2020年08月09日

ジョン・リー・フッカー Don't Turn Me From Your Door

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Jhon Lee Hooker/Don't Turn Me From Your Door
(ATCO)


うむむ、むむむ・・・と体調がよろしくありません。

毎年夏はあちこち弱るから、まぁいいかと思っておりましたが、この10日程頭痛が酷くてパソコンに向かうと吐き気までしてくるという状況だったので、しばらくブログお休みしておりました。せっかくの大コルトレーン祭だし、8月になってコルトレーン以外のアルバムの紹介もガンガンやるぞー!と思っていた矢先にとんだ夏バテのカウンターパンチ。うむむ、うむむ・・・。

そんな夏であります。夏で思い出したのですが、アタシはそういえば「クソ暑い夏は暑苦しいブルースを聴こう協会」(今作った)の会長(今就任した)をやっておる人間ですので、頭痛なんかに負けずに今日は気合いを入れて暑苦しいブルースを紹介して行こうと思います。

はい、ジョン・リー・フッカーです。

ジョン・リーのあの南部ミシシッピの重苦しい暑さ(経験したことないけどきっとそうだろう)がそのまんまヘヴィな妖気となって地底から響いてくるような声と、同じぐらいヘヴィな情念が粘りに粘るあのギターを聴くと、もうその重苦しさが夏の暑気を追っ払い、別の世界の心地良い暑苦しさを心の中に満たしてくれる。

中学の頃に『アトランティック・ブルース・ギター』というオムニバスを買って初めてブルースという音楽に目覚め、その中に収録されていたエレキギター弾き語りのスローブルース『My Baby Don't Love Me』という曲に「うぉぉ、何か凄い!」とのけぞって、そのちょい後に映画ブルースブラザーズで、セリフも何もない、ただ路上でバンド従えて歌ってギター弾くだけの役で一瞬現れてズームアウトしていったジョン・リーを観て「あのめちゃくちゃカッコイイおっさん誰だ!?」とはなったものの、いざ『ザ・グレイト・ジョン・リー・フッカー』というCDを買って聴いてみたものの、ほとんどの曲がエレキギターの弾き語り、しかも曲のパターンが徹底してスローブルースかブギの2パターン”だけ”(!)という余りのディープさにビビってしまい「お、俺にはまだ早かったかもな・・・」と、そっと棚の隅にしまっておいた10代の頃でしたが、19歳のある日、突然真夏の暑さにやや熱中症っぽい脱水のヘロヘロで自宅アパートに帰ってきて、余りの渇きにあんまり美味しくない水道の水をガブ飲みし、床に仰向けになりながら無意識に選んだCDがたまたまそのジョン・リーのアルバムでした。



暑さと脱水でボーーーッとなった頭で「おいおい、こんな状況でこんな重たいの聴く俺はアホか?」とか何とかボーーーーッと考えておりましたが、かといって聴くCDを選びなおす元気もなく、そのまんま仰向けになって床に沈み込むような意識になりながら聴いてたんですね。

そしたら何だコレは!悪魔のような声とギターが体にジワジワジワジワ異様に染みて、文字通りビリビリと電流が体中を走るような感覚に陥り、暑さと脱水の不快感は体からまだ抜けないでいるものの、全く別の違う何か心地良く刺激的なものがそれらを上書きしている。凄い、これがブルース、ホンモノのブルースと、完全に虜になってしまった体験がアタシにはあります。

コレはその時体がいわば極限に近い状態だったから、そういうちょっとした事でも凄いと思えたのかと思って、割と普通の状態の時にジョン・リー・フッカー聴いたら、もう完全に体も心もジョン・リーを「ヤバイぐらいにカッコイイもの」として認識してたんですね。それ以降聴いたどのジョン・リーもやっぱり凄い。でも、とりわけエレキギター弾き語りの作品の、情念が剥き身で迫ってくる深い迫力に叶う盤はそうそうないと思っております。はい。


で、アタシは生まれて初めて聴いたジョン・リーのあの『My Baby Don't Love Me』が入ってるアルバムをずっと探しました。

東京のタワーとかHMVとかそういう大きなCDショップも、駅前にある個人商店みたいなお店もくまなく見て探しましたが、どうもこの曲が収録されているアルバムが見当たらない。『アトランティック・ブルース・ギター』というアルバムに入っていたから、きっとアトランティックかその系列のATCOからリリースしたアルバムだろうからと、数少ないCDやレコードのガイドブックも購入して隅から隅まで見たんですが「ジョン・リー・フッカーのアトランティック(もしくはATCO)」に関する記述はついぞ見つからず。

結局東京にいるうちは探してた『My Baby Don't Love Me』入りのアルバムとは出会えなかったんです。





Don't Turn Me from Your Door


【収録曲】
1. Stuttering Blues
2. Wobbling Baby
3. You Lost a Good Man
4. Love My Baby
5. Misbelieving Baby
6. Drifting Blues
7. Don't Turn Me from Your Door
8. My Baby Don't Love Me
9. I Ain't Got Nobody
10. Real Real Gone
11. Guitar Lovin' Man
12. Talk About Your Baby


結局ジョン・リー・フッカー唯一のATCO盤『Don't Turn Me From Your Door』に巡り合えたのは、アタシが30過ぎてからの事でした。

輸入盤CDのリストをパラパラっと見ていたら、このアルバムの案内にちっちゃい文字で「Waner Brothers」と書いてあったので「おお!ワーナーという事はアトランティックだな!よっしゃ!」と、曲名も見ずにイチかバチかで注文したのですがコレが大当たり。

とにかくジョン・リーという人は、初期の頃色んなレーベルを節操なく、時にはバレないように偽名を使って渡り歩く人だったので、同じ時期の録音でも色んな所に作品が散らばって存在するというコレクター泣かせの人で、このアルバムの録音はATCOなんですが、これもまずデビュー直後の1953年にゲリラ的に録音した音源をATCOが拾って、ついでにその時(1961年)に新たにレコーディングした曲をくっつけてようやくアルバム化したという複雑なプロセスを経て世に出たものです。

その事情の複雑さと、膨大な他レーベル(ModernとかVee Jayとか)の音源に紛れて存在感が薄くなったのか、とにかく余り話題にならなかったアルバムではあるのですが、内容は「何で話題にならんの?」と言いたくなるぐらいディープでゾクゾクする生絞りなブルースがギュッと詰まったものなんで、気になる方はぜひお聴きなさい。

録音は@ACGIJが1953年、BDEEHKが1961年です。2つの音源の間には8年のタイムラグがありますが、どれもほぼ必殺のエレキギター弾き語り、曲によってエディ・カークランドかアール・フッカーのサイドギターに、正体不明のベーシストのベースが入りますが、どのサポートも弾き語りの不穏な”間”に満ちた雰囲気を壊さないように寄り添う程度。『Guitar Lovin' Man』でいきなりエディ・カークランドがカラッとした声で歌い出すのでびっくりしますが、ハプニングらしい展開はそれぐらいですので、独特のディープさにはほぼ影響ないと考えてOKです。

で、楽曲は長年探し求めていた『My Baby Don't Love Me』をはじめ、ほとんどの曲がドス黒いスローブルース。そう、ジョン・リーのもうひとつの看板ともいえるいわゆる”ブギ曲”がないので、ただでさえ重くもたれかかる情念に覆われているようなアルバムの雰囲気が、更に出口の見えない漆黒の闇に覆われているようで、また、ジョン・リーのギターも良い感じに歪んでるしチョーキングはギトギトに粘ってるし、こりゃもうジョン・リーのダーク・ブルースが好きな人、或いはブルースそのものの身も蓋もないハードな質感が好きな人は愛聴盤になるに決まっております。










(アナログ盤)


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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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posted by サウンズパル at 00:14| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする