2019年04月14日

ラッキー・トンプソン ラッキー・ストライクス

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ラッキー・トンプソン/ラッキー・ストライクス
(Prestige/OJC)


はぁぁぁあああああい皆さん、大変お久しぶりです。

実はアタシは生活のために正業をやっておりまして、2月後半から4月ってのは、その正業がすっごいすっごいすっごい忙しい時期で、ちょいとブログからは遠ざかっておりました。

忙しいと音楽を聴く時も中身をじっくり落ち着いて・・・という風にいかなくなりますし、日中の疲れのせいで聴ける音楽というのも限られてきます。

家に帰って激しく困憊している時の音楽といえば、アタシにとってはこれはもうジャズであります。

しかも、個人的にはとても好きなフリージャズとかではなく、どっちかというと「さあ聴くぞ!」と気合いを入れなくても楽しめる、くつろいだ雰囲気のモダン・ジャズがいい。

それにしても、例えばマイルス・デイヴィスとかジョン・コルトレーンとかチャーリー・パーカーとか、そういうビッグネームのよりかは、その周辺でイイ味を出している、知る人ぞ知るぐらいの知名度の人の演奏が程良くて、疲れた心と体にはじんわり染みるものが多いような気がします。

大河ドラマなんかそうですよね。主役はその時代をときめくスターや注目の若手が演じる事が多いのですが、大河の肝である重厚な雰囲気というのは、やっぱりその脇を固めるベテランや個性の強い役者さん達の演技如何にかかってる、えぇ、ジャズもやっぱりなんつうかそういうところがあるようなんです。

で、ここんところアタシのヘロヘロな心身をいい感じのジャズで癒してくれるのがこの人、ラッキー・トンプソンです。


このラッキーストライクのジャケットを見れば、ジャズ好きならば「あぁ、知ってる知ってる!」となる人で、良い加減の豪快さと音色の暖かさを持つ、実に深いテナー・サックスの職人芸で聴かせてくれる人。

40年代から活動するベテランで「スウィングからビ・バップに至る過程でのジャズ・サックスのモダン化に多大な功績を残した重要なプレイヤー」とも評され、メロディ感覚にブレがなく、自然に豊かにアドリブを飛躍させる堅実なプレイは、チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピー、ミルト・ジャクソン、マイルス・デイヴィスといった仲間のミュージシャン達からも高く評価されておりましたが、ミュージシャンをまるで物のように使い捨てにしていた音楽業界のシステムに対してかなり厳しい姿勢で抵抗した人で、結局リーダー作も少なくスターダムには上がることのなかった気骨の人でもあります。





Lucky Strikes

【パーソネル】
ラッキー・トンプソン(ss,ts)
ハンク・ジョーンズ(p)
リチャード・デイビス(b)
コニー・ケイ(ds)

【収録曲】
1.イン・ア・センチメンタル・ムード
2.フライ・ウィズ・ザ・ウィンド
3.ミッドナイト・オイル
4.レミニセント
5.ムンバ・ヌーア
6.アイ・フォーガット・リメンバー
7.プレイ・ルート
8.インヴィテーション

(録音:1964年9月15日)

1940年から50年代初頭にライオネル・ハンプトンやカウント・ベイシー、ビリー・エクスタインといった人気オーケストラのメインソロイストとして大活躍しながら、50年代半ばには未だ人種差別が色濃く残るアメリカのシーンに見切りを付ける形でヨーロッパへと移住したトンプソン。

結局そこでも満足の行く活動が出来なかったのか、1963年には再びアメリカへ舞い戻り、何枚かレコーディングをした後に今度はスイスへ行き、またすぐアメリカへ戻って今度は音楽学校の先生をしながら演奏活動もしていたんですが、結局その後は消息を絶ち、90年代にはホームレスをやっていたとも言われており、不遇の中で最終的には生活保護者の保護施設で2005年に81歳の生涯を終えております。


その才能を認められながらも商業的な成功を手にすることはなく、ひっそりと消えて行ったミュージシャンではありますが、それ故に彼の残した音楽は、どれもほんのりとした哀しみに彩られたもののように感じてしまいながら、ついつい聴き入ってしまいます。


個人的に最高だと思うアルバムが、1964年の『ラッキー・ストライクス』。

1964年秋、つまり最初のヨーロッパ移住を終えて帰国したトンプソンが、アメリカで勝負をかけて(いたと思う、きっと)レコーディングしたアルバムです。

恐らく藁をも掴む思いでトンプソンはレコーディングのチャンスを手にしたとは思うのですが、そのレコード会社は正統なギャラを払わない事で悪名高かったプレステイジ。

結局このアルバムも本人の魂込めた演奏に見合った報酬を彼にもたらすこともなく、失意のトンプソンは今度はスイスに旅立ってしまう訳ですが(どうして意欲的なレコード会社のあったフランスやドイツじゃなくてスイスだったんだろうと、ここでも彼の不運を思って胸が詰まります)、その代わり彼の演奏と参加したメンバーは素晴らしいの一言ではとても片付けられない程に秀逸であります。

トンプソンのテナーやソプラノは、凄い技巧を派手に披露して吹きまくる類のものではありません。

むしろひとつひとつの音を、ゆっくりと噛み締めるように丁寧に吹く、まるで穏やかな語り口調のようなサックス。それを上品な絹糸でくるむように、優しくサポートするハンク・ジョーンズのピアノがまず美しいし、淡々と時を刻みながらアドリブのストーリーを豊かに膨らませてゆくリチャード・デイヴィスのベースとコニー・ケイのドラムのコンビネーション、それらが憂いを帯びた穏やかさの中で、何を求めるでもなく、ただしっとりとたゆたっている様が何とも言えません。

ビブラートがほとんどない、ため息のようなソプラノが奏でる『イン・ア・センチメンタル・ムード』、柔らかなテナーの音が隅々まで切ない『アイ・フォーガット・リメンバー』の2曲のバラードがまずもってオススメですが、ミディアム・テンポのブルージーな曲も、やっぱりどこか切なくて音そのものや音の隙間から、ほろほろとこぼれてくるやるせなさを感じるのがいいんですよね。










『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 22:54| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする