2019年10月03日

ブラインド・ボーイ・フラー 1935-1940

625.jpg

Blind Boy Fuller/1935-1940

いやもう、こっちはまだ30度越えのムシムシお天気なんですけどね、調子をゆるゆると回復させるために、本日も戦前ブルースを聴いております。

さて皆様こんばんは。先日はジェイバード・コールマンその他、戦前は20年代に活躍したブルース・ハープ黎明期の名手達による、とことんディープで闇が深い(使い方合ってるかね?)一枚を紹介しましたが、今日は深い味わいをたっぷりと含みながらも、粋でイナセでダンサブルなブルースを紹介しましょうね。





本日もちょいと個人的な小話からで大変恐縮なんですが、お話をさせていただきます。

あの〜、アタシが戦前ブルースを本格的に好んで聴くようになったのは、10代最後の時期の頃でありまして、そん時いわゆる戦前のブルースマンで知ってる、つうかCDを持っていたのはロバート・ジョンソンとレッドベリーぐらいだったんです。どっちかというとロバート・ジョンソンはまだそんなにピンときてなくて、曲がキャッチーでわかりやすい、加えてボブ・ディランとかウディ・ガスリーとか、そういう元々好きだったミュージシャンの繋がりで聴くようになったレッドベリーの方に夢中になっていたと思います。

埼玉の上福岡の駅前にあるフラリと入った本屋さんに割とブ厚いブルースの本があって、買おうと思ったら¥5000近い値段だったので買えなくて、結局パラパラと立ち読みしただけだったんですが、文章はともかく、そこに載っていたブルースマン達の写真で特に強烈な存在感を放っていて、目を釘付けにしたのが、ブラインド・レモン・ジェファソンやブラインド・ブレイク、ブラインド・ウィリー・マクテルといった、名前の頭に「ブラインド」の付いている人達でした。

共通して、写真では閉じられている彼らの目を見て「あぁ、この人達は盲目のブルースマンなんだな」という事が何となく察せられました。

盲目のブルースマン、これはブルースに憧れている人間にとって、何とも興味を惹かれるワードではあります。

イメージとして、渋いじいちゃんが枯れた声で人生の悲哀をしみじみ歌うような姿を想像しておったんですが、実際に聴いてみた戦前のブラインド・マン達のブルースは、もうそんな貧困な想像力で勝手に作り上げたイメージなんか軽くぶっ飛ばすぐらいに凄かった(!)

どのブルースマン達も、声は渋いを通り越して底の底からパワフルな個性を持ち、加えて驚異的なギター・テクニックが圧倒的な存在感を放っておりました。

正確無比なピッキングとリズム感で、どう聴いても2本のギターが同時に鳴ってるようにしか聞こえないブラインド・ブレイクのラグタイム。歌ってる最中にまるでギターソロを弾いてるような、ブラインド・レモン・ジェファソンのコール・アンド・レスポンスを遥かに超えた歌とギターのひとりヴォーカルっぷりにまずド肝を抜かれ「あぁ、ブラインド・〇〇って名前のブルースマンの音源は、こらもうハズレはないと思うから買い集めないと」と思っていた矢先に出会ったのが、ブラインド・ボーイ・フラー。


1907年生まれのフラーは、アメリカ東海岸の南部側にあるノース・カロライナで生まれました(サウス・カロライナ説もあり)。

このノース・カロライナという土地は、南部からニューヨークへ向かう途中にあり、古くから自動車産業も盛んだった事から1920年代は職を求めて南部からの労働者も集まって来る土地でありました。

そのため、この地のブルースもまた、適度な田舎っぽさを根底に持ちつつも、他の南部のブルースとは違った独自の洗練を持っております。これが後に”ピードモント・スタイル”と呼ばれるひとつの東海岸ブルースのスタイルへとなって行く訳であります。有名どころでは1950年代からのフォーク&ブルース・リヴァイバルで大人気を博したブラウニー・マギーとサニー・テリーのコンビが奏でる、キャッチーなメロディに心地良いリズムのギターが絡む基本スタイルが典型的なピードモント・スタイルであります。


で、解説によるとこのピードモント・スタイルを築き上げた戦前の東海岸ブルースの最重要人物こそが、ブラインド・ボーイ・フラーなんだよと。

はい、ブラインド・ボーイ・フラーは少年時代から音楽で生計を立てるために、ギターを片手にノース・カロライナの工業地帯にある盛り場を根城に音楽活動をやっておりました。

荒くれの多い工業地帯では、ノリが良く踊れる曲が求められたんでしょう。彼の得意なレパートリーは、やはりノリノリのラグタイムや、ブルースも軽快にステップを踏むような明るめのものが多いです。

主にナショナル製の金属ボディに共鳴板が埋め込まれたスティール製ギターを使い、その大きな音量と力強いアタック音を活かした豪快なフィンガー・ピッキングはやはり強烈無比で、リズムの正確さはさることながら、弦をズ太くザラッと鳴らすワイルドな質感がたまらんです。

代表曲に『ラグ・ママ・ラグ』っていう、最高にゴキゲンなラグタイム曲があるんですが、低音をズンズクズンズクベーシストみたいに刻む親指と、ひゃらひゃらシャカシャカと高音域を自在に跳ねまくる人差し指が放つグルーヴ感、加えて伴奏にウォッシュボードがすちゃらか言ってて、こんなカッコイイダンスミュージックありますかって言いたくなります。はい、正直最初聴いた時にギターで弾けるようになろうと思って2分で「うひゃあ、やっぱり何をどーやって弾いてっかさっぱりわかんねー!」と挫折した記憶も未だにアタシの中では鮮明であります。





Blind Boy Fuller 1935-1940

【収録曲】
1.I'm Climbin' On Top Of The Hill
2.Ain't It A Crying Shame?
3.Rag, Mama, Rag
4.Log Cabin Blues
5.(I Got A Woman Crazy For Me) She's Funny That Way
6.Stingy Mama
7.Some Day You're Gonna Be Sorry
8.Walking And Looking Blues
9.Working Man Blues
10.Steel Hearted Woman
11.Ain't No Gettin' Along
12.New Louise Louise Blues
13.Mistreater, You're Going To Be Sorry
14.Shaggy Like A Bear
15.Looking For My Woman No.2
16.I'm Going To Move (To The Edge Of Town)
17.Long Time Trucker
18.Blacksnakin' Jiver
19.I'm A Stranger Here
20.I Want Some Of Your Pie
21.Passenger Train Woman
22.Somebody's Been Talkin'
23.Crooked Woman Blues


コチラのアルバムは、東海岸から南部一帯までその名を轟かせていたフラーの1935年から亡くなる直前の1940年までの演奏から、ラグタイムとブルースとをバランス良く選曲されたベスト・アルバム。

実はフラーはスロー・ブルースにも、哀願するような心打つナンバーが多くて、ただの賑やか師じゃない「聴かせる」人でもあるんですが、最初はやっぱりさっきも言った『ラグ・ママ・ラグ』等の、超絶技巧&味わい最高なウキウキダンスビートに撃ち抜かれて笑顔になるってのが、実に正しい反応だと思います。


そういやその昔、ブルースとか全然知らないどころか、洋楽すらあんまり聴かないような人が、この人の演奏には「何かいいね、よく分からんけどカッコイイ」と、さり気なく深い反応を示してくれたことがありました。はい、ブルースと聴いてイメージするディープな味わいとフィーリングを絶えず内に秘めながらも、ほっといたらそのまんま通り過ぎて行ってしまいそうな人の耳にもしっかりと印象を残してくれるポっプでキャッチーな魅力を持ったブラインド・ボーイ・フラー、月並みな言い方で恐縮ですが、やっぱりカッコイイんですよねぇ。。。













”ブラインド・ボーイ・フラー”関連記事




ブルース入門編 〜初心者のための優しいブルース講座〜



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/


posted by サウンズパル at 16:26| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする