2018年11月03日

リトル・フィート ウェイティング・フォー・コロンブス

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リトル・フィート/ウェイティング・フォー・コロンブス
(wea)


1970年代のアメリカ、そのルーツともいえるあらゆる音楽を吸収して、心地良く乾いたギターやオルガンのサウンドと、腰にクるタイトなグルーヴで体現しているバンド、それがリトル・フィートです。


や「アメリカ」と聞いて連想するものは、人それぞれ違うでしょうが、なんつうかアレですよ。日本の公道じゃまず走れんようなでっかいトレーラとか、どこまで行ってもひたすら道路な荒野のハイウェイとか、やたら腕の太いおっちゃんが朝から肉食ってバドワイザーを浴びるように呑んでるとか、ハーレーダヴィッドソンをボコボコ言わせて疾走しているワイルドな40代以上とか、ガレージには56年型のキャデラックとか、ジョーイのカフェにあるジュークボックスとピンボール台とか、そういうのですな。

うん、自分でも何だかよーわからんくなってきましたが、とにかくアメリカの「都会じゃない場所」の、おっさんのトレーラーが爆音で流してるラジオだったり、ドライブインのジュークボックスがやたらとガンガン鳴らしてるのだったりする音楽。


それがリトル・フィートです。

何を言いたいかというと

「リトル・フィートってほんっとアメリカのグッとくるとこを集めて固めて乾かして酒に浸したような音楽だよな〜」

ってことです。

これをものすごーく専門的に、味気無く言っちゃうと

リトル・フィートの音楽は、ブルースやカントリー、ニューオーリンズ・ソウルにケイジャン、テックス・メックス、ファンクなどの良質なアメリカン・ルーツ・ミュージックを全て取り込み、それらに奇跡的な統一性を持たせたロックへと見事に昇華させている。それはつまりリーダーであるローウェル・ジョージの音楽的センス、そして彼の弾くフィーリング豊かなスライドギターに依るところが非常に大きい。

ということになるんでしょうけど、それだけじゃない”味”の部分、つまり

「うわぁ〜、何だかよくわかんないけどこのバンドの演奏聴くと胸が熱くなる、心が豊かになれるー!」

ってのが、このバンドの音楽の一番の特徴なんだと、アタシは思っております。


リトル・フィートの音楽は、いわゆるサザン・ロック、そしてルイジアナ/ニューオーリンズのブルースやR&Bの影響を強く受けた”スワンプ・ロック”という種類のロックになります。

サザン・ロックといえばアタシは高校時代から興味があって、オールマン・ブラザーズとレイナード・スキナードは好きでよく聴いてましたが、リトル・フィートというバンドがいて、それがこんなにもカッコイイということは全く知らなかったんです。

ハタチの頃、都内のレコード屋で修行をしておりましたが、その時ブルースとかジャズだけじゃなくて、60年代、70年代のロックも色々と幅広く教えてくれる先輩やお客さん方がいっぱいいて、リトル・フィートはその時覚えました。

つうのも最初はジャケットです。

レジに立ってると、そんなに派手ではないものの、やや年配の方がちょこちょこ買っていくCDがありまして


「ブランコに乗ってる一つ目のぬりかべみたいなヤツ」



「ハンモックに乗っている笑顔のトマト」

です。

で、この”妙なものがブランコとかハンモックに乗っているジャケット”が、何かリトル・フィートという同じバンドのものであるということに気付いた。

レコードやCDのジャケットっていうのは、大体そのバンドなりアーティストなりがどんな音楽をやっているかが想像出来るものが多いですよね。


でも、この共通する妙ちきりんなジャケットのバンドが、一体どんな音楽を演奏する連中だか、全く想像が出来ませんでしたから余計に気になります。

意を決して先輩に

「あの〜、リトル・フィートってのはどんななんすか?ジャケット見る限り何かサイケかプログレみたいな・・・」

と訊いたのですが、また例によって

「おいおい、おめーはヨぉ〜、リトル・フィートも知らねェのかよォ〜」

と、若干多摩弁で呆れられて、棚から持ってきた中古CD、はい”ハンモックトマト”のやつを再生してもらいました。



Waiting for Columbus

【収録曲】
1.Join The Band
2.Fat Man In The Bathtub
3.All That You Dream
4.Oh Atlanta
5.Old Folks Boogie
6.Time Loves A Hero
7.Day Or Night
8.Mercenary Territory
9.Spanish Moon
10.Dixie Chicken
11.Tripe Face Boogie
12.Rocket In My Pocket
13.Willin'
14.Sailin' Shoes
15.Feats Don't Fail Me Now



大熱狂のオーディエンスの歓声、そしてMCでの盛り上がりからおもむろにタタタタ〜と始まる一曲目『Join The Band』が始まりました。

最初は「ほぉ〜、サザンロックみたいだね〜」ぐらいに思ってましたが、ユル〜く和やかに1番を歌った後にスライドギターが鳴った瞬間

「!!!!」

となりました。

これはサイケとかプログレじゃないし、むしろそういったアンダーグラウンドなロックとはまるで逆の穏やかなベクトルの健康的なロックだけど、ちょっとフツーの神経の人が弾くスライドじゃないし、何かこう、ブルースの連中みたいにヤバさを隠せない類のやつだ、うわぁすげーカッコイイ、つうかオールマン・ブラザーズの大好きなアルバムで、あのフィルモア・ウエストのライヴ盤があるけど、雰囲気とかテンションとか、スライドギターがいい感じに鳴ってる感じはあのアルバムと凄く似てるけど、アレとはもっと違って、なんつーかこっちの方がブラック・ミュージックっぽいのを感じる。てか、リトル・フィートって良い!

ローウェル・ジョージの「天才」と言われたスライド・プレイは、確かにその音色や肉声のように豊かなニュアンスが衝撃的ではありますが、よく聴くと、いや、よく聴かなくても、そのソウルやブルースやカントリー、ファンクといった雑多な音楽が混ざり合ったバラエティ豊かな楽曲が繰り出すありとあらゆるリズムに、ピッタリはまってるから凄いんですよ。

つまり”凄いギター”だけど、それがスタンドプレイになってなくて、しっかりと曲を聴かせるためのギター・ソロなんです。

で、このアルバムはそんなローウェル・ジョージが在籍した時代の集大成ともいえるライヴ・アルバム。

1973年にレコード・デビューして、その音楽性の素晴らしさ、バンドの尋常じゃない演奏力の高さは認められながらも、一般セールスがなかなか厳しくて、しかもメンバー内では「ルーツに根差したアメリカン・ロックをやりながら、ファンキーなノリを出していきたい」とするジョージと、ジャズ/フュージョン路線の大人なロックをやりたかった一部メンバーとが主導権を巡って対立。

ジョージは麻薬に走り、1979年に解散を発表した直後に亡くなってしまいますが、このアルバムはその前年の1978年にリリースしたライヴ・アルバムです。


方向性を巡る対立はあったものの、バンド内の空気は終始心地良いテンションに満ち溢れております。





『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 18:55| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする