2018年07月31日

レッド・ガーランド ハイ・プレッシャー


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レッド・ガーランド/ハイ・プレッシャー
(PRESTIGE)


さて皆さん、7月も最終日となってしまいました。

今年はちょいとアタシが体調不良とか何とかで、なかなか気合いの入った連日更新が出来ておりません。

大変申し訳なく思っておりますが、それでも毎日このブログをチェックしてる方々が結構いらっしゃって、本当に有難いことです。

えぇと、はい、この数日は「レッド・ガーランド強化月間」で、1950年代のガーランドとコルトレーンが共演した”マラソン・セッション4部作”について書いておりますが、お前しっかりしろ、ガーランドはマラソン頑張ってるけど、お前は息切れしてるじゃないかと、自分で自分にツッコミ入れながら今書いてますよ〜。

はい、そんな訳でガーランド、マラソン・セッション4部作は後半戦あと2枚です。

本日ご紹介するアルバムは『ハイ・プレッシャー』こちらも1957年11月と12月のたった2日間のセッションから集めた全5曲入り。

毎回のように言っておりますが、ガーランドとコルトレーンが組んだPrestigeのアルバムは、どれも50年代一流のジャズマン達ならではの最高の空気感と、リラックスと緊張を絶妙なバランスでたっぷりと楽しませてくれる、つまり極上な作品揃いで甲乙付け難い良盤”しか”ありません。

更にその上、4枚のどのアルバムにもそれぞれ”聴きどころ”や”目玉の曲”というのがあって楽しめるというから、これはもうたまんないんですよ。

かく言うアタシも、最初ガーランドという人のことは

「マイルスのバックでそつのないプレイを聴かせてくれる職人肌のピアニストだな」

と思っておりました。

つまり、派手さはないが味のあるタイプだと思ってて、まぁそんなガーランドがコルトレーンを引き立ててるアルバムだろうから悪かろうはずがない、マイルスのバンドで一緒にやってた仲だしね。

ぐらいに思ってたんです。

ちょいと意地悪な書き方をすれば

「コルトレーン参加作の中では、まぁ無難にカッコいいアルバムが、4部作であるということだろうから、まぁ徐々に集めていけばいっか」

ぐらいに、まぁナメてたんです。


ところがこの4部作、聴いてみたらばこれが「まぁ無難にカッコイイ」どころの話じゃなくて、最高にシビレる素晴らしい作品だった。

しかも、成長著しい時期のコルトレーンの引き立て役だろうと思ってたガーランドのプレイが(リーダーだから当たり前なんですが)、コルトレーンのイケイケなプレイと並行の位置の同じ高さにあって、グルーヴと落ち着きの両方でもって完璧に響き合って溶け合っておるもんだから仰天して

「ひえぇ、レッド・ガーランドってこんなにキャラの立ったカッコいいプレイをする人だったんだ!」

と、初めてその凄さを認識しました。

で、今日ご紹介する『ハイ・プレッシャー』であります。





High Pressure

【パーソネル】
レッド・ガーランド(p)
ドナルド・バード(tp)
ジョン・コルトレーン(ts)
ジョージ・ジョイナー(b)
アート・テイラー(ds)

【収録曲】
1.ソフト・ウィンズ
2.ソリチュード
3.アンディサイデッド
4.ホワット・イズ・ゼア・トゥ・セイ
5.トゥー・ベース・ヒット


(録音:BC1957年11月15日,@AD12月13日)


このアルバムは「ノリノリの曲」と「美しいバラード」の2本立てです。はい、難しいことは言わない、聴いている人はパッと聴いて「いぇいゴキゲン!」か「あぁ、いいわぁ・・・」と素直に感じておればいいし、また、どんな人にも、たとえばジャズとかよくわからん、何がいいの?って人でも、1曲目の『ソフト・ウィンズ』からもうノリノリのグルーヴに耳とハートと腰を持っていかれてウキウキせずにはいられないってヤツです。

そう、この盤の大きな目玉はとにかく1曲目、のっけからガーランドのピアノがとにかく走る走る、転がる転がる(!)

ガーランドって、自分が前に出て凄腕を披露することよりも、一音から出る雰囲気とバンド全体のノリをとても大事にする人で、決してテクニックを売りにするタイプじゃないから、そこんとこ誤解されがちになって地味とか大人しいとか言われることも多いのですが、いやアナタ、この軽快に走りながらどんどんふくよかに拡がってゆくメロディ・ラインの美しさを聴いてごらんなさい、どんなにノリノリで弾いてもフレーズの美しさ、ノリノリなはずなのにそのフレーズ聴いたら何故か「あ、美しい」と思ってしまうこのセンスの最高なとこ、これはもう凄いテクニックです。

そしてこのアルバムのもうひとつの目玉が、今度はバラードで容赦なく美しい『ソリチュード』これはデューク・エリントンの名曲で、多くのカヴァーが存在しますが、アート・テイラーが刻むしっとりとしたブラシでのリズムに合わせて豊かに響くジョージ・ジョイナーのウッドベースの音、これだけでもうしっかりと”音楽”なのに、ガーランドの憂いを帯びた美の塊のようなピアノがかぶさるともう窒息しそうな切なさがこみあげてきます。続くコルトレーン、バードのソロも儚くて儚くて涙腺はずっとホロホロ。

他の曲も同じ水準で本当に質感が擦り減らない、この時代のジャズの人達の凄さに嫌でも感服せざるを得ない素晴らしい演奏ですが、もうアタシはいつも冒頭2曲を聴くだけで胸がいっぱいになりますので今日はこの辺で。





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2018年07月29日

レッド・ガーランド ディグ・イット!!

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レッド・ガーランド/ディグ・イット!



大コルトレーン祭、そして”レッド・ガーランド強化月間”でありますので、本日もガーランドとコルトレーンの”マラソン・セッション4部作”の中から一枚紹介します。


アレですね、コルトレーンという人は「どの時期が好きか?」で、随分と印象が違う人でありますね。

つまり1950年代のモダン・ジャズをやっておった頃と、60年代以降のモダンの枠組みから飛躍して、独自の音楽をディープに追及していた時期とで大まかにこの人のキャリアは分かれるのですが、初期が好きな人はやはり「偉大なジャズの巨人」として聴いている。でもって後期が好きな人は「音楽の歴史を変えた偉大な芸術家」として崇めている感じがします。

アタシは何度も言うておりますが、後期も後期、亡くなる直前のフリー・ジャズぎっとんぎっとんになった時のコルトレーンを聴いて

「うは!パンク!!」

と衝撃を受けたクチでありますので、正直それより前のモダン・ジャズをやっておった頃のコルトレーンを「ジョン・コルトレーンの音楽」としてすんなり受け入れるまでにはちょいと時間がかかりました。

だから初期はつまんなく思ったとか、そういうのではなくて、とにかく1950年代後半のジャズってのは、誰がやっているのでもジャズとしてカッコ良かった。どのミュージシャンも個性的だし、どのレコードからもしっかりと、ジャズをジャズたらしめているファンキーでほろ苦い独特の空気がむせるほど漂ってくるから、そういう空気にいちいち

「おぉう、これがジャズか、渋い!カッコイイ!」

と感動するのに忙しくて、その中からアタシが最初に聴いて衝撃を受けた「コルトレーンの音楽」を感じ取るのがちょいと難しかった。

「コルトレーン者としてコレで良いのか?」

と、アタシはもう何年も何年も考えて、よせばいいのにそれなりに悩んでおりましたが、結論から言えばそれでいいのだ。

「あぁ、これはカッコイイジャズだ!」

と思えば、それをカッコイイジャズだと思って聴けばいいよと教えてくれたのが、実はコルトレーンと組んでいる時のレッド・ガーランド、彼の粋でオシャレでグルーヴィーで、そして切ない時はどこまでも切ない、最高のピアノ演奏だったという訳です。


モダン・ジャズ全盛期を代表するピアニストの一人だけあって、ピアノ・トリオのアルバムは膨大にリリースされております(そして、それらはほとんどグゥの音も出ない高水準の素敵な内容)が、「本当にセンスのいいピアニストは、ホーン奏者のバックに回った時も最高」の言葉通り、ホーン奏者のバック、或いはサックスやトランペットなどを従えての演奏も、味わいに味わいが加わった何とも言えない深みのある作品が多い(これもまた大量に出ております)。

で、アタシは最初にコルトレーンと連名でリリースされたガーランドのアルバムを聴いた時に、トリオ作品とも他のホーン奏者との共演盤ともちと違う”格別”を感じた訳です。

その”格別”とは何かと言うと、やっぱりこの1957年から58年のコルトレーンであります。

コルトレーンはこの時すでに「他の誰もやっていない自分なりのやり方」の探究の第一段階を極めておりました。

それは一言で言えば「それまでのお約束事からちょっとだけはみ出す」ような、独創的な奏法です。

その独特な「飛び方」が、モダン・ジャズの作法の中で紳士的にスウィングしたりブルースしたりバラードしたりするガーランドのプレイとは、若干の”ズレ”があり、でもそのズレが、演奏の破綻するレベルにまではいかない”程良い緊張感”辺りで、楽曲としっかり寄り添っていたからカッコイイ。

つまりはコルトレーンはこの時点でかなり他の人とは違う個性を感じさせてはいたけど、全体的にはしっかり4ビートの、しっかり「うん、渋い!カッコイイ!」のジャズな雰囲気の中で違和感なく収まったプレイをしていた。

で、コルトレーンは「収まる」ということには全然満足しない人だったから、このちょいと後にはもう飛躍的に独自の世界を拡げていて、ガーランドらモダン・ジャズの人達をはっきりと置き去りにしてしまう訳で、そういった意味ではコルトレーンとガーランドの蜜月は大変に短かった訳ではあるんですが、個性と個性がピッタリと寄り添った一瞬の輝きを、Prestigeでの「ガーランド&コルトレーン」はしっかり記録してくれている、という訳なんですね。




Dig It


【パーソネル】
レッド・ガーランド(p)
ジョン・コルトレーン(ts,@BC)
ドナルド・バード(tp,@C)
ジョージ・ジョイナー(b,@AC)
ポール・チェンバース(b,B)
アート・テイラー(ds)

【収録曲】
1.ビリーズ・バウンス
2.クレイジー・リズム
3.C.T.A.
4.レイジー・メイ

(録音:@AC1957年12月13日,B年3月22日)


くどくど御託を述べるより、これは実際に聴いて頂きましょう。という訳で本日はガーランド”マラソン・セッション4部作”より『ディグ・イット!』です。

「ディグ」って言葉は「掘る」って意味ですね、アタシらレコード稼業の人間は昔っから「今日は新宿にレコード掘りに行くんだよ」とかよく使ってました。つまり「ディグ・イット!」は「このレコードを掘れ!」という意味になるんでしょうか、なかなかにシャレたタイトルであります。

さて、中身の方はタイトルに違わず、一曲目にまずゴキゲンに走る『ビリーズ・バウンス』が入っています。

テーマは短めで、いきなりコルトレーンの吹きまくりのソロ(!)うぉぉすげぇすげぇ、コルトレーン走ってるぅ〜♪と感動しているうちに、今度はドナルド・バードがちょいと落ち着いたコクのあるラッパで聴かせ、つづくガーランドのソロが、軽快にアドリブ繰り出しながら大人の風格で魅せる。この流れを聴いていると、コルトレーンの独特っぷりが一発で分かる仕様になっております。

続く2曲目も疾走系(いぇい♪)の『クレイジー・リズム』ですが、コチラではホーン隊はお休みしてガーランド、ジョイナー、アート・テイラーのトリオ演奏。3分ちょいの短い演奏でありますが、ガーランドの「宝石を転がすような」と言われる美しい粒立ちのフレーズがリズミカルにカラコロと輝きながら転がってゆくカッコ良さと、ブラシ職人アート・テイラーのシャカシャカ切れ味最高なリズムと、ジョージ・ジョイナーのキッチリ太い音でのボリューム感溢れるウォーキングベースの至芸が素晴らしく、単なる箸休めに終わってません。

3曲目『C.T.A.』は、違う日のセッションからで、今度はバードが抜けたコルトレーンのワン・ホーンで、ベーシストはジョイナーに変わり、おなじみのポール・チェンバース、この曲もノリノリで吹きまくるコルトレーンと、ビシバシとかっこいいフレーズをキメまくるガーランド、安定のチェンバースと、これもうどこを切り取ってもこの時代のモダン・ジャズ、ハード・バップのお手本みたいな演奏ですね。あと、スティックに持ち替えたアート・テイラーの気合い、特に後半のコルトレーンとのフレーズ交換が、もう飛んで来る汗も見えそうなぐらいアツいです。

調べてみたらこの曲は、アート・テイラーのリーダー作の予定だったセッションの中からセレクトしたトラックだったとあり、なるほどテイラーの気合いの入りっぷりも頷けます。

と、ここまで3曲ノリノリできましたが、最後は待ってました!やっぱりガーランドとコルトレーンのアルバムにはコレがないとね、なブルース『レイジー・メイ』であります。

ガラッと変わってゆったりとしたシンバルとウッドベースの刻みに乗って、ややダークな低音を響かせてやるせなくスタートするピアノ、くー、たまらんねぇ、この「ジャズの人がやるブルースのカッコイイところが全部詰まってるような演奏、フレーズの重み、雰囲気」の全部がアタシは好きであります、愛しております。

ねちっこく、イヤラしくなる寸前でジェントルマンシップを忘れない、レイジーな中にエレガンスを忍ばせたガーランドのソロは、何と7分続きますが、本番はこれからです(!)そっからのコルトレーンですよ皆さん。

コルトレーンのブルースって、よく「斬新な解釈」と言われ、なるほどブルースだからと言ってダウナーなフレーズをボヘーっと吹くばかりでなく、ソロの中にしっかりと超高速フレーズをブチ込みまくりながら、聴く人の血圧をしっかりと上げてくれるアドリブは、確かにそれまでのどのテナー吹きもやってこなかった刺激的なものですが、それ以上に「これだけ吹きまくってもブルース独特の”間”を感じさせるコルトレーンって凄い」と、アタシは感動してます。

やっぱり音色ですよね、ソリッドではありますがしっかりと芯がある音色が、どんなに高速で駆けても丁寧に丁寧に込められた感情の息遣いを聴く人に伝えてくれます。

クライマックスを飾るドナルド・バードのトランペットも、コルトレーンからかなり良い影響を受けて、素晴らしく語り掛けるような演奏です。バードは後に味のあるソウル・ジャズ路線でブレイクする人ですが、このブルース聴いてると、やっぱり味わいが絶品人だなぁとしみじみ思います。

このアルバムは、ラスト以外はノリノリでとっつきやすいので、最初に聴く1枚としてもかなりいいんじゃないでしょうか、いずれにしてもガーランド、コルトレーンの好調ぶりと共に、50年代全盛期のモダン・ジャズの空気感を存分に堪能できます。







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2018年07月24日

レッド・ガーランド オール・モーニン・ロング

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レッド・ガーランド/オール・モーニン・ロング
(PRESTIGE/OJC)


レッド・ガーランドといえば、1950年代半ばに結成されたマイルス・デイヴィス・クインテットの初期メンバーであり、その洗練された都会的なフレージングと、かといってヤワにならない、奥底にじんわりにじむ確かなブルース・フィーリングを併せ持つピアニストであります。

「宝石を転がすような」と称された右手の華麗なアドリブに、しっかりとタメを効かせたリズムで和音を放つ左手の組み合わせは


「ただノリに任せるだけじゃなくて、粋で聴かせる曲をやりてぇんだ。分かるか?新しい都会のブルースの事だよ、オレが言ってるのは」


と、常日頃口にして、実際メンバーや共演者への要求も相当にうるさかったマイルスを納得させ、彼が言うところの”新しい都会のブルース”つまり、それまでのワイルドなスピード感に溢れるビ・バップから、タメとコクと洗練で、聴衆をノせながらしっかりと聴かせるハード・バップの、ひとつの雛形を作り上げました。


そして、ガーランドのそんな洗練されたピアノは、同じ時期に同じバンドで音楽を作っていたコルトレーンにも、大きくて豊かなイマジネーションを与えることとなり、ガーランドとコルトレーンは、Prestigeレーベルにおいて、コルトレーンのソロ・デビュー前と後、更にコルトレーンがマイルス・バンドを脱退してからも、良きチームメイト同士として素晴らしい作品を多く作り上げてゆくのです。

本日は、そんなガーランドとコルトレーンの”良い仕事”の中から『オール・モーニン・ロング』というアルバムを皆さんにご紹介しましょう。

マイルス・バンドがブレイクしてからというもの、ガーランドはソロ・アーティストとして大忙しでありましたが、Prestigeからは専属のハウス・ピアニスト(つまり、Prestigeが誰かのアルバムを作る時にレーベルが用意するバック・ミュージシャン、今で言うところのスタジオ・ミュージシャンですな)としても大活躍しておりました。

コルトレーンも、麻薬絡みの色々とダメなアレでマイルスのバンドをクビになりましたが、セロニアス・モンクに拾われてすっかり麻薬を絶ち、音楽的にも飛躍的な成長をしていると知ったPrestigeからまたぞろ声がかかり、

「ジョン、ちょいとレコーディングしないか?カネなら前金で払うよ」(注:払わない)

「ジョン、ガーランドのレコーディングをするんだが、ホーンがいないんだ。来ないか?え、カネ?もちろん前のレコーディングの時のも併せて払うさ」(注:スタジオ代とかメシ代とか差し入れのビール代とかもろもろ引かれた明細を渡す、結局払わない)

と、何かとガーランドと一緒にPrestigeのスタジオに顔を出しておりました。

Prestigeが、ガーランドの”マラソン・セッション”つまり、マイルスの時と同様『2日間でアルバム4枚分に相当するレコーディング』を行ったのが、1957年11月15日と12月23日のことであります。

マイルスの時は、ミュージシャンへの扱いがロクなもんじゃないPrestigeとの契約をさっさと終わらせたかったマイルスが

「あとアルバム何枚分契約残ってんのよ、あ?4枚分だぁ?じゃあちゃっちゃと4枚分レコーディングしてやっからスタジオ押さえろや」

と凄んだために行われましたが、ガーランドのマラソン・セッションは特にレーベルとモメたとかいう話は聞かないんで、ピアノ・トリオものでいい感じに稼いでくれていたガーランドの、ホーン入りセッションを録り溜めしておこうとPrestige側が提案し、ガーランドが「いいっすよ」と応じたものでしょうね、ガーランドいいやつですね。




All Mornin Long

【パーソネル】

レッド・ガーランド(p)
ドナルド・バード(tp)
ジョン・コルトレーン(ts)
ジョージ・ジョイナー(b)
アート・テイラー(ds)

【収録曲】
1.オール・モーニン・ロング
2.誰も奪えぬこの想い
3.アワ・デライト

(録音:1957年11月15日)


ガーランドの”マラソン・セッション”4枚は、どれもガーランドの小粋なカッコ良さと、コルトレーンのやる気にみなぎったアツいブロウのコントラストが絶妙にカッコ良く、かつ50年代ジャズ(ハードバップ)の良心のような、雰囲気と味わいがもう本当に素晴らしいんですよ。

どれもオススメなんですが、愛聴の頻度で言えばアタシはコレ、ガーランドの”洗練された都会のブルース”が、それぞれのソロをたっぷり取った長い演奏でじっくり楽しめる『オール・モーニン・ロング』。


まずタイトル曲の1曲目が、まんまブルース形式で、コレが最高ですねぇ。ミディアム・スローなテンポで収録時間は何と20分ですから、どんだけダラダラな曲なのかと思ったら、コレが実に飽きずに聴かせる。ソリッドな音に時折ふくよかさを交えて、深い味わいと煌めきに満ち溢れたコルトレーンのソロ、味わいといえばややハスキーなトーンで、タイトル通りに「徹夜のどんちゃん騒ぎ明けのブルース」を見事メロディアスに表現しきっているドナルド・バードも大健闘です。

そして、7分を過ぎたところでおもむろに出て来るガーランドのソロは、もう名人芸。終始音数を抑えた紳士的なアドリブなんですが、瞬間的に左手の和音を「ガガガガ」と細かくブチ込んだり、右手の繰り返しフレーズを宙に浮かせて転がしたり、その抑制の中でしっかりと”盛り上がり”を作るんです、しかもソロ中に何度も「ここで来てほしい!」というところでしっかりと。

ガーランドという人は、革新的な何か派手なスタイルを打ち立てた訳じゃないけど、こういう”間”を活かした大人の余裕みたいなプレイでとことん聴かせて「あぁいいなぁ・・・」と酔わせてくれる人なんです。あと「ジャズってさ、こういうところがたまんないよねぇ」みたいなのが、そのそこはかとなくカッコいいプレイにギュッと凝縮されてるんですねぇ。

で、2曲目『誰も奪えぬこの想い』は、いわゆるスタンダード・ナンバーです。

曲調は落ち着いた気品ある感じでありますね、オープニングのテーマを朗々と吹き上げるバードの後にすかさず入ってきてバリバリの覇気に溢れたパワフルなソロを展開するコルトレーン、そしてやっぱりハスキーで勢いより味わいのバードときてガーランド、先程のブルースでは抑えた中に盛り上がりを見せたソロですが、この曲では右手のシングル・トーンが鍵盤を美しく高速で転がります。

”刻み職人”のアート・テイラーが淡々と叩く「1,2,3,4」の規則正しいシンバルをしっかり聴きながら、その倍テンポで右手を走らせて、きっちり立ち止まって曲調に合わせたエレガントなフレーズを散りばめ、また一瞬加速してさらに美しいテンポ通りのフレーズを紡ぐソロの中で魅せる、これはもうドラマであります。

ソロの後はドナルド・バードが再び吹き上げるテーマの後、ジョージ・ジョイナーのしっかりと”木”の音を鳴り響かせる、短く硬派なベース・ソロ、再びテーマで終了。

ラストの「アワ・デライト」もスタンダード、こちらは1946年にディジー・ガレスピーが、1947年にファッツ・ナヴァロ(トランペット)をフィーチャーしたタッド・ダメロンの演奏が口火になり、ロイ・ヘインズ、ビル・エヴァンス、キャノンボール・アダレイなど、有名ミュージシャン達がこぞって演奏したゴキゲンなナンバーで、ガーランド達にしてみれば「ライヴでのおなじみ」だったんでしょう。

慣れた感じの軽快なテンポで、今度はバンド全員がノリを統一した感があり、こういった「ミディアムより少し早いテンポ」では、抜群の体感速度を感じさせる、コルトレーンの快調な吹きまくり、パワフルにヒットするバードのトランペットでのアドリブ、軽妙に疾走しながら、どこかでやっぱり大人の色気に溢れたガーランド、ブルースから徐々にテンポを上げて最後はサクッと終わるこのアルバム構成も完璧であります。




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