンク」とか「ファンキー」っていう言葉、アタシも無意識でよく使ってて、たまに意味を忘れることがあるので、ここでちょいとおさらいしておきましょう(うへぇ、”ファンキー”っていえばウチの親父がかなりうるさいんで、後でこの記事見られたらどうしよう・・・)。


まず、ブラック・ミュージックの歴史として

・ブルース → R&B(リズム・アンド・ブルース) → ソウル → ファンク

という流れがザックリあります。

ファンクというのは、1960年代中頃から徐々に形を成していき、それをやりはじめてひとつのスタイルまで昇華させたのが、言うまでもなく俺達のジェイムス・ブラウンなんですが、それ以前にももちろん”ファンク”や”ファンキー”という言葉は使われておりまして、それはどこで使われておったのかというと、1950年代のジャズの世界で使われておったんですね。

ジャズの世界で”ファンキー”といえば「ブルースやゴスペル(特にゴスペル)のノリを大々的に取り入れて、早いだけじゃない引きずるような”オーイェーな演奏”をやってるもの」という解釈がありまして、大体これで合ってます。

ほいで”ファンク”って何なのさ?ということなんですが、この言葉はもっと古くから黒人スラングとして使われておりました。

時は戦前のルイジアナ州ニューオーリンズ。

アメリカがアメリカになってからちょい後まで、ここはフランス領だったという特別な歴史がありまして、黒人と白人の間に生まれたハーフ達は”クレオール”と呼ばれ、これまたちょっと特殊な扱いを受けておりました。

その”特殊な扱い”が遠因となって、彼らは管楽器を手にしてジャズという音楽を演奏することになるんですけれども、そんな彼らが使っていたスラングの中に”ファンク”という言葉がありまして、ざっくり訳すれば”匂い”ということになりますが、隠語ですので当然かなりきわどい性的な意味が含まれます。

そういえば音楽の”ファンク”も、それまでのソウルやR&Bと比べて、より肉感的で体臭みたいなものを感じさせる音楽です。


はぁい、お勉強の時間はここまで!

今日はそんなことを考えていたら、おぉ、そういえば”ファンク”発祥の地であるニューオーリンズに、アメリカを代表する素晴らしいバンドがおったじゃないか!という事を急に思い出しましたので、ニューオーリンズ・ファンクの雄、ミーターズでございます。

ミーターズといえば、ソウル好きファンク好きの中でも特別な愛着を持つ人が多いバンドであり、また、ロックバンドやってる人の中でも「これこれ、ミーターズ♪」と、こよなく愛するファンが多いことでも有名です。

人気の秘訣は、独特の粘りに粘るビートと、元々がスタジオ・ミュージシャンだった彼らのズバ抜けた演奏力の高さ。そして、ロックとの深い関わり、つまり70年代からのローリング・ストーンズやリトル・フィート、ポール・マッカートニーら大物達からの絶大な評価と80年代以降のミクスチャーと呼ばれるロックのバンド達、特にレッド・ホット・チリ・ペッパーズに与えた影響の大きさなどでしょう。

実際にアタシの周囲にも「いやぁ、ファンクファンクって言うけど正直JBしか知らんくて、JBがもうズバ抜けてカッコイイから他はあんま変わらんと思ってたのに、ミーターズいいわぁ、これ最高だなぁ」という人、ちょっとおります。

確かに、大都会ニューヨークで、都会の洗練を目一杯演奏に活かしたJBバンドの、キッチリカッチリした完璧な演奏とはまた違う”南部ならではのタフかつワイルド、でもって演奏はキッチリしてる"というミーターズならではの魅力にハマッてしまう人っております(アタシもそうです)。


ミーターズは、リーダーのアート・ネヴィル(キーボード)が、1960年代中頃から組んでいた”アート・ネヴィル&ザ・サウンド”がメンバーチェンジを経て結成されたスタジオ・バンドです。

スタジオ・バンドというのは大体レコード会社の専属で、レーベルがシンガーをレコーディングする時にそのバックで演奏するバンドのこと。当然演奏が上手いのは当たり前として、どんなスタイルでも完璧に演奏出来る技術がないと出来ません。

この頃のミーターズは、ソウル、R&B、そして最新の流行になりつつあったファンクを、どれも完璧にこなすだけでなく、そのアレンジにニューオーリンズ独特のセカンドライン(「タカタカター、ツッタッター」というマーチのような独自のリズム)を見事混ぜ込み、確固たるオリジナリティを持っておりました。

やがて彼らの腕前は、単なるバックバンド以上の評価を得るようになって1969年にはミーターズ名義の録音が始まります。

最初は、4人組のインスト・ユニットとしてレコーディングを行い、アルバムも4枚リリースしております。

ファースト・アルバムを出した時点で、シングルカットされた曲がビルビード・チャート上位に入るなど、全米での評判もなかなかのもので、特に彼らの持つ独特の粘るグルーヴ、インストながらソリッドなファンク感は、ニューヨークなどの都市部にはない感覚として、ワイルドに憧れる都会の若者達のハートもしっかりと掴みました。

サード・アルバム以降はゲスト・ヴォーカルを迎えたり、徐々にサウンドの幅を拡げて”ファンクバンド”としての地位も不動のものにしております。

彼らのファンクバンドとしての極め付けの一枚が、1974年にリリースした5枚目のアルバム『ニューオリンズ・ファンクの覇者(Revolution)』であります。




ニューオリンズ・ファンクの覇者


【収録曲】
1.ピープル・セイ
2.ラヴ・イズ・フォー・ミー
3.ジャスト・キスト・マイ・ベイビー
4.ホワッチャ・セイ
5.ジャングル・マン
6.ヘイ・ポッキー・アウェイ
7.イット・エイント・ノー・ユース
8.ラヴィング・ユー・イズ・オン・マイ・マインド
9.アフリカ


アルバムを重ねる毎に、土臭いグルーヴ感はそのままに、楽曲やアレンジがどんどんポップになり、ノリと深みと聴き易さが高いレベルで融合して、たとえば音楽をリズムとか楽器の音色とか、細かい所まで聴くような人も、そんな難しいことは全然知らない、とにかくノリがいいのが聴きたい人も、みんなまとめて納得させ、そして踊らせる素晴らしいファンクの魔法が、このアルバムには詰まっております。

メイン・ヴォーカルを取るようになったアート・ネヴィルの声もすごく聴かせるいい声だし、初めて大々的に加えられたホーン・セクションも素晴らしい。グルーヴィーなファンク・ナンバーがやっぱりメインではありますが、しっとり聴かせるバラードもちゃんと入ってるし、アルバムトータルで聴かせる構成(プロデューサーはアラン・トゥーサン!)も、どれも完璧であります。


それもこれも全部含めてやっぱりアタシが聴いてしまうのは、結成当時からオリジナルなグルーヴを繰り出して来たレオ・ノセンテリのギターと、ジョージ・ポーターJr.のベース、ジョー“ジガブー”モデリストのドラムが生み出す強烈な”うねり”と”粘り”です。

「凄いベースとドラム」といえば、手数多くてバリバリのようなものを連想するかもですが、ミーターズのリズムセクションは違います。

ギター、ベース、ドラムスの音は極力少なく、でも、その少ない3つの音が生み出す絶妙な”間”、3つの音がそれぞれの空間を埋めずにしっかり繋ぎ合っている事で生まれるグルーヴが、このバンド独特の粘りを生んでいるんです。

いや、こういうのってほんと上手いと思います。それぞれの楽器のテクニックがあるだけではグルーヴってのは生まれませんし、お互いの音をしっかりと聴いて、相手のタイミングのクセまで知り尽くしてないと、これは絶対に真似できない。そういう境地にまで達している名人芸を軽〜くやっておるところがもうたまんないんです。

しかもミーターズは、録音でベースとドラムの音量が若干高めに設定されていたり、こういう”音作りのちょっとしたこと”が生み出す効果みたいなものを、本当に活かした心地良いサウンドなんですね。

レッチリのフリーが、オススメの音楽を挙げる時には「君、バンドやってるんならミーターズは聴いといた方がいいよ」と言っているということを何かで読んだことありまして、実はアタシもミーターズ気になったのはそのフリーの発言からなんですけど、バンドやってる人はミーターズの、この”引き算で生み出すリズム”というのは必須でしょう。

バンドやってない人は、そんな小難しいことは「そういえば奄美のCD屋がなんか言っとったなぁ」ぐらいに聴いても全然OKです。そうでなくてもミーターズは最高にカッコイイファンクとして十分に楽しめます。









『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 10:28| Comment(0) | ソウル、ファンク、R&B | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする