2020年02月08日

スーサイド SUICIDE

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Suicide/Suicide
(BMG)

「知ってるつもりでよく知らなかったこと」というのはよくあります。

それでもって「知ってるつもりでよく知らなかったことを知る経験」ってのは、人生において物凄く大切なことだったりします。

アタシにとってそれはパンクロック、もとい”パンク”という音楽でした。

ここでは何度も書いておりますが、小学校6年生の時にブルーハーツを知って、中学の時に「パンク」という言葉を知りました。

そこから音楽雑誌や深夜のテレビやラジオの音楽番組で一生懸命情報を収集し、アタシが感動した「パンクロック」なる音楽に対する知識をむさぼるようにかき集めて行くようになるのです。

ザ・クラッシュ、セックス・ピストルズ、ザ・ダムド、ストラングラーズ、ラモーンズから始まって、シャム69とかジャムとかバズコックスとかデッド・ケネディーズとかG.B.Hとか、スターリンとかスタークラブとかアナーキーとかラフィンノーズとか・・・。

とにかくテレビラジオ雑誌情報から物凄い勢いで「これはパンクだ!」と言われているものを聴き、集め、そのライナノーツからの情報もプラスして聴きまくっておりました。

そんなこんなで「俺は音楽詳しいんだぞ!」と思っていたんですが、20代なってすぐぐらいの時に東京のレコード屋で音楽商売に足を付けた頃というのが、毎日が

「えぇ!?これなんですか?カッコイイ!」

「えぇ!?お前こんなことも知らなかったの?」

の連続でした。

そんな毎日の中で最高に音楽に詳しい先輩達やお客さん達に教えてもらったことが

「お前、パンク好きとか言っときながら、パンクロック前のパンク全然知らないな」

ということだったんです。

えっと?先輩すいません、パンクロック前のパンクって何ですか?と訊きましたならば、つまりは70年代のイギリスのパンクロックというのは、ああいう8ビートでドンダンドダダンで反社会的な歌を歌ってるバンドと、そのバンド達のファッションをプロデュースして服とか売りたい連中が仕掛けた一種の流行でもあった訳なんだけど、実はそういう音楽というのはある日突然出てきた訳じゃなくて、それ以前のアメリカではものすごくアンダーグラウンドなシーンから割とメジャーな所でも既に生まれていたんだと。

「例えばこんなだよ」

と聴かせてもらったイギー&ザ・ストゥージーズにMC5、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ニューヨーク・ドールズ(と、ジョニー・サンダース)、ブルーチアー、リンク・レイなどなど・・・。

これらの音楽は、それまで何となく名前だけは知っていて(リンク・レイだけ知らなかった)「へー、昔のロックなんだろうなぁ」と思ってたのですが、まーそのサウンドの何とぶっ飛んで破壊的で「あ、時代がちょい前なだけでこれもうパンクですね」と一瞬で思えました。

それから先輩が

「でも一番ヤバいのはコレだから」

と聴かせてくれたのがスーサイドでした。



Suicide

【収録曲】
1.Ghost Rider
2.Rocket USA
3.Cheree
4.Jhonny
5.Girl
6.Frankie Teardrop
7.Che


これはもうジャケットからしてパンクです。きっとディストーションギターがバリバリの、ヴォーカル大絶叫の・・・ん?ん?あれあれあれ・・・!?

破れた音のすっごいチープな打ち込みのリズムに、不気味にリフを刻むシンセサイザーの電子音。そしてヴォーカルは、夢遊病者のうわごとのように囁いたかと思ったら急に痙攣したような「ウウゥッ!」「ヒャアッ!」というシャウトを一瞬放った後、何事もなかったようにまた病的に繰り返される電子ビートに囚われたかのようにうわごとを繰り返す。

大体パターンは同じで、でもその「同じ事の繰り返し」がじわじわと脳裏にこびりついて、この凝縮された狂気というか、とにかく派手に暴れてブチ切れてブチ壊しているパンクロックのそれとはまた違った、スピード感のあるダウナーさみたいのが聴いているコチラの感覚にどんどん浸食してくる、あぁこりゃもう本当に「ヤバい音楽を聴いた」と思っていたら、最後から2番目のナンバー『Frankie Teardro』で、ヴォーカルの狂気は頂点に達します。

息切れしてるような焦燥感で単語を放ち、急に、本当に急に絶望の塊のような絶叫です。「ギャー!」どころじゃなくて「ア”ア”ア”ア”ァァーーーー!!!!ギャアァァーーーーーー!!!!」の、モロに断末魔のそれ。しかもその声には割れたエコーがかかりまくっているから、緊迫感と殺気は人工的に増幅されまくっててヤバいです。ホントにヤバい。

スーサイドはヴォーカルのアラン・ヴェガとシンセサイザー&リズムボックスのマーチン・レヴの2人組であります。

1971年にニューヨークでイギー&ザ・ストゥージーズを見て「これだ!」と思ってバンドを結成、当初から既存のスタイルに囚われることなく、まだ誰もやってない手法で表現しようという意欲に燃えていたそうです。

で、まだ発売されたばかりの電子楽器機材を駆使しながらも、人間の奥底の狂気を感じさせる彼らの過激なパフォーマンスはアンダーグラウンドで熱烈な支持を集め、世間がようやくパンクというものに気付いた1977年にこのファースト・アルバムをリリースしたと。

それはそうと、スーサイドの音楽を聴いて痺れていると、つくづく「誰かの物真似じゃなく、やりたいことを誰もやったことのない表現でするのがパンク」というパンクの真髄に身も心も痺れさせられているような気持ちになって、これはアレです、限りなくヤバい方の心地良さであります。






posted by サウンズパル at 00:42| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする