2018年06月27日

ネイキッド・シティ(ジョン・ゾーン)

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Naked City/Naked City

(Nonesuch/elektra)


もし、アタシがジャズを聴くようにならず、パンクからアメリカのハードコアをずっと追いかけていたとしても、必ずこの人とは出会ってただろうなという人がおります。

ジョン・ゾーンであります。

この人は、一応サックス吹きであり、一応ジャズのカテゴリで語られる人ではありますが、正直よーわからん人です。

1953年生まれのユダヤ系アメリカ人、若い頃は何をやっとったか知らんが、とにかく早くからニューヨークのアンダーグラウンドな場所にばかり居て、ほとんど自主製作なレコードをボコボコ出していたけど、そん時の音源は正直よーわからんのですが、ハナッからジャズなんぞ眼中にないような、前衛的とか実験的とか言われる類の音楽だったそうです。

で、この人がいきなりシーンの表舞台(つっても限りなく”裏”に近い表ではありますが)に出て来たのが80年代の半ば。

クラシックとか民族音楽とかで有名なノンサッチというレーベルから、映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネのカバー集(でも、内容は映画ファンぶっ飛びのかなりぎちょんぎちょんな実験音楽)で出てきたんですが、そっからクラスト・コアの連中とツルんだり、日本(高円寺)に住んで歌謡曲のレコード集めまくったり、「イギー・ポップとゴダールに衝撃を受けたんだ」と、インタビューで語ったり、ボアダムスでブレイクする前の山塚アイの絶叫と自分のサックスでギャーピー言ってる、ほとんどノイズみたいなレコード作ったりと、ジャズにハマり出した1997年頃、この人の作品を聴いては、聴いた数だけ困惑するという、この曲がカッコイイとか、どのアルバムがいいとか、音楽に対する姿勢がとか、そんなことを考えさせる前に、アタシの神経をかき乱すだけかき乱しては去って行くとか、つまりそういう訳のわからん感覚だけが募って、東京のアタシのアパートには、ジョン・ゾーン関係の訳のわからんCDばかりが溜まっていくという怪現象が起きておりました。


そのルックスはひょろっとした顔に眼鏡をかけた、いかにもオタクな白人青年。

でも、そんな人がサックスでそれまで聴いたことないようなヒステリックにキーキー叫ぶカミソリみたいな音をぶっ放して、更にブラストビートとかコラージュノイズとか、多分”マトモ”な音楽の常識で考えたら禁じ手な、アブナい音ばかりぶっこんで、ジャズともパンクともノイズとも言えないような、最低に不快で最高に刺激的なもんを作る。

あの〜、よく見た目インテリなのに凶暴なヤツのことを「インテリヤクザ」とか言うじゃないですか、アタシもジョン・ゾーン知って、その音楽に触れた時にそう思ったんですけど、そう思ったのは一瞬で、これはヤクザすら「アイツとは関わるな」とサジを投げるインテリマッドの方なんじゃないかと思いましたねぇ。

ともかくジョン・ゾーンって人はよくわからん。

一応彼の作品には”マトモな”(?)フリー・ジャズのセッションなんかもあったり、90年代後半に組んだ"マサダ”なんかは、4ビートのジャズとユダヤ民族の伝統音楽クレツマーを融合させた、音楽的には前衛なようでいてなかなか鋭くルーツに踏み込んだこともやってる。


うん、だからこそこの人がますます何者なのか分からなくなってくるのです。

アルトサックス吹くし、ジャズの人ではあるんだろうけど、アタシはもうかれこれこの人の音楽は20年以上の付き合いになるのですが、どうしてもハードコアとかその辺と同じ臭いを感じるし、この人の音楽から痛いほどにビシバシ飛んで来る安心や安定を一切伴わない刺激は、やっぱりパンクと言う他ないのです。




Naked City


【パーソネル】
ジョン・ゾーン(as) 
ビル・フリーゼル(g) 
ウェイン・ホロヴィッツ(Key)
フレッド・フリス(b) 
ジョーイ・バロン(ds)
山塚アイ(vo)


【収録曲】
1.Batman
2.The Sicilian Clan (エンニオ・モリコーネ)
3.You Will Be Shot
4.Latin Quarter
5.A Shot In The Dark(ヘンリー・マンシーニ)
6.Reanimator
7.Snagglepuss
8.I Want To Live (ジョニー・マンデル)
9.Lonely Woman (オーネット・コールマン)
10.Igneous Ejeculation
11.Blood Duster
12.Hammerhead
13.Demon Sanctuary
14.Obeah Man
15.Ujaku
16.Fuck The Facts
17.Speedball
18.Chinatown (ジェリー・ゴールドスミス)
19.Punk China Doll
20.N.Y. Flat Top Box
21.Saigon Pickup
22.The James Bond Thema (ジョン・バリー)
23.Den Of Sins
24.Contempt
25.Graveyard Shift
26.Inside Straight

(録音:1989年)


90年代後半の、アンダーグラウンド音楽を愛好する人達にとって、そんなジョン・ゾーンはひとつの大きなアイコンのような存在でした。

ボアダムスもソニック・ユースも繋がるし、ジム・オルークや灰野敬二だって、聴いてりゃジョン・ゾーンに当たる。ノイズやグラインド・コアしか聴かないような、ちょっと距離を置きたくなるような人とだって

「ジョン・ゾーンの”スパイvsスパイ”がね」

「おーーー!アレはいい!!」

と盛り上がれたんです。

むしろジャズ好きな人達の

「えぇぇ、ジョン・ゾーンですかぁ・・・」

な反応の方が、眺めてて楽しかったというか、多分こういう多方面からの評価や反応って”めちゃくちゃ頭のいい人”だというジョン・ゾーンにとってはしめしめなことだったと思います。

はい、そういう「あえて期待を裏切ることを全力でやる」というジョン・ゾーン先生の、まずは聴くべき正しく狂った1枚が、1990年リリースのバンド”ネイキッド・シティ”のファースト・アルバムです。

これはですのぅ、物騒極まりないジャケットを見て「えぇぇ、グロいのはちょっと・・・」と思ったんです。思ったんですがその”グロいの”を期待して聴いたら、ん?お?フツーに8ビートとか16ビートとかでポップスな曲やってて、すごく聴き易いんじゃね?あ、カントリーっぽいフレーズも出て来た。あらなぁに?この場末のキャバレー感、いいわぁって思ってたら急にサックスが悲鳴を上げ出したり、ギターがノイズ吐いたり、高速ブラストビートがポップな雰囲気を全部なぎ倒したり、山塚アイに至っては(いつものことですが)ヴォーカルってクレジットされてんのに「アァァァアア!!!!ギャアァァァァァアア!!」と絶叫しかしてないの、何だこれは、しかもそういう”ぶっ壊れ”を一瞬とか曲の一部とかで放送事故みたいにやっちまいやがった後、瞬時に”マトモ”に戻ってる、そんな曲がほとんどです。


えぇぇと、ジョン・ゾーン先生のアルバムには、もっと過激なものもあります。もっとガツンと終始刺激が飛んで来るのもあるし、ドロドロにグロテスクなものもいっぱいあります。

でも、その辺を一通り聴いて、いわゆる初期の名盤と呼ばれるこのネイキッド・シティを聴くと、そういった「まっすぐに壊れてる音楽」よりかえってタチの悪さが際立っておるなぁと、驚愕と戦慄と困惑が入り混じった感情で聴く事を止められません。


























『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 22:11| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする