2019年07月23日

ジョン・コルトレーン インプレッションズ

625.jpg

ジョン・コルトレーン/インプレッションズ
(Impulse!/ユニバーサル)


東京のアパートで一人暮らしをしていた頃、コルトレーンを夢中で集めては夜遅くまで聴きまくっておりました。

今から大体20年前というと、もちろんスマホもありませんし、自宅にパソコンなんて当然ありません。そもそもあの頃はインターネットというのが普及し始めたばかりで、接続したらダイヤル回線の「ピー、ゴロゴロゴロ・・・」という音が鳴ってたような時代でしたかね?ホームページとかいうものも、そんなになかったように思います。

それでも仕事終わって帰宅して、家事の他にもやることが多すぎて、気が付けば深夜って日が毎日だったような気がします。

音楽聴いて本読んで、音楽聴いて楽器触って・・・まぁそれぐらいしかやってなかったように思うのですが、それで時間はあっという間。うん、今もそう大して変わってないような・・・。

で、コルトレーンなんですが、他のジャズと比べてもある種独特の”重さ”のあるコルトレーンが、ヘロヘロに疲れた心身に、まるでアルコール度数の高い酒のようにジワ〜っと効いた。

重たくて、時に激しくて、疲れてる時にこういう音楽なんて受け付けないのかと思っていたら、実に疲れた心と体に刺さったり覆いかぶさってくれて、その刺さった部分や乗っかった部分をジワジワともみほぐしながら温めてくれるような感覚なんですね。表面だけじゃない、奥底までをしっかりと掴まえて揺さぶりながら良い刺激や深い感動を与えてくれるのがコルトレーンの音楽なんです。

特に最初の頃、コルトレーンっていいな、カッコイイなと思いながら夢中で聴いていたアルバムは、やっぱり60年代以降のインパルス時代のアルバムでした。

一番最初に『ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード・アゲイン』に心を撃ち抜かれてからは、それこそ「コルトレーンのアルバムで”Impulse!”っていう所から出てるやつは全部買え、見たら買え」と、自分自身の義務としてましたのでアルバムはみるみるうちに集まりました。

その中のひとつに『インプレッションズ』というアルバムがあって、このアルバムに入ってる『インディア』という曲が、本当にインド音楽みたいですげーカッコイイなぁと思うと同時に

「あ、アタシがコルトレーンに求めてたのは、こういうハードさと民俗音楽みたいなトランス感だったんだ!」

と、気付かされた特別な曲でした。

はい、そうです。『インディア』は、先日ご紹介した『ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』に入っていた曲です。

そいでもって、このアルバムに入ってるヴァージョンも、ヴィレッジ・ヴァンガードでの同じライヴ・ヴァージョン。


ところがコルトレーンの生前にリリースされたオリジナルの『ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』には収録されてなかったんですね。





資料を見ると、このインディアという曲は、コルトレーンがヴィレッジ・ヴァンガードのライヴの目玉として、5日間講演のうちの何日かではウードやバスーンといった楽器も加えた特別編成でも演奏しております。

これが何故オリジナルのアルバムには収録されてなかったのかというと、やはりバランスと収録時間でしょう。後年リリースされた追加収録盤や完全盤を聴くと、どのテイクも15分とかの非常に長い演奏ですから

「これはアルバムに入れたいんだ」

「う〜ん、ちょっとこの曲凄くいいんだけどノリと曲調が独特過ぎて演奏も長いからバランスがなぁ・・・」

「入れたいんだ」

「わかった。じゃあこの曲を収録したアルバムはちゃんとした形で出すから次回という事にしてくれ」

「えぇぇそれは・・・」

「作品としてのバランスを考えてみたら、この曲を一発目にダーンと持ってきたアルバムを絶対出すからさぁ」

「う、うん。それなら・・・」

というやりとりが、コルトレーンとプロデューサーのボブ・シールとの間であったのかも知れません。




インプレッションズ


【パーソネル】
ジョン・コルトレーン(ts,ss)
エリック・ドルフィー(b-cl,@B)
マッコイ・タイナー(p,@BC)
レジー・ワークマン(b,@)
ジミー・ギャリソン(b)
エルヴィン・ジョーンズ(ds,@〜B)
ロイ・ヘインズ(ds,C)

【収録曲】
1.インディア
2.アイ・ゲインスト・ザ・ウォール
3.インプレッションズ
4.アフター・ザ・レイン

(録音:@B 1961年11月3日、A1962年9月18日、B1963年4月29日)


収録曲の録音年月日を見れば分かると思うのですが、上の「1961年11月3日」というのが、ヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴで、他の日付の2曲がスタジオでレコーディングされたものです。


これはですのぅ、つまりライヴとスタジオ録音のハイブリッド盤。でも、聴いた感じの質感は、上質なスタジオ録音のそれです。

とにかくライヴの曲がスタジオ録音と一緒に入ってるくせに「作品」としての完成度がすこぶる高い。

あのですね、先に行っちゃいますがこのアルバム、長い曲と短い曲の配分が最高なんですよ。

長いのがライヴで、短いのがスタジオ。しかも、ライヴがどれも14曲強の怒涛の演奏で、その間に3分ちょっとと4分ちょっとのスタジオ録音の曲がそっと添えられている。

『インディア』が、インド音楽のラーガみたいな、民族調モードジャズの名曲で、その次に来る『アイ・ゲインスト・ザ・ウォール』はミドルテンポのブルース、その次に来る『インプレッションズ』が、これまた激しい、余りにも激しすぎてマッコイ・タイナーのピアノは最後の方にちょろっと出て来るだけで、ほとんどコルトーンのテナーとエルヴィン・ジョーンズのドラムスとの一騎打ちみたいになっております。

そして、ラストがバラードの『アフター・ザ・レイン』これが染みますね。音楽的に熟成したこの時代のコルトレーンのバラードは、恋愛の甘さとかそういう次元ではなくて、もっと深い祈りのようなものを感じます。

ここではドラムがエルヴィンからロイ・ヘインズに交代してて、ささやくような繊細なブラッシュワークでサポートしております。

この曲がエンディングを迎えて、余韻がスーっと消えて行くその瞬間が、壮大なスケールの映画か何か観た後みたいな恍惚で、えぇ、ライヴ感がありながら実に良く作りが出来ていて、本当に素晴らしいアルバムだと思います。

特に『インディア』と『インプレッションズ』の2曲に関しては、今じゃヴィレッジ・ヴァンガードの完全盤で違う日の演奏まで楽しめますが、それでもなお、このアルバムの作品としての衝撃度が薄れる事は一切ございません。













”ジョン・コルトレーン”関連記事








『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』


サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 09:20| Comment(0) | 大コルトレーン祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする