2019年05月05日

キング・オリヴァー The Complete1923 Jazz Band Recordimgs

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King Oliver/The Complete1923 Jazz Band Recordings
(Archeophone Records)


皆さんこんばんは、いつの間にやら時代は平成から令和に代わり、いつの間にやらゴールディン・ウィークでございますねぇ。

まとまった休みだからガッツリ旅行とかイベントとか行くよって人もいらっしゃるでしょうし、のんびり静かに過ごしてる人もおられるでしょう。「休み?んなもん関係ないよ!」という人もいらっしゃる。はい、アタシもゴールデン・ウィークとは言いながら、休んだり仕事に出たり、何だかんだドタバタしておりました。

そんな中、家でのんびり聴いていたのは、古き良き時代のジャズです。

おっと、アタシは個人的に「古き良き」って言葉が実はあんまり好きじゃない。

今の時代はそりゃあ世知辛いけど、昔は昔の苦労や不便があったはず。

それを思うと「今が全部ダメで昔が全部良かった」なんてことは無責任には言えません。

でもね、古い音楽を聴いてると「あぁ、いい時代の空気が流れて鳴ってるなぁ〜♪」って無条件に思えてくるんですよ。

これはもしかしたら、時代がどうこうというんじゃなくて、その音楽をやってる人達が、その時代の一番いい空気を集めてそれを音にしていたからなんじゃないかって思えるから、そして逆にその「自分が生きてない時代の空気」ってのが、古いも新しいもなく、とてもカッコ良く穏やかに刺激的なものだったりするもんだから、えぇ、こと音楽に関してだけは、この「古き良き時代」って言葉、今後も使おうと思っております。


で、今日は「古いジャズを聴こう」ってなった訳ですね。

ジャズってもしかしたら皆さんは、1960年代とか50年代のモダン・ジャズでも「十分古い音楽じゃな〜い」って思われるかも知れませんが、今日アタシが昼間自分ちの畳に寝っ転がって、ほへ〜っとヨダレ垂らしながら聴いていたのはそんじょの古さじゃありません。何と、日本で言えば大正時代の1923年のジャズであります。

1923年といえば、レコードがブ厚く思いSP盤に録音されて、それなりの数が流通するようになった最初の頃、そんな時代に「ジャズ」という音楽がブルースと共に

「最新のイカした音楽だぜぇ♪」

と、世に出回るようになったんですね。

最初にそのジャズっていう音楽を誰が考えて演奏したのか、その辺りはよく分かってはおりませんが、大体1880年代の終わり頃には、西洋音楽のメロディーを、黒人が独自のアクセント(シンコペーションってやつです)でもってリズミカルに演奏したラグタイムという音楽が出来上がっていて、それがジャズの原型と言われております。

ほんで「ジャズ誕生の地」と飛ばれる軍港の街ニューオーリンズでは、歓楽街に立ち並ぶいかがわしいお店でもって、このラグタイムに軍隊のマーチングバンドとか黒人音楽のブルースとかを織り交ぜたものが景気演奏されていて、これが「イカすぜ!」って意味と「いかがわしいぜ!」って意味の卑猥なスラングをもじった「ジャズ」っていう言葉で呼ばれるようになったんだとか。

そんなこんなの1905年頃、そんな中に一人のコルネット奏者がニューオーリンズに現れて、それまではバンドが「せーの」で調子を合わせた合奏をしていたこの音楽で「自由にアドリブで演奏する」ということをおっぱじめた。

バディ・ボールデンと名乗る、このクレオール(黒人とフランス系白人の混血)男のコルネットは、自由自在な即興演奏はもちろん「ミシシッピ川の向こうからも聞こえる」と言われる程のデカい音。

更にそのパフォーマンスが酒を浴びるようにかっくらいながら、動き回ったり楽器を放り投げながら吹きまくる、しかも仕事が続く時は全く寝ないで何日もぶっ続けで(!)夜通しやっていたと。

こんなもん狂人じゃないか!と思ってたら、やっぱりバディ・ボールデンという人は大酒を飲みながらそんなパフォーマンスをやってるうちに本当に発狂して、それから生涯精神病院で過ごさざるを得なくなったみたいです。

この人は、その革新的なコルネット・プレイで「初代ジャズ王」と呼ばれた程なんですが、残念ながらレコードを残しておりません。

う〜ん残念、でもバディ・ボールデンが築いた原初ジャズの形式を受け継いで、更に完成度の高い音楽へと発展させた”2代目ジャズ王”の演奏は、しっかりとレコードに残されておりまして、現在誰もが聴いて楽しむ事が出来ます。

そう、アタシが聴いていたのは、このキング・オリヴァーの初期の1923年録音のアルバムだったんです。

いや〜、これいいですよ。細かい事はどうでもいいって人は、もうこれから先はぜひ読まずに下のリンクをポチっとやって聴いて欲しい。天気のいい日にのんびり聴くには最高の、カラッと明るく景気のいい、グッド・オールド・ミュージックなんですよね〜。




King Oliver

【パーソネル】
キング・オリヴァー(cornet)
ルイ・アームストロング(cornet)
オノレ・ダトリー(tb)
ジミー・ヌーン(cl)
ジョニー・ドッズ(cl)
ジョニー・センシア(banjo)
リリアン・ハーディン(p)
ベイビー・ドッズ(ds)

【収録曲】

(Disc-1)
1.Just Gone
2.Canal Street Blues
3.Mandy Lee Blues
4.I'm Going Away To Wear You Off My Mind
5.Chimes Blues
6.Weather Bird Rag
7.Dipper Mouth Blues
8.Froggie Moore
9.Snake Rag
10.Snake Rag
11.Sweet Lovin' Man
12.High Society Rag
13.Sobbin' Blues
14.Where Did You Stay Last Night
15.Dipper Mouth Blues
16.Jazzin' Babies' Blues

(Disc-2)
1.Alligator Hop
2.Zulus Ball
3.Workingman Blues
4.Krooked Blues
5.Chattanooga Stomp
6.London (Cafe) Blues
7.Camp Meeting Blues
8. New Orleans Stomp
9. Buddy's Habit
10.Tears
11.I Ain't Gonna Tell Nobody
12.Room Rent Blues
13.Riverside Blues
14.Sweet Baby Doll
15.Working Man Blues
16.Mabel's Dream
17.Mabel's Dream
18.Mabel's Dream
19.The Southern Stomps
20.The Southern Stomps
21.Riverside Blues


アタシがキング・オリヴァー知ったのは、ブルースをこれまた原初的なスタイルで唸る神懸かりな天才シンガー、テキサス・アレクサンダーのアルバムで、地の底から響くような沈鬱なアレクサンダーの横で「ぷわぁん、ぷわわぁん♪」と、何とも腰の砕ける呑気な音のコルネット吹いてるのを聴いて「あ、これ好き」と思ったのが最初の最初です。



「ジャズ」って言うと、何だか都会の夜の音楽みたいなイメージがあって、特に戦後のモダン・ジャズは確かにそんな雰囲気に満ち溢れているんだけど、キング・オリヴァーら戦前の名手ののどかな音を聴けば、まだジャズもブルースも同じ場所で仲良く演奏されていた時代の、明るい陽射しが降り注ぐ、アメリカ南部の真昼の大地が、何とも言えないエスプリと共にふわぁ〜っと思い起こされます。

で、キング・オリヴァーの、オリジナル・バンドでのジャズが聴けるのが、この1923年録音集です。

音を聴く前に、若き日のルイ・アームストロングとか、その奥さんになるリリアン・ハーディンとか、最初期のジャズ・クラリネット2大巨匠と呼ばれるジミー・ヌーンとジョニー・ドッズが2人共参加してたり、ディキシーランド最高のバンジョーマン、ジョニー・センシアがフツーに居たりと、まずはそのメンバーの豪華さにビビりますね。

特にこのレコーディングは、ルイ・アームストロングにとっては記念すべきデビュー録音なんです。

さて、肝心のキング・オリヴァーの音楽なんですが、彼は影響を受けたとされるバディ・ボールデンのようにクレイジーに吹きまくるタイプではなく、作曲家/編曲家として若い頃から評価されていただけの事はあり、まずバンド全体のサウンドをキッチリまとめた完成度の高い演奏を聴かせる音楽家です。

その上で自分自身のメロディアスなコルネットを始めとする各人のソロや、アレンジの中で際立つ個性をしっかりとピックアップする達人で、どの曲も不足なくゴキゲンな雰囲気で、最初から最後までテンションを下げる事なく楽しく聴かせます。

そう、この「楽しい」ってのが、キング・オリヴァーの一番の持ち味ですね。

もしかしたら精神がぶっ壊れるほどの激しい演奏を目の前で繰り広げていたバディ・ボールデンを見て「あ、こんなことやってたら死ぬか狂うかしかないわ、だったら俺はこの人がやってる事をもっと音楽的に完成されたものにしよう」と、オリヴァーは理知的な方向へ早々と舵を切ったのかも知れません。

そこに純粋にバディ・ボールデンのプレイに憧れて、でっかい音でアドリブをガンガン吹いてやるぞ!と意気込む若いルイ・アームストロングを加えた事によって、穏やかさと溌溂とした元気との絶妙なバランスが取れた仕上がりになっております。

この時代のアドリブは、もちろんその後のジャズのような長尺のスーパープレイではないのですが、きっちりとまとまった上質なオールド・ジャズのアレンジの中でコルネットやクラリネット、そしてピアノそれぞれのプレイをじっくり聴けば「譜面のあるラグタイム」から「譜面にないジャズのアドリブ」の間を行き来する黎明期の雰囲気を、楽しみながら味わえることでしょう。や、まずはコイツをツマミに一杯やってね〜と言いたくなる最高のゴキゲン音楽ですよ♪








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サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 22:57| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする