2019年05月25日

マディ・ウォーターズ リアル・フォーク・ブルース

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マディ・ウォーターズ/リアル・フォーク・ブルース
(Chess/ユニバーサル)

立夏を過ぎ、ここ奄美はすかさず梅雨に入って、本格的な暑さの季節となっております。

梅雨と言ってもアレなんですよね、本土みたいにその期間しとしとジトジト雨が降っている訳ではなく、何日かガーッ!と降って、何日かはギラーッ!と晴れるのが当地の梅雨。

そもそもが年間通じて春秋冬とほぼ曇りか雨ザーザーの日が多い上に台風も来ますので、梅雨というものがどういうものなのか、未だに実感がありません。まぁその、夏の一部なのでありましょうな。

てなわけで夏とくればブルース聴くのが楽しい季節です。

ムワッと香り立つ熱気や泥臭さに溢れたディープなブルースを聴きながら、ブルースが産声を上げたアメリカ南部もきっとこうだったんだろうなとか、こっちの容赦なく照り付ける日差しを見ながら想像すると、脳が気持ちよくトリップして、まだ見ぬディープサウスへの旅に出かけやすくもなろうってものです。いや、こんなジリジリの暑さの中に聴くブルースってのは、寒い日に聴くよりも随分と臨場感がある。

という訳で本日はブルースとくればのマディ・ウォーターズ親分です。

マディ親分が根城に活躍していたのは、アメリカ北部のシカゴ。シカゴって所はとにかく寒い所らしいんですが、そんな寒い土地に故郷南部のモンワリした空気感というのを全開にしてブルースしてたのがマディという人でして、その音楽からは例外なくディープサウスの重たい熱気が感じられます。

先日は、日中ギラギラ照り付ける太陽の下、マディ・ウォーターズの『リアル・フォーク・ブルース』をずっと聴いておりました。

このアルバムは、チェス時代の超初期から60年代半ばぐらいまでの音源を集めたコンピレーションのうちの一枚なんですが、元々マディらブルースマンの音源というのは、当初のリリースは「レース・レコード」と呼ばれた安価なシングル盤のみであったため、どの曲もアルバムとしてまとめられたのはコレが最初なので、堂々たるオリジナル・アルバムと言って良いでしょう。

さて、この『リアル・フォーク・ブルース』は、1960年代のフォーク・ブルース・リヴァイバルのさなかにブルースの新しい購買層、つまり白人の若者層をターゲットに、続編の『モア・リアル・フォーク・ブルース』と共にマディ、ハウリン・ウルフ、サニーボーイ・ウィリアムスンという、当時のチェス・レコードを代表するベテラン3人のピックアップした企画として発売されました。

ここでも『フォーク』というのは、言うまでもなくアコースティックでのどかなフォークソング調のブルースをやっている訳ではなく、ニュアンスとしては

「泥臭いホンモノのブルースだぜ!」

ぐらいのものと思ってください。

当然収録されているマディの演奏は、50年代からシーンを揺るがしたバンド・スタイルでエレキをかましたディープな戦後シカゴ・ブルースであります。

録音年代は、1947年のシカゴに出て来てからの初レコーディング音源の楽曲(!)から、64年の脂の乗りまくった時期のものまで、各年代から幅広く選曲されております。






リアル・フォーク・ブルース

【収録曲】
1.マニッシュ・ボーイ
2.スクリーミン・アンド・クライン
3.ジャスト・トゥ・ビー・ウィズ・ユー
4.ウォーキング・スルー・ザ・パーク
5.ウォーキン・ブルース
6.カナリー・バード
7.セイム・シング
8.ジプシー・ウーマン
9.ローリン・アンド・タンブリン
10.40デイズ・アンド・40ナイツ
11.リトル・ジェニーヴァ
12.ユー・キャント・ルーズ・ホワット・ユー・エイント・ネヴァー・ハド


いやはやのっけから「キャー!」という歓声(っぽいバックコーラス)の炸裂に「I'm a man(オレはワルだぜ)」なキメの歌詞もカッコイイ『Manish Boy』から、興奮が最高潮に達します。

この曲が録音されたのは、それこそマディがシカゴ・ブルースの王者として君臨し始めた時期で、前の年には代表曲の『フーチー・クーチー・マン』がヒットし、ラジオでは連日マディの曲がかかりまくっていた時期の演奏ですね。メンバーにはリトル・ウォルターにジミー・ロジャース、ベーシストでありチェスのドル箱作曲家として大活躍だったウィリー・ディクソンという、初期の最強メンバーが揃って刺激的なサウンドと、ドス黒いグルーヴを放ちまくっておった頃の凄まじい熱気に満ちた演奏ですね。

マディ親分のブルースは、決してツッタカツッタカで走るような、ノリノリの演奏ではないんです。

どっちかといえばスローやミドルのテンポで、ひとつひとつの音を重く粘らせながら、豪放磊落な語りのようなヴォーカルをビートやスライドギターにエロティックに絡めてゆくスタイル。でも、この粘るビートに、聴く人の心臓にジワジワと火を点けて最終的に踊らせるような、素晴らしい”ノリの良さ”があるです。

特に50年代半ばから60年代にかけてのノセ方や、メンバーのサウンドをグイグイ巻き込んでの”間”をたっぷり活かした遠心力の強さには、もう言葉もありません。

1964年録音の『セイム・シング』なんかどうでしょう、この当時ロックを愛好する若い白人のファン達を、最初の1音から熱狂させていたというマディの存在感の凄まじさが、まるでライヴ盤みたいにリアルにきます。

そしてこのアルバムで忘れちゃいけないのが、超初期の40年代後半から50年代初頭の楽曲たち。


そもそもマディがミュージシャンとしてやっていこうと思ったきっかけが、まだミシシッピに居た1942年に国会図書館の民俗学資料用のレコーディングを「ロバート・ジョンソンの代わりに」行った↓がきっかけなんです。



上記『コンプリート・プランテーション・レコーディングス』は、後年のバンドスタイルでエレキをガンガン弾いているマディからは想像も出来ない程の素朴なスタイルです。曲によっては「お、マディ」と分かるのもありますし、情念の塊のようなスライドギターはこの当時から非凡な才能がほとばしっておりますが、ほとんどの演奏では敬愛するサン・ハウスやチャーリー・パットンといったミシシッピ・デルタの先輩ブルースマン達の奏法を忠実に継承しているものです。

大体ミュージシャンなんてのは若い頃はギンギンで歳取ってくると渋く枯れた味わいが出て来るもんなんですが、マディの場合は逆で、ベテランになってからのムンムンな味わいが凄い。

この”ムンムン”がどういう過程で生まれたかが分かるのが、ここに収録された超初期の音源。

バックにはこの頃の相方であるビッグ・クロフォードのベースのみ、もしくはそこにピアノやハーモニカだけ入るシンプル編成で戦前〜戦後のちょうど中間のようなデルタ・スタイルを堪能出来るのが、トラックで言えばADEGHJ辺り。

Gの『ジプシー・ウーマン』が一番古い1947年の音源で、残りも48年から50年。目玉はデルタ古典とも言える『ウォーキング・ブルース』や『ローリン・アンド・タンブリン』でありましょう。

バックがまだまだ伴奏の域を出ない分、マディのスライドのエグさはこっちの音源で堪能できます。特に裏打ちの激しいアフタービートで、その粗くひしゃげたサウンドとグルーヴが後年のR.L.バーンサイドらのパンクなミシシッピ・ブルースと直結する『ローリン・アンド・タンブリン』は、ブルース好きなら鼻血モノ。

聞く所によると、マディファンのほとんどの人が、大定番の『ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ』でマディを知り、そこに収録されている数々の代表曲のカッコ良さに惹かれ、2枚目にこの『リアル・フォーク・ブルース』で完全にノックアウトされてハマるというパターンが多いようで、アタシもそのうやってマディにハマッた人だったりするんですが、確かにこの『リアル・フォーク・ブルース』と次の『モア・リアル・フォーク・ブルース』は「更に突っ込んだ内容」の選曲の濃さを感じます。













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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 09:17| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする