2014年12月10日

ローウェル・フルスン トランプ

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ローウェル・フルスン トランプ
(KENT/Pヴァイン)

【収録曲】
1.Tramp
2.I’m Sinkin’
3.Get Your Game Up Tight
4.Back Door Key
5.Two Way Wishing
6.Lonely Day
7.Black Nights
8.Year Of 29
9.No Hard Feeling
10.Hustler’s Game
11.Goin’ Home
12.Pico
13.Year Of 29 (alt. take) (Bonus Tracks)
14.Tramp (take 1) (Bonus Tracks)

B.B.キングをして「ブルースの眠れる巨人」と言わしめた、テキサス〜ウエスト・コーストの偉大な偉大なブルースマン、ローウェル・フルスン。

つうよりもですねぇ、コノ人は「偉大」つうよりか「大物」なんですよ。

「大物」ってぇのはアレです。例えば長嶋茂雄とか勝新みたいに「スケールのデカい人」。

カタギの世界のせせこまい一般ジョーシキでは、そのスケールのデカさを測れない人のことを言うんですわ。

フルスンは1921年オクラホマ生まれ。

その後テキサスに移り住んで、少年期には伝説のブルースマン、テキサス・アレクサンダーに付いて、ギターの伴奏などをしながら、モノホンのディープなブルースを会得していきます。

フルスンの声には、人生の悲哀とかそういったものが滲んでいて、尋常じゃないエモーショナルを炸裂させたシャウトや、深い情感を抑え目のフレーズに凝縮して込めた辛口なヴォーカルの味わいに尽きるんですが、そこらへんは人生経験はもちろん、天才的な歌い手であったアレクサンダーから受けた直接の影響も多分にあるんじゃないかと思います。

そんなフルスンは1946年にデビューしますが、1954年にチェス・レーベルから「リコシンダー・ベイベー」という超絶にシブい楽曲がヒットしますが、その後実力がありながらヒットというヒットに恵まれず、雌伏の時を過ごしておりました。

しかし、そん時にフルスンの楽曲を、テキサスからもシカゴからも離れた地、メンフィスで聴いてシビレた若者がおったんですね。

この若者こそが、当時「ブルース・ボーイ」と呼ばれていたB.B.キングなのであります。

で、フルスンの「大物ぶり」が炸裂するのはこの時です。

憧れのフルスンに会ったB.B.が、「フルスンさん、アンタの曲ヤベぇっす!自分もカバーしてレコーディングしたい曲が3曲ほどあるんスけど、いいっすか?」と、言った時、フルスンはあっさり

「いいよー」

この時の「3曲」の中に、B.B.の代表曲として超有名になる「エヴリディ・アイ・ハヴ・ザ・ブルース」があったんですね〜。

しかし、50年代〜60年代といえば時代も時代で、黒人の若者の興味関心はブルースからR&B、ソウルへと移り変わっていった頃であります。

ほとんどのブルースマン達は、クラブでの演奏やツアーで日銭を稼ぎながら、レコーディングではR&B等の”新しい感覚”を試行錯誤しながら取り入れて、ジューク・ボックスでのヒットを「あわよくば」と狙っておった時代。

ブルースマン達は、どんなに実力があっても流行というものには勝てませんでした。

フルスンもまた、拠点にしていた西海岸ベイエリアでこそローカル・ヒーローとしてクラブえ演奏を繰り広げたり、ツアーで日銭を稼いでおったんですが「リコシンダー・ベイベー」以来、レコードでのヒットを飛ばすことはなかなかできなかったんですね。

B.B.が彼を「眠れる巨人」と、呼んでいたのは恐らくこの時期でありましょう。

しかし、そんな「眠れる巨人」が動き出したのが「リコシンダー・ベイベー」のヒットも世間が忘れかけていた1960年代半ばのことであります。

R&Bを通り越して「ファンクの原型」ともいえるモダンもモダンな楽曲「トランプ」が、いきなり大ヒット(!)ビルボード・チャート5位という快挙を成し遂げます。

この曲は、基本ワン・コードのカッティングに、フルスンの語り口調のヴォーカルと、突然のシャウトが強烈なインパクトを聴く人の耳に与える名曲で、間奏で聴かれるフルスンの武骨でゴツゴツしたギター・ソロも実に味わい深いものがあります。

その堂々たる唄いっぷり、ノリの良さは「R&Bに迎合した」というよりも、むしろ「へへ、こんぐらいワケないぜ」と、大物フルスンが若い世代を挑発しているようにも思えます(歌詞でも「へへ、田舎モンって呼ぶなら呼べよ」と、なかなかに大胆なことを言っておりますな)。

この曲はソウルに熱狂するブラザーやシスター達の心をガッツリ掴みました。

当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったソウル・スター、オーティス・レディングとカーラ・トーマスが、デュエット・アルバムで早速この「トランプ」をカヴァーしました。

そん時もフルスンは「あ?いいんじゃね?」と、あっさり使用を許可したであろうことは想像に難しくありません。何せスケールのデカい人ですから・・・(^^;

「トランプ」が、時代を超えて黒人の若者達の心を掴む永遠のマスターピースであるということを証明する出来事は、1990年代にも起こります。

KRS-ONE率いるヒップホップ・グループ”ブギ・ダウン・プロダクションズ”が、何と「トランプ」をサンプリングして、ヒットを飛ばすことになるんですが、そのサンプリングの許諾を得るときも多分フルスンはあっさり「いいよ」(以下略)。

さてさて、そんな「トランプ」ばかりが名曲キラーチューンとして語られがちな本作ではありますが、もちろん「今からブルース聴いてやるぜぇええ」という意気込みに燃える若いブラック・ミュージック・ファンの皆さんには、この1曲だけでもコレは「買い」なんですが、「ブラック・ナイト」やらの「聴けば聴くほどその辛口のヴォーカルが沁みるぜぃ!」な渋〜い曲もいっぱい入っておりますんで、一生かけて長く付き合える名盤として、ぜひ記憶にとどめておいてくださいな。

フルスンの「大物」エピソードは、他にもツアーで降り立った成田空港で、関係者に挨拶より先に「モアのメンソール(タバコね)をくれ」つったり、エリック・クラプトンが「フロム・ザ・クレイドル」(1994年)というブルース・カバーのアルバムをレコーディングした時に、フルスンの「リコシンダー・ベイベー」をカヴァーして、印税を振り込んだところ

「何か口座にカネ振り込まれてるんだけど、エリ・・・ック、クラプトン?誰だこれ、知らなねぇなあ。こいつブルースやってんのか?まぁいいや。」

というのも有名な話ですわね。

まぁスケールのデカい人ですから・・・(^^;



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(「ファンキー・ブルース」の代表曲、トーキンからシャウトへ移る瞬間は何回聴いてもトリハダ!)

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posted by サウンズパル at 20:50| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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