2019年03月24日

ミルト・ジャクソン、ジョー・パス、レイ・ブラウン BIG3

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Milt Jackson , Joe Pass , Ray Brown/Big3
(Pablo/OJC)


アタシはこのブログがある日突然なんかの天変地異で消えて無くなってしまうまで、言い続けたいことがいくつかありますが、そのひとつが

「おい、ミルト・ジャクソンって人はほんとにすごいぞ」

ということであります。


ミルト・ジャクソンという人は、ジャズを代表するヴィブラフォン奏者で、戦後すぐぐらいの時期から50年代にかけて、ジャズを一気に進化発展させ、モダン・ジャズと呼ばれる音楽を作ったパイオニアの一人といわれていて、一説によると夜な夜な腕自慢がステージに上がるニューヨークのクラブで、この人やセロニアス・モンク、チャーリー・パーカーにディジー・ガレスピーといった人達が「腕自慢のやつらをステージから引きずり下ろすため」に、コードチェンジをものすごく複雑にしたり、テンポを恐ろしく早めたり、とにかく難しいアレンジをして遊んでたところから、後に”ビ・バップ”と呼ばれるモダンジャズの原型が生まれたなんて話もあります。

とにかくまぁそんな大物でありますが、凄いのはこの人が単なるテクニック一辺倒の人ではなくて、コーンと1音鳴らすだけで豊かに拡がる底なしのブルース・フィーリングを持っていて、その味わいの深さで多くのジャズファンを唸らせ、ジャズにそんなに興味ない人にまで「この鉄琴すごくいいよねー」と言わせ続けてきたことにあります。


「どんな人でも安心して聴けるジャズ・グループ」として、長く世界的人気を誇ったMJQ(モダン・ジャズ・カルテット)の中心メンバーとしてフロントを張りながら、自身のリーダー作とおびただしい数のセッション参加作を世に出し、90年代まで長く活動をつづけました。

大体キャリアの長いミュージシャンというのは、時期によってノッてる時期とそうでない時期があったり、また「若い頃は勢いあったけど、歳取って落ち着いた」なんてこともまぁよくあるのですが、この人は時期や作品によるムラが一切ない。どの時期のどのアルバムでも華麗なマレットさばきで内なるブルース・フィーリングを、最高に粋なフレーズでもって心地良く聴かせてくれる。

おまけにおびただしい数の共演盤では、自己のスタイルが究極に完成されている一流中の一流どころ、ザッと名を挙げるだけでもセロニアス・モンク、マイルス・デイヴィス、カウント・ベイシー、コールマン・ホーキンス、ウエス・モンゴメリー、オスカー・ピーターソン、ソニー・ロリンズ、ケニー・バレル、ジミー・スコット、レイ・チャールズ(!)、ジョシュア・レッドマン(!!)まで、世代も個性も違う人達との共演をあっさりこなすだけでなく、共演者の良さを最大限に引き出しながら自分の持ち味もその中で最高に発揮するという、何というかもう才能とかセンスとかいう言葉でも補えないぐらいの素晴らしい立ち回りを演じていて、かつどのアルバムもジャズをジャズたらしめている空気の最上級のそれが全編に漂っている。

それゆえにアタシなんかは「ミルト・ジャクソン!もう全部最高っ♪」とキャッキャしてしまうんですよねぇ。






Big 3


【パーソネル】
ミルト・ジャクソン(vib)
ジョー・パス(g)
レイ・ブラウン(b)


【収録曲】
1.Pink Panther
2.Nuages
3.Blue Bossa
4.Come Sunday
5.Wave
6.Moonglow
7.You Stepped Out Of A Dream
8.Blues For Sammy

(録音:1975年8月25日)


さて「自分もソロで輝いて、共演者の個性も見事に引き出すミルト・ジャクソン」ですが、どれも絶妙なバランスで聴かせる名作の中で、共演者の腕前と気遣いのセンス共に最高なアルバムといえば、本日オススメの『ザ・ビッグ3』であります。


ミルト・ジャクソン、というかジャズの場合は、ベースとドラム(とピアノやギター)のリズム隊があって、フロントと呼ばれる管楽器がいるのが通常編成なのですが、ミルトの操るヴィブラフォンという楽器は、どちらの役割もこなせます。

だからミルトはその楽器の特性を最大限活かしてソロでは最高に輝くし、個性的なフロントマンを引き立てるリズムセクションの働きも完璧と言っていい程心得ておるんですね。

で、このアルバムです。

楽器の編成はヴィブラフォンとギター、ベース。

つまり、見方によってはここにはフロントの楽器はおらず、しかもリズムセクションの中心となるドラムもいないという、かなり変わった編成なんです。

え?そんなんで大丈夫?音、しょぼいんじゃない?と普通は思うところですが、ミルトが希代のギター、ベース2人の才能を最高に引き出して、フロントやドラムのあるフルバンドと同等かそれ以上に厚みと深みのあるサウンドを生み出しているんです。

まず、ベースのレイ・ブラウンとギターのジョー・パス。この2人が単独でも十分に凄い人達なんです。

レイ・ブラウンはアタシが思うにジャズ・ベーシスト中屈指の”豊かな木の鳴り”を響かせる達人。とにかくこの人は指が常人の2倍ぐらいあるんじゃないかと思うぐらい、ベースの音が太いんです。そのぶっとい音でグイグイと演奏全体をドライブさせる、とにかくこの人が参加してベースを弾いているアルバムは、演奏全体のグルーヴが違う。加えてミルトとは活動の初期の頃にディジー・ガレスピー楽団に共に在籍して、60年代は共同リーダーという形でバンドもやっていた、つまりは互いに良い相棒と呼び合える仲。

そしてギターのジョー・パスもまた、ジャズ・ギター界屈指のテクニックの持ち主です。

単音での細かいフレーズを高速のままどこまでもメロディアスに繋いでゆくテクニックはもちろん、その単音に絶妙に和音を絡めて、1本のギターでまるで歌と伴奏を同時にやっているように聞こえる奏法も編み出し、ソロでもヴォーカリストのバックでも大活躍。ミルト・ジャクソンよりちょい年下で、若い頃からその才能を期待されていた人ですが、麻薬中毒のため本格的なデビューは30過ぎてからという遅咲きの人でありましたが、中年になってから60年代以降の「ジャズ・ギターの最先端」を切り開いていった功績と、後のジャズやフュージョンのギタリスト達に与えた影響は果てしなくデカい人であります。


そう、このアルバムにはフロントを派手に彩る管楽器とリズムの中核であるドラムこそいませんが、ミルトの事なら他のミュージシャンよりもずっとよく分かってるレイ・ブラウンと、技の引き出しが多く、ミルトとは似たようなタイプの「派手も堅実も出来るギタリスト」のジョー・パスの3人がガッツリ組んで、完全にひとつの音を出しているようにスイングしてグルーヴしている三位一体のある種の究極が聴けるスグレものなのです。

ミルトとジョー・パスの両名は、派手に弾きまくればいくらでも派手に出来る人達。ところがここでその”派手”のカッコ良さが炸裂するのは『Blue Bossa』のみ。まずはコレが最高なんですが、アルバム全体ではスローやミディアムテンポで互いを支え合ってじっくり聴かせるナンバーが主です。

ボサ・ノヴァ曲の『Wave』など、涼やかにコーンと響くミルトのフレーズに丸みを帯びた優しい音色のジョー・パス、その両者のプレイにふくよかな低音で花を添えるレイ・ブラウン。演奏はこのパターンを堅持して進行して行きますが、普通に聴いていれば心地良く、意識して聴けばそんなさり気ない展開の中でやっている”実は凄いこと”の凄さに震える名人芸が仕込まれていて奥深いです。

ミルト・ジャクソンの素晴らしさ、まだまだ語り尽くせませんが今宵はこの辺で、以下に「ミルト聴くんならこれもいいよ」というアルバムのリンクも貼っておりますので、どうか併せてご覧ください。↓













ミルト・ジャクソン”関連記事




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2019年03月09日

ジョン・フェイヒィ レジェンド・オブ・ブラインド・ジョー・デス

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John Fahey/The Legend of Blind Joe Death
(Takoma)


え〜、アコースティック・ギター1本で歌ナシの曲を演奏する「ギターインストゥルメンタル」なるジャンルがありまして、2000年頃から一定の根強い人気を誇っております。

「へぇ〜ギター1本で?どんなことすんのかねぇ」

ぐらいの気持ちで聴いてみたら、単にコードをジャカジャカやったり、メロディをテロテロ弾くんじゃなくて、リズムもメロディも、果てはネックやボディを叩いたりするパーカッシブな小技も同時にやったりと、そのテクニカルな技術にド肝を抜かれるような凄いプレイヤーがこのジャンルにはいっぱいいて、しかも最近はYoutubeとかで見ても、アマチュアギタリストでギターインストやってる人達ってのは凄いですよね。

ほいでもって、やっている曲がまた、ロックでもカントリーでもジャズでもない、でもその全部の要素がひとつの楽曲の中に整然と入っているような、本当に独特の曲が多いです。


今日ご紹介するのは、アタシが思う「元祖ギター・インストゥルメンタル」ジョン・フェイヒイでございます。

まずですね、知らない人はこの人の名前、ぜひとも覚えて欲しいです。

もうね、この人は本当に凄いです。

アメリカにある色んなルーツ音楽、たとえばブルースとかカントリーとかフォークとかそういうもののギター演奏の最高のテクニックを、たった1本のアコースティック・ギターで、しかも歌ナシで完璧に弾きこなしてます。

とはいえそのプレイはあくまで穏やかで「どうだ凄いだろう」というような押しつけがましさは一切なく、それゆえにド派手な弾き倒しみたいな事はしない。そこに鳴っているのはギターの音だけなのに、まるでアコースティック・ギターの軽やかな伴奏に乗って見事に歌が歌われているような・・・、聴く人を優しく世界に引きずりこんで、そんな不思議な感覚に包み込んでしまう、ギタリストとかミュージシャンとかを越えた魔法使いのような人なのであります。


1930年代に生まれ、ワシントンD.C.という都会が故郷でありますが、カントリーやブルーグラスに夢中になって、やがて戦前のブルースにのめり込み、古いSP盤を探して曲を覚え、それらを完璧にマスターしてライヴで演奏し、1950年代から60年代にかけての”フォーク・ブルース・リヴァイバル”のきっかけも作りました。

元々メジャーになる気はなく、最初から自分のレーベルを作ってそこで淡々とレコーディングを行っては作品をリリースしているような人でありましたが、ルーツ・ミュージックを愛好するファンからの支持やミュージシャン達からのリスペクトは熱狂的なものがあり、アンダーグラウンドのカリスマとして、その素顔を滅多に表に出さない謎めいた存在感、ブルースやカントリーを軸としながらも、インド音楽などの即興演奏的要素も大胆に(しかし聴いてる分にはほとんど違和感なく)取り込んだミステリアスな音世界ともども、異彩を放ち続けます。

残念ながらフェイヒィ自身は2001年に亡くなりましたが、その時彼のギター・プレイを熱心に聴いて評価していたのは、音響系と呼ばれるエレクトロニカなロックの人達。

完全にアコースティックなフェイヒィのプレイに何故?と思いましたが、彼の特に即興演奏に興じている時の音色には、エレクトリックな機材を使っても敵わないナチュラルな物凄いトリップ感があると何かで読んで、確かに!と激しく共感したことを覚えております。



Complete Blind Joe Death


【収録曲】
1.On Doing An Evil Deed Blues
2.St. Louis Blues
3.Poor Boy, Long Ways from Home
4.Uncloudy Day
5.John Henry
6.In Christ There Is No East or West
7.Desperate Man Blues
8.Sun Gonna Shine in My Back Door Someday Blues
9.Sligo River Blues
10.On Doing An Evil Deed Blues
11.St. Louis Blues
12.Poor Boy, Long Ways from Home
13.Uncloudy Day
14.John Henry
15.In Christ There Is No East or West
16.Desperate Man Blues
17.Sun Gonna Shine in My Back Door Someday Blues
18 Sligo River Blues
19.I'm Gonna Do All I Can for My Lord
20.The Transcendental Waterfall
21.West Coast Blues


ご紹介するアルバムは、フェイヒィ初期の自家レーベル盤でございます。

ブルースを聴き始めた頃に彼はブラインド・ウィリー・ジョンソンブラインド・ウィリー・マクテルブラインド・レモン・ジェファソンといった戦前の伝説の盲目ブルースマン達の音楽とそのミステリアスな存在感に強く衝撃を受け、自らも”ブラインド・ジョー・デス”と名乗り「謎の盲目ギタリスト」として作品を世に出しておりましたが、これはその時期の音源をまとめたもの。


楽曲は古いブルースや、ブルース/カントリー以前のトラディショナル・ナンバーが多いです。親指でボンパンボンパンと的確なベースラインを刻みながら、人差し指で同時にメロディーを弾いてゆくスタイルは、目を閉じてじっくり聴かなくても、まるで1920年代30年代のSPレコードのノイズを除去したもののように聞こえます。少なくとも「これ、20代の若い白人ギタリストが弾いてるんだよ」と言われても、すんなり納得できる人はいないのではないでしょうか。

この人の演奏は、確かにフィンガーピキングからスライドまで、どんな奏法もスイスイこなせる完璧なギターテクニックの凄味が淡々と溢れてるんですが、それよりも何よりも、まるでそこで時間が止まったまま別次元に移行した音楽が延々と鳴り響いているような、そんな独特の「この世のものではない感じ」がありまして、それが恐ろしく中毒性高いんですよ。






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2019年03月02日

ザ・サイケデリック・サウンズ・オブ・13th・フロア・エレベーターズ

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The Psychedelic Sounds of the 13th Floor Elevators


お店に立ってた2000年代の前半に、トランス・ミュージックが流行った事がありました。

その頃の10代とか20代前半の人達は、メロコアやスカコアなどのパンク系やヒップホップを入り口に、自分が「お、これいいな」と思った音楽は、ジャンルとかとりあえず関係なく聴いてみるという、実に良い感性を持ってて、で、不思議とロック系ラップ系どちらも共通の「いいよな」ってのがボアダムスだったり、そんでもってボアダムスからトランスに行った若い人達が自分でスピーカーとかミキサーとかを屋外に持ち込んでイベントしたり、あれ今思うとレイヴってヤツですね、とにかくアクティヴに色々と面白い事をやってて楽しかったですね。

で、そんな時東京から帰ってきたばかりだったアタシは思った訳です。

「トランスってことはサイケだから、このいい機会にこの島で本格的にサイケデリックロックとかフリージャズとかを布教しよう」

と。


目論見はそこそこ成功して、その辺のトランス聴いてる若い人達は、レッド・クレイオラとかサン・ラーとかMC5とか、後期コルトレーンとかも熱心に聴いてくれるようになって、はい、アタシは凄く嬉しかったし今も嬉しいです。

そういう音楽がそこそこ受け入れられるようになってくると「ところでお兄さん”サイケ”って何すか?」という質問もよく受けるようになりまして、うぅ〜ん、そうねぇ、サイケデリックってのは60年代からアメリカで出回るようになったLSDっていう幻覚剤があってだね、その幻覚作用を感じさせるよーな音楽を、ガレージロックっつう・・・まぁこれはパンクみたいなもんだと思ってもらっていいんだけど、そういう激しい音楽やってる連中が始めたのが最初なんだよ。

ほれ、エフェクターとか使って音をギョーンとかびろーんとかホワンホワンホワンってやったりするのって、今はロックでも何でも簡単に出来るし効果音として当たり前になってるでしょ?でもその頃は少ない機材とかで色々と無理やってそういう音を出してたんだ。で、薬物やってるヤツがそれ聴くと「うはぁ!オレが飛んでる時そういえば音楽がこんな風に聞こえるよー!!」って、ますます飛ぶんだね。

「ほぉ〜ん、そうやって出来たのがサイケってんですね。わかりました。でも、そういうのって最初にやったバンドってあるんすか?」

と、言う鋭い質問が来る時のために、コーナーには常に13thフロア・エレベーターズを置いていたりもしました。

はい、13thフロア・エレベーターズは『元祖サイケ』と呼ばれる伝説のバンド。

ガレージロックがローカルなティーンエイジャー達に人気で、アメリカでもビートルズやストーンズっぽいのとか、もうちょっとブルースや50年代型のロックンロールのテイストが入ったのとか、割とポップなやつとか色々なバンドが出て一瞬の煌めきを放っていた1960年代半ばに、大大的にドラッグからの影響というものを前面に打ち出して「壊れたロック」をやって世界に衝撃を与えたのが13thフロアー・エレベーターズであります。

大体バンド名からして不吉な数字として忌み嫌われていた「13」が入ってるし、ファースト・アルバムはよくフリーメーソンの陰謀とか何とかで取り上げられる「ピラミッドの目」だったりするし、とにかく音楽性云々以前に、純粋なリスナーには「うへぇ、何だコイツらヤバそう」と思わせるに十分なインパクトを持っておりました。

サウンドの方も名前に全然負けておらず、一言で言っちゃえばヴォーカルのロッキー・エリソンの”奇行”がそのまんまマイク持って歌ってるかのような、通常のちょいヘナい声からいきなり感極まったようなハイトーンで絶叫するスタイルとか、ギタリストのステイシー・サザーランドによる、汚く歪んだファズトーンに、常識では考えられなかった大胆なエコー使い。

そして、究極に”おかしい”のが、何とこのバンドには”ジャグ”という工業用の瓶、つまりコレは戦前のブルースの形態でジャグバンドってのがあって、詳しくは下のリンク読んでくださいなんですが





この、手作り楽器バンドがベースの代わりに吹いてボンボン言ってた楽器を、エレキギターガンガンのロックで使って、で、呼び方は「エレクトリック・ジャグ」なんだと。演奏の中でもこれがずっと不自然にポコポコ言ってて、もしかしたらドラッグ云々よりコイツらの一番ヤバいところはここなんじゃないかと思うぐらいにインパクト強烈なんです。


この13thフロアー・エレベーターズ、1966年に音楽に関しては「行き過ぎ、やり過ぎ、イカレ過ぎ」な連中が定期的に輩出されるテキサスで結成され、この地を中心に活動をしておりました。

地元が同じテキサスのジャニス・ジョプリンやZZトップのビリー・ギボンズらは彼らのファンで、その音楽的な影響力がアンダーグラウンドからメジャーなロックにまで幅広く及んでいる事もあり、ロック史全体で重要なバンドとも言われておりますが、人気絶頂の1968年に解散の憂き目を見ました。

その理由が、よくある音楽性の違いとか金銭トラブルとかじゃなくて「薬物の使用に関する法律問題」で解散に追い込まれたという話ですから、まぁ本当に”よほど酷かった”んでしょう。

実際にヴォーカルのロッキー・エリクソンはかなりの情緒不安定で、ステージの下でも度重なる奇行を繰り返し、ギターのステイシーも薬物中毒により入院、78年に夫婦喧嘩がエスカレートして奥さんに射殺され死亡。”エレクトリック・ジャグ”のトミー・ホールも深刻な薬物中毒患者となり、その後新興宗教にハマっております。




PSYCHEDELIC SOUNDS OF(DEL


【収録曲】
1.You're Gonna Miss Me
2.Roller Coaster
3.Splash 1
4.Reverberation
5.Don't Fall Down
6.Fire Engine
7.Thru the Rhythm
8.You Don't Know (How Young You Are)
9.Kingdom of Heaven
10.Monkey Island
11.Tried to Hide
12.Everybody Needs Somebody to Love (Live)
13.You Really Got Me (Live)
14.Gloria (Live)
15.You're Gonna Miss Me (Live)


結局薬物に関するゴタゴタと、元々ベースとドラムが何度も入れ替わる不安定な編成によって解散した13thフロアー・エレベーターズ。

後に地道な治療によって精神の病が少しづつ回復してきたロッキー・エリクソンは、90年代以降13thフロアー・エレベーターズとしての活動をぼちぼち再開しますが、オリジナル・メンバー(つまりギターのステイシー・サザーランドとエレクトリック・ジャグのトミー・ホールが揃った編成)でリリースしたスタジオ・アルバムはたったの3枚。

その3枚はどれも「ガレージからサイケ」橋渡し期の起爆剤と呼ばれるにふさわしい、アシッドでエキセントリックな名盤であります。

で、その中でもやっぱりロックバンドとしてのテンションと「コイツらは一体何をやらかしてくれるんだろう」という不穏なスリルと衝動に満ち溢れた作品といえば、やはりファーストでしょう。

「テキサスから出て来た凶悪なサイケモンスター」の異名とは裏腹に、楽曲は意外にも高いポップ・センスを感じさせる、例えばビートルズのファーストとか、日本のGSにも通じる、60年代ならではのレトロでキャッチーな雰囲気。

ただ・・・、そう”ただ”なんです。

楽曲は非常にポップで、むしろ聴きやすいぐらいなんですが、ザラザラした異様な輪郭のギターのトーンと、泥酔しているかのようなヨレヨレの声が突如「アイィィィーーーー!アイィィィーーーー!」と何かが乗り移ったかのようなシャウト・ヴォーカル、そして、一番怪しいのが、曲調に関係なく「ポコポコポコポコポコポコ」と終始鳴っているエレクトリック・ジャグ。

普通”ジャグ”つったら、曲のリズムに合わせて「ボフッ、ボフッ」とベースラインを刻むはずなのですが、13thのジャグはそういう吹き方なんかしておらず、高い音を、多分声を使ってぷくぷく言ってるだけ。更にその音に微妙なエフェクターをかけてるのか、何だか楽器の音っていうより、レコードの中に住んでるちっちゃいゴリラがウホウホ言ってるような、せっかく他のメンバーが真面目にイカレた音を出しているのに何だお前は、全部ブチ壊しおってからに!と、ツッコミを入れたくなるんですが、いやでも13thの何だか得体の知れない破れて壊れた感じは、このエレクトリック・ジャグがいないと成り立たないよなぁと、いつの間にか、そう、いつの間にか聴く側に思わせてしまう、本当にエグい中毒性が高い、実に厄介かつ体に悪い音なんです。


「サイケデリック」なる概念を最初に音にしたのが13thフロアー・エレベーターズかどうかは、本当のところよく分かりません。行き過ぎ、やり過ぎで常識をぶっこわそうとしていたバンドは、この時代それこそ多くおりましたから。


しかし、それでもなおこの時代のイカレたロックンロールとしても13thの個性と狂気は突き抜けたレベルですし、何よりサウンド全体の「あちこち破れてちょうどいい感じ」や、エリクソンのヴォーカルの虚飾のない不安定ぶりや、何度聴いても何の脈絡もないエレクトリック・ジャグの異様な存在感ゆえに、単なるヴィンテージロックではない生々しさを、このアルバムからは今も感じてならんのです。






『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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