2020年03月08日

アート・ブレイキー ア・ジャズ・メッセージ

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アート・ブレイキー ア・ジャズ・メッセージ
(Impulse!/ユニバーサル)

2020年3月6日、ジャズ・ピアニスト、マッコイ・タイナーが亡くなりました。享年81歳。

最近はどのジャンルの音楽でも、レジェンド達の訃報が続くばかりで、本来アタシは追悼文の類はあんまり書かないようにしておりますし、それにもう大ベテランならその死を悼みつつも「今まで本当にありがとうございました、どうか安らかに。でもアナタの音楽はこれからも変わらずずっと聴き続けます」でいいと思うんです。

なので、今回もしんみりとはしません。特にこのブログは「その音楽やアーティストをあんまりよく知らない人に素晴らしい音楽やアーティストを知ってもらうブログ」です。「マッコイ・タイナーってカッコイイよ!」という事をいつものごとくなるべく小難しい言葉を使わずに紹介していきたいと思いますね。

昨日の3月7日、やはりマッコイの死を惜しむツイッターの書き込みが多く、アタシもマッコイについて色々書きました。

特にアタシにとっては、これはもうジャズという音楽にのめり込むきっかけとなったジョン・コルトレーンの全盛期といえる1960年代を支えたピアニスト。書かない訳にはいきますまい。

リーダー作『タイム・フォー・タイナー』について書いたのですが、とあるフォロワーさんの「参加作のこれがいい」という書き込みを見て

「そうだった!これがあった!!」という気持ちと「そうだった!これ最高だった!!」という気持ちの両方で、激しく首を縦に振りました。

それが、アート・ブレイキーのリーダー作『ア・ジャズ・メッセージ』。

アート・ブレイキーといえば、有名な『モーニン』を筆頭とする、自身のバンド”ジャズ・メッセンジャーズ”でのファンキーでノリノリな名盤や名演がわんさかあって、そのほとんどがブルーノートからリリースされているんで、すっかり「ジャズ・メッセンジャーズのボスでブルーノートの人」というイメージもあるんですが、ところがどっこい、メッセンジャーズでの活動の傍ら、ブルーノート以外のレーベルで、しかもジャズ・メッセンジャーズではないソロ名義の録音をひょいっと残していたりする。

で、その辺のアルバムが、まージャズ・メッセンジャーズのブルーノート作品達ほどの華やかさとかインパクトはないんだけれども、非常にリラックスした味のある良盤が多いんですよ。

ともかくブルーノートとの契約が「ジャズ・メッセンジャーズ」に限られていて、ソロでのレコーディングに関してはまぁいいよ、というか黙認という形だったのか。いやいや、インパルスで1961年にレコーディングされた最初のアルバムは、タイトルもそのものズバリの『Jazz Messengers』ではないか!一体どうなってるのかよーわからん。

ともかくも、ブレイキーは今度は単身で、ブルーノートとの契約をフツーにやっている1963年という年に、わざわざインパルスに出向いてレコーディングを行っております。

参加メンツはインパルス側が集めた面々で、唯一のホーン奏者として、ブレイキーとは40年代からの付き合いの仲間であるソニー・スティット、ピアノが当時快進撃を続けていたジョン・コルトレーンのグループにいたマッコイ・タイナー、そしてベースにこれまたコルトレーンのセッションにちょこちょこ参加していたアート・デイヴィスと、ガッチリ手堅い顔ぶれであります。





【パーソネル】
アート・ブレイキー(ds)
ソニー・スティット(ts,@BD,asACE)
マッコイ・タイナー(p)
アート・デイヴィス(b)


【収録曲】
1.カフェ
2.ジャスト・ノック・オン・マイ・ドア
3.サマータイム
4.ブルース・バック
5.サンデイ
6.ザ・ソング・イズ・ユー

(録音:1963年2月16日)


この人選は「ベテランで正統派のブレイキーとスティットの脇を、気鋭の若手のマッコイとデイヴィスに固めさせたら面白い事になるだろう」という、インパルスのプロデューサー、ボブ・シールの目論見がモロに出ております。

ブレイキーという存在感のあるドラマーのリーダー作でワン・ホーン、となると例えばソニー・ロリンズとか、もっと大御所のコールマン・ホーキンスなんかを持ってくれば、話題はかっさらえたかも知れませんが、恐らくは「それではちょっとホーンが強すぎる」との判断かソニー・スティット。

しかし、スティットはこういうセッションでは確実に良い仕事をするサックス吹きです。バッパーとしては抜群のテクニックを持っていながら堅実に共演者のスタイルに合わせて引き立てることも出来る。しかもブレイキーとは若い頃からの共演で互いのクセをも知り尽くした仲、ついでに言えばジャズ・メッッセンジャーズでは聴かれない若干オールドスタイルのプレイもきっとこの2人なら聴かせてくれるはず。

という訳で、スティットは全編で上手い具合に大活躍、とはいってもバリバリに吹きまくってるというのではなく、ここでは常に若干の余力を残しながらの、押しも引きも心得て全体を引っ張る見事に大人なフロントプレイ。マッコイも程よいバランスでもって情念と情緒の間を行き来する知的なプレイであり、アート・デイヴィスのベースに至ってはピタッ、ピタッとブレない音程で気持ちのいいウォーキングのお手本のようなベースラインを聴かせます。

リーダーのブレイキーのドラムも、ジャズ・メッセンジャーズのように派手なロールをバシバシ決めたり、フロントを煽りまくるスタイルではなく、いつもよりリラックスした貫禄のドラミングですね。しかし1曲目「カフェ」のオープニングはラテン・パーカッションのビートだし、スティットのソロの前に「ャア」と気合いを入れる声が聞こえたり、しっかりと野性味を感じさせる”いつものブレイキーもしっかりとおります。

2曲目「ジャスト・ノック・オン・マイ・ドア」は、スティットがアルトに持ち替えて朗々と吹くブルース。ブレイキーのドラムは余裕の叩きっぷりですが、おおらかな良いグルーヴです。そしてマッコイのピアノも洗練された都会のファンキーさ。

3曲目「サマータイム」はもう有名過ぎるぐらい有名な哀愁ナンバーですが、やや早めのテンポでキレ良く吹くスティットのシンプルなアドリブが好調。コルトレーンがアトランティック盤『マイ・フェイバリット・シングス』に収録したサマータイムとちょっと雰囲気が似てますから、マッコイのプレイも左手の「バーン!」からの右手の「コロコロコロ・・・」が出てきてややコルトレーン・バンドでの演奏っぽくなっております。デイヴィスの安定した歌心溢れるベースソロもお見事です。

4曲目「ブルース・バック」は、今度はテンポをグッと落としたスローブルースですね。ブレイキーの重く引きずるようなビートに導かれて眺めのイントロを弾くマッコイのピアノは実にアーシー、その後にアルトを吹くスティットの泥臭さもたまんないです。サックス奏者の実力を聴き分けるには、その人が吹くブルースを聴けば良いとはよく言いますが、ここでのスティットのゴキゲンに粘るアドリブはもう超一流の証ですね、その後の触発されたマッコイのソロがまた最高にブルースです。

そして5曲目、個人的にこのアルバムの目玉曲だと思っている「サンデイ」であります。や、曲自体はミディアム・テンポのカラッと明るいどこにでもありそうなさり気なく優しい曲なんですが、ウキウキするようなブレイキーのドラムとデイヴィスの弾むベース、「ふわぁ〜」と吹くだけで空気が華やぎ、そしてシンプルなテーマから無限の素晴らしい”歌”が出てくるスティットのテナーによるアドリブ、それを引き継いで美しいフレーズを小節毎に丁寧に重ねていくマッコイの端正なピアノ。この連携が本当に素晴らしいんです。

一言でいえばこのアルバムは「ブレイキーのリラックスした日常なセッション」であり、どちらかといえば派手なインパクトのあるジャズ・メッセンジャーズの作品に比べると地味な印象があるかも知れません。でも、ブレイキーはじめ他のメンバー達のリラックスした演奏ならではのまとまりの美しさと、くつろぎながらも集中して聴くとグイグイと引かれる味わいの深さみたいなものが、他のどのアルバムにもないぐらい素晴らしく充実してるんです。

そしてラストを飾る「ザ・ソング・イズ・ユー」無伴奏で高らかに歌い上げるスティットのサックス、さり気なく入って品よく感動をキープするリズム、美しく流れる高音を軽快に転がすピアノと、この全てが”ちょうどいい”アルバムのクライマックスを大団円でしっかりと決めてくれます。いやぁ良い、良いアルバムです。








ア・ジャズ・メッセージ







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posted by サウンズパル at 21:15| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする