2018年11月15日

ジェリー・リー・ルイス Jerry Lee Lewis

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ジェリー・リー・ルイス/Jerry Lee Lewis
(SUN RECORDS/SOLID)

さて、とっても素敵なサン・レコーズのロゴ入りの靴を紹介していたら、何だか気分が盛り上がってきて、サン・レコーズのアーティストをここでもういっちょ皆さんにご紹介してみたくなってきました。

サン・レコーズ、サン・レコーズとお前は言っとるが、どんなレーベルなんだ?そんなにいいのか?と、お思いの方もいらっしゃるかと思いますので、ちょいとおさらいをしましょうね。

まず、サン・レコーズというレコード会社は、アメリカの戦後の音楽を語るには絶対にハズせない、ロックンロールとロカビリーという2つの音楽を、その創成期に中心となってたくさん送り出したすんごいレーベルであります。

エルヴィス・プレスリー、ジョニー・キャッシュ兄貴、カール・パーキンス、ロイ・オービソン、ルーファス・トーマスなどなど、ロックンロールにロカビリーにカントリー、そしてR&Bまでを代表する大物達を次々見出し、ヒットチャートの中心都市であったニューヨークやシカゴ、或いはLAといった大都会とは遠く離れた南部の中堅都市メンフィスという場所から、彼らのレコードを全米ヒットチャートに次々送り込んで、50年代の流行の最先端の一角を担ったというから、それはもう凄いもんです。

日本でいえば、まぁ熊本市ぐらいのところにある地方のインディーズレーベルが、オリコン上位に入るような曲を次々発売するようなもんであります。

何でそんな田舎のレコード会社が全米ヒットするようなレコードを次々と世に出す事が出来たのか?

それは、当時の社会常識、特に白人社会というのは今よりもずっと保守的で、特にヒットチャートに上るような音楽は、オーケストラをバックにして、キチンと正装して聴くようなものでなければならないといった雰囲気があったんです。

そんな所に、ワイルドで粗削り(その当時の感覚でいえば)性的なものを思わせるようないかがわしい歌詞やサウンド、またはパフォーマンスするような、いわゆる不良な連中を送り込んだ訳ですから、たとえばエルヴィス・プレスリーの腰の動きがワイセツだと、テレビでは下半身を映さないカメラワークで放送されたとか、そういった賛否両論巻き込んだ衝撃を、白人社会の価値観に与えた訳なんですな。

で、南部の50年代の若い白人ミュージシャン達が、何故そんなぶっ飛んだ音楽が出来たのか?ということですが、これには南部で”隣近所”としてコッソリ接触があったブラック・ミュージックからの影響が大きかった訳です。

エルヴィスやジョニー・キャッシュ兄貴が、少年時代からブルースやゴスペルなどの黒人音楽が大好きだったように、その頃のちょっとやんちゃな男の子達は、感情をそのまんまぶつけるような(卑猥な言葉や動きも含めて)ブルースに夢中になっておりました。

けれども、実は都会よりもっともっと保守的な南部の白人社会。「ブルースなんてあんな悪魔の音楽を聴いてたら地獄に堕ちるぞ!」と、親達は禁止します。けど、禁止されてもこっそりと黒人達が集まる店に生演奏を聴きに行って、夜中にものすごーく小さな音でラジオを聴いたりして、ブルースを覚える訳なんです。

で、本日ご紹介するジェリー・リー・ルイスです。

ジェリー・リー・ルイスは、エルヴィスやチャック・ベリー、リトル・リチャードらと共に「ロックンロールのオリジネーターの一人」と呼ばれるぐらいの人で、この人もまた小さい頃から黒人音楽に親しんだ南部の白人不良少年であります。

南部ルイジアナ州の貧困家庭に生まれた彼は、小学生ぐらいの年齢の頃から年上のイトコ連中と共に、1930年代当時流行っていた黒人のブギウギピアノに熱狂して、ピアノが弾けるようになってもクラシックはやらずブギウギやブルースばっかりするもんだから

「この子はキレやすいしブルースばっかり弾くし、多分ロクなもんにならないだろうから今のうちからちゃんとさせないと・・・」

と、心配した母親に、厳格なミッション・スクールに入学させられ、そこの聖歌隊に入らされます。

そこで大人しく讃美歌の伴奏ピアノを弾くようになるかと思ったら、何と白人教会で思いっきりブギウギ・アレンジにしたゴスペルをやっちゃったもんだから、これはもう大問題に。

「君がそうやって悪魔の音楽をやるっていうんならもう学校をやめてもらう!」

と、学校も最大限の圧力をかけますが

「いいっすよ、でもアンタらがオレを追い出す音楽って言うけど、ソイツと教会でやる音楽って何が違うんすかね。同じ音楽でも神様のための音楽だったら良くてオレみたいに悪魔のためにやってる音楽はダメって、ハハ、どれも一緒なのにね」

と、一切反省もせず言い放つもんだから、学校はあっさりと退学になります。

さぁそこからはジェリー・リーは水を得た魚、油を得たエビフライとばかりに南部のあちこちの酒場の、とりわけいかがわしい店を選んではそこでやりたい放題に飲めや騒げの酔客の罵声に負けないぐらいにワイルドなピアノを鳴り響かせます。同時に女好きと喧嘩っぱやい性格の本領もみるみる発揮。ジェリー・リー・ルイスといえば「クレイジーなピアノを弾くクレイジーな野郎」として、南部一帯で有名になっていきます。

「よっしゃ、コレでオレも有名人だよ。どっかのレコード会社からデビューでもすれば成功とモテモテは間違いないよ」

と、当時有名なカントリー系のレコード会社が色々あったテネシー州ナッシュヴィルにデモテープを持って行きますが

「いやぁ何言ってんだ君、カントリーってさぁ、ギターとかバンジョーとかマンドリンとかフィドルとか、そういう弦楽器でやる音楽なんだよ。ピアノなんて要らないね。で、君どんなピアノを?・・・ああダメダメ、そんな黒人が弾いてるようなブギウギなんてウチの客は聴かないよ」

と、あっさりと追っ払われてしまいます。

ムシャクシャしたから一通り暴れて、また酒場で演奏してナンパして暴れてという生活を2年ぐらいやっておりましたが、ここで運命のサン・レコードと出会います。

当時サン・レコードは出来たばかりの小さなレコード会社でしたが「何かカントリーだけじゃなくて、ブルースが混ざったよーなロッカビリーとかいうのも売り出してるそうだ」という噂を聞き付けたジェリー・リーは

「それならオレのピアノだってウケるんじゃね?今度こそ成功してモテモテは間違いねぇな」

とオーディションを受けに行きます。

生憎そういう”変わった若者”が大好きな社長のサム・フィリップスは不在でしたが、「うん、まぁいいんじゃない?カール・パーキンスのバックのピアニストとして雇ってやるから何曲か録ってきなよ」と、一応録音までは漕ぎ付けました。

「バックのピアニストだって?馬鹿言ってんじゃねぇ、オレはスターになるためにここに来たんだ!」

と憤慨して暴れようかと思ったジェリー・リーでしたが、とりあえずバック・ミュージシャンでも何でも、この会社と関わり続けてさえいれば、そのうち社長とやらが俺様の才能に惚れ込んでソロ・アーティストとして売り出してくれるだろう。と思い直し、暴れはしませんでした。

結局暴れなかったのが良かったようで、エルヴィスがメジャーのRCAに行くか行かないかぐらいのタイミングで、ジェリー・リー・ルイスのソロ・アーティストとしての人気が爆発。エルヴィスもデビュー当時は相当に卑猥だとか暴力的とか言われていたのですが、ジェリー・リーは更にその上を行く過激でモロにエロい歌詞と暴力的なサウンド、そして弾きながら立ち上がり、座っていた椅子を蹴っ飛ばしたり、ピアノの上に立ち上がって踊るなどの、その頃の常識ある大人が触れたら一発発狂ぐらいのレベルのパフォーマンスを繰り広げ、ラジオ局には苦情殺到、若者はいいぞもっとやれの大声援で、音楽やってなきゃチンピラゴロツキ確定のジェリー・リー・ルイスは、1950年代後半には、アメリカを代表する大スターに、本人の目論見通り上り詰めました。

「ロックは不良の音楽」というのは、アタシが10代ぐらいの頃まで、まぁぼちぼち聞かれた言葉で、年配の人達からは「バンドやって不良」とかもままありましたが、そういうイメージを作った最初の人が、もしかしたらジェリー・リー・ルイスなのかも知れませんね。




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【収録曲】
1.冷たくしないで
2.グッドナイト・アイリーン
3.プット・ミー・ダウン
4.イット・オール・ディペンズ
5.ウバンギ・ストンプ
6.クレイジー・アームズ
7.ジャンバラヤ
8.フールズ・ライク・ミー
9.ハイ・スクール・コンフィデンシャル
10.聖者の行進
11.マッチボックス
12.イットル・ビー・ミー

今日ご紹介するアルバムは、そんなジェリー・リー・ルイスの、1958年にリリースされたデビュー・アルバムです。

「元祖ロックンローラー」

「ロックンロール初のワイルドな男」

「ピアノを弾くクレイジー野郎」

と言われたジェリー・リーの本領発揮となる、バキバキのタッチのピアノの破壊力が『プット・ミー・ダウン』『ウバンギ・ストンプ』『ハイスクール・コンフィデンシャル』等のロックンロール・ナンバーで存分に発揮されてもおりますが、『聖者の行進』『グッドナイト・アイリーン』『マッチボックス』などの古典的なジャズやブルース、バラッドナンバーのイカしたカヴァーには、ブラック・ミュージックへの純粋な愛情の深さを感じますし、そのピアノをよくよく聴けば、言われてるように型破りなだけではなくて、ブルースやブギ・ウギ・ピアノの基本的な演奏スタイルはしっかりと押さえており、その音楽性は本当に上質で深いところにあるなぁと、今更ながら感動してしまいます。

「ピアノの入ったロカビリー」としても、ブルースとしても十分以上に楽しませてくれますぞ。


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posted by サウンズパル at 22:32| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする