2020年05月07日

アリス・イン・チェインズ フェイスリフト

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アリス・イン・チェインズ/フェイスリフト
(Sony)

1990年代に、洋楽ロックの勢力図を一気に塗り替えたオルタナティヴ/グランジ・ムーヴメントは、実際には1992年ぐらいから95年ぐらいまでの、ほんの2,3年程度の短いムーヴメントだったと思います。

それにしても当時10代のキッズだったアタシのような者にとっては、その音楽的なインパクトそのものよりも、全く個性も音楽性も異なる様々なバンドが「グランジ」というカテゴリから次々に出てくるので「次はどんなバンドのどんな作品が出てくるんだろう」と、夢中になって新譜をチェックしてましたし、同時に彼らが影響を受けた70年代とか60年代のロックなど、とにかくこのムーヴメントによってアタシはそれまで知らなかったたくさんの素晴らしい音楽を知る事が出来た。それが凄く有難かったなと思っております。

そう、一言で『グランジ』とは言っても、それはたまたまアメリカの西海岸のシアトルやその近辺で活動していた、インディーズのバンド達の個性豊かな音楽を商業ベースに乗せるために作られた言葉であり、実際その中でカテゴライズされていたバンドやミュージシャン達ってのは、パンクやガレージロックに強く影響を受けてたり、ハードコアがポップになったようなものであったり、ヘヴィメタルはハードロックを指向いていたりと、そのサウンドカラーは本当に様々でした。

で、アリス・イン・チェインズです。

ここまでアタシは散々「グランジ」についての講釈を垂れてきてこう言うのも何ですが、アタシの中でこのアリス・イン・チェインズというバンドほど、ムーヴメントであったグランジロックとすんなり結び付くバンドはおりません。

もちろんそれは彼らの音楽が、当初からハードロック/ヘヴィメタル系のヘヴィでソリッドなギターリフを主軸としたものであり、アタシが最初に知ったのも、彼らのセカンド・アルバム『Dirt』が、当時読んでいたBURRNだったかヤングギターだったかで結構良い感じにレビュー書かれていて、メタリカのジェイムス・ヘッドフィールドが彼らを称賛するコメントを、これまた何かの雑誌でやっているのを見たからでもあります。

つうか『Dirt』がリリースされたのは1992年で、その頃都会ではどうだったか分かりませんが、田舎の奄美では、まだまだグランジという言葉はおろか、オルタナティヴロックなどというワードも、ほとんどの人にとっては未聴のものであり、ロックといえばメタルかパンクかビートルズとかストーンズとかジミヘンとかジャニスとか、そういったものという感覚しかありませんでした。

92年ぐらいにニルヴァーナが大流行りして、その時「あ、これはメタルじゃないやつなんだな」と初めて意識する訳ですが、同じジャンルであるはずのアリス・イン・チェインズは、完全にメタルの流れのバンドとして、アタシは認識しておりましたし、その後グランジブームになった頃も、何となくブームに乗っかりたくない(と、言いつつちゃっかりCD買って集めてた)という生来の天邪鬼根性が発動して「アリス・イン・チェインズはメタルだもん!!」と、頑なに主張してた、なんてことも今思い出しております。

本当はアリス・イン・チェインズはグランジだろうがメタルだろうが、そんな事はどうでもよくて、あのとにかくヘヴィにうねるサウンドと、どこにも救いがなく容赦ないダークネスで意識を沼底へ引きずり込むレイン・ステイリーのヴォーカルの声にひたすらのめり込むように聴いてズドーンとした気持ちになれればそれで良い。とは思っておりましたが、何せリアルタイムで聴いていたのは10代の頃だったので、そういう事を言語化する脳味噌がなかった事が悔やまれます。




Facelift

【収録曲】
1.We Die Young
2.Man in the Box
3.Sea of Sorrow
4.Bleed the Freak
5.I Can't Remember
6.Love, Hate, Love
7.It Ain't Like That
8.Sunshine
9.Put You Down
10.Confusion
11.I Know Somethin (Bout You)
12.Real Thing


はい、そんな訳で少年時代のアタシを泥沼に引きずり込んで放さなかったのは、実は3枚目のアルバム『アリス・イン・チェインズ』だったんですが、アリス・イン・チェインズは最初からカッコイイということで、このブログでは順を追って紹介していこうと思います。

ギターのジェリー・カントレルとヴォーカルのレイン・ステイリーが中心となってアリス・イン・チェインズが結成されたのは1987年。デビュー前の初期の頃は、意外にもカラッしたLAメタルみたいなポップなハードロックを指向していたといいますが、重さを追求するうちに独特の翳りを持つレインの歌声が映える、ダークなサウンドになって行きました。

華やかさとは裏腹な新しい感覚を持つサウンドは、徐々に注目され、1990年にはメジャーデビュー。とはいえ、まだまだ「たくさんデビューしたうちの1組」に過ぎなかったアリス・イン・チェインズのアルバムは、最初はそんなに注目されていなかったようですが、メタリカやメガデス、スレイヤー、アンスラックスといった、大人気のスラッシュメタルバンドの重鎮達から、その媚びない音楽性を称賛され、91年にメガデス、スレイヤー、アンスラックスらによるツアー『CLASH OF THE TITANS』に抜擢され、続いてどういう訳かヴァン・ヘイレン(!)のツアーのオープニング・アクトに起用されて、その名はたちまち世界中のメタル好きに知れ渡ります。

そのメジャー・デビュー・アルバムが本日ご紹介する『フェイスリフト』であります。

アリス・イン・チェインズはデビュー後その音楽からどんどん贅肉がそぎ落とされたような、ハードなものになっていくんですが、このアルバムは激しくうねるグルーヴと呪術のようなヴォーカルの凄味が、ほんのりとキャッチーさが残る楽曲と共に、ガツンガツンと鳴っていて、彼らのアルバムの中では聴き易さと程よい中毒性が混沌の中で調和した作品となっております。

しかしまぁ1曲目『We Die Young』から、ズンズンとかっこいいギターリフがたまんないんですよねぇ。ロックバンドのデビュー作は大体良い意味で粗削りで試行錯誤のエネルギーが激しくスパークしているんですが、楽曲のクオリティは総じて高く、シンプルにヘヴィで思わせぶりで余計な演出がない。大体イントロなしかあっても短めで、展開をこねくり回さない骨組みだけのアレンジの中、声とギターとベースとドラムがうねうねしているうちにスパッと終わって次の曲へ行く、というこの硬派なカッコ良さ。やっぱりメタルとかグランジとかそういうんじゃなく、これは骨太なロックとして実にカッコ良いと改めて思います。














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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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posted by サウンズパル at 14:13| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする