2018年07月21日

ポール・チェンバース チェンバース・ミュージック

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ポール・チェンバース/チェンバース・ミュージック

(JAZZ WEST/ユニバーサル)



コルトレーンという人は、元々「人と違ったことをやらねば」「もっと新しいサウンドを出さねば」ということを若い頃から考えておった人で、色んなリーダーの下でサイドマンとして演奏しながら、30歳を過ぎてようやくソロ・デビュー、33になって念願の自分のバンドを結成することが出来たんです。

熱狂的なコルトレーン信者のアタシは、まず最初に演奏がフリーフォームに突入した60年代半ば以降のコルトレーンを聴いて「おぉぉ!ジャズなのにこの人すげーパンクだ!!」と衝撃を受けて、まずはその時代のコルトレーンを集中的に聴き、そこからさかのぼって「オーソドックスなジャズの時代のコルトレーン」を聴くようになりました。

特に最初期と呼ばれる1950年代半ば、まだ20代だった頃のコルトレーンの演奏ってどうなんだろう、フツー過ぎて刺激が足りないんじゃなかろうかと、ちょっとは不安だったりしたんですが、そんなことは全くの奇遇でありました。

はい、結論から言ってしまえば、若かった頃のコルトレーンのスタイルは、その頃流行りのオーソドックスなジャズをやっています。

真にオリジナルなバンド・サウンドを築き上げた60年代の演奏と比べたら、その演奏自体はまだまだ試行錯誤で、フレーズを聴いても確かに何かを掴もうと懸命にもがいているような感じにも思えます。

ところが、その”もがいてる感じ”が、アタシにはグッときた。

後期コルトレーンの演奏は、常識その他スカしたものを、叫びそのものなハードなブロウとヘヴィなサウンドで粉砕していて実に”パンク”だったんですが、初期のコルトレーンの演奏は、その常識その他スカしたものを、一生懸命壊そうとして、硬質な音と実直な吹きっぷりで壊そうとしている”パンク”ではないか!や、姿勢そのものが、初期も後期もカンケーない、この人はパンクだ。カッコイイ!

と、そこからジャズという音楽をパンクだと思って聴けるようになり、今に至ります。

まーアタシの与太はいいとして、コルトレーンの、その最初期の演奏のカッコ良さでありますよ。

本日ご紹介するのは、そんな最初期の、まだリーダー作とか作る全然前のコルトレーンの演奏が、ワン・ホーンという理想的な編成で堪能出来る一枚をご紹介します。

ポール・チェンバースの『チェンバース・ミュージック』です。

はい、ポール・チェンバースといえば、1950年代モダン・ジャズ、ハード・バップ時代に最も人気だったベーシストであります。19歳でニューヨークに出てすぐにピアニスト、ジョージ・ウォーリントンのバンドに加入しましたが、その安定したリズムと何よりもフツーにボンボンラインを刻んでるだけでも素晴らしくメロディアスなプレイに惚れ込んだマイルス・デイヴィスがメンバーに引き抜き、マイルスのバンドで演奏しながらもブルーノートやプレスティジといったレーベルでレコーディング・セッションがあれば何かと声がかって、今「モダン・ジャズの名盤」と呼ばれるアルバムには、彼のベースが聴ける作品というのの割合が凄く多いという凄い人です。






チェンバース・ミュージック

【パーソネル】
ポール・チェンバース(b)
ジョン・コルトレーン(ts,@ACDE)
ケニー・ドリュー(p)
フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

【収録曲】
1.デクスタリティ
2.ステイブルメイツ
3.イージー・トゥ・ラヴ
4.ヴィジテーション
5.ジョン・ポール・ジョーンズ
6.イーストバウンド

(録音:1956年3月1日か2日)


このアルバムは、21歳のポール・チェンバースが西海岸の小さなレーベル”ジャズ・ウエスト”でレコーディングした初リーダー作です。


メンバーは、当時マイルスのバンドで仲良しになっていたコルトレーンにフィリー・ジョー・ジョーンズ、そして、レコーディングではチェンバースと共演することの多かった、職人ピアニスト、ケニー・ドリュー。

チェンバースのよく歌うベースが中心になり、バッキングにベース・ソロに大活躍しておりますが、これはバンド全体の見事なチームワークが、リラックスしながらも程良い緊張感と渋さを醸していて、難しいことはよくわかんなくても、この時代のジャズの、粋でイナセな雰囲気を、ちょっとムードある場所で楽しみたいだけでも十分におつりが来るほどの、質の良い作品です。


初リーダー作とはいえ、既に熟練を感じさせるチェンバースのプレイをバックに吹くコルトレーンはどうかというと、チャーリー・パーカー作曲の1曲目『デクスタリティ』から、そのソロに独自の味わいが出ておりますね。ややくぐもった、いかにもジャズのテナー・サックスという渋い音でテーマの後、チェンバースのソロがじわりと盛り上げてコルトレーン→ケニー・ドリューのソロという展開ですが、ソロに突入した時のコルトレーン、テーマ部分とはガラッと違う硬質な音で、パワフルに音符を重ねて吹いてます。

あ、これはいいね〜と思って聴いてたら、続いての『ステイプルメイツ』がまた素晴らしいんです。

チェンバースとフィリー・ジョーのリズム隊は、もちろん急速調のナンバーをやらせても、抜群のコンビネーションでサクサクできちゃう実力派ですが、実はこの人達の真骨頂は、こういったミディアムよりちょいと速いぐらいのナンバーで遺憾なく発揮されます。「パシィ!」と心地良く抜けるハイハットのアクセント、「ボンボンボンボン♪」と弾いてるだけなのに、何故か心はウキウキ、体は自然と持って行かれるような、このリズム聴いてるだけで幸せ〜なバッキングに、リラックスしたコルトレーンとドリューのソロ、本人達にとっては「いつもの調子で軽く決めようぜ♪」な感じでやった曲(つうかアルバム全体の実にリラックスした雰囲気がそんな感じ)なんでしょうが、それをこんな感じでビシッとカッコ良くキメちゃえるって、この時代の一流ジャズマン達の練度ってホント凄い。

続いてもゴキゲンなミディアム・テンポで、チェンバースのほろ酔い気分のアルコ(弓弾き)ソロが大々的にフィーチャーされた『イージー・トゥ・ラヴ』はコルトレーンはテーマ部分だけを一瞬吹くだけ、4曲目『ヴィジテーション』では、今度はチェンバースの指弾きのベース・ソロにスポットを当てた編曲でコルトレーンは完全にお休み。

そして5曲目『ジョン・ポール・ジョーンズ』といえば、あの世界的に有名なロックバンドのベーシストで、後にプロデューサーとして大成功する人のことではなくて、コルトレーンとチェンバースとフィリー・ジョーの名前を組み合わせたもの。曲自体はブルースを下敷きにした、聴き覚えありまくりなハード・バップ・ナンバーで、作曲者はコルトレーンとなっておりますので、多分スタジオでのセッションがいい感じの雰囲気だったから、コード進行だけを伝えてその場でシャシャッとやったジャムでしょうね。しかしグッと重心を低くしたテンポの中で、攻めの姿勢を崩さず朗々とロング・ソロを吹くコルトレーン、歌心溢れるソロで雰囲気を更に渋く味わい溢れるものにするチェンバース、ひとつひとつの音に上質なブルース・フィーリングが籠もっているドリューと見事なコントラストで展開するソロの流れにはいつも「くーたまらんねぇ〜」となってしまいます。

ラストはお待ちかねの、軽快に疾走するナンバー『イースト・バウンド』です。

フィリー・ジョーのシンバルが、待ってましたとばかりに景気よくチキチャキとアップテンポを刻んで、一発目がコルトレーンのソロ。早いテンポにちょいと考えて吹いてる感がありますが、指は決してもたついていない、むしろ「当たり前な感じにならないようにするにはどうすればいいんだろうか」という前向きな悩みが曲のほんのりした哀感とマッチしてて良いじゃないですか。続くケニー・ドリューのソロは淀みなく哀愁を振りまいていてコレが完璧。


コルトレーンのソロ、全編通してまだ独自の”突き抜けまくった感”すらないものの、この見事なハード・バップのお手本サウンドの中で、雰囲気を壊すことなく、独自の世界の片鱗を聴かせてくれます。やっぱりいいですね、味があります。味を聴きましょう。


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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 15:49| Comment(0) | 大コルトレーン祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする