2018年12月05日

イードン Beauty and the Beat

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Edan/ Beauty and the Beat
(Lewis Recording)



「ヒップホップにはルールなんてない、好きな事をやればいいんだ。やりたいことを自由にやればそれがヒップホップだ」

とは、その昔よくラッパー達がインタビューで語ってた言葉であります。

ストリートで色んな文化が混ざり、また、サンプリング機械を使ってあらゆるジャンルの音楽をミックスさせて、その上にフリースタイルの喋り(ラップ)で、”歌”という形式に囚われないヴォーカルを自由に被せて発展してきたヒップホップは、確かに自由な音楽です。

音楽だけでなく、ヒップホップを統括的なカルチャーとして見れば、ファッションにせよアートにせよ、そのアイテムやアクションからは、あらゆる価値観から解放されよう!というメッセージを強く感じます。

80年代以降、ヒップホップは世界中の若者の間で急激に需要され、瞬く間に人気に火が点きましたが、その理由にはやはり根底にある「好きに楽しめばいいんだぜ!」という、実にオープンマインドな精神がヒップホップにはあり、それが広く受け入れられたからに他なりません。

で、90年代。

主要なラッパーやDJやグループが次々と商業的な成功を収めて行く中で、ヒップホップには”スタイル”というものがそれぞれ生まれ、例えば西海岸とか東海岸とか、オールドスクールとかニュースクールとかギャングスタとか、それぞれが呼び名の付いたスタイルに所属し、それぞれの”枠”がシーンの中で作られてきました。

今にして聴けば当時のヒップホップには音楽的なカッコ良さを凄く感じますが、確かに何かが人気となれば、まずは中身よりもその表面的なファッションを真似してみたくなる人が増えて、一気に音楽そのものにもある種の予定調和を何となく感じてしまうのが人間というもの。

例えばその頃は

「ヒップホップ=不良じゃないヤツお断り」

みたいな空気は確かにありました。

ランDMCがエアロスミスとやってたヤツとか、ロックフェスに殴り込みかけたパブリック・エナミーがめちゃくちゃ不穏でカッコイイとか、そういう感じの楽しみ方をしたいな〜とかは、あんまり大きい声では言えなかったので、アタシなんかは密かに家でアフリカバンバータとかパブリック・エナミーのセカンドとか、ジュラシック5の12インチとかをちっちゃい音で聴いていた訳なんですけれども、やっぱりその頃おんなじように思っていた「音楽好きのヒップホップ好き」というのは結構いたらしく、そういう人達、主にアメリカの大都市じゃなくて”そこそこの地方”に住む白人の連中が、自室でせっせと上質なヒップホップを作り上げ、これがやがて「メインストリームにはない質感の、本当の意味で”やりたいことをやっちゃってるヒップホップ”」という意味で、アンダーグラウンド・ヒップホップと呼ばれるようになっていきます。


そんなアンダーグラウンド・ヒップホップの代表格の一人と言っていいのが、イードンであります。

1978年生まれ、10代の頃から自宅でターンテーブルにミキサーにサンプリングマシーンその他各種機材を揃え、次々と生み出したファンキーなリズムトラックに、それこそあらゆるジャンルから自在に取り出したサンプリングソースをぶっこんで、それでもまだ足りないとばかりにエフェクトをかけたり、自分で演奏した楽器の音をかぶせたり、ラップしたり、もう本当に”やりたい放題”をやっていて、さてそんな”やりたい放題”なヤツはどんなヤツなんだろうと見てみたら、これが白人で眼鏡をかけたオタクか秀才かみたいな外見をしてたというから、コアな全世界のコアなヒップホップファンは狂喜しました。

「コイツこそがヒップホップ本来の自由だ!」

と。


いやもうほんとイードン凄いんですよ、モテるための最新B-BOYファッションなんかには目もくれず、ひたすら「オレのヒップホップが本当にカッコイイのか」ということをひたすらストイックに、つうか人間が生きるために備えた能力の全てを”音楽する”ただその一点に特化させて集中させたような、でも、だからといってその音楽がオタクな独りよがりとか、真面目なだけの難しくてよくわかんないものには微塵もなっていない。

ファンキーで骨太ささえ感じさせるリズムトラックだとか、非常にセンスよく被さるネタのフレーズだとか、激しくイッちゃってるやっちゃてる感炸裂してるドープ極まりないエフェクトだとか、とにかく彼の作り出すヒップホップは、あらゆる場所が気持ちよく破れてて、心地良く壊れてる。ビバ自由、なゴキゲンさが溢れかえっておるものです。





Beauty And The Beat

【収録曲】
1.Polite Meeting (Intro)
2.Funky Voltron feat. Insight
3.I See Colours
4.Fumbling Over Words That Rhyme
5.Murder Mystery
6.Torture Chamber feat. Percee-P
7.Making Planets feat. Mr. Lif
8.Time Out (Segue)
9.Rock And Roll feat. Dagha
10.Beauty
11.The Science Of The Two feat. Insight
12.Smile
13.Promised Land
14.Edan & Insight - Bonus Rehearsal (Japan Exclusive)


彼が本格的にシーンに躍り出て来たのは1999年のシングル『Sing It, Shitface』なんですが、コレ、アタシ聴きました。

めちゃくちゃファンキーなリズム、エミネムや初期ビースティーボーイズばりのキレのいいラップの背後でドカーンと鳴ってるのが、何と日本の童謡『ふたあつ』(!)

いやおい、まどみちお作詞のこの名曲が何で外国のしかもヒップホップの元ネタとして鳴り響いてるんだよ、しかもウケ狙いっぽいあざとさがなくて、トラックにもラップにもこの「ふたーつふたーつなんでしょねー♪」がハマりにハマッている。何だこれ!


と、エラく衝撃でした。えぇ、もしかして生涯のうちでヒップホップ聴いて一番受けた衝撃の中でデカかったのがこの曲だったと今でもヒリヒリ思っています。

で、今日ご紹介するのは、イードンが2005年にリリースしたセカンド・フル・アルバムです。

この頃は既に「アンダーグラウンドシーンにこの人あり」ではなく、ヒットチャートを主に選曲するDJ達にも「イードンやばいぜ」って事が大分浸透していて、有名なミックステープにもこの人の曲がフツーに入ってるぐらい人気でしたが、そのアルバムの内容がメジャーに寄ったものになるはずは当然なく、相変わらずファンクからロックからジャズから何やら訳のわからん音楽まで何でもトラックにブチ込み、サイケデリック極まりないエフェクトや”繋ぎ””被せ”の処理を、お前はリー・ペリーか!ってぐらいに大胆にかまし、しかもそれが今(2018年)聴いても全部ちゃんとオシャレで踊れる仕上がりになっているという、何を言ってるかわかんねーと思うかもですが、アタシも自分が何を言ってるかよく分かりません。でも「ジャンルなんかカンケーないぜ」という非ヒップホップファンの方、あぁ、ウチの読者はかなりおりますね、はい、ぜひ聴いてみてください、ヤバいから。



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posted by サウンズパル at 22:35| Comment(0) | HIPHOP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする