2018年11月25日

ジョー・ヒル・ルイス ザ・ビ・バップ・ボーイ

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Joe Hill Louis/The Be-Bop Boy
(Bear Foot Family)



前回のR.L.バーンサイド『Too Bad jim』を紹介した折、アタシの長年の持論であります「ブルースはパンク」という言葉をくっつけてSNSに投稿しましたら、意外にもたくさんの方々から好意的な反応を頂きました。

この自説を唱える事は、昔はなかなかに勇気の要ることだったのですが、90年代以降、それこそR.L.バーンサイドらファットポッサム勢のプリミティヴなブルースが、サイケやガレージなどのロウファイな音楽を好む当時10代20代の若いロックファンが、ブルースの持つ根源的な衝動というか、そういうものを素直にカッコイイと感じてCDやLPを手に取るようになってから、素直に「あぁそれもありかもね」と、聞いてもらえるようになったと思います。

で、本日もその「ブルースってパンクだよね」ということを絡めながら、ゴキゲンなブルースを皆さんに紹介いたしましょう。

はい、ドン!

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素敵ですね、カッコイイですね。この人はジョー・ヒル・ルイスという人です。

ギターとドラムとハーモニカを同時に演奏する、いわゆる”ワンマン・バンド・スタイル”で、ロッキンなブギを中心に演奏し、1950年代のメンフィスで大人気だった人なんです。

そもそもワンマン・バンドってのが

「どーもこー自分一人でギター弾きながら歌うってのは、パーッと景気いい感じがしないなー。そうだ、じゃあハーモニカも吹いちゃえ、あ、ついでにドラムも叩けばいいんじゃね?」

という発想からしてパンクなんですよ。なかったら自分で作ればいい、というDo It Yourselfの精神ですな。


そもそも、メンフィスという土地が、戦前の昔からそういう気質のある土地でありまして、南部の中でも鉄道の中継地として各地から多くの人が集まって、何だかワイワイした派手な娯楽を欲しがる客に合わせて独自のバンド文化が発達しておりました。

で「楽器がないなら作ればいい」の発想で、日用品で作った楽器でぶんちゃかやるジャグ・バンドというスタイルが生まれた場所でもありまして、つまりメンフィスっていう土地の”派手好き、賑やか好き”の気質は戦後もしっかりと土地に根付いておった。

だから”全部の楽器を一人でやる”というワンマン・バンドというスタイルそのものが、もしかしたらメンフィスっ子の気質を体現したものであるのかも知れません。

ジョー・ヒル・ルイスは1921年、テネシー州フロッギー・ボトムという小さな街に生まれましたが、近くのメンフィスには幼少期から頻繁に通い、そこのストリートで演奏しているブルースマンやジャグバンドの演奏を見ているうちに、いつの間にか自分もそうなってしまった人です。

彼が成人に達する頃には、路上で演奏される音楽も徐々にのどかなカントリー調のものから、ワイルドなブギビートのものへと進化してゆく頃で、あとエレキギターという文明の利器が使われるようになった時代です。

ジョー・ヒルは、「電源さえどっかからかっぱらってくれば、屋外でもデカい音が出せる(条例?そんなもんはアメリカの犯罪首都と呼ばれてたメンフィスにはありませんよ)エレキギターを武器に、あっという間にストリートの人気者になったんですね。

そう、この人の音楽、特に最高にノリノリなブギを聴けば、心の奥底から訳のわからん元気がムクムクと湧いてくるんです。ザラッとしたギターの音も、ドカッと鳴るドラム(特にバスドラ)の音も、あとあっけらかんとした抜けのいい声ももう最高。アタシはよく「ブルースとは何ぞ」と深刻に考えてしまうんですが、いやぁもうこの人のブギに身を任せたら「んなこたぁどーでもいいんだよ」と、深刻に程良い諦めが付いてしまいます。うん、良いですねぇ〜。



BE-BOP BOY

【収録曲】
1.She Treats Me Mean And Evil
2.Dorothy Mae
3.Sweetest Gal In Town
4.Keep Your Arms Around Me
5.Got A New Woman
6.I'm A Poor Boy
7.In The Mood
8.West Winds Are Blowing
9.Little Walter's Boogie(Take1)
10.We All Got To Go Sometime
11.We All Gotta Go Sometime(Take3)
12.Little Walter's Boogie(Take2)
13.Tiger Man(Demo)
14.44 Blues
15.My Love Has Gone(Take1)
16.Mistreatin' Boogie
17.My Love Has Gone(Take3)
18.Worry You Off My Mind
19.Reap What You Sow
20.Walter's Instrumental
21.Hydramatic Woman
22.Tiger Man
23.Keep Your Arms Around Me(Make My Love Stay Warm)
24.She Comes To See Me Sometime
25.We All Gotta Go Sometime(Take2)
26.Shine Boy


路上でブイブイ言わせていたジョー・ヒルを「おい、あのガキガキいかしてるぞ」と目を付けたのが、メンフィスといえばのサン・レコーズの総帥、サム・フィリップスでありました。

このアルバム『BE-BOP BOY』は、1952年と53年にサン・レコーズのスタジオでドカッとレコーディングされたものをCDとしてまとめたヤツなんです。えぇ、リアルタイムで発売された曲は、この26曲の中からたったの4曲(しかも2曲はサン・レコーズじゃなくて音源を売り飛ばしたチェッカーから出された)だったんで、CD化された際は「ジョー・ヒル・ルイスの未発表音源がまとまった形で聴けるぞー!」と、一部でちょっとだけ話題になったやつです。


内容ですが、全26曲入ってるトラックは

・ジョー・ヒル・ルイスがメインの演奏
・ハーモニカのビッグ・ウォルター・ホートンがメインの演奏
・ピアニストのモーズ・ヴィンソンがメインの演奏

が、23曲

ほいでもって何故かジョー・ヒルが参加してないセッションのものが2曲入ってたりするんですが、録音された演奏の質感はいずれもこの時代(1950年代前半)のメンフィス・サウンドの典型といえる、タフでワイルドなロッキンブルースてんこ盛りで、まずは優れたメンフィス・ブルースのオムニバスとして楽しめます。

こんなこと書くと「えぇ〜、もっとジョー・ヒル・ルイス楽しみたいぞ」と思われる方もいらっしゃると思いますが、アタシはこのアルバム、ジョー・ヒル・ルイスを聴いたことない人に最初に聴いて欲しい、彼の代表作だと思うんですよ。

だってワンマンバンドでドコスカ言ってるジョー・ヒルも、他のメンバーとガッツリ呼吸の合ったカッコイイ演奏も聴けるし、ジョー・ヒルのトンガッたエレキをバックに、アンプにぶっこんだブ厚い音のビッグ・ウォルターのハープの醍醐味も贅沢に楽しめるし、何よりアタシにとってはコレで初めて知ったモーズ・ヴィンソンのヤクザなブギウギピアノが、もうたまらんカッコ良かったですから、つまり1枚で3つぐらいオイシイ、かなりお得なアルバムであり、アルバム全体の雰囲気から「エレキギター使った最初期のブルースバンドのパンクなヤバさ」が、本当に目一杯楽しめますんで、はい。




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posted by サウンズパル at 13:59| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする