2019年07月31日

エクスプレッション〜コルトレーン最後のスタジオアルバムを想う

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コルトレーン最後のスタジオアルバム『エクスプレッション』。

これはですね、いつも「今日のコルトレーンのシメ」にいつも聴いてたんですよ。後期の激しい演奏をガーッと浴びるように聴いた後にエクスプレッション、そして初期の粋なジャズ・アルバムをたくさん聴いた後に聴くエクスプレッション。

特にこれといってキャッチーな曲も入ってないし、超人的なスーパープレイがあるわけでもない。

でも、このフリーフォームが溶解したような、沼のような静けさを持つ演奏が刻まれたレコードが薄明かりの中でターンテーブルの上をグルグル回っているのを眺めながらぼーっとしていると、心が不思議と安らぐんです。

そう、コルトレーンにハマッた時「これは一番最後の方の時期のレコード(ということは凄まじいフリージャズだろう)」と買ったレコードなのに、何故か衝撃の輪郭はおぼろで「あのアルバムは・・・」と、具体的に語る事が出来なかったアルバムです。

今も具体的に語る事はとても難しいので、今日はちょろっとさわり程度に書いておきますが、その代わり心への浸透度が、最初からハンパなかった。

うん、ちょいと頭の中を色んな言葉がグルグルしていますので、まとめてからレビューしましょうね。




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2019年07月29日

トミー・フラナガン ザ・キャッツ

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トミー・フラナガン/ザ・キャッツ
(Prestige/OJC)

皆さま改めましてこんばんは。

いやぁ暑いですね、コチラも連日猛暑と呼ばれる気温で日中は強烈な日差しが肌に刺さって痛いぐらいですが、皆さんがお住まいの地域はどうでしょうか?熱中症対策にはこまめな水分補給と言いますが、濡らしたタオルを定期的に首筋に当てるのも、なかなかに大事ですのでぜひ試してみてくださいね。

アタシは本日もこのクソ暑いのに、ある意味で暑苦しさが倍になりそうな(失礼!)コルトレーンを聴いております。

気温の重苦しさよりも更に荘厳な重苦しさで忘れさせてくれる後期のやつをガーッと浴びるように聴いてそして初期、オリジナルのスタイルを必死で模索しながらもビシッとカッコ良く吹きまくっているコルトレーンを聴く。

するとどうでしょう、世間では「暗い」「重い」「暑苦しい」と、マイナスな言葉で語られる事もあるコルトレーンのテナー・サックスの硬質なサウンドが、まるで水の中を泳ぐ魚のように、爽やかで気品溢れる印象で耳に心地良くスイスイと入ってくるではありませんか。

そうなんです、考えてみればコルトレーンの才能が特別である事を最初に確信してメンバーにしたマイルス・デイヴィス。この人は「それまでにないスマートな音楽性」を目指しておりました。

コルトレーンのフレーズっていうのは、確かに同時代の他のテナー奏者達に比べると、何だかたどたどしくて、低音の豊かな響きや情感を現すヴィブラートなんかは希薄です。でも、フレーズをじっくり聴いてみると、確かにその音色とフレーズは、余計なものがないスマートな質感であったりするんです。

いつの時代も「まったく新しいもの」を生み出す人間の評価というのは、遅れてやってくるもんですね。

今聴くとその当時「ヘタクソ」と揶揄されてたコルトレーンの演奏、全然下手じゃありません。むしろ流麗なマイルスの引き立て役として、アンサンブルの中でキッチリと役割をこなしつつ、しっかりと自分の主張も通せております。

マイルスは最初、既に人気者だったソニー・ロリンズをテナー奏者として考えていたようですが、仮に雄弁でパワフルなスタイルを既に完成させていたロリンズがマイルスのバンドに入っていたとしたら、マイルスの小粋とロリンズの粋で、丁々発止のアツいやりとりは凄いことになっていたでしょうが、果たしてマイルスの求めていたスマートな音楽性が、アンサンブルとしての響きを得る事が出来たかどうか、それには果てしなく疑問符が付くと思います。

1957年、コルトレーンはマイルスのバンドをドラッグ問題でクビになってしまいましたが、それでも腐る事無く、いや、むしろそれまで以上に「新しい音楽」の探究に燃えました。

もちろん常習していたドラッグの悪癖から脱するために、恐ろしく苦しい断薬治療をせねばなりませんでしたが、バンドをクビになって時間があったという事と、セロニアス・モンクという素晴らしい師に巡り合った事が、コルトレーンの更生の後押しになった事は言うまでもありません。

モンクのバンドに加入して、本格的なレコーディング作業に入るまでの間に、コルトレーンはプレスティジのスタジオに頻繁に呼ばれ、多くのセッションに参加しまして、先日ご紹介したマル・ウォルドロンの『マル2』もその中の1枚なんですが、実はマルのレコーディングに入る前の日に、すんばらしいセッションがありまして、本日はコチラをご紹介。



Cats


【パーソネル】
トミー・フラナガン(p)
アイドリース・シュリーマン(tp,@B〜D)
ジョン・コルトレーン(ts,@B〜D)
ケニー・バレル(g,@B〜D)
ダグ・ワトキンス(b)
ルイス・ヘイズ(ds)

【収録曲】
1.マイナー・ミスハップ
2.ハウ・ロング・ハズ・ディス・ビーン・ゴーイング・オン?
3.エクリプソ
4.ソラシウム
5.トミーズ・タイム

(録音:1957年4月18日)


プレスティジはニューヨークにあったレーベルです。ニューヨークには、全国各地から腕利きの連中がいっぱい集まってくる土地で、そこにやや離れたデトロイトから集まった連中もいたんですね。

デトロイトという街は、自動車産業で有名ですね。そこには戦前から工場での仕事を求めて南部から黒人労働者が多く集まっていた街です。

そんな環境ですから音楽も盛んで、特に50年代は活きの良いR&Bが大流行りして、そういったバックバンドのメンバーとして鍛えられた人も多くいたでしょう。とにかくこの地からニューヨークに出て来てジャズやってる人達というのは、もちろん個人としての確かな技量や華もあるんですが、それ以上にバンドの中で的確に他のメンバーをサポートしつつ個性を輝かせるいぶし銀の魅力を持つ人が多いです。

『ザ・キャッツ』は、そんなデトロイト人脈(?)のジャズマンが終結した中に、非デトロイト人脈のコルトレーンとトランペットのアイドリース・シュリーマンがホーン隊として参加したセッション・アルバムです。

フロントの2人は次なるマル・ウォルドロンのセッションでも参加しておりますが、クセの強いメンバー達との独特な緊張感が溢れるアチラのセッションとは違い、コチラは終始リラックスした中で、それぞれの個性とか味とかが存分に発揮されております。

まず、アタシはジャケットのかわいいかわいい猫ちゃんに惹かれて「お、コルトレーンの名前が載ってるなぁ。内容はどんなだろう?まぁいいか」と、割と軽い気持ちで買ったんです。

ほんで、快調なコルトレーン、キリッとした強さが味わいのシュリーマン、端正でそこはかとないブルース・フィーリングが滲むフラナガン、いぶし銀の見事な職人ギターのバレル、太く豊かな音を響かせるダグ・ワトキンス、とにかくハズレのない堅実なルイス・ヘイズの純正ハード・バップ・ドラムスに「ふんふん、心地いいね♪」と聴いているうちにリズム隊の人達が持つ、隠し味的な深い味わいの魅力にぞっこんになってしまい、すっかりハマッて聴くようになってしまいました。

プレスティジのセッションものといえば、とりあえず人数集めてスタンダード中心の選曲でざっくりと好きにやらせるというのが基本で、レコーディングの日にちもバラバラ、ラフで大味な所は魅力といえば魅力なんですが、作品としてはやや”投げっぱなし”になるものも多いんです。それがこのセッションは主にトミー・フラナガンにオリジナル曲を作らせて、セッションも1日でキッチリ終わり。アルバムとしての完成度はやたら高く、気品すら溢れるハード・バップの旨味が凝縮されてようなアルバムになってるんですよ。

何と言っても後に「名盤請負人」とまで言われる程、この人がサポートした大物ミュージシャンの作品はことごとく名盤になっているトミー・フラナガンのプレイが、実に微に入り細に入り、気配りが行き届いております。

冒頭の『マイナー・ミスハップ』や、明るいラテンナンバーの『エクリプソ』なんかでは、しっかりとバッキングするピアノのリズムに乗って、前で心地良く吹きまくるコルトレーンやシュリーマンのプレイが、まるで何年も一緒にやってるメンバーとのプレイであるかのように、活き活き伸び伸びと輝いております。

グイグイに押しまくるんじゃなくて、絶妙な”引き”も心得た、ダグ・ワトキンスのベースと、ルイス・ヘイズのドラムも凄いんですよ。派手さは計算して押さえてるし、フロントを全然邪魔してないのにしっかりと存在感のあるリズム隊ってすごくカッコイイですよね。この2人のプレイは正にそれ。

で、ソロ弾いてもバックでコード弾いても、てろ〜んと奏でるちょっとしたフレーズから夜の香りが漂っているのがケニー・バレルのギターです。コルトレーンとシュリーマンにフラナガンのトリオだけでも、このアルバムは十分名盤になったかも知れませんが、バレルの醸す上質なブルースムードが、全体の味わいをグッと深いものにしております。あぁたまらん。

「オリジナルな表現を厳しく追究することを一瞬忘れるほど、肩の力を抜いて大好きなジャズを吹く事に夢中になっているコルトレーン」が聴けるのは、もしかしたらこのアルバムだけかも知れません。もちろんコルトレーンは気を抜いている訳でなく、ハードバップ・サウンドにしっかりと溶け込みながら突き抜ける、最高のプレイをしております。あとしつこいですが猫ちゃんがかわいいんです、猫ちゃんが。














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2019年07月27日

マル・ウォルドロン マル2

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Mal Waldron/MAL2
(Prestige/OJC)

みなさんこんばんは。

コルトレーンについては色々と「この時期はこんな感じよ」という体で語っておりますが「50年代はジャズとしてカッコイイのが多く、60年代以降のは激しく重厚なコルトレーン・ミュージックってな感じだよ」というのは、何となくお分かり頂けましたでしょうかね。

で、今日は1957年、コルトレーンにとってみればこれは初期の初期という事になりますべか。

コルトレーンは1950年代のはじめ頃から、ディジー・ガレスピーやジョニー・ホッジス、アール・ボスティックといったジャズやR&Bの大物のバックバンドのメンバーからそのキャリアをスタートして、1955年になってようやくマイルス・デイヴィスから

「お前なかなか面白いな、オレのバンドでテナー吹いてくれや」

と声がかかり、ここでようやくソロをちゃんと吹かせてもらえるミュージシャンになって、実質的にシーンの表舞台に出る事になります。

それまでのビ・バップでの”吹きまくり”とは一線を画す、音数を選んだファンキーさがそのまんま演奏クオリティの高さに繋がったマイルス・バンドのサウンドと、クールに研ぎ澄まされたトランペット・プレイでジャズの世界に新風を吹き込んだマイルス自身のトランペットの横で、懸命に”それまでにないテナー・サックスのフレーズ”を模索するコルトレーンのプレイは、一部から「へたくそ」とか酷評されておりましたが、単純な男らしさの情感のみに流されない硬派な吹きっぷりはこの時代において間違いなく個性的で、次第に世間からも

「あのコルトレーンってやつのテナーはぶっきらぼうに聞こえるかもわからんが、ああ見えて実に考えた演奏してるなぁ」

と評価されるようになってきました。

何にせよ1950年代半ば、世界で最も先を言くカッコ良さを追究してたバンドの、しかもリーダーと同じフロントマンという最高にスポットの当たるポジションにコルトレーンはいたのです。

ところがコルトレーン、この時期は悪いことに麻薬(ヘロイン)にハマッておりました。

カネがあったらとにかく買って打って、演奏中にボーッとしたり、ウトウトしたりしているのを、怖〜いリーダーのマイルスに「ふざけんなコラ!」と怒られ、でもそんなことを言われたからと言って、この恐ろしい悪癖は、止めようと思って止められるようなものではありません。言い伝えによると演奏中に眠ってしまったコルトレーンが、楽屋でマイルスにぶん殴られて・・・とかいうことになっておりますが、とにかく1957年の4月にコルトレーンはマイルスからクビを宣告されてしまったのでありました。

そんなコルトレーンを見て

「まぁ酷いなぁ。どうだい、ウチに来ないか?」

と、声をかけてくれたのが、ジャズ界随一の鬼才と呼ばれていた、ピアニストのセロニアス・モンク。

実はセロニアス・モンクって人は、その余りにも個性的な演奏スタイルから、当時メジャーな人気はそこそこだったものの、ミュージシャン達からは「いや、あの人はすげぇ。理論もテクニックも完璧だぜ」と、ものすごーく尊敬されてた人でもありました。

当然コルトレーンもモンクをとても尊敬していたんです。特に「全く新しいテクニックを身に付けたい!」と切実に願っていたコルトレーンにとって、チャンスがあれば一緒にセッションして技を磨こう、あわよくば直接理論的な事をあれこれ教えてもらおうと、接触を試みていたような人であったんです。


そんな憧れの人から声をかけられて嬉しくなったコルトレーン「クスリも酒も止めます」と宣言して、更にオフの日もモンクの家に通って色々教えてもらうつもりで、マンハッタンにあるモンクの家のすぐ近くに引っ越しました。

この「1957年の出来事」が、コルトレーンを飛躍的に成長させることになるんです。

とりあえずモンクのバンドで”修行”をし、朝から晩までモンクの家に入り浸っていたコルトレーンは、音楽理論や演奏に対するアプローチ的な事柄についてモンクにしつこく質問し、モンクもそれを嫌がることなく丁寧に教えてくれたために、コルトレーンは50年代末ぐらいにはもう独自の超絶テクニックと個性に磨きがかかった無二の音楽性を持つ、その時代のトップ・アーティストの一人にまでなることが出来ました。

コルトレーンの「マイルスバンドからモンクのところへ」という騒動があったその時は、一応プレステイジの専属ミュージシャンの一人でした。そして、プレステイジにはお抱えのハウス・ピアニスト(スタジオミュージシャン)としてマル・ウォルドロンという人がおりました。

マル・ウォルドロンという人は『レフト・アローン』というヒット曲があり、特に日本では人気のあるピアニストです。この人のプレイスタイルは、常にどこか「陰」のあるダークな哀愁が漂い、そしてこの人もまたセロニアス・モンクを深く敬愛しており、針が飛んだレコードのように循環しながらスケールアウトしてゆくアドリブや、鍵盤をガッコンガッコン叩き付ける打楽器みたいな奏法に、モンクからの影響が滲んでおります。

はっきり言って個性の塊のような人が、何故バックでの堅実なサポートを求められるハウス・ピアニストであったのか、ともかく謎ですが、もう一人のハウス・ピアニストが、堅実で華やかなレッド・ガーランドなので、もしかしたら真逆の個性を持ったピアニストをセッション毎に使い分けようというプレステイジ側の思惑もあったかも知れませんね。






MAL 2


【パーソネル】
マル・ウォルドロン(p)
アイドリース・シュリーマン(tp,@BC)
ビル・ハードマン(tp,ADE)
サヒブ・シハブ(as,@BC)
ジャッキー・マクリーン(as,ADE)
ジョンコルトレーン(ts)
ジュリアン・ユーエル(b)
エド・シグペン(ds,@BC)
アート・テイラー(ds,ADE)


【収録曲】
1.Potpourri
2.J.M.'s Dream Doll
3.Don't Explain
4.Blue Calypso
5.Falling In Love With Love
6.The Way You Look Tonight


(録音:ADE,1957年4月19日、@BC,1957年5月17日)

コルトレーンがマイルスのバンドをクビになってモンクに拾われた丁度その時、プレステイジは専属ピアニストであったマルのまとまったセッションを録音して、アルバムとして売り出そうと画策します。

マルは実は演奏家としての個性だけでなく、大勢でのセッションになった時のアレンジ能力にも長けた人であり、その能力は特にフロントに立つ管楽器奏者が個性的であればあるほど発揮されるようで、今日ご紹介するアルバム『マル2』も、アルト、テナーの両サックスにトランペットを加えた3管編成のアレンジでその能力が遺憾なく発揮されております。

テナーのコルトレーンは全曲参加で、他の管楽器は@BCがサヒブ・シハブ(アルト)アイドリース・シュリーマン(トランペット)ADEがジャッキー・マクリーン(アルト)ビル・ハードマン(トランペット)まぁいずれもクセの強い面々です。

特に上手さと”ちょいと妙な味わい”でブイブイに吹きまくるサヒブ・シハブと、やや掠れた、聴けば一発で個性派と分かる音色でグイグイ押しまくるジャッキー・マクリーンのアルト勢の最初プレイが、このアルバム実は最大の聴きものなんです。このアルト2人の圧巻な吹きまくりとコルトレーンの、最初ややぎこちなくもアドリブ後半で一気に加速するアドリブがマルのアレンジの中で響き合う、すっげぇ気持ちいいです。

この時期のコルトレーン、まだモンクのバンドでの”修行”を開始したばかりで、高速吹きまくりの”シーツ・オブ・サウンド奏法”はいかにも未完成といった感じでありますが、アドリブそのものは十分にアツいです。

そしてやはり何と言っても曲によって明暗のコントラストを自在に操るマルのアレンジ、これが良いですね。「明」の方では『ブルー・カリプソ』『ザ・ウェイ・ユー・ルック・トゥナイト』などで、粋でノリノリのハード・バップを聴かせて「暗」の方は『J.M.ズ・ドリーム・ドール』『ドント・エクスプレイン』で、引きずって引きずって引きずり込むブラックホールのような暗黒世界で酔わせてくれます。

それにしても、モンクと一緒に活動を始めたばかりのコルトレーンと、モンクを敬愛し、そのスタイルを多分初めて消化吸収して自分の個性を磨いたピアニストのマル・ウォルドロンが、絶妙な時期で共演してアルバムを製作したというのは奇縁ですね。そしてその後、マルはエリック・ドルフィーと出会い、そのバンドメンバーとなる事にも、何か巡り合わせのようなものを感じます。













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