2014年09月27日

バド・パウエル・イン・パリ(reprise盤)


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「バド・パウエル/バド・パウエル・イン・パリ +2」
(reprise)

【パーソネル】
バド・パウエル(p)
ルバート・ロヴェール(b)
カール・ドネル(ds)
【収録曲】
1.ハウ・ハイ・ザ・ムーン
2.ディア・オールド・ストックホルム
3.身も心も
4.ジョードゥ
5.リーツ・アンド・アイ
6.サテン・ドール
7.パリの大通り
8.言い出しかねて
9.リトル・ベニー
10.インディアナ(ボーナス・トラック)
11.Bフラット・ブルース(ボーナス・トラック)


圧倒的なテクニックとカリスマ的存在感で、デビュー当初から「天才ピアニスト」として閃光を放っていたバド・パウエル。

後の世代のピアニストには、彼が築き上げたバップ・スタイルが、そのままモダン・ジャズ・ピアノの基本中の基本として絶対的な影響を与えた、とにかくもう誰が何と言おうと「バド・パウエルなしのジャズ・ピアノ」は語れない訳でありますが、その生涯はピアニストとしての栄光とは裏腹な、挫折と苦悩に満ちたものでありました。

デビューから程なくして精神疾患を患い、その当時の未発達な治療による神経や意識の障害によって往年のテクニックは奪われ、更に麻薬とアルコールの中毒が、バドを徹底的に蝕みます。

1950年代の終わり頃「クレオパトラの夢」で有名なBLUENOTE盤
「ザ・シーン・チェンジズ」
の録音を最後に、バドは療養と音楽活動の場を求め、パリへ移住します。そこでジャズに理解の深い協力者や、多くのファンに支えられており、精神的にも落ち着いた状態があったと言われておりますが、長年の病魔との闘いは、彼の心身を確実に磨り減らしていたことでしょう。

指はもつれ、リズムやメロディーも崩壊した痛々しい演奏が、パリ時代に残された作品の中には時として収録されています。

当時一緒に共演したかつての仲間達からも、「アイツは今日俺と共演したことすら分かってないだろう」と嘆かれた程の深刻な心神喪失の状態が、そのまま演奏にも現れていたであろうことは想像に難しくありません。

しかし、この時期のバドの演奏には、それでしか味わえない素晴らしい魅力があります。特に鳴り響くだけで聴き手を別世界へ誘う重厚な音色には、テクニックやスタイルだけでは語れない、何か感情に直接訴えてくるものを感じます。

本日のオススメ盤「バド・パウエル・イン・パリ」は、パリ時代のバドを代表する一枚。のみならず、バドの全作品の中でもオススメ度はかなり上位にくる、非常に完成度が高く親しみやすい作品です。

弾き馴れたスタンダード曲を、安定したタッチで奏でる好調な演奏。特にバラード系の曲で聴かせますね。「ディア・オールド・ストックホルム」「身も心も(ボディ・アンド・ソウル)」「言いだしかねて」の3曲は、美しいメロディと上品なムードがピアノから次々と湧き出てます。

ちょっとダークでアンニュイな音の質感が、バラード曲と良く合いますね。

このアルバムでのバドは、調子の良し悪しをほとんど感じさせません。穏やかな雰囲気の中で、機嫌良くピアノと戯れているようにすら思わせます。バックの2人は、恐らくヨーロッパの若いベーシストとドラマーでしょうね。バドの気品漂うプレイに懸命に応えようとしている演奏(特にドラム)は、良い感じのメリハリが演奏全体に効いてます。

「天才ピアニスト、バド・パウエルの・・・」と構えて聴くよりも、くつろぎながら聴けるスタンダード作として楽しめます。



だからこそ余計に切ないものを感じるんですが、まぁともかく聴いてみてください。バドのエピソードを知らない人でも、この”ピアノやるせない感”はきっと伝わると思います。



Dear Old Stockholm








『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』
http://5spot.info/

posted by サウンズパル at 15:35| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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