2018年07月14日

ルーズヴェルト・サイクス フィール・ライク・ブローイング・マイ・ホーン

625.jpg

ルーズヴェルト・サイクス フィール・ライク・ブローイング・マイ・ホーン
(Delmark/Pヴァイン)


さて、連日の猛暑日が続いておるようですが、皆さん如何お過ごしでしょうか?

奄美も暑いとはいえ、気温はまだ30度そこらで、日陰に入っておればまだ何とかといったところです。びっくりしたのは本土から観光で来られた方に

「いやぁ、奄美ってすごく暑いかと思ったけど、思ったより涼しいんですね」

と言われたこと。

異常気象とかいう言葉は、ここ十数年ぐらい頻繁に耳にするようになりましたが、南の島の方がまだ涼しくて、東京のような緯度の高い所の方が暑くなったってのは、、まぁこれは本当に異常でございますね。いつからこうなっちゃったんだか。

とにかくも皆さん、熱中症にはお気を付けくださいね。

さて、アタシも今週は気合いを入れてブログ頑張ろー!とか思ってましたが、いかんせん体調不良に悩まされ続けておりまして、いつものようにユルい更新で失礼さんでございます。

前回は”ピアノ・ブルースの素晴らしさを、もっと多くの人に知ってもらおう”と、ルーズヴェルト・サイクスの戦前音源をご紹介しました。

ほぼ弾き語りか、サイドにギターのみを付けて豪快かつ軽快に疾走するサイクスの戦前録音は、もちろん聴いてて素直に楽しいし、後のジャズ・ピアノなんかに与えた影響なんかを想像しながら聴いてみても色々な発見があったりと本当に奥深く、ブルース好き、ジャズ好きはもちろん必携なんですが、実はサイクスさん、ミュージシャンとしての本当の快進撃は戦後に始まります。


そう、戦前は上島竜兵だった見た目が、西田敏行に進化しました。しかもアウトレイジ・シリーズの。


img2.jpg


というのは冗談です(汗)

戦後は何と、バンド・サウンドを従えてサウンドをグッとモダン化するんですね。

40年代はジャンプ、50年代からはモダン・ブルース。元々持っていた強靭なグルーヴ感と鍵盤へのアタックの強さが、進化したブルースのリズムとドンピシャでマッチして、更にその太く高い声の魅力も演奏が引き立てるという相乗効果を得て、サイクスのブルースは一回りも二回りもスケールの大きなものへと進化しました。

「戦後になっても人気が衰えなかった」

「ブルースが下火になった50年代後半以降も精力的に活動出来た」

ってのは、本人が語るように運が良かっただけではなく、アタシはやっぱりこの人の底力が、時代と共に進化したブルースのスタイルに上手くマッチしたからじゃないかと思うんです。

それも単純に波に乗ったとか、新しいスタイルを積極的に取り入れたとかではなく、本人はあくまでやりたいスタイルでブルースを弾いて歌っている時に向こうからやって来た流行だとか新しいやり方だとかそういうのが、サイクスの方に寄って来た。

これに対してサイクスは「あぁ、やれるよ。訳ないさ」と、実に自然にやってるんです。

その”新しいサウンドへの対応”が実に見事で、びっくりするぐらい違和感がないっていうのは、やはりこの人のミュージシャンとして、そしてピアニストとしての芸の幅が凄まじく広かったということなんでしょう。

キャリアの長い人が必ずブチ当たる「転換期の壁」というのがあって、例えばB.B.キングのような大成功したブルースマンでさえ、作品を聴くとコレでかなり悩んだフシが伺えますが、サイクスにはそういった迷いというものがほとんどありません。

ホーンを付けたジャズっぽいサウンドでも、エレキギターを入れたモダンなサウンドでも、まるでそんなの昔からやってたと言わんばかりに豪快に声を張り上げて鍵盤を転がすサイクスを聴くと、本人の素晴らしさはもちろん、ブルースという音楽の強さとかたくましさまで感じてしまいます。あぁ、本当にカッコイイ。




フィール・ライク・ブローイング・マイ・ホーン


【収録曲】
1.Feel Like Blowing My Horn
2.My Hamstring's Poppin'
3.I'm A Nut
4.Blues Will Prank With Your Soul
5.Jubilee Time (alternate)
6.All Days Are Good Days (alternate)
7.Sykes' Gumboogie
8.Rock-A-Bye Birdie
9.Moving Blues
10.Don't Bat Your Eye
11.All Days Are Good Days
12.Eagle Rock Me,Baby
13.Jubilee Time
14.Love The One You're With


はい、カッコいいアルバムを紹介しましょうね。

今日はそんなサイクスの、デビューからおよそ40年後の1970年に録音されたアルバム『フィール・ライク・ブローイング・マイ・ホーン』。

これはですのぅ、戦後60年代ぐらいから良質なブルースのアルバムをリリースし続けているシカゴのデルマーク・レコードが、当時ニューオーリンズに住んでいた、当時64歳のサイクスに「最高のメンバー付けますんでレコーディングしてくださいや」と、お願いして、何とロバート・ジュニア・ロックウッド(g)、デイヴ・マイヤーズ(b)、フレッド・ビロウ(ds)という、当時のシカゴ最高のバック・バンド”ジ・エイシズ”の人脈に、ホーン隊(サックス/クラリネットのオイット・マラード、トランペットにキング・コラックス)を加えた、本当に最高のメンバーを従えて制作されたアルバム。

実はサイクス、50年代初頭にリーガルというレーベルで録音した演奏を60年代にデルマークが取りまとめ、その際にアルバムとするには曲数が足りなくて、レコーディングも行ったという経緯があり、デルマークとは付き合いがありました。

60年代のデルマークには、9弦ギターのビッグ・ジョー・ウィリアムスという人が入り浸っていて、コノ人がブルースマンとしての実力はもちろん、根っからの旅人であったので「戦前に活躍したブルースマンの動向は何でも知っていた」ぐらいの人だったので、サイクスとのレコーディング契約も、かつてセントルイスで付き合いがあったビッグ・ジョーの紹介があったのかも知れません。

さてこの内容なんですが、64歳の大ベテランであるサイクスが、鉄壁のチームワークを誇るモダン・シカゴ・バンド・サウンドと、何かもう長年タッグを組んでやってきたかのような見事に引き締まって、パワフルに歌いまくる中に、バラードやスローブルースでは、それまでにない絶妙な哀愁もじっくりと聴かせる素晴らしい内容。

はい、ルーズヴェルト・サイクスって人は、ブルースある程度聴いてきた人には、その大物ぶりや、B.B.キングをはじめとする戦後にモダン・ブルースに与えた影響のデカさなんかもあって、すっかりおなじみだと思うんですけどね、やっぱりギタリストじゃなくてピアニストってことで、一般の音楽好きへの知名度ってのはぶっちゃけ不当に低いと思います。

実際にこの記事読んでる人の中にも、ルーズヴェルト・サイクスって人いまいちよくわかんないという方はいらっしゃると思いますが、そんなギター好きの方、このアルバムはロバート・ジュニア・ロックウッドのプレイが凄いですよ。

「私は元々サイドマン気質だし、本質的にやっぱりサイドマンだと思ってるよ。バックで考えてプレイするのが好きなんだ」

と日頃から言っていたロックウッドの、看板に偽りなしのギタリストとしての凄さが、恐ろしく締まったバッキング、歌とピアノに自在に寄り添うオブリガード、そして言いたいことを過不足なくピシャッと表現して、終わったらサッとバッキングに戻る完璧なソロと3拍子揃ったプレイにビシバシ凝縮されていて、これはもうバンドやるギター弾きにとっては聴くしかない内容だなとアタシ思います。

もちろんそんなロックウッドの好演も、サイクスの揺るぎない存在感あってこそ。1曲目の豪快なシャッフルナンバーから、声の張りとピアノのキレがもう凄い凄い(!)


かと思えばグッとテンポを押さえたスロー・ブルースの『My Hamstring's Poppin' 』『Blues Will Prank With Your Soul』『All Days Are Good Days 』 での都会的な味わいに滲む哀愁、原点のブギ・ウギを斬新に聴かせる『I'm A Nut 』『Love The One You're With 』、ノリの良さで言えばコチラもなジャンピン・ジャイヴな『Sykes' Gumboogie 』、バラードはバラードでも、ニューオーリンズ・スタイルのほんわかした『Rock-A-Bye Birdie』と、楽曲は攻めに攻めた多彩っぷりで、この気迫からは「もうオレもトシだから落ち着いてやりたいね」なんていう守りの姿勢は一切感じさせません。

特にスローバラードの、シャウトから滲み出る哀愁がたまんないです。長い長いブルース人生が凝縮されたからこその声の深み、これこれ、これがブルースなんですよねぇ・・・。






”ルーズヴェルト・サイクス”関連記事


”ブルース入門編 〜初心者のための優しいブルース講座〜”





『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 23:08| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする