ザ・クール・サウンド・オブ・アルバート・コリンズ
(TCF HALL/オールディーズ)
10代の頃にそのライヴ映像をビデオで観てぶったまげた、というよりもやってる音楽はまぁコレが渋いブルースって言うんだろうなーとかぼんやりと思いながらではあったんですが、10フレットだか12フレットだかとにかくありえない位置にカポタストはめたギターで、カッティングは一切せずに引くにはソロと歌の途中の単音弾きだけ。
で、演奏のクライマックスの時に長ーい長ーいシールド(ギター用語で接続コードのことです)を引きずって客席に行き、そのまんま結構後ろの方までおうおうと歩いて行って客席に座ってそこでギターソロを弾くというアルバート・コリンズなるブルースマンのプレイ、や、プレイスタイルに「何じゃこのオッサンは!?」となりました。
それから多分5年ぐらい経って、それまで戦前ブルースとか弾き語りのダウンホームなやつしかグッとこなかったのに、一丁前に戦後のエレキキュイーンのブルースの良さがようやく分かりかけてきたその時、パラパラっと眺めてた音楽雑誌で「テキサスブルースのヤバい人」と、アルバート・コリンズの写真付き記事が載っておりました。
「おぉ、この人は昔ビデオで見たことあるぞ!」
と、思い出したのと「テキサスブルース」の文字に惹かれ、その足でフラッとCDショップに立ち寄って、コリンズのアルバム『フロストバイト』を勢いで購入したんですね。
このアルバムがもう凄かった。テレキャスターのジャリジャリしたぶっとい音が、ぎゃいんぎゃいんがこんがこん耳に突き刺さってはヘヴィな余韻を残して、また突き刺さってはヘヴィな余韻を残して・・・で、もう本当に「何で俺は10代の時このカッコ良さに気付かなかったんだろう」と激しく後悔する程のインパクトでありました。
この『フロストバイト』というアルバムは、1970年代末に契約したアリゲーター・レーベルからの1枚で、このアリゲーターからのアルバムっていうのはコリンズの名前がブルース好きのロックファンも含め、広く世に知られるきっかけとなった作品として、とにかくもう「コリンズといえばこれ!」なやつだったそうです。
アルバート・コリンズは1932年の生まれで、デビューしたのが1950年代。
最初はオルガン奏者になるべく一生懸命オルガンを弾いていたのですが、ある日愛機のオルガンが盗まれてしまった「頭きた!オレはギタリストになってやる!!」と、ギターに転向したというから、まーどこかぶっ飛んでる思考の人でありますな。
ギターに関してはTボーン・ウォーカーやゲイトマウス・ブラウンという同郷の2大スター、特にそのありえん位置にカポ付けて、テンションをギンギンにした状態の弦を人差し指で根こそぎ引っ張り上げるという力技はゲイトマウス・ブラウンからの影響を強く感じさせます。
さてさて、オルガン盗難というショッキングな出来事をギターの猛練習で克服し、早くも50年代が始まろうとしていた頃にはセッション・ギタリストとしてちょいとは名前が知られるようになり、1958年にはソロ・シングルも出し、60年代も地元テキサスを中心になかなかの人気でもって爆走しますが、1970年代に入ると仕事も少なくなってギター抱えてドサ周りの日々に明け暮れておりました。
そんなこんなの何とか食うための日銭を演奏で稼いでいた1978年、ブルース好きによるブルース好きのためのレーベル”アリゲーター”から声がかかり、ほとんどここの看板ブルースマンとして、また、彼を尊敬するスティーヴィー・レイ・ヴォーンやロバート・クレイといった後輩人気ギタリスト達からのリスペクトも後押しする形で、コリンズは再び快進撃を続け、90年代にはレーベルを移籍するも、そこでB.B.キングやジョン・リー・フッカー、ゲイリー・ムーアーなど、新旧の大物達と楽しくコラボするアルバムも多数出しておりましたが、93年にまだまだこれからの61歳という惜しい年齢であの世へ旅立ってしまいます。
ザ・クール・サウンド・オブ・アルバート・コリンズ
【収録曲】
1.Frosty
2.Hot N' Cold
3.Frost Bite
4.Tremble
5.Thaw-Out
6.Dyin' Flu
7.Don't Lose Your Cool
8.Backstroke
9.Kool Aide
10.Shiver N' Shake
11.Icy Blue
12.Sno-Cone II
さて、中堅として脂の乗った1980年代のプレイに激しく感動したら、やっぱり若手として暴れていた初期の音源を聴きたいというのが、人間の摂理でございます。
本日はそんなコリンズの、まだソロアーティストとしてはテキサスのローカル。ギタリストだった時代のTCF/HALLといったレーベルから思に1960年代にリリースしていた初期音源を集めたアルバム『ザ・クール・サウンズ・オブ・アルバート・コリンズ』をオススメに挙げておきましょう。
アリゲーター以降はやはりロックやファンクにも対応できそうなモダンなビートに、全体的にトンガッたサウンドですが、やっぱりこの時代のオルガンとかラテン風味のビートとか、ちょいとレトロでサイケデリックともいえるサウンドの質感がとても60年代のオシャレな音楽って感じでとてもポップなバックに突き刺さるコリンズのギターの音は、やはり鋭くズ太く強烈なんですね〜。
コリンズは初期の頃は歌を歌わず、専門のギタリストとしてシングルももっぱらインストゥルメンタルが中心でありました。
このアルバムでもブルースというよりもまるでサーフロックみたいなバリバリにモンドなインストナンバー(オルガン、サックスがシビレるぐらいカッコイイ!)でその後年よりも引き出しの多いギタープレイを堪能出来ます。代表曲でライヴでもド定番の「フロスティ」「フロストバイト」なんかももうこの時期にしっかりと完成してます。
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