2018年11月22日

R.L.バーンサイド トゥー・バッド・ジム

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R.L.Burnside/Too Bad Jim
(Fatpossum)


ブルースが大好きで、もうかれこれ30年近くこの音楽に「くー!」とか「うわ〜!」とか言いながら歳を取る毎にドロドロにハマッているんですが、その出会いを思い返してみました。

そもそもの始まりは頭の悪い中学生時代、パンクロックに目覚めて、パンク関係のアルバムをちょこちょこと買っていたその時、親父に「これ聴け」と薦められたブルースのオムニバスの中に入っていたミシシッピ・フレッド・マクダウェルの、攻撃的裏打ちワンコード弾き語りの『シェイク・エム・オン・ダウン』でした。

延々と繰り返させる呪術的なリズムの上を踊り狂うかのように飛び交う声とスライドギターの狂乱を聴いて

「これはブルースじゃなくてアフリカのどっかの部族のやっばい音楽だろー!」

と思ったと同時に

「パンクロックとは全然形式が違うけれども、衝動とか破壊力とかいう点において、これはパンクと一緒だ」

と、何か魂の奥底みたいな部分で確信しちゃったんです。

で、それからいわゆる”渋いブルース”も”オシャレなブルース”もたくさん好きになりました。

不思議な事に嫌いとか苦手なブルースってありません。

でも、ブルースが好きになったアタシは、どこかで究極の何かとして「あの時聴いたフレッド・マクダウェルみたいな、やっばい衝動に溢れかえったやつ」を探しておりました。


で、最初の衝撃から5年後ぐらいに、いきなり「そんな感じのやっばいやつ」が脚光を浴びて、国内で何タイトルもCD化されてリリースされたんです。


いわゆる成功を収めてメジャーになった、アタシでも名前を知ってるような人達じゃなく、クラプトンとかストーンズとか、そういうロックの大物達が褒め称えるレジェンドでもない、ミシシッピの田舎の奥地でそれこそ酒場のようなジュークジョイントで地元の人達だけを相手にしているような、完全ローカルなブルースマン達の、洗練とは全くかけ離れた、ただひたすらに荒々しくて攻撃的なブルース。

そのレーベル”ファットポッサム”から出されるラインナップは、どれも知らない名前ばかりでしたが総じてどれも強烈で、長年求めていたものが理想のいびつさでアタシの心に響きました。

その中で最も”キョーレツ”を感じたのがR.L.バーンサイドという人の『Too Bad Jim』というアルバムでありました。

そう、1曲目があのフレッド・マクダウェルが歌ってた「Shake E'm On Down」だったんです。

しかも、ほぼ似たようなアレンジのワン・コード反復で、こっちはエレキギター×2とベースとドラムスというバンド形式で、何というか純粋な破壊力みたいなものが原曲よりも増幅されていて、声質の全く違う地鳴りのような低いR.L.のヴォーカルでドロドロに(!)

もうね「うはぁ!」です、うはぁ!!

R.L.バーンサイドは、90年に公開されたロバート・パーマー監督の映画『ディープ・ブルース』への出演で話題になり、更に当時人気のガレージバンド、ジョン・スペンサー&ブルース・エクスプローションのヴォーカルである(イカレ野郎)ジョン・スペンサーが「このオッサンはやばいぜ!」と大リスペクトしてて、作品やライヴでも共演、それがきっかけで刺激を求めていた新しい世代のロックファン(他にいい言い方ないもんか)の間で「おい、ブルースってやべぇな、オレは渋い音楽だとばっかり思ってたけど全然イカレてるじゃねーか」と注目を集め、ドカーンと世に出ました。

それでもって地元ミシシッピで92年に設立されたレーベル”ファットポッサム”が

「おーおー、R.L.もレコーディングするし、何ならおんなじぐらいヤバいブルースのおっさん達なら地元にいっぱいいるよ、リリースしてやるよ」

と、リリースした一連のブルース・シリーズが一部でバカウケして、ブルースという音楽への認識も「これはパンクだ」となった訳なんです。



Too Bad Jim

【収録曲】
1.Shake 'Em On Down
2.When My First Wife Left Me
3.Short-Haired Woman
4.Old Black Mattie
5.Fireman Ring The Bell
6.Peaches
7.Miss Glory B.
8.44 Pistol
9.Death Bell Blues
10.Goin' Down South


R.L.バーンサイドは、実は全くの無名からジョン・スペンサー効果でブレイクした人じゃなくて、60年代にレコードデビューを果たしたり、一度はシカゴに上ってたりするんですが、その時はまぁドロドロのディープサウス流儀のブルースはあまりウケなくて、地元ミシシッピに戻って農業とかトラックの運転手とかをやりながら、週末はジュークジョイントやパーティーでブルースをやっておった訳なんです。


彼の住んでいた所は、ミシシッピ北部の昼・カントリーという地区でありまして、ここは有名になったデルタの流れを汲みつつも、独自の土着的なスタイルを持ったブルースが戦後も生きていた地域です。

実はこの地域を代表するブルースマンというのが、ミシシッピ・フレッド・マクダウェルでありまして、そう、R.L.は若い頃にギターの手ほどきをフレッド・マクダウェルから直接受けたんであります。

なので『Shake Em On Down』は得意中の得意だし、マクダウェル直径の反復アフタービートだし、アタシの胸の野性の部分に直接ガンゴン響いた訳なんですね〜♪

それはさておき、1曲目だけじゃなくてこのアルバム、全体がとっても強烈で凶暴です。

イケイケのワンコード反復ビートはもちろん、ジョン・リー・フッカーばりのドロドロのスローブルースも、都会のそれとは一味も二味も違う、むせるような味わいで、ギャンギャンに歪んだギターが大暴れしております。

スライドでリードを弾くR.L.を支えているのは”オレの白人の息子”と呼ばれ信頼されているサイドギターのケニー・ブラウン。

この人は地元ミシシッピで、母親にギター買ってもらってボーイスカウトとかで弾いてたんだけど、白人の”良い子の音楽”がどうにも肌に合わず「ギター面白くねぇな、やめようかな」と思ってた時に、近所に黒人一家が引っ越してきてそこでブルースの弾き方を教えてもらってすっかりブルースに憑りつかれたという経歴の持ち主で、R.L.との付き合いはこの時点で既に20年を超えるものだそうで、野放図に暴れるバーンサイドにピッタリ寄り添っておんなじように暴れております。

ベースのデュエイン・バーンサイドはR.L.の息子の一人で、この人はヴォーカル、ギタリストとしてもソロで活躍しておりますが、ゴリゴリした音で粗く刻まれるアフタービートは親父譲りのコテコテのグルーヴで攻めてきます。で、ドラムスのカルヴィン・ジョンソンという人は何者かよく分からない人ですが、よく分からないなりにドラムはかなり”雑”です。

曲の途中でリズムがドカーンとひっくり返ったり、オカズの入れ方がかなりバサバサしてるから、もしかしたら専業のドラマーじゃないのかも知れませんが、でもこんなバサバサしているビートにはしっかりとバンド・サウンドに合った泥臭いグルーヴが乗ってるし、このカチッと決まらない感じが、都会のブルースとは一味も二味も違う(2回目)ディープ・サウスのローカルならではのタフさを感じさせるたまんねぇ味になってるんです。つまりはそう、洗練とかクソ食らえと。

とにかくブルースはパンクです。嘘だと思うんならこれ聴いてごらんなさいと、胸を張ってオススメできる90年代ブルースのこれは傑作であります。

しかしR.L.のギターの音、いわゆる今ドキのロック系のギターみたいな、エフェクターで効果的に歪ませた音よりも、全然歪んでないアンプ直の音のはずなのに、何でこんなに歪んでるように聞こえるんだろう?ほんと不思議だなぁと思う暇なく脳髄をグシャグシャにされちまいます。













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posted by サウンズパル at 21:39| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする