2018年12月30日

エリック・ドルフィー ミュージカル・プロフェット〜ジ・エクスパンデッド1963ニューヨーク・スタジオ・セッションズ

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エリック・ドルフィー/ミュージカル・プロフェット ジ・エクスパンデッド1963ニューヨーク・スタジオ・セッションズ
(Resonance)


むふふ

むふふふふ・・・

あ、すいません。皆さんお久しぶりです。


いやはや年末ですなぁ、あれこれ無駄に忙しくてもうアレですね、やんなっちゃいますよね。

というわけでむふふ

むふふふふ・・・・


あー、ついに入手しましたよ、入手しちゃいましたよ噂の話題作。

そう、エリック・ドルフィーの未発表音源入り3枚組『ミュージカル・プロフェット ジ・エクスパンデッド1963ニューヨーク・スタジオ・セッションズ』。


まず最初にねー、このブログを見てる全国の子供達に言っとくねー

あのね

サンタさんはいます

はい、ツチノコも雪男も天狗もいます!

うん、アタシがジャズにハマるきっかけとなった素晴らしいアーティスト、エリック・ドルフィーの未発表音源、これは「ドルフィーは見たら買う」をハタチの頃からモットーにしてきたアタシにとってはもう絶対に買わなきゃいけないブツだったんです。

でも値段が¥5000近くする(!!)

うっそぉ〜、そんなの毎月¥2000ぐらいのCDを1枚買えるか買えないかの超極貧生活を送っているアタシには無理無理!って思ってサンタさんに

「エリック・ドルフィーのミュージカル・プロフェット ジ・エクスパンデッド1963ニューヨーク・スタジオ・セッションズが欲しいです。いい子にしますんでよろしくお願いします」

とお願いしたら、何と12月25日のクリスマスの日に、アタシの机の上に置いてあったんですよ。


という訳で子供達、サンタさんはいるしツチノコもいるし雪男も天狗もいます。


じゃあエリック・ドルフィーの話をしましょうね。

エリック・ドルフィーという人は、1960年代前夜、ちょうどジャズという音楽が成熟を極め「さて、これから進化して行くにはよほどのことをせにゃあならんぞ」って時にシーンに登場してきました。

ジャズっていう音楽は、皆さんもご存じの通り、戦前から戦後50年代までは数ある大衆音楽の中でもっともメジャーなものでありました。

「ジャズはオシャレ」っていうイメージが何となくあるかと思いますが、実際その通りで、この時代までジャズっていう音楽は最高に贅沢なエンターテイメントであり、流行の先端であり、老いも若きもジャズっていう音楽には娯楽も流行も、そして高い芸術性や文学性すら求めていた。

ええ、そしてその「求められている全部」に応えきれるだけのサムシングがジャズにはありました。

そんなこんなでジャズの中で”モダン”というひとつのスタイルが定着し、ここがジャズという音楽の人気の頂点であったんですね。

しかしまぁジャズって音楽は、戦前のディキシーランドからビッグバンドスウィング、そして戦後のビ・バップ、ハードバップと目まぐるしくスタイルを進化させてきた音楽です。

「ジャズが人気だぜーうわ〜い」

となっても、これはもう音楽の性質的に「じゃあこれでいい」という風にはならないし、聴く側も特に若いファン達は「もっと刺激的なのが聴きたいぜ!」となっておりましたので、意識の高いミュージシャン達は常に「もっと新しいやり方」を模索してたんです。

この辺りから「それまでのジャズの常識や、音楽理論のお約束事からいかに演奏を解放するか?或いは理論の中で表現手法というものの解釈をどこまで拡大できるのか?」という、文字にすればちょっと難しいようなことが、セッションやレコーディングの場ではこれまでより盛んに試みられるようになりました。


理論的には”フリー”とか”モード”とか言われる、音楽に付き物のいわゆるコード進行とかスケール展開とか、或いはリズムそのものを大胆に逸脱したり(フリー)、本来のコード進行というものの枠を取っ払ったり、逆にものっすご細かく詰め込んだりして(モード)、聴いた感じ「お、新しい」と思えるようなものを新たに作り出す試みなんですが、もっとシンプルに「楽器をやってるとどうしても演奏出来る速さとか運指とか限界あるよな、ほら、同じ小節の中で1オクターブは弾けてもいきなり2オクターブとか飛ぶのとかすっげぇ難しいじゃん、できねーじゃん」っていうようなもどかしさを、猛練習の末に克服して”ぶっ飛び”をスラスラ出来るカッコ良さみたいなもの、あぁややこしいから一言で言っちゃえば

「誰もやってねー凄いこと」

を、ミュージシャンのほとんどが求めてた。


で、みんながそれこそ悩んで苦しんで懸命になって「オリジナルな演奏」を生み出してる時に、サックスもバス・クラリネットもフルートも完璧にこなす上にオクターブなんか軽々飛び越えながら、それまで世に出て来たどんな演奏家のフレーズとも似ていない、オリジナリティ溢れる「なんじゃこりゃ!」なフレーズを当たり前のように吹けるスーパーなプレイヤーとしてエリック・ドルフィーがひょいと出て来た。

ものっすごい難しいフレーズを軽々と吹ける上に他の誰とも似ていない、その上楽譜はスラスラ読めるし難しい音楽理論なんかも完璧に理解している。更にジャズミュージシャンとしては珍しく物腰が柔らかくて物静かでぶっちゃけ性格がいい(!)

ミュージシャン達はこぞって彼の先進性を讃え、人間性を絶賛しました。

特にこの時代に「新しいことをやっている」と注目されていたジョン・コルトレーンとチャールス・ミンガスは、彼の才能と人柄に惚れ込んで自分のバンドのメンバーに抜擢しました。

えぇ、エリック・ドルフィーって人は凄いんです、本当に凄いんです。

ところが、そんな凄い才能があって楽器演奏のテクニックは完璧で、人間的にもよく出来たドルフィーがあっという間にシーンで頭角を現して、引く手あまたの大人気ミュージシャンになったかといえば・・・そうではなかったんですね。

音楽のことを「よくわかってる」ミュージシャン達は彼に注目し、評価しておったんですが、彼の斬新過ぎる音楽性とぶっ飛んだ領域にまで達している演奏は、一般のリスナーや評論家といった人達にはなかなか理解されず、あろうことか「あんなのは音楽じゃない」「酷い雑音」とかそういう風にクソミソ言われたりして、せっかくソロで出したレコードもほとんど売れず、バンドを組んでも「待ってました!」と出演させてくれるクラブも多くは見付らず、生活が困窮するぐらいの酷い境遇に置かれておりました。


で、結局遅かったソロデビューからたった4年ぐらいのうちに、彼はアメリカでの活動を諦めて、偏見の少ないヨーロッパで生きて行く事を選ぶ訳なんですが、そこで持病の糖尿病が急激に悪化して倒れ、36歳という若さであっけなくこの世を去ってしまいます。

エリック・ドルフィーのアルバムへの世間の正当な評価がようやく追いついたのが彼の死後、そしてアルバムも亡くなってから多く発売されております。




エリック・ドルフィー / ミュージカル・プロフェット : ジ・エクスパンデッド・1963 ニューヨーク・スタジオ・セッションズ [CD] [Import] [日本語帯・解説付]


【パーソネル】
エリック・ドルフィー(as,bcl,fl)
ウディ・ショウ(tp,Disc-1@A,Disc-2@AC,Disc-3@DEF)
プリンス・ラシャ(fl,Disc-1@A,Disc-2@AC,Disc-3,@DEF)
ヒューイ・シモンズ(as,Disc-1@A,Disc-2@AC,Disc-3,@DEF)
クリフォード・ジョーダン(ss)
ガーヴィン・ブシェル(Basoon,Disc-2,AC,Disc-3,@EF)
ボビー・ハッチャーソン(vib,Disc-1@,Disc-2@AC,Disc-3DE)
リチャード・デイヴィス(b,Disc-1@B〜E,Disc-2A〜D)
エディ・カーン(b,Disc-1@,Disc-2@C,Disc-3DF)
J.C.モーゼス(ds,Disc-1,@,Disc-2@AC,Disc-3D〜F)
チャールズ・モフェット(ds,Disc-1A,Disc-3@)
*デヴィッド・シュワルツ(vo,Disc-2,E)
*ボブ・ジェームス(p,Disc-2,E)
*ロン・ブルックス(b,Disc-2,E)
*ボブ・ポーザー(ds,Disc-2,E)

*データ不明のため一部資料に記載されていた表記に従っておりますが、正確な詳細は不明のパーソネルです



(Disc-1)
1.JITTERBUG WALTZ
2.MUSIC MATADOR
3.LOVE ME
4.ALONE TOGETHER
5.MUSES FOR RICHARD DAVIS (Previpusly Unissued 1)
6.MUSES FOR RICHARD DAVIS (Previpusly Unissued 2)

(Disc-2)
1.IRON MAN
2.MANDRAKE
3.COME SUNDAY
4.BURNING SPEAR
5.ODE TO CHARLIE PARKER
6.A PERSONAL STATEMENT (Bonus Truck)

(Disc-3)
1.MUSIC MATADOR (Altanate Take)
2.LOVE ME (Altanate Take 1)
3.LOVE ME (Altanate Take 2)
4.ALONE TOGETHER (Altanate Take)
5.JITTERBUG WALTZ (Altanate Take)
6.MANDRAKE (Altanate Take)
7.BURNING SPEAR (Altanate Take)

(録音:1963年)



さて、このアルバムについて触れます。

エリック・ドルフィーは終焉の地であるヨーロッパに渡る直前の1963年にスタジオでセッションをしております。

そのセッションの中から、彼が亡くなった後にプロデューサー・アラン・ダグラスの個人レーベルより『アイアン・マン』(オリジナル曲中心)『カンヴァセイションズ』(スタンダード中心。後にVeeJayが権利を買い取って『メモリアル・アルバム』としてリリース)がリリースされ、更に亡くなって20年以上経った1988年に、突如「1963年の別のセッションの未発表音源」として『アザー・アスペクツ』という謎に満ちたアルバムが出され、ファンを驚かせました。

ところがこの未発表音源には、実はまだ”つづき”があったんです。

『ミュージカル・プロフェット ジ・エクスパンデッド1963ニューヨーク・スタジオ・セッションズ』は、アルバム『カンヴァセイションズ』『アイアンマン』丸々2枚に加え、そのセッションの未発表テイク、そして『アザー・アスペクツ』から「Jim Crow」のタイトルで出されていた曲の別テイクが「A Personal Statement」と表記を変えて収録されております。

1963年といえば、アメリカ国内におけるドルフィーが、その果敢な実験精神を作曲にぶつけ、そして個性的な若手メンバーを集めて作った名盤『アウト・トゥ・ランチ』(BlueNote)なんです。

その実験精神溢れるアレンジと極限まで研ぎ澄まされたアドリブのカッコ良さは、アルバム『アイアンマン』『カンヴァセイションズ』でも存分に発揮されていて、これらのアルバムを聴く度に、この年のドルフィーって境遇としては不遇だったかも知れないけれど、音楽的にはこの時代に頭ひとつもふたつも抜けて充実した内容のものを作っていたんだなぁと感動しきり・・・。


おっと、音源の話でした。エリック・ドルフィーがヨーロッパに渡る直前に「ちょいと旅に出て来るから、その間コイツを預かって欲しいんだ」と、友人であるヘイル・スミス、ファニー・スミス夫妻にひとつのスーツケースを預けました。

中には大量のテープと楽譜、音楽の研究に関するノートや書籍が詰まっていて、これらの遺品の中に入っていたテープこそが、紆余曲折を経てドルフィーの死後50年以上経った2018年にようやく音盤化されたという次第であります。

内容は未発表の部分がDisc-1,Disc-2後半と、Disc-3に集められていて、3枚組なのにしっかりと作品としてのクオリティが保たれていて、しかも発売時ステレオだった録音を、オリジナルのモノラルに直した上でのリマスターによって、音がドカッとまとまって前面に出ているという、とても丁寧な仕事がなされております。

アルバムとしての『カンヴァセイションズ』と『アイアンマン』の素晴らしさは言うに及ばず、肝心の未発表の部分なんですが、Disc-1後半のドルフィーとリチャード・デイヴィスのデュオ、これがもうこれがもう素晴らしく深淵で、コレを聴くためだけに大枚はたいてもいいぐらいの内容。

あのですね、リチャード・デイヴィスのベースって、他の音盤だとどうも裏に引っ込んでペンペコペンペコ言ってる感じで、ベース単体として評価するのはどうなんだろうと、すごく悩むスタイルの人なんです。だけどこの”他の楽器が一切いない状況”でのデイヴィス、まずアルコ(弓弾き)の音の隅々にまで異常な”気”が満ちていて、ヘヴィで荘厳な磁場を生んでます。そこにドルフィーのバスクラが情念の極みみたいな凄まじい吠え方をするもんだから、あぁもうたまんないんです。そうそう、ジャズってゴキゲンでノリノリな音楽かも知れないけど、こういう聴く人をとことん深いところに引き込むような、ある種の”恐ろしさ”みたいなものがあってもいい、それもまた想像力に対する素晴らしい刺激なんです。


あと、国内盤には詳細な音源の解説とともに、ビル・ラズウェル、ソニー・シモンズ、ハン・ベニンク、リチャード・デイヴィス、オリヴァー・レイク、ヘンリー・スレッギルら、ドルフィーと深く関わった/強く影響を受けたアーティスト達による貴重なロングインタビューが付いておりますので、買うんなら国内盤が断然お得です。

最後にしつこく言いますが、このモノラル・マスタリングはこれまで世に出たどの音源よりもドルフィーのアルトサックス、バス・クラリネット、フルートの音を生々しく伝えてくれますんで、演奏家としてのドルフィーの凄さを、散々聴いてきた人にも改めて「やっべぇ!」と思わせるぐらい凄い音ですよ。












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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2018年12月17日

エラ・フィッツジェラルド Ella Wishes You Swinging Christmas

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Ella Fitzgerald/Ella Wishes You Swinging Christmas
(Verve)


みなさんこんばんは。

いやはや12月でございますよ、えぇ、12月。

12月っていやぁアレですね、えぇ、クリスマス。

もうね、アタシなんかはオッサンもいいとこですから、クリスマス近くなると「サンタさんからオモチャもらえるわーい」ってのもなければ「恋人いなくて焦る」なんてのもないんですよ。

つうかアレですね、サンタさんは嬉しかったけど、アタシって実はクリスマスってイベントが色気と繋がったことがない。えぇ、つまりモテない上にアタシに色気がないって言えばそれまでの話なんですが、いやアレですね、それ以前に「クリスマスだから」といってロマンチックな気持ちになったことがない。つまりアレです、人としてその〜、根本的なアレの問題だと思うんです。

でもね、幼少期からひとつだけ、今も一貫して「クリスマス」でときめく部位があって、それはケーキですよケーキ。

クリスマスはケーキが食える、ケーキを食うためにパーティーをする、パーティーに必要なのはゴキゲンなクリスマス・ソングのBGM!

っつうわけで、多少強引ではありますが、今年もクリスマス近いんで、そんなワクワクを皆さんと少しでも共有できたらとクリスマスの名盤というヤツをご紹介いたします。

今日はジャズですね、はい、もう定番中の定番といえば「クリスマスのジャズ・ヴォーカルもの」なんですが、その前にあのですね、これは全国のクリスマスソングを愛する人や、もしかしたらカフェとか美容院とか服屋さんとかやっている方に特に言いたいことなんですが「ジャズのクリスマス・アルバム」ってまずハズレがないです。

誰のどんなアルバムや演奏とかをその空間に流しても、その場がパーッと明るくなって、空気が何かこう上質な感じになります。

「場の空気」っていうものに特に気を遣っていらっしゃる方は、色々とあるクリスマス・ソングのCDなんかで迷った時は、とりあえず1枚はジャズものを入れてみてくださればいいんじゃないかと思います。

で、本日ご紹介するのはエラ・フィッツジェラルド。

ざっくり言って”昔のジャズ”の世界で、女王と呼ばれるズバ抜けた存在感を放つ人ってのは結構いるんですが、その中でもこの人は最もトータルバランスに優れたシンガーって言えばちょいと語弊があるかも知れませんが、とにかく歌は抜群に上手いし、声域は非常に豊かだし、声の質も綺麗とかわいいと芯があるの絶妙なバランスの丁度中間にあって、どんな歌を歌っても「ちょうどいい心地良さ」で声が聴く人の耳に入ってくる人なんです。

くどさがあんまりないので個性が薄いのかと思えばそうじゃない。むしろ他を圧倒する強烈なオリジナリティを持っていながら、それを「聴く人がどう感じるか」ということを完璧に心得ていて、キチッとコントロール出来ている。そういうシンガーさんです。

たとえばアタシは女性シンガーでいえば、ビリー・ホリディとかニーナ・シモンといった人達が大好きなんです。この人達はチラッと声を聴いただけで、歌に込められた感情みたいなものがグワ〜っと心を掴むような人達です。聴いてて本当にのめり込んじゃうし、それこそ中毒になって何度も何度も聴いてします。

でもエラさんの場合は逆なんですね。

いつどんな気持ちで聴いても、ほんわかと「あぁいいなぁ〜」とさせてくれるけど、その歌に込められた感情みたいなものはいつも後からジーンと染みてくる。それが聴く人を幸せにしてくれるんです。そう、エラさん聴くとノリノリのスインギーな曲でもしっとりしたバラードでも、しっかりと幸せな気分になれる。

どうでしょうね、こういう人こそクリスマス・ソング歌うにはピッタリのシンガーじゃありませんか。




Ella Wishes You Swinging Christmas

【収録曲】
1.Jingle Bells
2.Santa Claus Is Coming To Town
3.Have Yourself A Merry Little Christmas
4.What Are You Doing New Year's Eve?
5.Sleigh Ride 6. The Christmas Song
7.Good Morning Blues
8.Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!
9.Winter Wonderland
10.Rudolph, The Red-Nosed Reindeer
11.Frosty The Snowman
12.White Christmas
13.The Secret Of Christmas
14.Medley: We Three Kings Of Orient Are/O Little Town Of Bethlehem
15.Christmas Island
16.The Christmas Song
17.White Christmas (Alternative Take)
18.Frosty The Snowman (Alternative Take).


さて、アルバムはクリスマスカードみたいなオシャレなデザインで人気の『Ella Wishes You Swinging Christmas』であります。

こりゃもう説明はいらんですね。

・・・といきたいところですが、説明します。

録音は1960年、エラさんという人は実は戦前から活躍していた人で、古い録音を聴いてもシンガーとして完璧な人なんですが、特に戦後50年代以降になってくると、歌声により深みが出てきます。


ポップスっていうジャンルがまだなかった時代は、ジャズこそが最もポピュラーなヒット音楽で、ジャズシンガーこそが国民的なポップ歌手でした。

このアルバムが録音されたのはそんな時代。

ゴージャスな、超一流のメンバーを集めたビッグバンドに目一杯華やいだ音を出させて、それ以上に華のある歌声のシンガーが歌って聴く人を感動させるというのが、この時代のプロシンガーの絶対条件でありましたが、まぁここで見事なビッグバンド・サウンドをバックに、まるでオーケストラを完全にコントロールしているかのようなエラさんの見事な歌いっぷりと言ったらどうでしょう。

「ジングルベル」「サンタが街にやってくる」「赤鼻のトナカイ」「ホワイトクリスマス」とか、それこそもう色んな人のヴァージョンで何百回も聴いたような定番ソングなのに、この人が歌うと何で今正に生まれた曲のようにウキウキした新鮮な気持ちで聴けるんでしょう。

これだけ中身の凝縮したような見事なジャズで、見事なヴォーカルアルバムなのに、しかもベタなぐらいド定番のクリスマス曲が並ぶのに、全くベタ感も押し付け感もなく、むしろ「BGMにしてもいいのよ〜」ぐらいの軽やかさで十分幸せにしてくれるんです。

個人的には思いっきりブルースの『Good Morning Blues』に、その真逆の衝撃を受けたので、クリスマス目当てならずともこれだけで”買い”だったんですが、それ話すと長くなりますので良い子はこの行は読まなかったことにしてくださいね♪







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2018年12月11日

ソロモン・バーク ライヴ・アット・ザ・ハウス・オブ・ブルース

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ソロモン・バーク/ライヴ・アット・ザ・ハウス・オブ・ブルース
(Sony/Pヴァイン)

ソウルシンガーといえば、このブログで何度も書いているように

「小さい頃は教会でゴスペルを歌っていて、歌手としてデビューするために世俗のR&Bやソウルを歌うようになった」

というのが、割とお約束のパターンであります。

アタシ達日本人にしてみれば

「へぇぇ、アメリカさんの教会って凄いんだー。歌上手い人がいっぱいいるのねー」

ぐらいの認識かも知れませんが、教会というのは本質的には真剣にお祈りを捧げたり、神父さん牧師さんによる、聖書のお話をたくさん引用した真面目な説教を聞く所です。


それはゴスペルを歌うアメリカの黒人教会でも同じことです。

教会でゴスペルを歌う、或いはゴスペルを聴くために教会に集う彼らにとって「ゴスペル」とは、決して享楽的にはしゃぐための音楽ではなくて、信仰と共にある、それこそ生活の奥底にある罪や穢れを祓い清めてくれる大切な音楽なのです。

歴史をさかのぼればアフリカ黒人が奴隷としてアメリカに連れて来られてきた時に、先祖代々伝わる土着の信仰を禁止され「キリスト教だったら良い」と定められたんですが、もう本当に人間として扱われなかった、どうしようもなく辛い毎日を送る彼らにとっては、言ってみれば白人から与えられた白人の宗教がキリスト教ということになるんですが、それでもそれ以外に精神的に何もすがるものがない黒人奴隷達にとってみれば、それにしがみつくしかなかった。

で、南北戦争というのが起きて、結果として「奴隷なんてもうやめよう」という人達が勝利して、黒人は自由の身になるんですが、自由になったところで南部では相変わらず最低限の賃金で、今度は労働者としてこき使われるんですね。

カネもない、学もない、世の中に出ても底辺で貧しい暮らしを送るしかないという人達の絶望がブルースへ、「いや、それでも真面目に生きてればきっと救われる」という希望がゴスペルへと流れて行って、戦前から戦後のブラック・ミュージックというものが、歴史に深く根を張って動いている訳です。

えぇと、戦後ゴスペル出身の歌い手がソウルシンガーとして次々と成功を収めているうちに、教会の方もそういった歌手の育成などに力を入れてきた感は確かに今現在は大分ありますが、それでもやっぱりアメリカは凄いなぁと思うところは、2000年代になっても「お、このシンガーはどこか普通と違う底力がある歌を歌うなぁ」と思わせるようなズバ抜けた人がいて、経歴を調べてみるとやっぱり教会出身だなんてことが往々にしてあったりすることなんですよ。

これは多分理屈じゃ測れない、もう民族的無意識とか、そういう途方もないレベルの話なんじゃないですかね。と思うぐらい、ゴスペルっていうのはアメリカ黒人音楽の根底にあるんですね。

で、本日ご紹介するソロモン・バークなんですが、彼の場合は「教会の聖歌隊で歌ってた」なんてレベルじゃなくて、説教の方ですよ。これの天才的な人で、10歳になるかならないかぐらいの時から壇上で説教をすることにかけて天才的な才能を発揮してたと言うんですから、これは並大抵のシンガーではありません。

え?説教ってそんなに凄いのか?何か説教って言ったら親とか先生とかがガミガミ怒る時のアレでしょ?ですって?何を言いますか。

説教というのはですね、親や教師の小言じゃなくて、元々は牧師さんとかお坊さんが、神様や仏様のありがたいお話を説くことを言うんですよ。「教えを説く」と書いて説教です。

ほいでゴスペルの説教というのはですね、最初に「みなさん、神様はこう言われました」「聖書にこう書いてあります」とか、そういう真面目な”語り”が徐々に熱を帯びて、段々リズミカルになって信徒さんを煽るんですね。で、信徒さんも興奮して「その通り!」とか「神よ!」とか、煽りに応えてコール・アンド・レスポンスが成立する。こっからグルーヴが生まれ、徐々に説教とコール・アンド・レスポンスが歌になっていって最終的にじゃじゃーんとゴスペルが演奏されるというのが、昔からの教会での祈りの流れなんです。

そう、熱心なファンにしてみれば

「いやいや、ゴスペルつったらみんな曲が始まってからのアレだと思ってるでしょ?違うんだよ、ゴスペルの醍醐味はあの説教からのコール・アンド・レスポンスまでちゃんと聴かないと味わえないね」

ってヤツでして、アメリカではちゃんと歌とは別になっている「説教のレコード」なんてのも売られてたりしてて、これが「あ、〇〇牧師の説教だ、コレ凄いんだよな、もうノリノリだよ」と、実に熱狂的に受け入れられたりしておりました。

だから説教というのは、まずは聖書(新約旧約どっちも)に関する深い理解がないとダメで、次に真剣な信徒さんを納得させられる話の才能と、教会を熱狂へと誘う煽りのスキルと、最終的にズバ抜けた歌の上手さとか、トータルで色々ないと出来ないという、凄く高度なものなんです。

10歳なるかならないかぐらいでその高度なトータルスキルを求められる説教で「天才」と言われたソロモン・バークは、だから歌とライヴの才能というのに、もう凄まじく溢れまくっておったんでしょう。何と15歳で歌手デビューを果たし、その5年後にはR&Bシンガーとして、メジャー・レーベルのアトランティックからレコードをリリースしています。

彼がメジャーデビューしたのは1960年ですから、世代的にはソウルが流行る前のR&Bの世代のシンガーで、レイ・チャールズと共にR&Bという音楽をよりゴスペルに近づけて、ソウル・ミュージックの時代を未来から引き寄せた最大の功労者と言えるでしょう(もう一人の功労者はサム・クック)。

ソロモン・バークという人のルックスは、ハッキリ言ってイカツいです。

持ち前の巨体に、特に若い頃は目付きも鋭くて大体初期のジャケットなんかはイカツい顔で写っておりますから、ゴリゴリのパワー系シャウターと思われがちですが、実際聴いてみるとびっくりするほどふくよかな声質だし声域も無理なく超低音からか細い高温まで自由自在、歌も緩急を巧みに駆使した独自の節回しプラス、説教で培った”語り”の要素をメロディーに実に自然に挟み込む、ハッキリ言って1950年代のデビュー前から「歌」というものの無限の可能性が一人の人間の声の中にここまであるんだと思わせるぐらい、スケールの大きなシンガーです。




【収録曲】
1.Introduction Everybody Needs Somebody To Love
2.Medley
3.Cruel World
4.Cry To Me
5.Candy/Candy Rap
6.Got To Get You Off My Mind
7.No Nights By Myself
8.Ain’t Nobody’s Business
9.Down In The Valley
10.I Want A Little Girl
11.Medley
12.Good Rockin’ Tonight


確かこのブログでソロモン・バーク紹介するのは初めてだったはずなので、今日は「まずはこれ!」というアルバムを・・・というかコレはソウルとかR&Bとかそういうの知らなくても別にいいから、歌が好きな全ての人に聴いて欲しい、本当に素晴らしいライヴ盤です。

や、実は彼の代表作(スタジオ盤)は初期アトランティック時代にたくさんあって、その辺のアルバムは確かにソウル名盤特集とかでも真っ先に挙げられる類のものです。本当に素晴らしい。でも、歌以外の部分(語りや即興での物凄い煽り)の魅力といえばやっぱりライヴ盤にこそ詰まってるし、しかもこのライヴは1990年代のアルバムなんですけど、この人は底力凄いんで、2010年に亡くなるまで一切声が衰えたことなかったし、あぁ、興奮して何を言ってるのかわかんなくなってきましたが、とにかくマイナーレーベルからのリリースだったけど、Pヴァインが国内盤だからきっと悪いアルバムじゃないんだろうと思って買ったらこれが予想を軽くぶっとばして凄く凄いし、あぁぁ、今聴きながら書いてるんですけどね、聴きながらはいかんですよ、語彙が崩壊してしまいます。

正気を失う前にひとつだけ、このアルバムでやっているのは、ほぼ初期のまだ”ソウル”と呼ばれる前のR&B時代の名曲のセルフカヴァーです。

90年代に50年代〜60年代の曲をベテランシンガーがやる。

こう書くと熟練を極めた歌手が懐メロをくつろいで歌ってるんだろうとか、そういう風に思うんでしょうが、50年代〜60年代のR&Bが、アレンジや雰囲気も当時のものとそう変わりないのに、何だかものすごく”今の音楽”してるんです。で、今2018年なんですが、2018年に聴いても変わらずこのライヴは”今”のリアルな音楽として迫ってくる。これはちょっと凄く凄いことだと思います。あ、すいません、やっぱり語彙が崩壊しますんで後は聴いて確かめてください。








『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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