2019年04月29日

カウント・ベイシー カンザス・シティ・セヴン

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カウント・ベイシー/カンザス・シティ・セヴン
(Impulse!/ユニバーサル)


ジャズを構成する最も大事なものとして「スイング(スウィング)」とか「スイング(スウィング)感」というものがあります。

ほんでもってアタシはよく、ジャズの初心者ですって方から

「あの〜、アンタさっきからスイングスイング言ってるけど、そのスイングってのの意味がわからん」

と言われます。

あちゃー、そうですよねー。ジャズ好きの間では当たり前に使われる言葉で、ついアタシも「分かってること前提」で当たり前に使っちゃいますが、いやいや、こういうのがいかんのです。だからジャズは難しいとか敷居が高いとか思われちゃう、うぅ・・反省・・・。

「スイング」ってのはですね、えぇと、アレですよ。ジャズのゴキゲンなリズムを聴いていると、自然と体が小刻みに揺れたり、指とか手とかがリズムに合わせて動いたりするでしょう。そう、それがスイングなんです(!)

ん〜、それでもよく分かんないという方には、スイングという言葉ひとまず置いといて、音楽全般で使われる「グルーヴ」ってヤツはどうですかね?それでもピンと来ない方にはバイブス!これでどうだ!!

つまり「スイング」ってのは、言葉ではうまく説明できないけど、音楽からは確実に感じる事の出来るノリのことだと思って頂ければ結構です。

ジャズって音楽は、誕生してから大体100年経ちますが、その間新しい演奏法が次々と生み出されたり、周辺の色んな音楽の要素を取り入れながら、複雑に進化してきました。

が、元々は夜の歓楽街で「そこにいる人達をいかに楽しませ、踊らせる事が出来るか?」という事を第一に考えなければならないパーティー・ミュージックだったんです。

で「かっこいいジャズを聴きたいけどどういうのを聴けばいいか?」という、究極の問いに関してなんですが、それにはアタシ、こう答えます。

「てなわけで、聴いててスイングを感じるものがいいんですよ」

と。


つまり要するに

「難しいことさておきで、聴いて心地良くなるやつ、ウキウキでノれるやつが一番♪」

という訳ですね。


何だかとっても漠然とした、禅問答のような話に思えるかも知れませんが、実はジャズの世界には、この

「スイングすること」

に関しては並ぶ者がいない達人がおります。

カウント・ベイシーです。

ベイシーといえば、戦前からの「ビッグバンド/スウィング・ジャズ」を代表する名バンドリーダーで、凄腕のピアニスト。

とにかくもう「ビッグバンドといえば?」という問いには、デューク・エリントンと並んで必ず名前の挙がる凄い人なんです。


ベイシーの何が凄いのか?それは一言でいえば

「みんながみんな派手な足し算でノリやムードを演出していた中、一人だけ引き算の必要最小限の音とリズムで、ノリノリのサウンドを出す事に成功したこと」

でありましょう。


ベイシーは、リズムの基本であるリズム・セクション、つまりドラムとベースとピアノが刻むビートというのを、物凄く重要視しました。

ベイシー楽団の演奏は、そのリズムを聴いてるだけで十分に”曲”として聴けるぐらいにリズムが音楽してるんですが、派手にどんどこやっていたのではなく、むしろその逆で、リズムは無駄をとことん省いた「チーッチキ、チーチッキ」のシンプルな4ビート。

ドラムもホーンが入った”ここぞ!”という時以外はこれを絶対に崩さないし、ベースもルートを脱線しません。

おまけに本人が弾くピアノも、かなり音が少ない(!)でも、この隙間だらけ、空間だらけのリズム・セクションの音がギュッと中心に集まって、芯のある強靭なビートを生み出すんですね。そして、隙間と空間が、サウンドの一部として全体を心地良く揺らす。

で、ベイシーの凄い所は、このリズム・セクションを、ギターを加えて更に補強しているところです。

フレディ・グリーンという「リズムしか刻まない」職人ギタリストがいるんですね。この人はたった1枚しか出していない自分のリーダー作でも一切ソロ弾かずに黙々とコード弾いてるという、ちょっと常人には想像の付かない思考の持ち主なんですが、隙間だらけのベイシー・リズム・セクションにこの人のギターが加わったらもう凄い。

何が凄いかって、この人の黙々とコードだけを刻むギターが入る事によって、シンプルなリズムが更にシンプルに聞こえちゃう(!!)

えぇ、そこなんですよベイシーの凄い所は。音を足してるはずなのに、色々な楽器を加えれば加えるほど、演奏自体の質感が拡散せずに中心に凝縮されて、リズムの快感と個性的なソロイスト達のプレイがより単体でカッコ良く目立っているように感じる。

もちろんビッグバンドだから、ホーンのアンサンブルがド派手に「ぶわぁぁああん!!」と鳴り響く瞬間はベイシー・バンドにもあります。

でも、そこは「ここだ!」って時の本当に究極の必殺技で、実際はイントロとかでちっちゃく鳴ってるリズム・セクションの音を聴いて「何だこれすげー!」と心くすぐられる事がほとんどです。




カンザス・シティ・セヴン

【パーソネル】
カウント・ベイシー(P,org)
サド・ジョーンズ(tp)
フランク・フォスター(ts)
フランク・ウェス(fl)
エリック・ディクソン(ts,fl)
フレディ・グリーン(g)
エド・ジョーンズ(b)
ソニー・ペイン(ds)

【収録曲】
1.オー・レディ・ビー・グッド
2.シークレッツ
3.アイ・ウォント・ア・リトル・ガール
4.シュー・シャイン・ボーイ
5.カウンツ・プレイス
6.セナター・ホワイトヘッド
7.タリー・ホー、ミスター・ベイシー
8.ホワッチャ・トーキン

(録音:1962年3月21日/3月22日)



はい、リズムについて、スイングについて、語り出せばキリがありませんので、ややこしい説明は後にして、今日は「そんなベイシーの凄いスイングがギッシリ詰まった名盤」をご紹介します。

ベイシーといえばビッグバンドなのですが「引き算で完璧に作り上げられたグルーヴの凄さ」といえば、ビッグバンドから選りすぐりのメンバーを集めた”カンザス・シティ・セヴン”という7人編成のこのアルバムを、まずは聴いてみてくださいな。


録音は1962年、世間はビッグバンドどころかマイルスやコルトレーンが「モダン・ジャズよりずっと新しい音楽を作るぞー!」と張り切っていた時代です。

そんな時代に、大ベテラン、ベイシーの「おう、世間はどーか知らんが、コレが粋なジャズってもんだぁ♪」っていう余裕の声が聞こえてきそうなくつろぎの音楽。いいですねぇ。

7人編成といえば、それでもまだジャズ・コンボの人数といえば多い方でありましょうがそこはベイシー、自分も含めて4人のリズム・セクションは派手な展開に一切走らない堅実な”刻み”に集中し、3人のホーン奏者には「音を必要以上に重ねず、ソロでしっかりと聴かせるべし」と指示したのか、大人数(ビッグバンドに比べたら少ないけど)ならではのけたたましさが全くありません。

実はベイシーは、この”カンザス・シティ・セヴン”というバンドを、ビッグバンド率いる前からちょくちょくやっています。

それには多分、まだビッグバンドやってなかった頃にその前段階としてお試しのコンボをやってみたとか、40年代は第二次大戦による徴兵とかでのメンバー不足や戦争不況による問題とかで、ビッグバンドの運営そのものが厳しかったという物理的な事情もあったっぽいですが、その時代からベイシーの”ビッグバンドじゃない編成のバンド”は、群を抜く素晴らしい演奏を聴かせ、レスター・ヤング等の優れたソロイストの魅力を世間に存分に伝えました。

1962年のこのアルバムの空気は、実は戦前録音の”カンサス・シティ・セヴン”よりももっと”間”が心地良いくつろぎ感に溢れていて、更にクリアな録音で、ベイシーのピアノの”タメ”の効いたカッコ良さ、やっぱりフレディ・グリーンの刻みが効いてるリズムのしなやかな強さ、そして前でソロを吹くサド・ジョーンズ、フランク・ウェス、フランク・フォスター、エリック・ディクソンの洗練されたアドリブのメロディーが、どれも不可欠の響きで優しく絡み合います。

戦前の単なる懐古ではなく、リズムも上モノも、モダン・ジャズの時代に対抗するかのように、より無駄を省いた核の部分の味わいで”聴かせるプレイ”に進化させているところがまた良いのですよ。

「スイング」というのは言うまでもなく”ノリ”のことですが、このアルバムはガツンと来るテンションの高いそれではなく、穏やかな雰囲気に心地良く酔ってるうちに自然とウキウキさせられる、そんな至芸が詰まっております。











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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 16:11| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする