2019年04月22日

モンクス ブラック・モンク・タイム

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MONKS/BLACK MONK TIME
(Polydor)


パンクロックの直接の先祖となるガレージロックの存在を知ったのがハタチそこらの頃。

丁度オルタナやグランジブームが一通り落ち着いた後に60年代のリバイバル的な動きがロックの一部にあって、その頃ギターウルフやMAD3、ルルーズマーブルといったカッコいいバンドを知り「ガレージって良いな」と思っておりました。

で、ガレージの本場アメリカにはどんなバンドがいたんだろうと興味を持ち始めたそのタイミングで『ナゲッツ』というガレージロックのコンピレーションが発売になりまして、これがまた有名無名織り交ぜた(つうかその当時ほとんど知らないバンドばかり)、いい感じに雑多で混沌とした素晴らしいアルバムでした。

「ガレージ」と一口に言っても、その実は「アメリカのキッズ達が、”これがかっこいいロックだろう”というそれぞれのイメージを衝動にまかせて音にしている」という側面がありまして、爆音でファズギターをガンガン響かせながらがなりたてる、パンクロックのご先祖みたいなのもあれば、ビートルズをもっとポップにしたようなものもあったり、本当に色々なんです。

さて、そんな60年代の、ロックが正にアメリカで生まれておぎゃあと産声を上げているその瞬間を記録したような素晴らしいナゲッツBOXに、見た目も音を強烈な異彩を放っているバンドがおりました。

コレですよコレ。


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全員がキリスト教修道士の格好をして、しかもご丁寧にワシら日本人が「ザビエルカット」と呼んでいるあのてっぺんを剃り上げた髪型をしている(!!)


そんなイカした奴らのバンド名が、修道士(日本ではよくお坊さんと訳される)を意味する『モンクス』!

つっても彼らがホンモノの修道士な訳がなく、まぁ単なるジョークか、ロック一流の反骨精神の現れとして、こんな格好をしておったんじゃあなかろうかと思います。

まずアタシは、ナゲッツのブックレットに貼られた彼らの写真を見て大笑いすると共に、音を聴く前からファンになってしまったんですが、肝心の音の方は、良い意味で素人臭さのある他のバンド達よりもグッとまとまって力強く、楽曲のクオリティも相当高いような気がしました。

音はファズギターとやんちゃなオルガンを軸にした、いかにもハードなロックンロールといった感じで、シャウトするヴォーカル共々実に鋭く耳に刺さってくる硬派なサウンドの質感は、特にその時求めていた”ガレージ”のイメージにピッタリと合って、すっかりこのバンドには夢中にさせられてしまったんです。

もう見た目からして本当にアンダーグラウンドでマイナーなカルトバンドかと思ったら、実はデッド・ケネディーズやビースティ・ボーイズといった大物バンドの口から賞賛の声が出ていたり、元祖パンクと実験的ロック・ミュージックを繋いだバンドとして、意外やその後のミュージシャン達を中心に、実に真面目に高い評価を受けてた凄いバンドだったんですね。

モンクスの場合は、その経歴も実に個性的です。

まず、この人達は元々アメリカの兵隊さんです。

駐留軍としてドイツに赴任してきてバンドを結成、当初は基地内で流行のR&Bなどをカヴァーして演奏するバンドでしたが、やってるうちに段々楽しくなってきて、遂には任期が終わって本国へ帰る段になると

「何か楽しいからこっち残るわ。軍?あぁ当然辞めるね」

とアッサリ退役して本格的な音楽活動を始めたといいますから大したもんです。おじちゃんはこういう話大好きだ。




BLACK MONK TIME

1.Monk Time
2.Shut Up
3.Boys Are Boys and Girls Are Choice
4.Higgle-Dy-Piggle-Dy
5.I Hate You
6.Oh, How to Do Now
7.Complication
8.We Do Wie Du
9.Drunken Maria
10.Love Came Tumblin' Down
11.Blast Off!
12.That's My Girl
13.I Can't Get over You
14.Cuckoo
15.Love Can Tame the Wild
16.He Went Down to the Sea
17.Pretty Suzanne
18.Monk Chant (Live)


奇抜な出で立ちでまず人目を引いて、R&B仕込みの確かな演奏力でオーディエンスの耳をかっさらうモンクスは、ドイツを中心にカルト的人気をすぐに獲得しました。

そして当時はイギリスで、アメリカのブルースやR&B、ロックンロールなどに影響を受けたバンドがそれらを独自に練り上げたロックを次々生み出していた、俗にいう”ブリティッシュ・インヴェンション”勃興の時代。

モンクスはそんな音楽シーンの移り変わりの空気も敏感に取り入れ(イギリスで観たキンクスに強い衝撃を受けたそう)、激しく荒々しいサウンドを、英国流のキャッチーな楽曲で次々料理し、仕上がった音楽がこれまた典型的なアメリカンガレージでもブリティッシュ・ポップでもない、全く独特のロックだったという事で、その存在は本国アメリカから遠く大西洋を隔てたヨーロッパで、ますます異彩を放つことになります。

アルバム『ブラック・モンク・タイム』は、彼らの異彩に目を付けたドイツのメーカーがケルンでレコーディングした唯一のメジャーアルバムです。

アルバム全体を聴いてみると、コンピで収録されていた断片では分からなかった彼らの楽曲バリエーションの豊富さと、ひとつひとつの楽曲の完成度の高さ、そこに絡むファズギターやオルガンのぶっ飛んだプレイの凄まじさに驚きます。

彼らの評価としては「破壊衝動とポップさが絶妙なバランスで昇華した」とか「アメリカのガレージバンドにはないポップな曲作りが凄い」とかいうのがあって、それは確かにそうなんですが、例えばレッド・ツェッペリン登場より前に、高音を張り上げてシャウトするゲーリー・バーガーのヴォーカルとか、サイケデリックに先駆けて即興性が高く、既にソロやバッキングのあちこちで大胆にスケールアウトするオルガンとか、ポップさがブリティッシュのそれでは完全になく、後のドイツを代表する実験バンド「CAN」とも通じる、明るいんだけどどこかあやうい方向に行ってしまいしょうな狂気を孕んだものであったりとか、とにかく色んな要素がイギリス、アメリカ、ドイツなどの同時代のバンドと比べて”早い”んですよ。

加えてモンクスには「そのサウンドアイディアはどっから?」とか「この楽曲は誰から影響を受けた?」と思わせるような、妙な突然変異ぶりがあって、最初は「きゃーかっこいいー!ぶっとんでるー!」と思って聴いてたのに、いつの間にか深い闇の奥底に引き込まれるように真剣に聴いてしまうようになります。

再結成してライヴなどもやっていたようですが、2014年にヴォーカルのゲーリー・バーガーが亡くなってからの活動は不明。アルバムのブックレットには、いい感じのおじいちゃんになってもやっぱり修道士の格好をして楽しそうに演奏している彼らの写真が付いていたりして実にゴキゲンであります。






『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2019年04月21日

クリフォード・ブラウン ジャズ・イモータル

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クリフォード・ブラウンwith.ズート・シムズ/ジャズ・イモータル
(Pacific Jazz/ユニバーサル)

今だから白状しちゃいますが、アタシはどうもトランペットという楽器を、多少苦手としているところがあります。

トランペットという楽器は、その構造上、どうしても「鋭い音でけたたましく鳴り響く」という楽器としての特性を持っておるんです。

元々の歴史を紐解いても、金管楽器のご先祖であるところのラッパというやつが、軍隊で使う進軍ラッパがそのご先祖でありますので、これはある意味しょうがない。

実際にジャズという音楽で使われるようになってからでも、初期ニューオーリンズジャズで最初にソロ楽器としてバンドの花形のポジションに居たのはコルネットという、トランペットの前身楽器です。

サックスやクラリネットなど、他の管楽器もあったのに、どうしてコルネットがソロ楽器として注目を浴びたのかといえば、それもやはり「音のデカさ」ゆえ。

時が過ぎ、モダン・ジャズでもトランペットがソロやアンサンブルをリードする主役級の楽器として変わらず人気でありました。

そこでもやはり「パリパリパリ!」と力強い炸裂音のような轟を挙げて前に出るのがトランペットの醍醐味であり、コレが体調の良い時は「いいぞやれやれ!」と楽しく聴けるのですが、体がしんどい時はどうも受け付けない。

例外的に、わざとそのけたたましさを、穴にミュート突っ込んで抑えた奏法をやっていたマイルス・デイヴィス、そしておよそラッパらしからぬ、柔らかくて繊細な音で吹いているチェット・ベイカー(特に晩年のやつ)、そして、結構なボリュームで吹いてるはずなのにその響きにはどこか底無しの憂いが被さっているようなブッカー・リトルなんかは、最初からすんなり「お、いいな」と思って聴けました。

これはアタシの勝手な偏見であり、実はジャズにはただけたたましいだけではない素晴らしいトランぺッターはたくさんいるんだ。

と、気付かせてくれた素晴らしいトランぺッターのお話を今日はいたします。

クリフォード・ブラウンといえば、ジャズファンの中では、もしかしたらマイルス・デイヴィス以上に「モダン・ジャズを代表する名トランぺッター」と、高く評価する人も多いでしょう。

確かにこの人こそ、1940年代末に巻き起こったビ・バップ・ムーヴメントの中で、独特の流れるような美しいメロディ感覚と、力強さの中に繊細な響きを有する絶妙なバランスの上に成り立ったトーンでもって、その後のハードバップの軸となった「聴かせるトランペット」の基本形のようなスタイルを作り上げた人であります。

アート・ブレイキーの、初代ジャズ・メッセンジャーズのメンバーに抜擢され、更にマックス・ローチと自身のバンドを共に立ち上げて、まだ駆け出しの新人だったソニー・ロリンズをそこで起用し、さあいよいよこれから歴史を作って行くぜ、という時に、25歳の若さで不幸な事故によって天に召されてしまいますが、その人気も影響力も未だ根強く、多くのトランぺッターのプレイスタイルには、この人からの影響をどこかで必ず感じ取ることが出来る程であります。

ところがアタシは、そんなモダン・ジャズの代表格のようなトランぺッター、クリフォード・ブラウンを、よく知りもしない頃に聴かず嫌いをしておりました。

理由は「モダン・ジャズを代表するトランぺッターだから」

いやもう恥ずかしい限りなんですが、理由も何もない完全なる偏見です。偏見は絶対によくないですねぇ。



ジャズ・イモータル


【パーソネル】
クリフォード・ブラウン(tp)
スチュ・ウィリアムソン (valve-tb)
ズート・シムズ(ts)
ボブ・ゴードン(bs)
ラス・フリーマン(p)
ジョー・モンドラゴン(b, 1-3)
カーソン・スミス(b, 4-9)
シェリー・マン (ds)
ジャック・モントローズ(arr)

【収録曲】
1.タイニー・ケイパーズ
2.風と共に去りぬ
3.ファインダーズ・キーパーズ
4.ブルーベリー・ヒル
5.ジョイ・スプリング
6.ボーンズ・フォー・ジョーンズ
7.ボーンズ・フォー・ズート
8.ダーフード
9.タイニー・ケイパーズ(別テイク)
10.風と共に去りぬ(別テイク)


(録音:@〜C1954年7月12日、C〜H8月12日)


そんなアタシの偏見を見事打ち砕いていたのが、このズート・シムズを始めとした西海岸オールスターズとの素晴らしい共演アルバムです。

元々テナー吹きとして、ズート・シムズには何とも言えないラフでワイルド、でも仕事はキッチリする、カッコイイ男の魅力を感じておったので「ん、クリフォード・ブラウンの作品でもズートが入ってるんならハズレはなかろう」と、エラソーに思って買ったんですね。

しかしコレが、もう見事なぐらい見事に、ズート以上にクリフォード・ブラウンの、その流麗さの中に秘めたエモーションを感じさせるトランペットのカッコ良さに最初からヤラレてしまった、アタシにとっての非常にエポック・メイキングな(使い方合ってるかー)な1枚になったんです。

1950年代、モダンジャズの主流はニューヨークを中心とした東海岸と、LAやサンフランシスコのある西海岸とでそのスタイルを異にしておりました。


ニューヨークはあちこちから集まって来たミュージシャン達が、日々クラブで切磋琢磨して、日々新しい”演奏の現場のジャズ”をホットに演奏し、ミュージシャンもバンドも非常に勢いがあり、一方の西海岸は映画の都ハリウッドがあって、そこで映画音楽の仕事をするミュージシャン達によって、小粋で華やかなアレンジが発展し、ニューヨークとはまた違った独自のジャズが盛り上がっておりました。


クリフォード・ブラウンは言うまでもなく、ニューヨークでバリバリに名を売って全国規模の人気を誇っていた東海岸派。

ズート・シムズも後にニューヨークに出て来て多くのアルバムをリリースしておりますが、元々はカリフォルニア生まれの西海岸っ子であります。

そして、バックを固めるミュージシャン達は、全て西海岸で活動していた腕利きが揃い、彼らがしっかりキッチリ固めた土台の上を、クリフォード・ブラウンがの華麗なアドリブが舞う、舞う、舞う!で、本当に美しいんですよねぇ。

元々クリフォードのトランペットは、ブルージーなコクを醸しながらも爽やかでスマートな味わいがあるのですが、それが軽やかな西海岸アレンジにとてもマッチしていて、とかくジャズといえば「この人のこのプレイが!」とか「炸裂するエモーションがっ!」とか、そういう脳味噌にアタシもなりがちなんですが、ここでは最初から最後まで変わらぬテンションで、ジャズどうのの前に「最高にくつろげる上質な音楽」がじっくりと味わい深く演奏されております。

編成は4本のホーンが入ったセブンテットというなかなかの大所帯なんですが、ズートもスチュ・ウィリアムスンもボブ・ゴードンも、派手なソロは取らずに素晴らしいハーモニーで主役を立てる事に専念。サラッと安心して聴けるけど、よくよく耳を澄ますとその綿密なアンサンブルの美しさの細かい所に「すげー」と感動することうけあい。

特に評価の高いマックス・ローチとの双頭リーダー作や、ジャズ・メッセンジャーズでの「良い感じの激しさの中で目立つ流麗なトランペット」ももちろんたまらんものがありますが、ここでの終始落ち着いたプレイも良いもんです。てか、クリフォード・ブラウンはどれも良い。聴かず嫌いを激しく後悔しているアタシが言うんだから間違いないです。





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2019年04月19日

オーティス・スパン ウォーキング・ザ・ブルース

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オーティス・スパン/ウォーキング・ザ・ブルース
(CANDID)


さてさて、前回『オーティス・スパン・イズ・ザ・ブルース』を紹介したら、いやもうすっかりいい感じにアタシ酔ってしまいましてね〜♪





「いや、おめぇ酒飲めねぇじゃねぇか」

なんてツッコミはナシでお願いしますね〜、酒は一口入れただけで後ろにそのまんまひっくり返ってしまうんですが、だからこそ音楽で酔っぱらうって感覚を大事にしていますんで、えぇ。

まぁそれはどうでもよろしい。

『オーティス・スパン・イズ・ザ・ブルース』は、それまでマディ・ウォーターズの寡黙なサイドマンとして、その最強のバンドサウンドの中で重厚な存在感を放っていた名ピアニスト、スパンがソロ・アーティストとして世に出るきっかけとなった1960年のキャンディッド・セッションなのですが、実はこのセッションには続きがあります。

それが本日ご紹介する『ウォーキング・ザ・ブルース』であります。

これがまた、スパンのピアノとロバート・ジュニア・ロックウッドのギターの素晴らしさを、とことん無駄のないアレンジと生々しい臨場感で味わえる、前作と全く変わらないテンションの演奏なので、はい、こちらもオーティス・スパンを聴いてみたい、いや「ブルースのピアノで何かいいのないの〜?」って人には、1も2もなく絶対の自信を持ってオススメ出来る素晴らしい作品です。

実際、店頭でCDを売っていた頃、このアルバムはなかなかの頻度で売れました。

大体お店がヒマな午後1時から3時ぐらいの時間にボケーっと流していたら

「今かかってるの何ですか?」

と、お客さんに尋ねられて売れるパターンと

ジャズやブルースに興味がありそうな若いお客さんが、しばらくジャケットをじーっと見て

「・・・あの、これどんな感じですか?」

とおもむろに尋ねて、やっぱり試聴して

「これはヤバいですねー!」

と、喜んで買っていくパターンとがあったんですが、どちらのパターンもお客さんは

「ブルースはそんな知らない、オーティス・スパンは名前すら聴いたことがない」

という方ばかりでした。


色んな人が「ブルース」と聞いたら思い描くそれぞれのサウンドってのがあると思うんですが、スパンとロックウッドのデュオが醸す

「ピアノとギターが間合いや隙間を活かしながら無駄なく存分に歌ってて、かつヴォーカルに何とも言えない渋い味わいがある」

この感じが、多くの人が思う

「これがブルース!」

という理想にピッタリと合ったんだと思います。


現にアタシなんかも

「一番好きなブルースのスタイル」

といえば、時代や編成(アコースティックorエレキ)を問わず

「何だか行き過ぎやり過ぎのぶっこわれスタイル」

だったりするんですが、ここでのスパンとロックウッドの「言葉より語る深いやりとり」を聴くともうグゥの音も出ない。

もし、この2人のレコーディングの現場にアタシが居たとしましょう。

で、演奏の後にスパンかロックウッドに

「小僧よく覚えとけ、コレがブルースだ」

と言われたら、はいはいそうでございます、これ以上にブルースな音はそうありません。と、直立不動で答えることでありましょう。


それぐらいブルース。


2人は言うまでもなくこの時代の一流の演奏家であり、こと”フレーズのやりとり”に関しては(特にロックウッドの方は)かなり高度な事をやっています。

しかし、二人のやりとりは高度でありながら、その練りに練られたフレーズから、難解さや理屈っぽさはむしろ積極的にそぎ落とし、持てる技術やセンスの全てを「音そのものにどう魂を込めるか」みたいな事に注ぎ込んでおるかのようです。

とにかくもうスパンのピアノの強烈なアタック、歌のバックでも間奏でも「ここ!」という時に感情剥き出しの「ガガガ!ガガガ!」という3連譜を、何もかもかなぐり捨てて鬼のようにぶっこんでくる場面では『オーティス・スパン・イズ・ザ・ブルース』同様したたかに側頭部をヤラレる上に問答無用で鳥肌まで立たせられます。




Walking the Blues


【収録曲】
1.It Must Have Been The Devil
2.Otis Blues
3.Goin' Down Slow
4.Half Ain't Been Told
5.Monkey Face Blues
6.This Is The Blues
7.Can't Stand Your Evil Ways
8.Come Day, Go Day
9.Walkin' The Blues
10.Bad Condition
11.My Home Is In The Delta

そして、この一連のキャンディッド・セッションは、ロバート・ジュニア・ロックウッドにとっても、世間には初めて「ロバート・ジュニア・ロックウッドという凄いヤツがいる」と知らしめるきっかけになったセッションなんです。

ロックウッドが16歳の頃、シングルマザーだった母親に恋人が出来たんですな。

それがかのロバート・ジョンソンで、二人は「歳の近い親子」というよりは、まるで兄弟のように親しく接していた。

で、他人には警戒して演奏中の指の動きも見られるのも嫌がったロバートだけど、ロックウッドには「ちょいと来い、あの曲はこうやって弾くんだ」と、直接ギターの手ほどきもしたといいます。

そんな訳でロックウッドという人には何かと「ロバート・ジョンソンの義理の息子」という形容が付いて回ります。

晩年には真面目に訊かれさえすれば、ロバート・ジョンソンの事や、彼から受けたギターの影響なんかの話も丁寧に答えていたロックウッドではありますが、若い頃は同郷の先輩後輩の多いシカゴで「ロバート・ジョンソンの」と言われてもてはやされるのを嫌がり、その事に関しては一切口にも出さず、また、ソロ・ミュージシャンとかバンドリーダーとか、そういう目立つポジションにいるとやっぱりロバート・ジョンソンの義理の息子という出自に注目が集まりそうだったので、サイドマンとして目立たず活動してたんだとかいう話もあります。

そんなロックウッドが、眠れる巨人として初めて立ち上がり、バンド編成ではないデュオで、ソロにバッキングにと縦横無尽にそれまで培ってきたサポートギターの至芸を、主役と対等のボリュームで発揮しまくる(!)

1960年といえば、B.B.キングの影響を受けた若い世代のブルースマン達が、如何に派手なソロで聴く人を圧倒するかを競っていた時代。

そんな時代に「ブルースギターってのはな、押しだけじゃねぇんだよ」とばかりに、押し引き両方で聴く人を引き込んで圧倒するギター。いやもうギターをやっている人がこんなプレイを聴かされたらたまったもんじゃないですね。だって歌やピアノのバックに回っても、前に出てる音を一切邪魔しないで完璧に「このギターがないとこれは成り立たない」というプレイを軽々と披露するんですもの。


最後にこのアルバムでのみ、ゲスト・ヴォーカルとして4曲でセントルイス・ジミーという人が参加しております。

この人は戦前にスパンの大先輩であるピアニスト、ルーズヴェルト・サイクスとコンビを組んでヒットを放った人なんですが、程良く力の抜けた、いい感じに酔っぱらったようなヴォーカルが、緊張感溢れる2人のプレイと見事な対照となっていてとっても良いのです。

つうか3曲目の『ゴーイン・ダウン・スロウ』が素晴らしいですね。ほへ〜んとマイペースに歌ってるセントルイス・ジミーのバックで暴れまくるスパンのピアノ。鍵盤を叩き付け、掻きむしり、転がしまくるオブリガードをガンッガンに畳み掛けてくるんだけど、全体がこれ以上バランスが崩れたら音楽として崩壊するギリギリで持ちこたえて最高の演奏になっている。ブルースって何だ?これがブルースだ。



(その昔サウンズパルでこのアルバムをお買い上げ頂いた高野雲さんもいい感じにレビューしてくれてます、興味持たれた方はぜひコチラも読んでくださいね♪↓)
http://cafemontmartre.tokyo/music/blues/walking_blues/








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ブルース入門編 〜初心者のための優しいブルース講座〜



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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