2019年08月24日

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート

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ヴェルヴェット・アンダーグラウンド/ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート
(Polydor/ユニバーサル)


「10日もブログさぼってどこほっつき歩いてたんだ」

と、お怒りの方もいらっしゃるでしょう(ほんとかよ)ごめんなさいごめんなさい。

はい、8月中盤は怒涛のお盆から怒涛の出張でヒーヒー言っておりました(暑かったですもんねー)。


出張はですね、鹿児島に行ってたんですよ。しかも大都会鹿児島市に(!!)。

やっぱり大都会にはパフェが食べられる喫茶店があると思って、その辺のパフェを全て制覇しようと思ったんですが、まぁ出張です。あんまりパフェれませんでしたので、お仕事で行った会の後の打ち上げ的な場に出て来たバイキング形式の食事のデザートのケーキを5つ残しての大皿一皿と、翌日のお仕事が終わった後のギリギリの時間で立ち寄った天文館の「マノン」という喫茶店(とても良いお店)の白玉抹茶ぜんざいパフェのみです、スイーツは。


嘘、ごめんなさい。実はデパ地下で買ったチョコレートケーキとプリンをこっそり持って帰って、ホテルを後にする1時間前に朝食として食べました。

や、これはですね、ちゃんとした理由があるんですよ。あの〜、最近はビジネスホテルも凄くちゃんとした朝食が出るじゃないですか。ロビーのところで朝からご飯やらおかずやらサラダやら味噌汁やらカレー(!)やら、セルフサービスで好きなだけ食べていいよ〜って。

朝いちばんから多くの宿泊の人がトレー持って並んで、ロビー中にごはんやらおかずらやの香りがたちこめる、朝。

・・・実はアタシ、コレがダメなんですよ。

大体アタシ、朝は吐き気してますんで、食べ物の匂いを嗅ぐだけで「をぇっ」てなります。食べ物に人が並ぶのも嫌です、餌与えられてる家畜みたいな気分いなるから。だからごめんなさいして、部屋に戻って食べました。ケーキとプリン。

え?ケーキとプリンは食べ物じゃないの?ですって?何を言いますか、ケーキとプリンは飲み物です。


さて、前フリが長かったのですが、今回のテーマは「朝ごはん食べない人達」です。

音楽の世界というのは、不健康な人や不摂生な人の巣窟なんですが、いかにも朝ご飯食べないよって人はロックの世界に多そうですね。

そんな「朝ご飯食べないロッカーの代表格」といえば、何と言ってもヴェルヴェット・アンダーグラウンドでしょう。

その屈折と犯罪の香りと退廃極まりない歌詞世界と音楽性というのは、あぁこれはもう確実に朝ご飯食べないし、起きてすらいないだろうと思わせるに十分な不健康&不健全ぶりであります。

事実ヴェルヴェット・アンダーグラウンドは、朝飯云々は抜きにしましても、ロックに「退廃」というものを持ち込んだ、偉大なバンドであります。

1964年に、職業作曲家であり、詩を志す文学青年であったルー・リードと、イギリスから現代音楽を学ぶためにアメリカに来ていたジョン・ケイルを中心に結成されたこのバンドは、ストレートよりもややポップな楽曲に、性的倒錯すらも美しい比喩的表現に昇華させた高度な歌詞の世界、実験精神の炸裂した破壊的サウンドという、それまでになかった知性と暗黒を同時に持つものでありました。

ニューヨークのクラブで、そんな彼らのパフォーマンスを観て感激したのが、現代アートのカリスマとして人気絶頂だったアンディ・ウォーホルです。

ウォーホルは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを、音楽と文芸とアートと映画とファッションを融合させた一大プロジェクトのアイコンような存在として世に売り出そうとあれこれ考えて、自分がプロデュースしたアルバムを、ドイツ生まれの人気モデル、ニコのゲスト参加という派手なオマケまで付けてデビュー作としてリリースさせました。

これが有名なバナナのジャケットの『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』です。内容はもちろん素晴らしいのですが、余りにも先を行き過ぎていたのか、それともまだまだ世の中の求めていたロックというものが、ひたすら熱狂できるポジティヴなパワーを放つものだったのか、それはわかりませんがこのデビュー作の売り上げは散々なものとなって、世間からの評価もよろしくなく、ウォーホルは落胆。そして、元々「あんま人にごちゃごちゃ言われるの、好きじゃない」という傾向の強かったルー・リードとジョン・ケイルはウォーホルと決別。

今やアンダーグラウンド・ロックの元祖とまで評価されているヴェルヴェット・アンダーグラウンドのスタートは、栄光と挫折が混然となった、非常に険しいものでありました。




ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート

【収録曲】
1.ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート
2.ザ・ギフト
3.ディ・ゴダイヴァズ・オペレイション
4.ヒア・シー・カムズ・ナウ
5.アイ・ハード・ハー・コール・マイ・ネーム
6.シスター・レイ


で、今日ご紹介する『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート』は、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのセカンド・アルバムなんですが、ウォーホルから卒業し、初めてバンドとしてのやりたい放題をやったアルバムであり、また、発売が遅れたファーストのリリースから間髪を入れずにリリースされたということから、根強いファンからは「これこそ彼らの最高傑作であり、真のファースト・アルバムだ!」という声が挙がるほど。

や、確かにアタシもヴェルヴェット・アンダーグラウンドのアルバムでは、このアルバムが最も攻撃性と中毒性が高い、ロックバンドとしては最高の”ぶっこわれぶり”が発揮されたアルバムとして、長年特別に愛聴しております。

聴きどころはやっぱり何と言っても即興演奏を大胆にぶっこみながら、言葉すらも徹底的に解体して、聴く人の意識をどんどん泥沼の陶酔に引きずり込んでゆく圧倒的に危険なサウンドです。ファーストではヴァイオリンならぬヴィオラを弾いていたジョン・ケイルはここでベースに専念(このベースラインも当たり前の4つ刻みじゃなくて実に不気味なのです)、フロントはルー・リードとスターリング・モリソンのギターが激しく絡み合いながら火花を散らすのですが、このスターリング・モリソンのフィードバックやハウリング音まで無遠慮に響かせながらぶっ壊れるファズギターがもう狂気です。

そして、この人も「当たり前のビートを叩かない」人とアタシは認識しておりますドラムのモーリン・タッカー。彼女のドラミングは、曲を盛り上げるとか、土台になるとかそういうのではなく、重々しく粘るスネアの一撃を、執拗な「等間隔がちょいとズレた」ミニマルなリズムで淡々と繰り出していて、これもまた狂気であります。


そう、このアルバムは、ルー・リードとジョン・ケイルと、スターリング・モリソンとモーリン・タッカーという、バンドで音を出してる全ての人間の、それぞれ性質の違う狂気がバランスなんざ関係ねぇとばかりに全力でぶつかり合って削れ合う、衝動という衝動が、とにかく異様な形で炸裂している、そんなアルバムです。

結局このアルバムでの自我と自我の凄まじいぶつかり合いが音楽以外の事にまで波及したのか、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのバンドサウンドのコアであったジョン・ケイルはルー・リードと対立して脱退。これ以降ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのサウンドは、独特の屈折はそのままに、よりポップ色を強めて行きます。うん、そりゃそうじゃろう、あらゆるものを消耗してしまわないとこれほどまでに禍々しい衝動と退廃に満ちたサウンドは作れませんて。


















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2019年08月17日

ブルー・ワールド(またしてもコルトレーン未発表出る!)

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コルトレーン、またしても未発表音源発売の大ニュースです(!!)


昨年はインパルスでレコーディングされて全く世に出てなかった『ザ・ロスト・アルバム』がいきなりリリースされて、ファンのド肝を抜きました。



ええ、これは単なる「余りもんテープをてきとーに編集した」とかそんなんじゃなくて、丸々ガッツリアルバムだったので、しかもその内容がやっぱり素晴らしく中身が濃くて充実したものだったために、1年経った今では未発表だった云々はまるで関係なく、フツーに「60年代前半のコルトレーンの作品のひとつ」としての愛聴に耐えるものとして聴いております。

で、今回なんですが、今回のは流石に「発売されずに放置されてたままの未収録テイクか未発表セッションだろう」と思ったんですが、どうやらちょいと毛色の違う”作品”のようなんです。

コルトレーンは、1964年にカナダ国立の映画製作庁から『Le chat dans le sac』という映画の音楽を依頼されており、そのための音楽がレコーディングされ、実際に映画で使われたそうです。

この映画、日本では未公開なのですが、放映されたようです。で、その中で『ナイーマ』や『トレーニング・イン』『ライク・ソニー』『ヴィレッジ・ブルース』といった、コルトレーンの愛奏曲が流れてました。

資料によると、当時の人達はこの映画に使われている曲は、コルトレーンの過去のアルバムに入ってる演奏を使ったものだろうと思ってたそうなのですが、何とこれが、使い回しではなくてこの映画のために新たにレコーディングされたもので、それが録音から55年を経て、やっとリリースされる事になるんだということです。

つまりこのアルバムは、コルトレーン初の「映画のサントラ盤」ということでまずびっくりなんですが、50年代とかに別のメンバーでやっていた曲を、黄金のカルテットのメンバーで、しかもフリー化する直前の『至上の愛』のちょっと前の時期の演奏って言いますから、もう中身が重厚で熱いことは保証されたようなもんでしょう。


発売は2019年9月後半、CDとレコードが出る予定であります。

↓↓↓↓↓















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2019年08月13日

マッコイ・タイナー リーチング・フォース

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マッコイ・タイナー/リーチング・フォース
(Impulse!/ユニバーサル)

1950年代末に結成され、60年代初頭に大々的に世に出たジョン・コルトレーンのカルテットは、コルトレーンのプレイのみならず、そのバンド・サウンドの突き抜けた個性的な演奏が注目されました。


その中でインパルス・レーベルが真っ先にソロ・アルバムの売り出しにかかったのが、ピアノのマッコイ・タイナーでした。


マッコイは、コルトレーン・カルテットのプレイは激しく吹きまくるコルトレーンを支え、というよりは真っ向からそのフレーズを受けて一緒に燃え上がるような壮絶な演奏でありましたが、単独のピアニストとしては、この時代の新しいジャズの理論である「モード」というものを理解した有望な若手としての評価も固めておりました。

そこでインパルスは1962年、コルトレーン・カルテットゆかりのメンバーで固めたピアノ・トリオ・アルバム『インセプション』を録音してリリースしました。





そしてそれから1年も経たないうちに、今度はメンバーを変えてまたもピアノ・トリオ・アルバムの『リーチング・フォース』をレコーディングしました。


これはですね、本当に異例というか、インパルスがいかにマッコイを特別なピアニストとして見ていてたかということの現れなんですね。

まず、ピアノという楽器は、まだまだジャズの世界では「フロントのホーン奏者を支えるリズム楽器のひとつ」という考えが根強く残っておりました。もちろん50年代から実力のあるピアニストのトリオ作はそれなりに人気があり、リリースもされておりましたが、アメリカではどうもピアノトリオってのは「良い感じのBGM」以上の評価はなかなかされないようで、バド・パウエルやセロニアス・モンクなど、一部の例外を除き、どちらかというと小粋だったりファンキーだったり、そういう心地良いものが好まれる傾向が、確かに今もあります。

そう、実はこの流れにちょっとした風穴を最初に空けたのが、モード・ジャズだったんです。

モードの金字塔と呼ばれるマイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』これに参加して、見事に芸術性の高いサウンドのキーマンとなったピアニストのビル・エヴァンス。彼が「新しいジャズを追究するためのピアノ・トリオ」を結成し、リリースしたのが『ポートレイト・イン・ジャズ』をはじめとするいくつかのトリオ・アルバム。

この、エヴァンスのトリオがジャズの世界におけるピアノ・トリオという編成に、一個の芸術表現をするフォーマットとしての確固たる地位
を与え、加えて多くの新しい表現への探究に燃えるピアニスト達へ大きな間口を開いたんです。

で、マッコイのまさかの2枚連続のピアノ・トリオでのリリースです。

もちろんマッコイは先にも述べたように「コルトレーン・カルテットのピアニスト」というネームバリュー以上に、新しいモードの手法を修めたピアニストとして既に独自のスタイルを持っており、もしかしたらインパルスは当時注目を集めていたビル・エヴァンスへの有力な対抗馬として”ピアニスト・マッコイ・タイナー”を売り出したかったのかも知れません。



リーチング・フォース

【パーソネル】
マッコイ・タイナー(p)
ヘンリー・グライムス(b)
ロイ・ヘインズ(ds)

【収録曲】
1.リーチング・フォース
2.グッドバイ
3.アーニーのテーマ
4.ブルース・バック
5.オールド・デヴィル・ムーン
6.ジョーンズ嬢に会ったかい

(録音:1962年11月14日)


実際にデビュー作の『インセプション』そして次の『バラードとブルースの夜』なんかを聴くと、そのスタイルはビル・エヴァンスと共通するリリシズムが底の方に漂っている印象を受けます。というか、コルトレーン・カルテットでの激しくヘヴィなプレイも、70年代以降のアグレッシブ路線の奥底にも、どうしようもなく狂った切なさのようなものが胸にグサグサと刺さるから、アタシはマッコイが好きなんです。はい、本質的にはこの人”切なさ”の人です。

さてさて本作『リーチング・フォース』ですが、前作と代わってマッコイのバックに付くのは、ベースがヘンリー・グライムス、ドラムがロイ・ヘインズであります。


うひゃーキタキタ!これはもうアタシ大好きなメンツです。

ドラムのロイ・ヘインズは、チャーリー・パーカーとも共演したベテランですが、何といってもコルトレーンやエリック・ドルフィー、ブッカー・アーヴィンといった、物凄くクセの強いホーン奏者のバックで叩く時の、その細やかなスネアさばきから繰り出されるスピード感が何と言ってもたまらん人で、こりゃもう同じく独自のスピード感持っとるマッコイとの相性は言わずもがな抜群です。

マッコイと最高に相性の良いパートナーといえばもちろんエルヴィンで、これにはアタシも全く異論はございませんが、エルヴィンと組んだ時の安定感とはまたちょっと違う、マッコイのスピード感が華やぐか、それともヘインズのスピード感が上を行くかのこの緊張感、もう1曲目の『リーチング・フォース』から激しいスリルを孕みながらデッドヒートしてますが、はい、もうたまらんです。


ヘンリー・グライムスは、個人的にバリッバリのフリージャズでありますアルバート・アイラーのアルバムでのプレイに衝撃を受けて大好きになったベーシストです。

この人は音に物凄く特徴があって、すごく太いんです。その太い音をグワッと鷲掴みにしてぶっ放しながら、空間を歪めて行くような強烈に豪快なスタイルの持ち主なんですが、バラードなんかでは実に的確なウォーキングで、時に弓弾きも披露しますがそのどちらもメロディアスなんですよね。やや屈折した感じの憂いが溢れるバラード『グッドバイ』や、ビル・エヴァンスとスコット・ラファロの演奏と間違えそうなぐらい端正な『アーニーのテーマ』で聴ける豪快な音と繊細な音符使いのベースプレイが、はい、もうたまらんです。


全体的にスピード感とバラードでのリリカルぶりがパワーアップして、どの曲でも彼の本領が発揮されております。特にマッコイ個人の”本領”の部分は後半、しっかりブルース形式、でもやはり解釈には独自のものがある『ブルース・バック』、得意のモーダル大全開な『オールド・デヴィル・ムーン』に刻まれております。これも本当に良いアルバム♪


















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