2019年08月09日

マイルス・デイヴィス アット・ニューポート1958

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マイルス・デイヴィス/アット・ニューポート1958
(Columbia/ソニー・ミュージック)

巷で最もアツいもの、それはフェス!!

豪華アーティスト達が野外の特設ステージでステージを繰り広げ、聴衆はステージの前に行ってそれを楽しむもよし、近くの木陰で涼みながら聴くもよし、何なら会場内のフリースペースにテント張ってくつろぐもよし。よしよしづくしの良いことばかりのように思えるフェスであります。

実際は夏の野外という環境故に色々な問題もあろうかと思いますが、それはさておきフェスであります。

今、世界中で行われているフェスティバルというのは、主催者が企業のスポンサーを募ってその広告のお金で賄う部分が多く、それでもって色んな大物アーティストをブッキングする事が出来てますが、この方法で大きなフェスを運営するアイディアが生まれたのが、1954年から開催されるようになったニューポート・ジャズ・フェスティバルなんです。

ニューポートという場所は、アメリカの東海岸にある高級別荘地でした。

夏になるとあちこちのお金持ちが、この地でバカンスを過ごすためにやってくる。そこに目を付けた地元の資産家夫婦が「野外のコンサートをやりたいね」と思ったのがきっかけで、プロモーターのジョージ・ウェインという人に声をかけて結果大成功。ニューポート・ジャズ・フェスティバルは、今も続く世界で一番有名なジャズ・フェスティバルとして知られております。


このフェスティバルは最初から当時のジャズを代表する大物や、注目の若手をブッキングして、それは大いに盛り上がりました。そして、フェスの模様は全国放送の国営ラジオでも中継され、全国から更なるファンを惹き付けました。

そして宣伝の極め付けとなったのが、1958年のステージシーンを中心に編集されたドキュメンタリー映画『真夏の夜のジャズ』です。

この映画は本当に素晴らしかった。というのは、ルイ・アームストロング、アニタ・オデイ、セロニアス・モンク、チコ・ハミルトン、などなど、もう凄いメンツの演奏シーンがほとんどで、余計なナレーションや演出は一切ナシ。素晴らしいステージと美しいカラー映像に何度観ても魅せられてうっとり夢見心地になります。

実際、この年のニューポートでの演奏は、いくつかレコードとして作品化されていて、マヘリア・ジャクソン、レイ・チャールズ、デューク・エリントン(feat.ジェリー・マリガン)、ダイナ・ワシントンのアルバムが有名ですが、マイルスも映画にこそ出演しておりませんが、実はこの年のニューポート・フェスで演奏していて、その演奏はちゃんと作品として残っております。

その昔、CD2枚組でセロニアス・モンクとカップリングされていた『マイルス&モンク・アット・ニューポート』というアルバムがあって、そちらのマイルス・デイヴィスの部分が、1958年のニューポート・フェスでの演奏でした。

このアルバムは、マイルスもモンクも演奏のテンションがすこぶる高く上質だったので、長年アタシの愛聴盤でありましたが、どうしてまた共演盤でもないどころか、年代も違う(マイルスは58年、モンクは63年のステージ)演奏をカップリングして売り出したのかちと分かりません。

一説によると、セロニアス・モンクって人は今でこそワン・アンド・オンリーの個性を持つ偉大なアーティストとして評価されているけど、レコードがリリースされた頃は、まだ評価が定まっておらずなかなか売れなかった。なので人気のあるマイルスとカップリングして何とか売り出そうとしてたとか言われてて、あぁそりゃあ確かにそうかもなと思ったりしてました。

それぞれの未発表部分も追加された単独盤がリリースされたのは、つい最近になってから。




アット・ニューポート1958

【パーソネル】
マイルス・デイヴィス(tp)
キャノンボール・アダレイ(as)
ジョン・コルトレーン(ts)
ビル・エヴァンス(p)
ポール・チェンバース(b)
ジミー・コブ(ds)

【収録曲】
1.イントロダクション
2.アー・リュー・チャ
3.ストレイト・ノー・チェイサー
4.フラン・ダンス
5.トゥー・ベース・ヒット
6.バイ・バイ・ブラックバード
7.ザ・テーマ

(録音:1958年7月3日)



じゃじゃじゃん!これがその「1958年のマイルス・デイヴィス、ニューポートでのライヴ演奏アルバム」であります。

とりあえずジャケットのマイルスがどう見ても怖いんですが、ニューポートのフェスは、出演者も自分の出番以外の時は客席とかその辺をウロウロしながら自由に楽しんでいて、このマイルスの写真も、そんな感じで会場内で趣味のカメラを持ちながら「何かいい写真でも撮りたいな〜♪」と、リラックスして楽しんでいる写真です。リラックスして楽しんでいるんですからね。


実際にこの年、マイルスとしては最初に結成したメンバーの中から、ベースのポール・チェンバース以外のメンバーを一新した新バンドを結成したばかりで、非常に意欲に燃えていた年でありました。

コルトレーンも一度クビになりましたが、セロニアス・モンクのバンドでガンガン腕を上げて表現のスケールも大きくなった時期で、マイルスはそんな成長したコルトレーンに「戻ってきてー」と頼んで、コルトレーンもそれを受けて古巣に戻って来ておったんです。

マイルスのグループは、もちろん全国的に人気でありましたが、ここニューポートに集う超大物達に比べればまだまだ若手、持ち時間も少なかったようですが、そんなのカンケーねぇとばかりに素晴らしくハイテンションで、かつ美しい演奏を目一杯繰り広げております。

まずは司会者のアナウンスから、メンバー紹介がはじまります。

ジミー・コブ、ポール・チェンバースときてビル・エヴァンス、ジョン・コルトレーン、キャノンボール・アダレイ、そしてマイルス。

バンドに加入したばかりのジミー・コブとビル・エヴァンスの拍手が凄く少なくて、キャノンボールへの拍手歓声が多いのがちょいと気になりますね。キャノンボール、まだそんなに有名じゃないはずなのに、無言で面白い事でもやったのか・・・。

それはさておき、いきなり急速調ビートで『アー・リュー・チャ』が始まります。

マイルスも吹く、コルトレーンも吹く、キャノンボールも吹く!そしてジミー・コブが終始フルパワーでバスドラをバカスカ言わせながら走る走る!マイルスはスタジオ録音では非常に抑制の効いたアレンジで”聴かせる”演奏をやっている時期なんですが、やっぱりライヴではアップテンポでもしっかりと盛り上げます。

フロントの3人の個性はまるで違い、キリッとした音色でフレーズをメロディアスに紡いでゆくマイルス、バップ・フレーズで走りつつポップな掴みのセンスに溢れたキャノンボール、そしてあらん限りの力で強引に空間を速射砲のような音符で満たしてゆくコルトレーン、3者3様のアドリブの個性が激しく激突して、呆気に取られていくうちに、曲は次々と進んで行きます。

このバンドに入ったばかりのビル・エヴァンスは、最初こそ元気がないものの、徐々に繊細で知性に溢れた”らしさ”を発揮しております。特に『フラン・ダンス』『バイ・バイ・ブラックバード』等の穏やかなナンバーでは、マイルスのミュート・トランペットと溶け合って響き合う美しいピアノ。かと思えば『トゥー・ベース・ヒット』では、ヒートアップして吹きまくるコルトレーンのバックでピタッとピアノを弾くのを止めてしまいます。

これ、決して嫌がらせとかじゃなくて、この時期のコルトレーンとモンクのステージでよくモンクがやっていた手法なんです。白熱して吹きまくるコルトレーンのバックで弾くのを止めて、アドリブが異様に際立つ効果を持つこの「バッキングやめ」、後年はマッコイ・タイナーがコルトレーンのバックでよくやっていましたが、エヴァンスもしかしたらこの時期のモンクの演奏も熱心に聴きに行って「なるほどこうすればいいのか」と納得してのプレイだったのかも知れません。

もちろんマイルスの隅々まで行き届いたバンド・コントロールあればこそなんですが、この日のコルトレーンの吹きっぷりは「アングリー・ヤング・テナー」と評されて、コルトレーン人気を後押しする演奏になったようです。





















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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 23:40| Comment(0) | 大コルトレーン祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする