2019年06月11日

ホップ・ウィルソン スティール・ギター・フラッシュ!

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Hop Wilson/Steel Guitar Flash!
(Ace)


大体アタシは珍しいもの好きなので「変わった楽器を使うアーティスト」というものに惹かれます。

ブルースや、古いアメリカン・ルーツ・ミュージックが好きになったきっかけというのも、たまたまテレビで観たカントリー・フェスティバルに出ていた人達が、バンジョーとかマンドリンとか、そういうロックとか現代の音楽ではまず見たこともないような楽器を持って楽しく演奏している姿に衝撃を受けたからであります。

それからしばらく経ち、一丁前に音楽のジャンルというものが何となく分かるようになってからは

「おほぉ!?このジャンルでそんな楽器使ってんの!?」

という興奮というのを覚えて好きになったりしたんですよ。

例えばエド・サリヴァン・ショーで「黒くぬれ!」を演奏している時に一人だけシタール持ってビョンビョンやっているブライアン・ジョーンズとか、バリバリの日本語ロックバンドなのに、ヴォーカルのヤツがトランペットも吹いて、キーボードのヤツがサックスを吹くレピッシュなんかもう最高ですよね。

そういう「あぁこれね、まぁこうだよね」という、アタシの内側にこだまする大っ嫌いな「あぁ」とか「まぁ」とかで始まる文章が纏う「知ってるつもりの上から目線」のようなものを、そういう意外な楽器というのは気持ち良ーく木っ端微塵にしてくれますね。えぇ、パンクなんです。

で、ブルースの世界には、何と主にハワイアンやカントリー、日本では昭和の時代の演歌なんかで使われるラップ・スティール・ギター、そう、あのテーブルに置いてあるような感じの、座ってスライドバーを滑らせてほわ〜んとかきゅい〜んとか弾くアレです。アレを使ってブルースを弾いた人がおるんです。


その人こそ、テキサスはヒューストンの黒人ゲットーが生んだブルース・ヒーロー、ホップ・ウィルソンであります。

この人を知ったのは、今(2019年)から23年程昔、アタシが本格的にブルースのCDを戦前/戦後問わず集めて聴こうと決心した頃にPヴァインからリリースされていた『ブルースの巨人』というベスト盤シリーズであります。

B.B.キングにジョン・リー・フッカー、チャーリー・パットン、ブラインド・レモン・ジェファソン、マ・レイニー、オーティス・ラッシュ、プロフェッサー・ロングヘア、それから先日紹介したマ・レイニーなどなどなど・・・。あらゆる年代あらゆるスタイルのブルース・レジェンド達の音源から選りすぐりの楽曲を集めた、本当に素晴らしいシリーズだったんですが、雑誌やガイドブックには必ず重要アーティストとして取り上げられ、レビューでも相応の字数を割いて紹介される、つまり当時初心者だったアタシのようなクソガキが見ても「お、名前は知ってる」となる巨匠達が居並ぶ中で、全く名前も知らなかったし、その『ブルースの巨人』シリーズのCDを目にするまでは、名前すら見かけた事もなかったのが、唯一ホップ・ウィルソンでした。


そう、ホップ・ウィルソンという人は、確かに知る人ぞ知る素晴らしい名手ではありますが、作品も少なく、生涯ほとんどヒューストンのゲットーから出るような事もなかった故に、60年代のブルース・リヴァイバルともロック・ミュージシャン達からの広い絶賛からも無縁だった、ほとんど幻のブルースマンだったのです。

そんなマイナーなブルースマンを『巨人』として紹介するPヴァインの侠気も素晴らしいですが、アタシは聴く前からもう、CDのオビに書いてある


場所はテキサス州ヒューストンのゲットー。そこでスティール・ギターで。泣きのブルースを歌った男がいる。あまりの緊迫感だ。


この言葉がズキュンと胸を打ち破って入ってきて「あぁこれはもうカッコイイに違いないだろうな」と思って、即CDを購入しました。きっとその時ブルースの神様(いやぁ悪魔かも知れんよね)が、アタシの耳元でささやいたんだと思います。


スティール・ギターといえば、さっきも言ったように、ハワイアンやカントリーなどで主に使われる、スライド専用の置き型ギターであります。

その音色はどちらかというとほんわかしていて、泥臭いブルースのギター・プレイというのは全く想像出来ません。

ましてや、帯に書かれてるような「緊迫感」なんて、聴いてないうちからはほんと「こんなだろうな」という音すら頭に浮かんで来ないんです。

そしてホップが活動していたテキサスという場所は、スティール・ギターが大活躍するウェスタン・スウィングというカントリーの一大勢力が、バンドスタイルで軽やかな疾走感溢れる演奏を楽しませてくれるところ。

そうか、よくあるドロドロの重たいリズムのブルースではなく、ちょいとカントリー寄りの軽やかなスタイルの中で、カントリーとはちと違う重さが何となーくあるようなスタイルのギターを弾く人なんだな、それならわかる、聴いてみるべ♪

と、軽い気持ちでCDをスタートさせてみましたら


・・・・違う!想像してたのとまっっっっったく違う(!!)


ホップ・ウィルソンのスティール・ギターは、ヘヴィーで乾いたビートにありったけの情念をぶちまけたような、正に王道テキサス・スタイルのモダンなブルースでした。

そのスライドは単音でソロを弾く時も、複数の弦を滑らせて、ヴォーカルのバックで響く時も、ハッキリとした存在感を示し、楽曲の中で際立っております。

構造上、スティール・ギターは手数の多い早弾きには向きませんが、この人の凄い所はそんなところじゃなくて、通常のエレキギターより太い弦を、高いテンション(張力)で張ってあるスティール・ギターの特性を利用した、ギュイーンという一音のケタ違いの強さと太さ。

そいつがとことん際立っていて、鳴り響いただけで全部を根こそぎ持って行くような、エグい心地良さがあるんです。

バックはあくまでテキサスの、乾いた質感のサウンドなので、シカゴブルースのようなヘヴィな”溜め”とはちょいと違います。

でも、軽快にシャッフルしても、洒落たフレージングをかましても、どこかべっとりと救いようのない情念が絡みついたまま走ってるかのような音はワン&オンリー。楽曲がいわゆる普通のモダンなスタイルのブルースだけに、ギターの異様さがかえって際立っているようなクセだらけのプレイは実に衝撃的であります。

そんなエグいギタープレイとは裏腹に、ほとんど濁らず張り上げず、淡々と内省の淵での独白を続けているような声もまたいいんですね。




STEEL GUITAR FLASH! PLUS

【収録曲】
1.My Woman Has A Black Cat Bone (Take1)
2.I Feel So Glad
3.I'm A Stranger
4.Be Careful With The Blues
5.I Ain't Got No Woman
6.My Woman Done Quit Me
7.Merry Christmas Darling (Take1)
8.Dance To It
9.Rockin' In The Coconut Top
10.Fuss Too Much
11.Why Do You Twist
12.A Good Woman Is Hard To Find
13.Rockin' In The Coconut Top
14.Need Your Love To Keep Me Warm
15.You Don't Move Me Anymore
16.I Done Got Over
17.You Don't Love Me No More
18.Toot Toot Tootsie Goo'bye (Part2)
19.Your Daddy Wants To Rock
20.Broke And Hungry
21.Always Be In Love With You
22.My Woman Has A Black Cat Bone (Take2)
23.I Met A Strange Woman
24.Need Your Love To Keep Me Warm
25.Love's Got Me All Fenced In
26.Chicken Stuff (Alternative Take)
27.Rockin' With Hop
28.That Wouldn't Satisfy
29.Chicken Stuff



1927年に生まれ、最初ハーモニカを吹いていたホップ・ウィルソンがスティール・ギターと出会ったのは、17才の時にお兄さんからプレゼントされてからと言います。

普通のギターじゃなくてスティール・ギターだったというのは、もう”たまたま”なんですが、そこから転向せず、ずっと弾き続けたというのが素晴らしく、彼はブルースでは恐らくたった一人の「スティール・ギター専門のプレイヤー」としてテキサス〜ルイジアナ近辺では人気を博しておりました。

第二次世界大戦による兵役で、背中に傷を負って帰って来てからは、相棒でありドラマーの、アイヴォリー・リー・セミアンとコンビを組んで、テキサスからルイジアナ近辺の黒人居住区にある酒場を根城としながら演奏を繰り広げ、なかなかの人気だったんですが、生涯のレコーディングは、1958年、60年、61年の3度のみ。しかも、いずれも黒人オーナーが経営するローカルなシングル専門レーベルでした。

ホップがヒューストンのゲットーからなかなか出なかったのも、大手やそこそこ知名度のあるレーベルとの契約をしなかったのも、他人、特に白人に対する絶対的な不信感があったからと云います。

具体的にどのような事があったのかは不明ですが、その怨念の渦巻いたかのようなギターと、内面へ深く潜り込むようなヴォーカルは、明らかに”何か”を抱え込んでいるであろうことは想像出来ます。

結局華やかな表舞台に立つ事はなく、終生ゲットーで肌の色を同じくする仲間達のためだけにブルースを歌っていたホップ・ウィルソンは、1975年に肺炎のためひっそりとこの世を去りました。

本日ご紹介したCDは、数少ない音源の楽曲を22曲も網羅した、今のところ決定盤と言っていい彼のベスト・アルバムです。




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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 23:19| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする