2018年07月24日

レッド・ガーランド オール・モーニン・ロング

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レッド・ガーランド/オール・モーニン・ロング
(PRESTIGE/OJC)


レッド・ガーランドといえば、1950年代半ばに結成されたマイルス・デイヴィス・クインテットの初期メンバーであり、その洗練された都会的なフレージングと、かといってヤワにならない、奥底にじんわりにじむ確かなブルース・フィーリングを併せ持つピアニストであります。

「宝石を転がすような」と称された右手の華麗なアドリブに、しっかりとタメを効かせたリズムで和音を放つ左手の組み合わせは


「ただノリに任せるだけじゃなくて、粋で聴かせる曲をやりてぇんだ。分かるか?新しい都会のブルースの事だよ、オレが言ってるのは」


と、常日頃口にして、実際メンバーや共演者への要求も相当にうるさかったマイルスを納得させ、彼が言うところの”新しい都会のブルース”つまり、それまでのワイルドなスピード感に溢れるビ・バップから、タメとコクと洗練で、聴衆をノせながらしっかりと聴かせるハード・バップの、ひとつの雛形を作り上げました。


そして、ガーランドのそんな洗練されたピアノは、同じ時期に同じバンドで音楽を作っていたコルトレーンにも、大きくて豊かなイマジネーションを与えることとなり、ガーランドとコルトレーンは、Prestigeレーベルにおいて、コルトレーンのソロ・デビュー前と後、更にコルトレーンがマイルス・バンドを脱退してからも、良きチームメイト同士として素晴らしい作品を多く作り上げてゆくのです。

本日は、そんなガーランドとコルトレーンの”良い仕事”の中から『オール・モーニン・ロング』というアルバムを皆さんにご紹介しましょう。

マイルス・バンドがブレイクしてからというもの、ガーランドはソロ・アーティストとして大忙しでありましたが、Prestigeからは専属のハウス・ピアニスト(つまり、Prestigeが誰かのアルバムを作る時にレーベルが用意するバック・ミュージシャン、今で言うところのスタジオ・ミュージシャンですな)としても大活躍しておりました。

コルトレーンも、麻薬絡みの色々とダメなアレでマイルスのバンドをクビになりましたが、セロニアス・モンクに拾われてすっかり麻薬を絶ち、音楽的にも飛躍的な成長をしていると知ったPrestigeからまたぞろ声がかかり、

「ジョン、ちょいとレコーディングしないか?カネなら前金で払うよ」(注:払わない)

「ジョン、ガーランドのレコーディングをするんだが、ホーンがいないんだ。来ないか?え、カネ?もちろん前のレコーディングの時のも併せて払うさ」(注:スタジオ代とかメシ代とか差し入れのビール代とかもろもろ引かれた明細を渡す、結局払わない)

と、何かとガーランドと一緒にPrestigeのスタジオに顔を出しておりました。

Prestigeが、ガーランドの”マラソン・セッション”つまり、マイルスの時と同様『2日間でアルバム4枚分に相当するレコーディング』を行ったのが、1957年11月15日と12月23日のことであります。

マイルスの時は、ミュージシャンへの扱いがロクなもんじゃないPrestigeとの契約をさっさと終わらせたかったマイルスが

「あとアルバム何枚分契約残ってんのよ、あ?4枚分だぁ?じゃあちゃっちゃと4枚分レコーディングしてやっからスタジオ押さえろや」

と凄んだために行われましたが、ガーランドのマラソン・セッションは特にレーベルとモメたとかいう話は聞かないんで、ピアノ・トリオものでいい感じに稼いでくれていたガーランドの、ホーン入りセッションを録り溜めしておこうとPrestige側が提案し、ガーランドが「いいっすよ」と応じたものでしょうね、ガーランドいいやつですね。




All Mornin Long

【パーソネル】

レッド・ガーランド(p)
ドナルド・バード(tp)
ジョン・コルトレーン(ts)
ジョージ・ジョイナー(b)
アート・テイラー(ds)

【収録曲】
1.オール・モーニン・ロング
2.誰も奪えぬこの想い
3.アワ・デライト

(録音:1957年11月15日)


ガーランドの”マラソン・セッション”4枚は、どれもガーランドの小粋なカッコ良さと、コルトレーンのやる気にみなぎったアツいブロウのコントラストが絶妙にカッコ良く、かつ50年代ジャズ(ハードバップ)の良心のような、雰囲気と味わいがもう本当に素晴らしいんですよ。

どれもオススメなんですが、愛聴の頻度で言えばアタシはコレ、ガーランドの”洗練された都会のブルース”が、それぞれのソロをたっぷり取った長い演奏でじっくり楽しめる『オール・モーニン・ロング』。


まずタイトル曲の1曲目が、まんまブルース形式で、コレが最高ですねぇ。ミディアム・スローなテンポで収録時間は何と20分ですから、どんだけダラダラな曲なのかと思ったら、コレが実に飽きずに聴かせる。ソリッドな音に時折ふくよかさを交えて、深い味わいと煌めきに満ち溢れたコルトレーンのソロ、味わいといえばややハスキーなトーンで、タイトル通りに「徹夜のどんちゃん騒ぎ明けのブルース」を見事メロディアスに表現しきっているドナルド・バードも大健闘です。

そして、7分を過ぎたところでおもむろに出て来るガーランドのソロは、もう名人芸。終始音数を抑えた紳士的なアドリブなんですが、瞬間的に左手の和音を「ガガガガ」と細かくブチ込んだり、右手の繰り返しフレーズを宙に浮かせて転がしたり、その抑制の中でしっかりと”盛り上がり”を作るんです、しかもソロ中に何度も「ここで来てほしい!」というところでしっかりと。

ガーランドという人は、革新的な何か派手なスタイルを打ち立てた訳じゃないけど、こういう”間”を活かした大人の余裕みたいなプレイでとことん聴かせて「あぁいいなぁ・・・」と酔わせてくれる人なんです。あと「ジャズってさ、こういうところがたまんないよねぇ」みたいなのが、そのそこはかとなくカッコいいプレイにギュッと凝縮されてるんですねぇ。

で、2曲目『誰も奪えぬこの想い』は、いわゆるスタンダード・ナンバーです。

曲調は落ち着いた気品ある感じでありますね、オープニングのテーマを朗々と吹き上げるバードの後にすかさず入ってきてバリバリの覇気に溢れたパワフルなソロを展開するコルトレーン、そしてやっぱりハスキーで勢いより味わいのバードときてガーランド、先程のブルースでは抑えた中に盛り上がりを見せたソロですが、この曲では右手のシングル・トーンが鍵盤を美しく高速で転がります。

”刻み職人”のアート・テイラーが淡々と叩く「1,2,3,4」の規則正しいシンバルをしっかり聴きながら、その倍テンポで右手を走らせて、きっちり立ち止まって曲調に合わせたエレガントなフレーズを散りばめ、また一瞬加速してさらに美しいテンポ通りのフレーズを紡ぐソロの中で魅せる、これはもうドラマであります。

ソロの後はドナルド・バードが再び吹き上げるテーマの後、ジョージ・ジョイナーのしっかりと”木”の音を鳴り響かせる、短く硬派なベース・ソロ、再びテーマで終了。

ラストの「アワ・デライト」もスタンダード、こちらは1946年にディジー・ガレスピーが、1947年にファッツ・ナヴァロ(トランペット)をフィーチャーしたタッド・ダメロンの演奏が口火になり、ロイ・ヘインズ、ビル・エヴァンス、キャノンボール・アダレイなど、有名ミュージシャン達がこぞって演奏したゴキゲンなナンバーで、ガーランド達にしてみれば「ライヴでのおなじみ」だったんでしょう。

慣れた感じの軽快なテンポで、今度はバンド全員がノリを統一した感があり、こういった「ミディアムより少し早いテンポ」では、抜群の体感速度を感じさせる、コルトレーンの快調な吹きまくり、パワフルにヒットするバードのトランペットでのアドリブ、軽妙に疾走しながら、どこかでやっぱり大人の色気に溢れたガーランド、ブルースから徐々にテンポを上げて最後はサクッと終わるこのアルバム構成も完璧であります。




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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』


サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 19:10| Comment(0) | 大コルトレーン祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする