2019年04月21日

クリフォード・ブラウン ジャズ・イモータル

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クリフォード・ブラウンwith.ズート・シムズ/ジャズ・イモータル
(Pacific Jazz/ユニバーサル)

今だから白状しちゃいますが、アタシはどうもトランペットという楽器を、多少苦手としているところがあります。

トランペットという楽器は、その構造上、どうしても「鋭い音でけたたましく鳴り響く」という楽器としての特性を持っておるんです。

元々の歴史を紐解いても、金管楽器のご先祖であるところのラッパというやつが、軍隊で使う進軍ラッパがそのご先祖でありますので、これはある意味しょうがない。

実際にジャズという音楽で使われるようになってからでも、初期ニューオーリンズジャズで最初にソロ楽器としてバンドの花形のポジションに居たのはコルネットという、トランペットの前身楽器です。

サックスやクラリネットなど、他の管楽器もあったのに、どうしてコルネットがソロ楽器として注目を浴びたのかといえば、それもやはり「音のデカさ」ゆえ。

時が過ぎ、モダン・ジャズでもトランペットがソロやアンサンブルをリードする主役級の楽器として変わらず人気でありました。

そこでもやはり「パリパリパリ!」と力強い炸裂音のような轟を挙げて前に出るのがトランペットの醍醐味であり、コレが体調の良い時は「いいぞやれやれ!」と楽しく聴けるのですが、体がしんどい時はどうも受け付けない。

例外的に、わざとそのけたたましさを、穴にミュート突っ込んで抑えた奏法をやっていたマイルス・デイヴィス、そしておよそラッパらしからぬ、柔らかくて繊細な音で吹いているチェット・ベイカー(特に晩年のやつ)、そして、結構なボリュームで吹いてるはずなのにその響きにはどこか底無しの憂いが被さっているようなブッカー・リトルなんかは、最初からすんなり「お、いいな」と思って聴けました。

これはアタシの勝手な偏見であり、実はジャズにはただけたたましいだけではない素晴らしいトランぺッターはたくさんいるんだ。

と、気付かせてくれた素晴らしいトランぺッターのお話を今日はいたします。

クリフォード・ブラウンといえば、ジャズファンの中では、もしかしたらマイルス・デイヴィス以上に「モダン・ジャズを代表する名トランぺッター」と、高く評価する人も多いでしょう。

確かにこの人こそ、1940年代末に巻き起こったビ・バップ・ムーヴメントの中で、独特の流れるような美しいメロディ感覚と、力強さの中に繊細な響きを有する絶妙なバランスの上に成り立ったトーンでもって、その後のハードバップの軸となった「聴かせるトランペット」の基本形のようなスタイルを作り上げた人であります。

アート・ブレイキーの、初代ジャズ・メッセンジャーズのメンバーに抜擢され、更にマックス・ローチと自身のバンドを共に立ち上げて、まだ駆け出しの新人だったソニー・ロリンズをそこで起用し、さあいよいよこれから歴史を作って行くぜ、という時に、25歳の若さで不幸な事故によって天に召されてしまいますが、その人気も影響力も未だ根強く、多くのトランぺッターのプレイスタイルには、この人からの影響をどこかで必ず感じ取ることが出来る程であります。

ところがアタシは、そんなモダン・ジャズの代表格のようなトランぺッター、クリフォード・ブラウンを、よく知りもしない頃に聴かず嫌いをしておりました。

理由は「モダン・ジャズを代表するトランぺッターだから」

いやもう恥ずかしい限りなんですが、理由も何もない完全なる偏見です。偏見は絶対によくないですねぇ。



ジャズ・イモータル


【パーソネル】
クリフォード・ブラウン(tp)
スチュ・ウィリアムソン (valve-tb)
ズート・シムズ(ts)
ボブ・ゴードン(bs)
ラス・フリーマン(p)
ジョー・モンドラゴン(b, 1-3)
カーソン・スミス(b, 4-9)
シェリー・マン (ds)
ジャック・モントローズ(arr)

【収録曲】
1.タイニー・ケイパーズ
2.風と共に去りぬ
3.ファインダーズ・キーパーズ
4.ブルーベリー・ヒル
5.ジョイ・スプリング
6.ボーンズ・フォー・ジョーンズ
7.ボーンズ・フォー・ズート
8.ダーフード
9.タイニー・ケイパーズ(別テイク)
10.風と共に去りぬ(別テイク)


(録音:@〜C1954年7月12日、C〜H8月12日)


そんなアタシの偏見を見事打ち砕いていたのが、このズート・シムズを始めとした西海岸オールスターズとの素晴らしい共演アルバムです。

元々テナー吹きとして、ズート・シムズには何とも言えないラフでワイルド、でも仕事はキッチリする、カッコイイ男の魅力を感じておったので「ん、クリフォード・ブラウンの作品でもズートが入ってるんならハズレはなかろう」と、エラソーに思って買ったんですね。

しかしコレが、もう見事なぐらい見事に、ズート以上にクリフォード・ブラウンの、その流麗さの中に秘めたエモーションを感じさせるトランペットのカッコ良さに最初からヤラレてしまった、アタシにとっての非常にエポック・メイキングな(使い方合ってるかー)な1枚になったんです。

1950年代、モダンジャズの主流はニューヨークを中心とした東海岸と、LAやサンフランシスコのある西海岸とでそのスタイルを異にしておりました。


ニューヨークはあちこちから集まって来たミュージシャン達が、日々クラブで切磋琢磨して、日々新しい”演奏の現場のジャズ”をホットに演奏し、ミュージシャンもバンドも非常に勢いがあり、一方の西海岸は映画の都ハリウッドがあって、そこで映画音楽の仕事をするミュージシャン達によって、小粋で華やかなアレンジが発展し、ニューヨークとはまた違った独自のジャズが盛り上がっておりました。


クリフォード・ブラウンは言うまでもなく、ニューヨークでバリバリに名を売って全国規模の人気を誇っていた東海岸派。

ズート・シムズも後にニューヨークに出て来て多くのアルバムをリリースしておりますが、元々はカリフォルニア生まれの西海岸っ子であります。

そして、バックを固めるミュージシャン達は、全て西海岸で活動していた腕利きが揃い、彼らがしっかりキッチリ固めた土台の上を、クリフォード・ブラウンがの華麗なアドリブが舞う、舞う、舞う!で、本当に美しいんですよねぇ。

元々クリフォードのトランペットは、ブルージーなコクを醸しながらも爽やかでスマートな味わいがあるのですが、それが軽やかな西海岸アレンジにとてもマッチしていて、とかくジャズといえば「この人のこのプレイが!」とか「炸裂するエモーションがっ!」とか、そういう脳味噌にアタシもなりがちなんですが、ここでは最初から最後まで変わらぬテンションで、ジャズどうのの前に「最高にくつろげる上質な音楽」がじっくりと味わい深く演奏されております。

編成は4本のホーンが入ったセブンテットというなかなかの大所帯なんですが、ズートもスチュ・ウィリアムスンもボブ・ゴードンも、派手なソロは取らずに素晴らしいハーモニーで主役を立てる事に専念。サラッと安心して聴けるけど、よくよく耳を澄ますとその綿密なアンサンブルの美しさの細かい所に「すげー」と感動することうけあい。

特に評価の高いマックス・ローチとの双頭リーダー作や、ジャズ・メッセンジャーズでの「良い感じの激しさの中で目立つ流麗なトランペット」ももちろんたまらんものがありますが、ここでの終始落ち着いたプレイも良いもんです。てか、クリフォード・ブラウンはどれも良い。聴かず嫌いを激しく後悔しているアタシが言うんだから間違いないです。





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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 21:04| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする