2019年08月31日

今年もありがとうございました(コルトレーンのソプラノサックスを聴きながら)

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夏が終わります、終わってしまいます。

そして、今年も大コルトレーン祭終了です。

今年は色々と心身共に消耗する夏でありましたが、そんな中で集中的にコルトレーンを聴き、その音楽の深みにハマることで養われる英気ってのは、例年に増してあったような気がします。

最終日に聴いていたのは「中期」と呼ばれるアトランティック時代のアルバム『コルトレーン・サウンド(夜は千の眼を持つ)』。

アトランティック時代のコルトレーンのアルバムには、独特の”明るさ”があって、その前のPrestige、その後のImpulse!時代とは全然違う爽やかさに「おっ」となって、時々取り出してはその明るさや爽やかさに浸っておりますが、このアルバムはとりわけ爽やかで実はキャッチーな良曲がいっぱい入っている隠れ名盤なのです。






前の記事で「コルトレーンがソプラノサックスを使って演奏しているバラードはほとんどない」と書きましたが、このアルバムに入っている『セントラルパーク・ウエスト』という曲が、何とコルトレーンがソプラノで吹いている貴重なバラード曲です。

https://youtu.be/rz3Q1efswzU


コルトレーンはまだソプラノ・サックスを扱い始めたばかりで、その丁寧なノン・ヴィブラートの吹き方は、この新しい楽器の鳴りをひとつひとつ確かめているかのようにも思えます。後年のバリバリに操りまくってる演奏に比べるとたどたどしい感じは確かにするのですが、でもこういう朴訥なバラード表現、あぁコルトレーンだなぁと思ってしっとりと聴き入ってしまいます。





それでは皆様、来年の大コルトレーン祭おたのしみに。今年もありがとうございました。














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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』


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2019年08月29日

オペレーション・アイヴィー

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OPERATION IVY/OPERATION IVY
(EPITAPH)

90年代、ちょっとしたパンク・リバイヴァルのようなムーヴメントが巻き起こりました。

はい、メロコアとかスカコアとか、すっげぇ流行りましたよね?アレですよ。

そのちょっと前にニルヴァーナのブレイクからグランジというノイジーなロックが流行しましたが、アレはガレージパンクっぽいのからメタルの影響が強いもの、そしてもっと内省的で実験的なものまで多様性に富んでいて、一言で定義しづらいものではありました。

とにかく90年代半ばぐらいまでのロックの、凄く混沌としていて「次どんなのが出て来るんだろう」とドキドキワクワクするような感じの中
から、いきなりポップでスコーンと明快なパンクロック・サウンドを響かせながら登場したグリーン・デイのブレイクから、メロディックなパンクロック・バンドがいつしか「メロコア」と呼ばれるようになり、日本でもハイ・スタンダードを中心に、一気にシーンが出来上がりました。

その頃ってのは、とにかくバンドやってて、インディーズ・レーベルからメロディックでキャッチーなCDを出せば売れる。みたいのがあって、そりゃもう凄い勢いで「パンク」とか「コア」っていう、アタシがアタマの悪い学生の時分には、アタシも含めほんの少数の同じようにアタマのアレな子しか使わなかった言葉があっという間に市民権を得たような感じで、嬉しいよりも大きな戸惑いを覚えたことも記憶にハッキリと残っております。

「なーんかさー、メロコアもいいんだけどさー、パンクって思想&暴力じゃん?ガツンと激しくて骨のあるヤツ聴きてーよなー」

とか、何だかわかったよーなわからんよーな事を想ってた時に出会ったのがランシドでありました。





モヒカンに革ジャンにゴリゴリな歌詞とサウンドで、そりゃもうアタシはすっかり虜になりまして、18の頃に出会ってハタチ過ぎても「ランシドいいね♪」とずっと言ってたぐらいです。

そんな時先輩が

「ランシド好きならオペレーションアイヴィー聴いてみなよ、いいぜ」

と言ってくれて

「どれっすか?」


と訊いたら

「これよ」

と、ジャケットを見せてくれました。

ふ〜む、何かアタシが思ってるパンクっぽい感じではない・・・。

と、最初敬遠してたんですが、ある日思い出して職場にあったレコードを流してみたら、コレがランシドよりも若干ポップなサウンドではあるものの、直球の硬派なパンクロックで、しかもちょいちょい挟んでくるスカのリズムの曲がまた凄くいいなという事を、先輩に素直に伝えましたら



「ふふふ・・・」


「え?何すか」

「知らなかった?」

「何がすか?」

「いや、だってあんだけランシド好きだって言うから知ってるものだとすっかり思ってたんだけど」

「????」

「このバンドさぁ、ランシドのティムとマットがランシドの前にやってたバンドなんだよ」


「・・・!!!!!」




Operation Ivy

【収録曲】
1.Knowledge (Explicit)
2.Sound System (Explicit)
3.Jaded
4.Take Warning (Explicit)
5.The Crowd
6.Bombshell
7.Unity (Explicit)
8.Vulnerability
9.Bankshot
10.One of These Days
11.Gonna Find You
12.Bad Town
13.Smiling
14.Caution
15.Freeze Up
16.Artificial Life (Explicit)
17.Room Without a Window
18.Big City (Explicit)
19.Missionary
20.Junkie's Runnin' Dry
21.Here We Go Again
22.Hoboken
23.Yellin' In My Ear (Explicit)
24.Sleep Long
25.Healthy Body
26.Officer (Explicit)
27.I Got No



そうだったんです、オペレーション・アイヴィーは、1987年に後にランシドを結成することになるティム・アームストロング(ギター)とマット・フリーマン(ベース)が中心となって、アメリカ西海岸で結成されたバンドであります。

そうそう、ティムはランシドではメイン・ヴォーカルとギターなんですが、このバンドではちょこっとコーラスしたりするものの、メインのヴォーカルはジェシー・マイケルズという人で、これがまたカッコイイ声なんですよ。

オペレーション・アイヴィーの魅力は、何と言ってもその粗削りな疾走感にあります。

ランシドってバンドはやっぱり安定感があって、そのサウンドは「粗い」ってよりズッシリと「荒い」んですよ。全てのサウンドがガッチリとひとつになって迫ってくる感じ。そこへくるとオペテーション・アイヴィーの演奏は、もちろん上手いんですけど、ザラッと突き刺すようなサウンドの粗く削れた部分、特にハイスピードでずちゃずちゃ走るスカ・ナンバーには聴く人を否応なく巻き込んでノせる独特のやぶれかぶれな勢いがあるんです。あと、アメリカ西海岸ロック特有のカラッとしたテイストもやっぱりあって「ランシドより聴きやすく、かつタフで粗削り」という、ポップさと攻撃力の両方高いサウンドがものすごーくズバズバきます。

1987年に彼らは地元のカリフォルニア州バークレーでバンドを結成。カリフォルニアには当時ギルマン・ストリートというパンクスやロック・キッズが集まる場所があり、そこで最も人気のバンドとして、シーンの中心にいたんです。

けれども活動が順調そのものだった1989年に、バンドは突如「世間の注目を集め過ぎたから」という理由で解散。

たった1枚のアルバムとシングルだけを残してメンバーはバラバラに。その後アル中となって支援施設にまで入るほどにヘロヘロになっていたティムを見かねたマットが声をかけてランシド結成となったのは有名な話。

えぇと、アルバム「オペレーション・アイヴィー」は、彼らが現役時代にルックアウトというレーベルからリリースされたアルバムに、未収録曲をプラスして、エピタフ・レコードが再発したものです。

粗くとんがったサウンドのライヴ感、これは本当に凄いです。






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2019年08月27日

コルトレーンのソプラノサックスについて


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コルトレーンといえばテナー・サックス奏者でありますが、コルトレーンをそんなよく知らない人でも知っているという、彼の代表曲『マイ・フェイヴァリット・シングス』で彼が吹いているのはソプラノサックス。



元々はミュージカル『サウンドオブミュージック』の劇中歌で、とってもキュートな曲なんですが、コルトレーンの演奏はといえばどこかエキゾチックな異国情緒漂うもの。

実はサウンドオブミュージックの映画の公開が、コルトレーンのレコード発売のちょいと後だったため、映画で流れた時は「あれ?これってコルトレーンのあの曲なんじゃない?」と思った人もちらほらいたとかいう話もありますな。

ほんとかどうかはわかりませんが、こういう話が出るほどコルトレーンの『マイ・フェイヴァリット・シングス』は、コルトレーンの演奏として完全に血肉化されていたんだなと思います。


アタシが最初に手に入れた『マイ・フェイヴァリット・シングス』は『ライヴ・アット・ザヴィレッジ・ヴァンガード・アゲイン』のやつで、ギタギタに解体されたかのようなフリー・フォームなアレンジの中で超音波のように飛び交うソプラノと、ノイズ発生器と化したファラオ・サンダースのテナーの咆哮に撃ち抜かれて、正直曲どころではなかったです。




それからしばらくしてオリジナルのアトランティック盤マイ・フェイヴァリット・シングスを聴き、そのふんわり香るエキゾチズムに酔わされて、曲としてとても好きになりました。

そう、エキゾチズム。コルトトレーンの吹くソプラノは、いわゆるサックスの音っぽくなくて「ベー」っという独特の響きが、たとえばインドのコブラ使いなんかが吹いているあの笛みたいな感じで鳴ってるんです。


ジャズにおけるソプラノ・サックスは、初期のディキシーランドジャズで活躍した、クラリネットの後継楽器でありました。そのオリジネイターであるシドニー・ベシェも元々クラリネット奏者で、彼のソプラノサックスのプレイは目いっぱいのビブラートがかかったトーンをふくよかに鳴らすスタイルで、コルトレーンのスタイルとはまるで違います。


それ以降のソプラノサックス吹く人のプレイも、基本的にソプラノという高音の特性を活かした、スマートで透明感のあるものが多いのですが、コルトレーンはどうもこの楽器の特性とか長所とか、そういったものを知りつつも、わざと硬い音の出るメタル製のマウスピース(セルマーのメタル)を使って、透明感を出さないようにしていたんじゃないかと思わせるフシがあります。

その証拠に、コルトレーンはソプラノであんまり、というかほとんどバラードを吹いてないんです。

コルトレーンのバラードといえば、テナーサックスの中から高音域を活かしたものです。つまりコルトレーンはバラードでは高い音を求めてたはずなのに、もっと高い音が出るソプラノサックスでバラードをほどんどやらなかったというのは、つまりソプラノサックスをサックスではなく「民俗音楽の楽器みたいな位置付け」で捉えていたのではないでしょうか。

そういえば、60年にコルトレーンがソプラノをレコーディングで使うようになって以降、彼のレパートリーには民族調な曲が一気に増えました。そしてインパルス・レコードと契約してからは、その民族調が普段のジャズと上手い事結び付き、その「荘厳で重厚」と言われる独自の音世界が揺るぎなく確立されて行きました。


その音世界の形成に、ソプラノサックスという楽器が大きな影響を与えてるとアタシは思ってますが、みなさんはどうでしょう?またしばらくコルトレーンがソプラノを吹いている曲を聴きまくって核心に迫りたいと思います。










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