2019年04月19日

オーティス・スパン ウォーキング・ザ・ブルース

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オーティス・スパン/ウォーキング・ザ・ブルース
(CANDID)


さてさて、前回『オーティス・スパン・イズ・ザ・ブルース』を紹介したら、いやもうすっかりいい感じにアタシ酔ってしまいましてね〜♪





「いや、おめぇ酒飲めねぇじゃねぇか」

なんてツッコミはナシでお願いしますね〜、酒は一口入れただけで後ろにそのまんまひっくり返ってしまうんですが、だからこそ音楽で酔っぱらうって感覚を大事にしていますんで、えぇ。

まぁそれはどうでもよろしい。

『オーティス・スパン・イズ・ザ・ブルース』は、それまでマディ・ウォーターズの寡黙なサイドマンとして、その最強のバンドサウンドの中で重厚な存在感を放っていた名ピアニスト、スパンがソロ・アーティストとして世に出るきっかけとなった1960年のキャンディッド・セッションなのですが、実はこのセッションには続きがあります。

それが本日ご紹介する『ウォーキング・ザ・ブルース』であります。

これがまた、スパンのピアノとロバート・ジュニア・ロックウッドのギターの素晴らしさを、とことん無駄のないアレンジと生々しい臨場感で味わえる、前作と全く変わらないテンションの演奏なので、はい、こちらもオーティス・スパンを聴いてみたい、いや「ブルースのピアノで何かいいのないの〜?」って人には、1も2もなく絶対の自信を持ってオススメ出来る素晴らしい作品です。

実際、店頭でCDを売っていた頃、このアルバムはなかなかの頻度で売れました。

大体お店がヒマな午後1時から3時ぐらいの時間にボケーっと流していたら

「今かかってるの何ですか?」

と、お客さんに尋ねられて売れるパターンと

ジャズやブルースに興味がありそうな若いお客さんが、しばらくジャケットをじーっと見て

「・・・あの、これどんな感じですか?」

とおもむろに尋ねて、やっぱり試聴して

「これはヤバいですねー!」

と、喜んで買っていくパターンとがあったんですが、どちらのパターンもお客さんは

「ブルースはそんな知らない、オーティス・スパンは名前すら聴いたことがない」

という方ばかりでした。


色んな人が「ブルース」と聞いたら思い描くそれぞれのサウンドってのがあると思うんですが、スパンとロックウッドのデュオが醸す

「ピアノとギターが間合いや隙間を活かしながら無駄なく存分に歌ってて、かつヴォーカルに何とも言えない渋い味わいがある」

この感じが、多くの人が思う

「これがブルース!」

という理想にピッタリと合ったんだと思います。


現にアタシなんかも

「一番好きなブルースのスタイル」

といえば、時代や編成(アコースティックorエレキ)を問わず

「何だか行き過ぎやり過ぎのぶっこわれスタイル」

だったりするんですが、ここでのスパンとロックウッドの「言葉より語る深いやりとり」を聴くともうグゥの音も出ない。

もし、この2人のレコーディングの現場にアタシが居たとしましょう。

で、演奏の後にスパンかロックウッドに

「小僧よく覚えとけ、コレがブルースだ」

と言われたら、はいはいそうでございます、これ以上にブルースな音はそうありません。と、直立不動で答えることでありましょう。


それぐらいブルース。


2人は言うまでもなくこの時代の一流の演奏家であり、こと”フレーズのやりとり”に関しては(特にロックウッドの方は)かなり高度な事をやっています。

しかし、二人のやりとりは高度でありながら、その練りに練られたフレーズから、難解さや理屈っぽさはむしろ積極的にそぎ落とし、持てる技術やセンスの全てを「音そのものにどう魂を込めるか」みたいな事に注ぎ込んでおるかのようです。

とにかくもうスパンのピアノの強烈なアタック、歌のバックでも間奏でも「ここ!」という時に感情剥き出しの「ガガガ!ガガガ!」という3連譜を、何もかもかなぐり捨てて鬼のようにぶっこんでくる場面では『オーティス・スパン・イズ・ザ・ブルース』同様したたかに側頭部をヤラレる上に問答無用で鳥肌まで立たせられます。




Walking the Blues


【収録曲】
1.It Must Have Been The Devil
2.Otis Blues
3.Goin' Down Slow
4.Half Ain't Been Told
5.Monkey Face Blues
6.This Is The Blues
7.Can't Stand Your Evil Ways
8.Come Day, Go Day
9.Walkin' The Blues
10.Bad Condition
11.My Home Is In The Delta

そして、この一連のキャンディッド・セッションは、ロバート・ジュニア・ロックウッドにとっても、世間には初めて「ロバート・ジュニア・ロックウッドという凄いヤツがいる」と知らしめるきっかけになったセッションなんです。

ロックウッドが16歳の頃、シングルマザーだった母親に恋人が出来たんですな。

それがかのロバート・ジョンソンで、二人は「歳の近い親子」というよりは、まるで兄弟のように親しく接していた。

で、他人には警戒して演奏中の指の動きも見られるのも嫌がったロバートだけど、ロックウッドには「ちょいと来い、あの曲はこうやって弾くんだ」と、直接ギターの手ほどきもしたといいます。

そんな訳でロックウッドという人には何かと「ロバート・ジョンソンの義理の息子」という形容が付いて回ります。

晩年には真面目に訊かれさえすれば、ロバート・ジョンソンの事や、彼から受けたギターの影響なんかの話も丁寧に答えていたロックウッドではありますが、若い頃は同郷の先輩後輩の多いシカゴで「ロバート・ジョンソンの」と言われてもてはやされるのを嫌がり、その事に関しては一切口にも出さず、また、ソロ・ミュージシャンとかバンドリーダーとか、そういう目立つポジションにいるとやっぱりロバート・ジョンソンの義理の息子という出自に注目が集まりそうだったので、サイドマンとして目立たず活動してたんだとかいう話もあります。

そんなロックウッドが、眠れる巨人として初めて立ち上がり、バンド編成ではないデュオで、ソロにバッキングにと縦横無尽にそれまで培ってきたサポートギターの至芸を、主役と対等のボリュームで発揮しまくる(!)

1960年といえば、B.B.キングの影響を受けた若い世代のブルースマン達が、如何に派手なソロで聴く人を圧倒するかを競っていた時代。

そんな時代に「ブルースギターってのはな、押しだけじゃねぇんだよ」とばかりに、押し引き両方で聴く人を引き込んで圧倒するギター。いやもうギターをやっている人がこんなプレイを聴かされたらたまったもんじゃないですね。だって歌やピアノのバックに回っても、前に出てる音を一切邪魔しないで完璧に「このギターがないとこれは成り立たない」というプレイを軽々と披露するんですもの。


最後にこのアルバムでのみ、ゲスト・ヴォーカルとして4曲でセントルイス・ジミーという人が参加しております。

この人は戦前にスパンの大先輩であるピアニスト、ルーズヴェルト・サイクスとコンビを組んでヒットを放った人なんですが、程良く力の抜けた、いい感じに酔っぱらったようなヴォーカルが、緊張感溢れる2人のプレイと見事な対照となっていてとっても良いのです。

つうか3曲目の『ゴーイン・ダウン・スロウ』が素晴らしいですね。ほへ〜んとマイペースに歌ってるセントルイス・ジミーのバックで暴れまくるスパンのピアノ。鍵盤を叩き付け、掻きむしり、転がしまくるオブリガードをガンッガンに畳み掛けてくるんだけど、全体がこれ以上バランスが崩れたら音楽として崩壊するギリギリで持ちこたえて最高の演奏になっている。ブルースって何だ?これがブルースだ。



(その昔サウンズパルでこのアルバムをお買い上げ頂いた高野雲さんもいい感じにレビューしてくれてます、興味持たれた方はぜひコチラも読んでくださいね♪↓)
http://cafemontmartre.tokyo/music/blues/walking_blues/








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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 21:55| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする