2019年05月15日

クリフォード・ブラウン ザ・ビギニング・アンド・ザ・エンド

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クリフォード・ブラウン/ザ・ビギニング・アンド・ザ・エンド
(Columbia/ソニー)

「ジャズ」と聞いて真っ先に頭の中に浮かぶ音といえば、やっぱり1950年代のモダン・ジャズ。

そのモダン・ジャズのトランペットのスタイルを確立した人といえば、マイルス・デイヴィスとクリフォード・ブラウンが双璧だと思います。

23歳で「さあこれから!」という時に不幸にも交通事故で亡くなったブラウンに比べ、長いキャリアを生き抜き、その間革命的とも言えるスタイルの変換を何度も行ってきたマイルスの方が、ジャズファン以外にも有名ではありますが、それまでの高速で直線的なノリのビ・バップに見切りを付けて、クールで小粋なスタイルを確立させたのがマイルスなら、ビ・バップのスピリッツをそのまま受け継ぎつつ、新しい時代のグルーヴにそのホットな情熱を掛け合わせる事に成功した、言わば王道を突き進んだのがブラウンと言えるでしょう。


つまり、同じ50年代の始まりの時期に同じ楽器のパイオニアとして注目を集めた2人のスタイルが全く正反対なんです。

で、マイルスはそのワン・アンド・オンリーで追従者さえ寄せ付けない程のカリスマであったのに対し、ブラウンの方は死後にその後に続くあらゆるトランぺッター達に影響を与えております。

リー・モーガン、フレディ・ハバード、ドナルド・バードといった人達は、マイルス、ブラウンらのちょい後に出て来た人気プレイヤーで、彼らもまたモダン・ジャズ(ハード・バップ)を代表する名手と言われておりますが、そのプレイ・スタイルからは、マイルスよりもクリフォード・ブラウンの粋と熱情が入り混じった表現の継承を強く感じます。

ジャズ・トランペットの魅力といえば、金管らしい強力なヒットと音そのものの熱い質感。

いや、アタシは元々それが苦手でした。苦手でしたがブラウンのその誠実さ溢れる熱意が込められたひと吹きに、やっぱりヤラレてしまい、更にアドリブの、熱を感じさせながらも繊細に美しくフレーズを紡いでゆくそのセンスに夢中になり、更にそれだけに止まらない、聴けば聴く程ジワジワと味わいを感じさせてくれるブラウンの音楽は、今ではもう生活に欠かせないようなものになっております。

前回はブラウンの、端正な部分の魅力が楽しめる、西海岸アレンジの『ジャズ・イモータル』をご紹介しましたが






今日はブラウンの、より剥き出しの素顔をかいま見ることの出来る素晴らしいアルバムをご紹介しましょう。



ザ・ビギニング・アンド・ジ・エンド(期間生産限定盤)


【パーソネル】
(@A1952年3月21日)
クリス・パウエル(vo,perc)
クリフォード・ブラウン(tp)
ヴァンス・ウィルソン(as)
エディ・ランバート(g)
デューク・ウェルズ(p)
ジェイムス・ジョンソン(b)
オシー・ジョンソン(ds)

(BCD1955年5月31日)
クリフォード・ブラウン(tp)
ジギー・ヴィンス(tsB)
ビリー・ルート(ts,CD)
サム・ドッケリー(p)
エイス・ティンソン(b)
エリス・トリン(ds)

【収録曲】
1.アイ・カム・フロム・ジャマイカ
2.アイダ・レッド
3.ウォーキン
4.チュニジアの夜
5.ドナ・リー


『ザ・ビギニング・アンド・ザ・エンド』は、1952年のまだソロ・デビューする前のブラウンが参加していたクリス・パウエルのバンドにいた頃の演奏2曲と、1956年、つまり彼が亡くなる直前のラスト・ライヴの演奏と言われていた4曲のカップリングであります。

まず驚くのが『ビギニング』の2曲。

これ、聴く前は書籍とかで「R&Bバンドにいた頃の」と紹介されてたんですが、やっている音楽はびっくりのラテンであります(!)

パーカッションを叩きながら陽気に歌うクリス・パウエルを中心に、アフロ・キューバンなチャカポコのグルーヴが大変気持ち良い。

ジャケットからして渋くてハードボイルドなジャズを期待していたアタシにとっては、これは嬉しい誤算で、ついうっかりクリフォード・ブラウンが参加してることなんか忘れて一緒に踊ってしまったのですが(や、忘れてもいいぐらいにゴキゲンなラテン・ミュージックなんですよコレほんと)、更に嬉しい誤算だったのが、カッコ良く登場してアツく吹きまくるブラウンのトランペット。

これもう「キタキタキターーー!!!!」ってなります。クリフォード・ブラウンもしこのまんまこのバンドにいても「凄いトランぺッター」として確実に名を残したでしょう。周りで鳴っているリズムを全部巻き込んでの熱風の竜巻のような演奏、これだけでもう大満足。

と、思ったらそっからの『ジ・エンド』の4曲が、更に衝撃の王道ジャズ、熱気溢れる最高のハード・バップ・ライヴでこりゃまいったねとなる。

実は、この演奏、後の調査で正しくは1955年の演奏と判明し、クリフォード・ブラウンの生涯最後の演奏ではないんですが、あえていいましょう。








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そんぐらい内容が悶絶級なんで、純粋に「クリフォード・ブラウン最高のライヴ」として聴いてくださいな、いや、聴けますわ。

収録されたのは、フィラデルフィアにある小さなクラブハウスらしいです。

会場のワイワイガヤガヤアットホームな雰囲気といい、ほぼ無名の(サム・ドッケリーだけはアート・ブレイキーのアルバムとかで参加してるので知っておりました)参加メンバーといい、恐らくはツアー中に行われた現地ジャム・セッション系の音源でしょうが、ともかく臨場感溢れる一発録りの粗い質感も、無名とは言いつつもこのメンバーのプレイが良いんですよ。

曲はおなじみのスタンダードで、ライヴだけあって、それぞれのアドリブもたっぷり楽しめる贅沢仕様。で、実力者が揃ったしっかりしたバックに支えられてのブラウンのトランペット、これがどこまでもバランスよく突き抜けてて、その天才ぶりが分かりますね。

ミディアム・テンポの『ウォーキン』から、ソロはもう全開です。それが『チュニジアの夜』で更に盛り上がり、ラストの『ドナ・リー』で更にスピードアップしての大盛り上がりで更に手数を増やして「これでもか!」とたたみかけるように吹きまくります。

ところがどんなに速いフレーズを吹いても、音が潰れたり弱く鳴ったりしないんですよ。

トランペットって音程のコントロールが凄い難しい楽器で、速く吹くとひとつひとつの音がフラフラになりがちな上に、音がべちゃっと潰れてしまうことが、この時代はプロの演奏でもあったりするんですが、ブラウンの音は最初から最後までヨレないパリッとした芯の強さで駆け抜けます。


前半の古い録音と、中盤からのライヴは、全体的な録音の質感もバランスが取れていて、ひとつの作品としてのまとまりも意外とあります。何よりこのアルバム全体から溢れるライヴ感、これがたまらんです。








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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 23:59| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする