2019年07月14日

レイジー・レスター コンプリート・エクセロ・シングルス1956-1962アンド・モア


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レイジー・レスター コンプリート・エクセロ・シングルス1956-1962アンド・モア


戦後のバンドでやってるブルースといえば、やっぱり何と言ってもシカゴ・ブルースが一番聴かれてて、実際に名盤や名演、有名人も多い訳なんですが、ブルースが隆盛を極めた時期ってのは、どこかの地域で盛り上がったら、よっしゃオレんとこも!と、対抗するように腕のいいミュージシャン達が競っていい演奏をして、地域毎に特色を持った素晴らしいレーベルなんかも出て来て、それぞれシカゴ産のものに勝るとも劣らない良いブルースマンの良い曲や演奏を輩出しておったんですよ。

特に戦前から戦後50年代ぐらいまでの時期のブルースってのは、それこそ広大なアメリカにあるそれぞれの地域の雰囲気というのが、サウンドに如実に現れていて、聴いててすごく楽しい!という事は覚えておいてくださいね。んで、その話をするとものすごーく長い上に複雑で読みづらい文章があぁぁぁぁあああっと続く危険性がございますので、今日ははやる気持ちをグッと抑えて「この地域のブルースはとても個性的だよ」という意味でルイジアナブルースを紹介します。


はい、ルイジアナのブルースというのは、このブログでももう何度も言っておりますように、一言でいえば『ユルくてオシャレ』です。

ルイジアナは地理的にはアメリカの南部、テキサスとミシシッピに挟まれた場所にある、そんなに都会じゃない州で、土地のほとんどはバイユーと呼ばれる広大な湿地帯であります。

この湿地帯特有の高温多湿な気候と、アメリカ独立後もしばらくフランスの領土だったという特殊な環境が、まずはこの地のブルースの『ユルくさ』に影響を与えたんだと思います。

そして、ルイジアナにはニューオーリンズという街がありまして、この街は音楽ファンなら「あ、ジャズが生まれたとこだね」とピンとくると思うんですが、この街はカリブ海に開いてる港町で、カリブ諸島の島々や南アメリカからの様々な文化が入って来ているところ。なので、ニューオーリンズやルイジアナのブルースやR&Bは、ディープなフィーリングの中にどこか陽気でハイカラな要素も入っていて、それがすごくトッポくてカッコイイのであります。

ほんで、この地の”バイユー”と呼ばれる湿地帯のブルースを、ほとんど専門的にリリースしていたのが、エクセロというレーベルであります。

実はこのエクセロ、会社があったのはテネシー州ナッシュビルという、ルイジアナからは大分離れた場所だったんです。

ナッシュビルという土地はカントリー・ミュージックの盛んな場所で、オーナーのジェイ・ミラーは最初この地でカントリーのレコードを製作しておりましたが、実はこのジェイ・ミラーさん、生まれ育ちはルイジアナというバリバリのバイユーボーイでありました。

黒人には差別的な言動もあったとの事ではありますが、それでもブルースが大好きで、カントリーでぼちぼち稼ぎながらブルースをレコーディングしようと、地元ルイジアナからブルースマンを呼んだり、ルイジアナに赴いてはいい感じのブルースをたくさんレコーディングしておったんですな。

そんな訳で50年代後半にはロックンロールの全国的なムーヴメントが沸き起こります。え?ロックンロールのブーム来ちゃったらブルース売れなくなっちゃったんじゃないの?とお思いかも知れませんが、南部ローカルなシーンではまだまだブルースの需要は多く、かつ、ルイジアナのブルースがオシャレでスローなロックンロールみたいだったから、若い奴らにも「いいじゃん、踊れるじゃん!」と密かにウケておった訳です。

そんなエクセロからは四天王と呼ばれるブルースマン達が輩出されました。

スリム・ハーポ、ライトニン・スリム、ロンサム・サンダウン、そして今日ご紹介するレイジー・レスターです。

つうかエクセロにからデビューしたブルースマン達って大体芸名で、そのネーミングが「シュッとしたハーモニカ野郎」「シュッとした稲妻野郎」「淋しい夕暮れ(もう意味不明)」「怠け者レスター」って、何かもう凄いんですが、コレはどうも本人達が好んで付けた訳ではなくて、オーナーのジェイ・ミラーさんが「ユーの名前はこれね」って、割と好き勝手テキトーに名乗らせたものだったとか。

しかしまぁ彼らの実にテキトーで、ユルユルどころかガバガバのネーミングが、そのルーズで程良く力の抜けたブルース・スタイルに実にピッタリなんですよねぇ。

レイジー・レスターは、1933年ルイジアナ州バトンルージュの生まれであります。

本名はレスリー・ジョンソンといって、ギターも弾くしハープも吹く、いわゆるマルチ・プレイヤーっぽい人で、作曲もします。

例によって昼間は働きながら、夜になると地元のクラブでいつか大人気になってやるぞとギターやハーモニカの腕を磨いていた時に、たまたまレコーディングに向かうためにバスに乗っていたライトニン・スリムに

「あ、アンタはあの有名なライトニン・スリムさんじゃないですか!」

と声をかけたところ

「あぁそうさ、オレがかの有名なライトニン・スリムだぜぇ。バリバリだぜぇ、ハンパないぜぇ」

と、ノリのいい返事が返ってきたので

「どこ行くんすか?ライヴっすか?オレも一緒に行っていいっすか?」

と、何かしつこく訊いたら

「あぁ?ライヴじゃないぜぇ、レコーディングだぜぇ、来たけりゃ来ればいいぜぇ〜」

と、ユルユルに許可されたので

「おぉぉ、すげぇや、オレ今からライトニン・スリムさんのレコーディングに行くんだ。帰ってきたら友達に自慢しよう」

と、ワクワクドキドキで同行したんですね。

ほいで、エクセロが用意したスタジオに行ったけど

「関係者以外お断りです」

なんてことにならないガバガバのセキュリティの中、勝手に友達みたいな顔をしてレコーディングを見学しようとしていたところ。

「ハープのヤツはどこ行ったんだぜぇ?」

「アイツまだ来ないねー、どこ行きやがったのよもー!」

「おいおいミラーのダンナぁ、オレのバリバリのブルースはハープねぇとダメなんだぜぇ」

「んなこと言っても来ねぇもんはしょうがないよー。スリム、ユー先に何曲かやってよ。ハープなしでも出来るのあんでしょ!」

「いんやぁ、今のオレの気分はハープなんだぜぇ」

つまりレコーディングに呼んでいたハープ吹きが遅刻したのかすっぽかしたのかスタジオに現れない。そんなことでモメております。まーこの時代、特に南部ではよくあることです。

ここでレスターは「この状況って、もしかしてオレが出るべきなんじゃね?」と、物凄くポジティブに解釈し

「あの〜、ハープが要るんすよね?自分、まぁちょっとハープ吹けるんすよ。いや、まープロの人に比べたらアレっすけど、いや、アレじゃないっす、自分、吹けるっす。吹くっす!」

と、何と憧れの人のレコーディングの場という状況の中で自分の売り込みを始めちゃった。

「えぇと、ユーはさっきから何かいるよね?いるけど見たことないね。スリム、このユーは誰?」

「知らないぜぇ、その辺のガキだぜぇ」

「ユー、本気で言ってる?ハーモニカ吹ける?」

「吹くっす」

「ヘタクソだったら承知しないけどマジで言ってる?」

「吹くっす!」

「風呂入る時とメイクラヴの時脱ぎ捨てるのは?」

「服っす!!」

「オッケー吹いちゃいな。ユー名前は?」

「レスリー・ジョンソンっす」

「じゃあ芸名はレイジー・レスターね。何か仕事もしないでプラプラしてそうな感じだから」


「うぃっす(えぇぇレスリーもジョンソンもかぶってないし!それに見た目?見た目仕事してないヤツに見えるのぉ?オレ結構ちゃんと仕事してるし怠け者じゃないけどなぁ!・・・まぁいいか)!やるっす!」


という訳で、何といきなり何のコネも実績もないままに、ライトニン・スリムのサポート・メンバーとして、レスターはレコード・デビューを果たしました。

この時の演奏はスリムにもミラーにも気に入られ、後にソロ・デビューも果たしつつ、その後もライトニン・スリムのレコーディングにはサポートとして参加も継続しております。




アイム・ア・ラヴァー・ノット・ア・ファイター コンプリート・エクセロ・シングルス 1956-1962 アンド・モア

1.I'M GONNA LEAVE YOU BABY
2.LESTER'S STOMP
3.GO AHEAD
4.THEY CALL ME LAZY
5.I TOLD MY LITTLE WOMAN
6.TELL ME PRETTY BABY
7.I'M A LOVER, NOT A FIGHTER
8.SUGAR COATED LOVE
9.I HEAR YOU KNOCKIN'
10.THROUGH THE GOODNESS OF MY HEART
11.I LOVE YOU I NEED YOU
12.LATE IN THE EVENING
13.A REAL COMBINATION FOR LOVE
14.BYE BYE BABY, GONNA CALL IT GONE
15.YOU GOT ME WHERE YOU WANT ME
16.PATROL BLUES
17.(I'm So Glad) MY BABY'S BACK HOME
18.WHOA NOW
19.IF YOU THINK I'VE LOST YOU
20.I'M SO TIRED
21.MY HOME IS A PRISON / SLIM HARPO
22.ROLE ON OLE MULE / TABBY THOMAS
23.NOTHING BUT THE DEVIL / LIGHTNIN' SLIM
24.GONNA STICK TO YOU BABY / LONESOME SUNDOWN
25.HOODO PARTY / TABBY THOMAS
26.ROOSTER BLUES / LIGHTNIN' SLIM


レイジー・レスターのエクセロ時代は1956年から62年。このアルバムにはその頃に残した全てのシングルと、後半に同じくエクセロ仲間のスリム・ハーポ、ライトニン・スリム、ロンサム・サンダウン、タビー・トーマスの6曲が収録してあります。

エクセロに残されたルイジアナ・バイユー・ブルースには、どれも独特のユルさと同時に、ロックンロールの時代にも対応した軽快なシャッフル・ビートのノリ、更にエコーやトレモロを活かしたモダンでトッポい味のあるトーンがあり、いかにも50年代の気のいい不良な雰囲気が最高なんですが、その中でもレスターのブルースは特にロッキンな魅力の強いものであります。

他のエクセロ・ブルースマン達よりちょいと若いレスターが好きでよく聴いていたのが、ジミー・リードやリトル・ウォルターなどのシカゴのロッキンなバンド・ブルースの人達で、あぁなるほど、ユルさの中のザラッとしたワイルドな感触は、ルイジアナ・ブルースとシカゴ・ブルースのいいとこ取りのようなカッコ良さと、それを見事にミックスする、この人独自のセンスが最初からすんごい光ってるなぁと納得。初期のローリング・ストーンズなんかは、どれだけこのサウンドに影響を受けたことだろうとか想像しながら聴くとまたこれがすこぶるハマるし実に楽しい。

レイジー・レスターさん、実は2018年の8月に亡くなっております。それも85歳の大往生で、亡くなる直前までデビューした頃と一切テンション変わらない、ユルくて暖かくて、実に”気のいい不良””な、素敵な素敵なブルースをずーーーっと続けてたんですねぇ。













『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 22:51| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする