2020年04月15日

レッド・ガーランド グルーヴィー

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レッド・ガーランド/グルーヴィー
(Prestige/ユニバーサル)

「ジャズの世界では言わずと知れた名盤なんだけど、何故かレビュー書いてなかったシリーズ第3弾は、レッド・ガーランド・トリオの『グルーヴィー』であります。

これはもうアレですね、モダン・ジャズ/ハードバップの時代を代表するピアニストの一人であるレッド・ガーランドを代表する究極の一枚にして

「おぅ、何かゴキゲンなピアノ・トリオのアルバムかけてくれい!」

という問い合わせがあれば

「ほいきた!」

と、つい流したくなってくる一枚です。

とにかくもうタイトル通りのジャズのグルーヴ感と、大人の上質なオシャレな雰囲気と共に底抜けにハッピーなジャズ・ピアノのカッコ良さを、とことん無駄のない編成とアドリブで、いつどんな気分の時でもしっかりと楽しませてくれるといいますか、本当に「ここぞ!」という時にガッツリ盛り上げて、しっとりと聴かせる時はとことん聴かせる上質なプロの技が無理なく楽しめるアルバムなんです。

個人的にはこのアルバム、親父所有のレコード棚の中にあり、このコンクリートに何やら英語で書いてあるデザインが4歳の頃のアタシの心をくすぐって、あの、アタシはこの頃ミニカーや飛行機のおもちゃで遊ぶのが大好きなちびっ子だったのですが、このジャケットのデザインが何となく空母みたいだなと思ったんですよ。

で、ジャケットの上にミニカーや飛行機を並べたり走らせたりして遊んでおりました。当然親父には「バカヤロウ!俺のガーランドに何てことしやがるんだ!!」と、こっぴどく怒られました。

そんな訳で「レッド・ガーランド」という名前とこのジャケットは、アタシの脳裏には長い事こびりついておりました。それから10年以上の月日が経ち、音楽雑誌とかでよくこのアルバムのジャケットを目にするようになるんです。

で「あ、これはジャズのとても有名な人の人気のアルバムだったんだな」

と気付く訳です。

例によって後期コルトレーン経由のフリージャズの底なし沼からジャズに入っていったアタシは、よく知られているモダンジャズの名盤というものを、大体1年ぐらい経ってからようやく聴き始める訳なんです。

最初は「ほー、これが名盤かぁ。まぁ確かにカッコイイかもね、でも今ひとつ心にグサッと来ないなぁ〜」とか生意気な事を思いながら、その頃のアタシの心境的に「フツーのジャズ」を何とか理解しようと思いながら聴いてた訳です。

レッド・ガーランド。この人は確か初期コルトレーンとかマイルスのバックでそういや凄く端正なピアノ弾いてたし、トリオか、まぁいい感じなんだろうな〜。と、何となーくナメてかかっていた『グルーヴィー』でしたが、いやいやコレが予想を遥かに上回るカッコ良さ、というよりも、無知なアタシに初めて「4ビートのスウィングするジャズのカッコ良さ」を教えてくれたアルバムになったんです。

まず、グッときたのがポール・チェンバースのベースです。

1曲目の『Cジャム・ブルース』。この曲はメインテーマのフレーズがたったの2音という恐ろしくシンプルな曲なんですが、ガーランドが右手一本指(シングル・トーン)でリズミカルに弾くこのフレーズのバックで「ブンブンブンブン♪ブンブンブンブン♪」と、物凄く弾力のあるリズムと音色で、ズ太いリズムを膨らませてゆく。

一言でいえばこの”ノリ”のズバ抜けた気持ち良さ。知識も好みの見栄も何もかも吹っ飛ばしてグルーヴに身を任せる心地良さに、この曲のチェンバースが浸らしてくれました。そして思ったんです「あぁ、コレがジャズの気持ち良さなんだ!」と。





グルーヴィー

【パーソネル】
レッド・ガーランド(p)
ポール・チェンバース(b)
アート・テイラー(ds)

【収録曲】
1.Cジャム・ブルース
2.ゴーン・アゲイン
3.ウィル・ユー・スティル・ビー・マイン?
4.柳よ泣いておくれ
5.ホワット・キャン・アイ・セイ
6.ヘイ・ナウ

【録音:1957年5月24日,8月9日】


そんなチェンバースのベースにグイグイ引き込まれているうちに、ガーランドのピアノにハマりました。

ガーランドのピアノは、さっきも言ったシングルトーンという右手の単音弾きでメロディを弾いて、ブロックコードと呼ばれる左手の和音弾きで、右手の旋律にアクセントと共に華麗な装飾を付けて行くという、手法としてはとてもシンプルで、複雑な事は何ひとつやっていない、とても分かりやすいものです。

そして、彼の弾くアドリブのメロディは、深刻さがひとつもありません。ノリの良い曲はひたすらハッピーに、バラードはひたすら可憐で美しくというのが身上です。とにかく弾き方も音楽性も、自分の内面をどうこうというより、聴いている人をどれだけリラックスさせ、楽しませるかに特化したような、良質なエンターティメント性に溢れたスタイルであります。

だから時としてガーランドのスタイルは「シリアスでないカクテルピアノ」とか揶揄されることもあったのですが、いやいやいや、そのちょっとしたフレーズも奥底からスウィングさせる技量というのは、中途半端なハッピーピアノには絶対に出来ない技です。

よく優れたお笑い芸人が、プライベートではほとんど冗談も言わない真面目な人だったという話を聞きますが、レッド・ガーランドは正にそういう人なんでしょうね。ステージではハッピーにさせること、難しく考えさせることなく聴いてる人にジャズを楽しんでもらうことを真剣に考え、恐らくは血のにじむような努力の末に、この無駄なく幸福なピアノ・スタイルを会得した。と言えるのではないでしょうか。

ガーランドのアルバムはこれ以外の作品も、トリオ物は大体同じ芸風で、しかも総じて高いクオリティでいわゆる”ハズレ”がないんです。アーティストとか表現者ではなく、根っからのジャズ屋なんだなぁと、彼のピアノを聴くといつもしみじみ思います。で、思っている頃にはその何でもカッコ良く転がすグルーヴに夢中になって聴いているんです。こういう人はいそうでなかなかいるもんじゃないですね。











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2020年04月12日

ホレス・シルヴァー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

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ホレス・シルヴァー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ
(BLUENOTE/EMIミュージック)

「ジャズの世界では言わずと知れた名盤なんだけど、何故かレビュー書いてなかったシリーズ」の第二弾は、もうちょっと別のアルバムをと思っていたのですが、せっかくジャズ・メッセンジャーズの事を書いたので、本日はそのままの流れで元祖ジャズ・メッセンジャーズのアルバムをご紹介しましょう。

「ん?ジャズ・メッセンジャーズっつってもホレス・シルヴァーじゃん、アート・ブレイキーじゃないじゃん。どうなってんの?」

と思ったアナタ、その疑問はかなり的を得ております。

実はですね、この”ジャズ・メッセンジャーズ”というのは誰がリーダーという訳ではなくて、皆が平等な立場である事を知らしめるために、リーダー名を付けず、作品を発表する時もコンサートの時も「〇〇のジャズ・メッセンジャーズ」というのではなく、シンプルにグループ名を表記しようという主旨だったんですね。

このグループは、色々と新しい作曲のアイディアを持ったピアニストであるホレス・シルヴァーと、色々と新しいリズムのアイディアを持ったアート・ブレイキーとが中心になって結成されたグループでした。ところがグループを結成したばかりの時に二人はどうもカネの事で仲違いしてしまい、シルヴァーの方がメンバーを引き連れて脱退し「ジャズ・メッセンジャーズ」という名前はブレイキーの元に残されます。

それ以後の1950年代後半から60年代、ブレイキーはジャズ・メッセンジャーズで大ブレイク、そしてシルヴァーはよりラテン風味やR&B風味などを取り入れたファンキー路線が当たりに当たり、どちらもこの時代を代表する優れたバンドリーダーとして評価されることになりました。

いや〜良かった。だってお笑いコンビとかでもよくあるじゃないですか、一方がブレイクしたらもう一方がまるで運気を全て相方に持って行かれたように転落人生を送るっていうのが。どちらかがそういう事にならず、本当に良かった。

大体グループを脱退したシルヴァーの方が、ブレイキーに対してあんまり怒っておらず

「そうだね、あの頃アートは悪いクスリに手ぇ出していて、そのカネ欲しさに出演料をちょろまかして懐に入れるなんてことがあったのサ。俺?怒ってないよ。ジャズミュージシャンならまぁあることだし、プレイに支障が出るほどハマッてたって訳でもなかった。ただね、あのまま安定した仕事が得られるグループとしてカネがすんなり手に入る状況を作るのはちょいとばかりヤバいなって思ってオレは手を引いた方がいいなって思ったんだよ。アートがギャラを独り占めしてるのをユニオン(ミュージシャンン組合)に淡々と訴えてね。何となく罪悪感みたいなのがあったんだろうね。それからあの人は俺を遠ざけた。だもんで俺も脱退を告げたんだ”バンドの名前はアンタにやるからリーダーとして1からグループやってよ”って。バンドリーダーになったらクスリを断ってちゃんとしなきゃいけねぇだろ?ほんで、あの人なら生活を改めてちゃんとやると思ったね。結果は見ての通りだ」

んで、ブレイキーとシルヴァーはその後何となーく気まずい感じだったんですが、シルヴァーの方はインタビューで

「アート・ブレイキーにはとても感謝してる。彼を通じて私の初期の作品が次々世に出ることになった。それらの作品は今でもお気に入りだし、私はアートの事が今でも大好きだ」

と言った。それをたまたま聞いてたブレイキーが

「あぁ、ヤツは俺の事怒ってないんだ。それにしても若気の至りとはいえ、オレもあの時は悪い事をしたもんだ・・・」

と、反省したのか、80年代末のある日同じコンサートで対バンがあった時、自分のグループの演奏を終えて舞台袖からジャズ・メッセンジャーズの演奏を見ていたシルヴァーをアートが見付け「ちょっと来いよ!」とステージに呼んでピアノに座らせ

「アレやろうぜ、昔一緒によくやった”メイリー”♪」

「オーケーやろう♪」

と、無事仲直りも果たしたんですね。

で、その後1年も経たないうちにブレイキーが亡くなっておりますから、ますますこの2人の運命的なものを感じずにはおれません。

シルヴァーとブレイキーは、やっぱり共に新しい音楽、それも頭に描いていたものがほぼ一致する、稀有なパートナーだったと初期の共演盤やその後それぞれのグループで活躍した両者のアルバムなんかを聴くとしみじみ思います。

特にピアニストとドラマーという違う楽器の演奏家でありながら”リズム”という面で、二人の呼吸はまるで双子のようにピッタリ合ってるんだよなぁと感動します。

では、そんな2人の息もピッタリなアルバムとして、本日は『ホレス・シルヴァー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ』をご紹介いたしましょう。




ホレス・シルヴァー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

【パーソネル】
ホレス・シルヴァー(p)
ケニー・ドーハム(tp)
ハンク・モブレー(ts)
ダグ・ワトキンス(b)
アート・ブレイキー(ds)


【収録曲】
1.ルーム 608
2.クリーピン・イン
3.ストップ・タイム
4.トゥ・フーム・イット・メイ・コンサーン
5.ヒッピー
6.ザ・プリーチャー
7.ハンカリン
8.ドゥードリン

(録音:1954年11月13日,1955年2月6日)


最初に言っておきますが、実はこのアルバム「ジャズ・メッセンジャーズ」と銘打っておきながら、実はジャズ・メッセンジャーズ結成直前にレコーディングされた、実質的なホレス・シルヴァーのリーダー作です。

実際ブルーノーとから最初に10インチレコードでリリースされた時は確かリーダーのホレス・シルヴァー名義でした。その後10インチでリリースされたアルバムをブルーノートは全て12インチ化した時にジャケットやタイトルを変えてリリースしなおして、その時に活動していたジャズ・メッセンジャーズの名義にしたのでしょう。

でもまぁメンバーはシルヴァーとブレイキーとケニー・ドーハム、ハンク・モブレー、ダグ・ワトキンスというジャズ・メッセンジャーズの面々なので「ジャズ・メッセンジャーズのプレ・リリース盤」として聴くと良いでしょう。うん、ちょいとややこしいんですがそういうことで中身を解説します。

シルヴァーもブレイキーも、そのちょいと前の”ビ・バップ”の時代に世に出てきたジャズマンであります。ブレイキーは元々ビッグバンド出身で、シルヴァーはビ・バップ・ピアノの第一人者として人気絶頂だったバド・パウエルの影響を受けた若手の一人だったんですが、デビューする頃にはビ・バップの刺激的ではあるけれどやや単調なリズムから、より新しいリズムをジャズに取り入れたくてウズウズしてた。

そして、マイルス・デイヴィスがそう思っていたように、シルヴァーとブレイキーもまた「ただ熱狂するだけじゃなくて、じっくり聴いて楽しめるようなジャズを作りたい」と思っていた。

特にシルヴァーは両親が西アフリカに浮かぶ旧ポルトガル領ガーボベルデという国の出身で、ラテン系のルーツがあり、これを自分の音楽の前面に押し出したいという野望があった。ブレイキーもルーツであるアフリカン・ドラムやラテン・パーカッションなど様々なリズムを研究しながら、全くオリジナルなリズムで新しいジャズを作りたいという気持ちがあった。

そんなこんなで2人がガッツリ手を組んだこのアルバム。ほとんど初顔合わせに近いということで、全体的には「よく練られたアレンジがかっこいビ・バップ」な感じでありますが、それでもブレイキーが繰り出す小技がたくさん効いた立体的なグルーヴの上をこれでもかとピョンピョン跳ねるシルヴァーのピアノがもう水を得た魚みたいにカッコイイんですが、2人の凄さはテナーのハンク・モブレーやトランペットのケニー・ドーハムがソロを取ってる時のバッキングですよね。

ガンガンおかずを繰り出して煽りに煽るブレイキーと一緒になって、左手でもってガッコンガコン強烈なコードを叩き付けて煽るシルヴァーのピアノがすこぶるカッコイイ。いやもうカッコイイを通り越してヤバイ感じすらするのですよ。

アップテンポの1曲目『ルーム608』とか『ストップ・タイム』とか、ミディアムテンポでブレイキーがさり気なくルンバ混ぜてくる後のソロでグッとドスを効かせたブルージーなソロを取るシルヴァーも素晴らしいですなぁ。ハンク・モブレーのややダークなテナーのトーンも、ドーハムの1歩引いた知性溢れるトランペットも、いい味を出しながらピアノとドラムを見事引き立てております。

あと、このアルバムの目玉といえば、カラッと明るいファンキーナンバーの『ザ・プリーチャー』これですね。プリーチャーってのは説教師のことで、言うまでもなくゴスペルの雰囲気を曲にしたものですが、ニューヨークみたいな都会の教会の雰囲気ではなくて、南部の田舎の教会みたいな素朴な雰囲気です。

ブルーノートのオーナーのアルフレッド・ライオンはこの曲を聴いて「う〜ん、何だか古いデキシーランドジャズみたいな曲だなぁ。これはレコーディングできないよ」と難色を示しましたが「いや、オレらはこの曲は一周回って新しいと思ってる。レコーディングできないっつうんならアルバムのレコーディング自体辞めていいよ」と脅すような感じで迫り、レコーディングを強行させた訳なんですが、ハードバップの時代にはこういったゴスペル感覚が都会の若者に「ヒップだ」と大いにウケて流行する訳ですから、世の中何があるか分かりません。

あと、アタシはこのジャケットも好きなんですよね。何のポーズだかわかんないけど、このシルヴァーのおどけた表情とポーズだけ見ても「あぁ、このアルバムはいいやつだな」と思えてきますよね。










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2020年04月11日

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ モーニン

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アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ/モーニン
(BLUENOTE/EMIミュージック)


4月も半ばに差し掛かろうという時期でございます。

「CD屋」と言ってはおりますが現在はお店を閉じて街角のあちこちで個人的にCDを売買する、かなーり怪しい地下CD屋でありますので、当然食うための正業を持っております。

この正業ってのが毎年年度末年度始めの頃がもー悲鳴が出る程忙しいお仕事ですので、毎日ヘトヘトにくたびれてブログの更新もままならずといった状況ですが、4月も半ば目前にして、ようやく沈静化の目処が付いてきました。

体調がまだ万全ではありませんが、コロナの世界的流行を受けて、自宅で退屈をしている方もいらっしゃると聞き及んでおりますので、そういった方々のせめてもの暇つぶしにでもなればと、ちょっとブログの更新を頑張りたいと思います。

そう思って昨晩は過去記事をてれ〜っと眺めておりました。

このブログの読者の皆さんはジャズ好きな人も多く、アタシもジャズ好きで記事を書くと良い反応も頂けますので喜んで書いておるのですが、過去記事を改めて読み返してみるとアレですね、いわゆる初心者にオススメの名盤や定番アルバムのレビューが少ない。自分ではそんなことないと思っておりましたが、記事にはその時個人的に聴いて「これは良い!」とオススメしたい作品を主に書いておりますので、ついうっかり後回しになってしまったんでしょう。うぅ...これではいけません。せっかく「この機会にジャズ聴きたい!」って方もいらっしゃると思うのに。

という訳で、今日からしばらく「ジャズまだ聴いたことない人も安心して聴ける、楽しめる定番作品強化月間」として、人気の有名アルバムの紹介に励みましょう。

第一弾は、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの『モーニン』であります。

そうそう、ある程度上の年齢の方にとっては「ジャズを聴くきっかけになった1枚」であり、モダン・ジャズとかハードバップとかいう音楽について語る時は、もうコイツがないと始まらない、ぐらいの超人気のド定番でありますね。

1961年に日本ツアーを行い、その行く先々で拍手喝采の大人気となったアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ。

それまで日本人にとって「ジャズ」といえば、戦後すぐに進駐軍と共に入ってきた戦前のスウィング・ジャズ。つまりグレン・ミラーやジーン・クルーパー、デューク・エリントンなどでありまして、ジャズはどちらかというと上質な社交の音楽みたいな感覚があったんですね。

でも50年代にアメリカでは既に「もっと若者も熱狂するような刺激に溢れたジャズを!」という意識の元に、少ない人数でミュージシャン達がアドリブの火花を激しく散らすビ・バップが生まれ、それが「それまでのジャズとは違う今の時代のジャズ」という意味で『モダン・ジャズ』と呼ばれるようになり、更にそのビ・バップをもっと形を整えて「熱狂も出来るし鑑賞しても聴き応えのある音楽」に進化させたのがハード・バップであり、アート・ブレイキーはそのハード・バップの生みの親の一人でもあったんですね。

特にブレイキーのハードバップは、リズムや楽曲にゴスペルやR&Bなどのキャッチーな要素を大幅に取り入れた”ファンキー”と呼ばれるやつでした。

簡単に言うと

「すっげぇ分かりやすいしノレるし、何かよーわからんけど凄く黒人の音楽って感じがする!!」

てやつだったんです。

そんなブレイキー、ジャズ・メッセンジャーズの来日は、刺激に飢えていた日本の若者にとっても「まぁジャズってこんなだよね」と、ひと昔前のムーディーなやつを想像していたご年配にとっても、価値観を激しく揺さぶるようなセンセーショナルな出来事でありました。

結果公演は大成功、多くの日本人がモダン・ジャズという最高にカッコイイ音楽に目覚め、街にはジャズ喫茶という、当時高級品で庶民の手にはなかなか届かなかったレコードを良いオーディオシステムで聴かせるお店があちこちに出来、そこではやっぱりアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズが日本でのコンサートで拍手喝采を浴びたあの人気曲『モーニン』が流れ、またはリクエストされ、巷で都市伝説として云われているように「その辺のそば屋の出前のあんちゃんまでが鼻歌で歌ってた」という大ブームになりました(そば屋の出前のあんちゃんが実は元から筋金入りのジャズ好きだったという可能性は一旦置いときますね)。


個人的な事を申し上げれば、アタシの家も実は親父がこのアルバムでジャズに目覚めたクチでありまして(1944年生まれ)ドラムまでおっぱじめ、家でもよくこのレコードはかけていたし、鼻歌でもよく歌ってたし、自宅にあるピアノでもって右手だけでメインテーマのフレーズをよく弾いておりました。

そんなアルバムだったので、ジャズとかよーわからん時から既に”耳タコ”だったし、反抗期なアタシに「ジャズ=おっさんが聴く退屈な音楽」というイメージをある意味で植え付けた曲こそが『モーニン』だったので、コルトレーンでジャズに目覚めた後も実はしばらく避けていたアルバムではあったんです。

ところがまぁアタシもコルトレーンを皮切りに、いわゆるモダン・ジャズ、ハードバップなものの良さも一丁前に何となく分かるようになって「アート・ブレイキーも良さそうだな、でも何か今更な感じがしてちょっと恥ずかしいな」とか、そういう小生意気な事も思ったりして、何となーくレコード屋さんとかでこのジャケットを見ても戸惑って結局別のアーティストを買ってしまうという、そういうことを何度も繰り返しておりましたねぇ。




モーニン+2

【パーソネル】
アート・ブレイキー(ds)
リー・モーガン(tp)
ベニー・ゴルソン(ts)
ボビー・ティモンズ(p)
ジミー・メリット(ds)

【収録曲】
1.モーニン
2.アー・ユー・リアル
3.アロング・ケイム・ベティ
4.ドラム・サンダー組曲
5.ブルース・マーチ

(録音:1958年10月30日)


結局『モーニン』は、長い間気になるけど持ってないアルバムのままでした。ある日ブルーノート・キャンペーンのサンプラーCDで初めてちゃんと聴いてみたら、いやアナタ、これが、凄い!「こんなにカッコ良かったか!?」ってぐらいにねぇ、カッコ良かったんですよ。

まず、最近は「美の壺」と呼ばれてる(?)あの有名なテーマを、ボビー・ティモンズがピアノで奏でます。

「たったたららららった〜♪」

と、単音のこれ以上ないぐらいにシンプルなリフなんですが、ここにギッシリとブルース・フィーリングというかそういうブラック・ミュージックならではの”粋”みたいなもんが詰まってますね。えぇ、他の人が弾いてもこうは行くまいと思えるぐらい何かがムンムンか香ります。

で、

「たったたららららった〜♪」

の直後、サックスとトランペットが

「ちゃ〜、ら♪」

と、応答のようなフレーズを吹く。

コレが「コール・アンド・レスポンス」というやつでして、古くは奴隷時代のワークソングの昔からある伝統的な黒人音楽の手法で、教会で歌われるゴスペルでよく使われてきました。

『モーニン』作曲したのもボビー・ティモンズで、彼は教会の牧師さんの息子として、幼い頃からこのコール・アンド・レスポンスがもう身に沁みついていたんですね。だからこの曲はジャズなんだけれども、そのゴスペルの雰囲気をジャズでひとつやってみようと思って作ったらしいんです。

ゴスペルをちょっとでも知ってる人なら、このコール・アンド・レスポンスってのが生み出す盛り上がりは体験してると思います。そのグワ〜っとくる盛り上がりをジャズで、しかも全然違和感なくやってのけてしまうんだから本当に凄い訳なんです。

で、このツカミに溢れた後のリー・モーガン→ベニー・ゴルソン→ボビー・ティモンズのソロが輪をかけて凄い。テーマはあくまでキャッチーなんですが、アドリブに入ったらもう真剣勝負のこの上なくジャズな感じの雰囲気が自然と別の盛り上がりを作り上げるんですね。しかも3人共に全く違う個性で。

『モーニン』以後の曲も、くつろいだ感じのハードバップという枠組みの中、メンバー達が全く違うそれぞれの個性で大いに見せ場を作って盛り上げます。1958年、ジャズが最も新しい音楽として充実していた時代の良さがどの瞬間にも詰まっていて、この時代を代表するモダン・ジャズの名盤として、やっぱりイチ押しせねばならぬ聴き応えに満ち溢れた作品なのです。







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