2020年01月09日

セロニアス・モンク アンダーグラウンド

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セロニアス・モンク/アンダーグラウンド
(Columbia/ソニー)


「あーなんか体だりーなー、ゴキゲンなやつが聴きたいなー」

と、途方に暮れる気持ちが芽生えてきた時に、憂鬱への初期予防として、セロニアス・モンクを聴くということがよくあります。

常に独特のタイミングの”ズレ”を活かして鍵盤をガコボコピコパコ叩き付けるその”踊っているリズム”、わざと鍵盤の隣同士の音を叩いて調子っぱずれなファニー感を溢れかえらせるそのメロディー感覚。いやもう最高です。

セロニアス・モンクは1940年代初頭から早々とプロとしての活動を始め、早くからその天才的な煌めきを感じさせるピアノ・プレイが注目されておりましたが、1945年に麻薬不法所持の友人(バド・パウエル)を庇うために嫌疑をかけられ、逮捕された挙句にクラブや飲食店での演奏許可証を取り上げられてしまい、20代から30代の最も活動意欲に燃えていた期間を不遇のうちに過ごすこととなりました。

演奏許可証が再発行される1957年まで、生演奏で聴衆にアピールする事は出来ず、何とかBLUENOTEと契約してレコードを出すのですが、これが

「いや、モンク君の音楽は楽しいしわかりやすい!バド・パウエルよりもぼかぁ彼の方が売れると思うなぁ」

と、自信満々で2枚のレコードを送り出したブルーノート社長のアルフレッド・ライオンの思惑とは裏腹に、巷からは

「う〜ん、何かヘンテコ過ぎてついていけないなぁ」

「これ、難しいよ」

「ピアノの調律狂ってるような弾き方はわざと?」

と、その余りにも独創的なスタイルは、聴衆から一方的に「難解」のレッテルを貼られてしまい。

「でも、でも、彼のライヴは楽しいよ!ほれ、場が盛り上がったらいきなりピアノ弾くの止めて踊り出したりするし!!」

と、如何に擁護しようにも、肝心のモンクの楽しい生演奏は、演奏許可証がないので見せる事は叶わず、結局モンクは自宅に引き籠って誰に聴かせるでもない楽曲をただひたすら作り続けるという生活を送っておりました。

そして1950年代後半、ようやくクラブでの生演奏が出来るようになったことと、彼を敬愛するミュージシャン達が「セロニアス・モンクって人は本当に凄いんだ」と口コミを広め、実際レコーディングにも喜んで参加する事によって、彼の人気も上り調子となり、その独創的な音楽性もやっとのことで正当に評価されるようになってきます。

そして1960年代、そろそろ従来のモダン・ジャズの新しさに陰りが見え始めた頃、モンクの活動と人気を頂点を迎えることとなります。

具体的にはそれまで僅かな報酬とレコーディング時間しか得られなかったRiversideやPrestigeといったマイナー・レーベルを離れ、メジャーレーベルのColumbiaへの移籍が成功します。

ついでに、テナー・サックスのチャーリー・ラウズを中心とした、自身のレギュラーバンドでの安定した活動が出来るようになり、このバンドを率いてのコンスタントなツアーやレコーディングを行えるようになりました。


モンクの音楽性はどうなったかというと、スリリングで何が起こるか分からない緊張感を孕んだ50年代の演奏に安定と熟成が加わり、その持ち前の個性は変わらずに、60年代以降は元々持っていた「聴きやすい」「ノリやすい」部分がより前面に出た感じになりました。


だから60年代以降のモンクは、最初に言ったように最高な「ゴキゲンの補充」であり「憂鬱への予防薬」なのです。つまり素直にゴキゲンなものが多い。


アンダーグラウンド+3


【パーソネル】
セロニアス・モンク(p)
チャーリー・ラウズ(ts,ACE)
ラリー・ゲイルズ(b)
ベン・ライリー(ds)
ジョー・ヘンドリックス(vo,F)


【収録曲】
1.セロニアス (テイク1)
2.アグリー・ビューティー (テイク5)
3.レイズ・フォー
4.ブー・ブーズ・バースデイ (テイク11)
5.イージー・ストリート
6.グリーン・チムニーズ
7.イン・ウォークド・バド
(録音:1967年12月14日/21日,1968年2月14日/12月14日)


本日はそんなモンクの60年代「ゴキゲン」なアルバム群の中から、中身もジャケットも特にいい感じの『アンダーグラウンド』をご紹介しましょう。

手りゅう弾やらナチスドイツ親衛隊(?)の捕虜(!?)やら、酒瓶だか薬瓶やらが転がっている部屋で、自動小銃小脇に抱えてピアノを弾いているモンクの肖像が、あぁいかにもアンダーグラウンドの怪しげな何かみたいで良いですねこのジャケ。

これが何とグラミー賞の最優秀アルバムジャケット賞を受賞して、ジャズファン以外にも「セロニアス・モンクってイカすじゃない」と知らしめたとか何とか。

元々モンクは、1960年代にはもちろん真っ当な、でもちょいと風変りなジャズの巨人としての評価を不動のものとしておりましたが、60年代後半にはどういう訳かロックやフォークを聴く若者やヒッピー達から、アンダーグラウンドのカリスマという、ちょっと不思議な支持も得ておりました。

やっぱりその誰の真似でもない音楽と、世間の雑音などどこ吹く風な孤高の姿勢(インタビューの返しとかほんと最高だからどこかで見つけたら読んでみてくださいな)は、自由に媚びずに生きたい若者から見たら憧れだったんでしょう。

ほんで、メジャーレーベルというのはそういうとこほんと敏感なので、モンクの”そういうイメージ”で売り込んでやるぜどやーってジャケットにそれっぽいタイトルを付けて売り出したと。

アタシもこのアルバムに関してはジャケ買いです。アンダーグラウンドかどうかはともかく、モンクの音楽には楽しくてウキウキしながらも、その放つ音符の周囲には、どこか謎めいた不可思議な空気がまとわりつき、聴く側の想像力を豊かに刺激してくれる。このジャケットは正にそんな想像の一端を的確に表している。そんな気がすごーくすごーくするのです。

中身の方も、ピアノ・トリオ3曲、ラウズのテナー入りカルテットが3曲、そしてラストにジョー・ヘンドリックスのヴォーカルが入った1曲が入っていて、それぞれの編成がモンクのモンクたるゆえんの摩訶不思議ムードをそれぞれ違った形で盛り上げていて、塩梅が実に良い。

この時期のモンクといえば「無邪気に跳ねるピアノ+それぞ淡々とフォローするベースとドラム+全ての音を堅実な吹きっぷりで硬派に彩るラウズのテナー」というパターンが特徴的で、コレがピタッとハマればハマるほど安定したクセのない音楽に聞こえることが多く、初期の演奏が好きなファンからはちょいと物足りないという声も上がってしまうのですが、バンド全体が奇妙な音塊にまとまったサウンドが、スピーカーの中から丸まって「ぼよーん」とか「ぼかーん」とか来るこの感じ、やはり他では味わい難いクセになるものであります。

ほんで、このアルバムは登場する2曲目から、ラウズがやたら調子良く吹きまくっていて、60年代のいつものモンクな感じに丁度良い緊張感が加わって、アルバム通しての緩急が結構激しく付いていて飽きさせません。ラストにいきなり出てくるジョー・ヘンドリックスの、どこかすっとぼけた味のある、奇妙奇天烈なヴォーカルも、何だか楽しくて実に良いアクセント。楽しい、とても楽しい♪とキャッキャしながら深淵なるモンク沼にハマッてしまえるアルバムです。












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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 22:53| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする