2020年10月01日

サマンサ・フィッシュ ランナウェイ

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サマンサ・フィッシュ/ランナウェイ

(BSMFレコード)


「世の中便利になったなぁ」と感じる事は最近多々ありますが、アタシの場合は生活に直接役に立つ事よりも、例えばYoutubeなんかで知らないカッコイイ音楽を偶然見つけた時とかなんですね。

で、サマンサ・フィッシュです。

この人は2010年代にデビューした、ブルース系ヴォーカル/ギタリストの若手として幅広い活躍をしている人なんですけれども、アタシはほんの5年ぐらい前まで全然知らなくて、たまたまブラック・サバスの『War Pigs』という曲名でYoutubeを検索して泳いでおりましたら、たまたまこの人がギター、ベース、ドラムスの3ピースで演奏しているこの曲のカヴァーのライヴ映像が出てきて、これがもう何か凄かったんですね。

ハムバッカーを2発付けたカスタムのテレキャスで、正にトニー・アイオミばりのぶっとい音をぎゅいんぎゅいん言わせて、でも激しいディストーションはかけてなくて、何というか”地の音”が凄く強い。そしてギター・ソロも70年代のロックギターというよりも、もっとアメリカンなやさぐれを感じさせる気風のいいブルージーなフレーズの連発。

とにかくもう赤いワンピース着て出すサウンドが「ガツン!」「ゴリッ!」っていう感じの骨太なんですよ。

で、チョーキングがまたキュイ〜ンじゃなくて「ギュイィィィン!!」って感じの、パッと聴きスティーヴィー・レイ・ヴォーンとかザック・ワイルドとか、あの辺に通じるものを感じましたね。えぇ、とにかくもうひとつひとつの音やらフレーズがその辺の野郎が弾くそれよりも全然力強くてアツい芯がある、そんな感じでした。

で、ギター同様にパンチの効いたハスキーでパワフルな歌もまたいい。とにかくギターといい歌といい、この人の全てに、ちょっとした一瞬にもヤワなところというものが全くない。

「すげーなこのお姉ちゃん、サマンサ・フィッシュっていうのか。他にライヴないかなぁ・・・」

と、探してみたら、何とかぁハウリン・ウルフの『Killing Floor』とか、スクリーミン・ジェイ・ホーキンスの『I Put A Spell On You』とか、ブルースの有名な曲を、原曲の泥臭さをバリバリ引きずるようなアレンジでやっている。そして極め付けは何と、ミシシッピ・ヒル・カントリー・ブルースの大ボス、R.L.バーンサイドの『Poor Black Mattle』を、オイル缶ボディのギターでもってえげつないスライドでぎゃいんぎゃいん言わせてカヴァーしてたんです。

いや、ハウリン・ウルフとか『I Put A Spell On You』とかだったら分かるんです。何が分かるかって、その辺の古くからロックの人達にリスペクトされている大物ブルースマンとかスタンダードナンバーとかなら、若いロック系の人達もカヴァーしていておかしくない。特にブルースに強い思い入れがなくても。

が、R.L.バーンサイドのしかも最も土着なアフタービートの中毒性が高い曲である『Poor Bleck Mattle』を、若い女の子がカヴァーしてるのなんて、ちょっと想像も出来なかったし、そのカヴァーの演奏がまた全っ然毒抜きしてないストレートにえげつない感じだったから、それでアタシは二重にも三重にも激しい衝撃を受けたんですね。

そしてやっと気付いたんです。

「あ、このコはガチのブルースの人だわ」

と。


すっかりアタシは虜になって、この人の事を色々と調べたんですが、ミズーリ州カンサス・シティに1989年生まれ、小さい頃からシェリル・クロウやキース・アーバン、スティーヴィー・レイ・ヴォーンなどが大好きで、15歳になる頃には地元にある”ナックルヘッズ・サルーン”という音楽ホール(いくつかの屋内&野外のステージがひとつの施設の中にある巨大ライヴ会場)にやって来るブルース・アーティスト達のライヴに足しげく通っているうちに、自分もそこでギターを持って歌うようになり、自主制作のライヴアルバムがレコード会社の目に留まってデビューすることになったと。





ランナウェイ

【収録曲】
1.Down In The Swamp
2.Runaway
3.Today's My Day
4.Money To Burn
5.Leavin' Kind
6.Otherside Of The Bottle
7.Soft And Slow
8.Push Comes To Shove
9.Louisiana Rain
10.Feelin' Alright

はい、そんなサマンサ・フィッシュのデビュー・アルバムがコチラ『ランナウェイ』であります。

リリースは2011年、ライナノーツを見ると若干21歳とあります。大体若いミュージシャンのデビュー・アルバムといったら勢いがガーッと凄くて燃える、みたいなのが多いのですが、このアルバムは「ほんとに21歳!?」と思わず聴き返してしまいそうな、確かな実力に裏付けられた落ち着いたクオリティと、歌、ギター共にベテラン・アーティストのような貫禄に溢れております。

まずは1曲目の『Down In The Swamp』スローテンポの粘り気のあるサザンロック・テイストのナンバー。じりじりとしたリフと単音チョーキングの応報から始まって、ギター同様粘り気の濃いヴォーカルがたまりません。

アルバムの雰囲気は、大体全編通してこの1曲目で示した「深く、濃く、粘る雰囲気」が心地良く流れ、1曲1曲というよりも、アルバムそのものを流しながら楽しめる感じに仕上がっておりますね。そして2曲目はブギーで跳ねまくる『Runaway』、そこからまた落ち着いたミドルテンポやスローテンポのブルースロック、『Louisiana Rain』のようなカントリー・バラード、そしてラストは同じバラードでもコチラはグッとジャジーでアンニュイな『Feelin Alright』でアルバムはじんわりとした余韻を残して終わります。

このアルバムでは有名なブルースのカヴァーとかはないのですが、それでもブルース好き、ブルースロック好きは彼女のギタープレイの、ソロにもバッキングでも存分に行き渡っている付け焼刃ではないブルース・フィーリング、そしてギターを歌わせる絶妙なニュアンスに「おぉっ!」となるのではないでしょうか。









『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 18:57| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする