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2014年12月25日

ビッグ・ジョー・ウィリアムス 9弦ギター・ブルース

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ビッグ・ジョー・ウィリアムス 9弦ギター・ブルース
(delmark/Pヴァイン)

【収録曲】
1.I Got The Best King Biscuit
2.Haunted House Blues
3.I Done Stop Hollering
4.I Got A Bad Mind
5.Long Tall Woman, Skinny Mama too
6.Stack Of Dollars
7.Indiana Woman Blues
8.My Baby Keeps Hanging Around
9.Jiving The Blues
10.Jump, Baby - Jump!


クセのある人が多いブルースマンの中でも、カントリー・ブルースと呼ばれる戦前〜戦後に活躍した弾き語りブルースの人達は、それこそ「1人1ジャンル」と言っていいほどの、キョーレツなクセとアクの塊のような人達がひしめき合っておりますが、その中でも一際個性的な、愛すべきワン&オンリー・スタイルの持ち主といえば、ビッグ・ジョー・ウィリアムスでありましょう。

自作の9弦ギター(!)を豪快に掻き鳴らし、声量豊かに体の底からブルースを振り絞るように唄うそのスタイルは正に自由奔放。キャリアが長い上に、色んなレーベルに物凄い数の演奏を残しておりますが、どの音源を聴いても“ビッグ・ジョー”の名が体を現すが如く、ラフでタフでワイルドで「あぁホンモノだなぁ…」としみじみ思わせる。故に100%良い意味で「これが代表作」「これは名盤」というものがない珍しい人です(そういうところはライトニン・ホプキンスと通じるものがありますなぁ)。

自由なのは音楽スタイルだけではありません。ブルースマンとして生きて行くことを決めて故郷を飛び出したその日から、最晩年の70代も半ばを過ぎてようやく生まれ故郷ミシシッピでキャンピングカーを終の住みかとするまで「同じ所に半年以上滞在したことはない」という放浪人生を60年以上も送ったといいますから、正にキング・オブ・ホーボー、筋金入りの渡り鳥でありましょう。


記録によると、“一応”1903年ミシシッピ州クロフォードの近くの農園生まれ。

出生からブルースマンになるまでの経緯には不明な部分が多いのは、本人があまり語らたがらなかったということと、後述しますが「人のことはよく覚えていても、自分のこととなると記憶がいい加減でデタラメばかりだった」という自由人ならではの性格も大きく関係しております。

とにかくビッグ・ジョーは、この時代の他の多くのブルースマン達と同じように十代で故郷を捨て、ミシシッピからアラバマ、フロリダ、更にはニューオーリンズといった南部一帯を、ある時は一人で、またある時はミンストレル・ショウの一員として旅して回り、1930年代には歓楽都市として賑わうセントルイスやイースト・セントルイスで、当時花形のシティ・ブルースマンとして人気だったウォルター・ディヴィス、ピーティー・ウィートストロー、チャーリー・ジョーダンといった人達と親交を深めて、セントルイス界隈を拠点にしながらも相変わらず南部放浪の旅を続けます(この時、彼の代表曲であり、その後ライトニン・ホプキンスをはじめとする多くのブルースマンがカヴァーすることになる「Baby Please Don't Go」をレコーディングしています)。

「行く先々で面倒を見てくれる友人を作っては滞在し、絶妙なタイミングでフラッといなくなる」

という生活を繰り返すうちに、ビッグ・ジョーの行動範囲は段々と拡がって行き、1937年にはシカゴで人気者だったサニー・ボーイ・ウィリアムスンT世(戦後チェスで活躍したあのサニー・ボーイU世とは別人)と名コンビで素晴らしいセッションを残しているから、そのフットワークの軽さたるや、フーテンの寅さん以上と言って良いでしょう。

大体戦前に活躍したブルースマンは、早世したり、戦後は仕事もなく、60年代のフォーク・ブルース・リヴァイバルの時に再発見されて、白人の若いファンの求めに応じるままに「アコースティックで、程よく枯れた味わいの渋いブルース」を演奏して崇められたりしてるんですが、ビッグ・ジョーには、戦前も戦後も、フォーク・リヴァイバルもカンケーありません。

世の中の流れなど全く意に介することもなく、旅で行き着いた所で“仲間”と再会し、そのツテで演奏して日銭を稼ぎ、レコーディングのチャンスも自分からガンガン掴みに行っております。


こう書くと、ビッグ・ジョーは軽々とホーボーライフを楽しんでいるように思えますが、歌は世につれという言葉があるように、時代遅れとなった弾き語りのカントリー・ブルースだけで食っていくのは、並大抵の事ではなく、極貧だったり、アテにしていた仲間達が次々と亡くなっていたり、音楽の世界から足を洗っていたりと、人生の辛酸を舐め尽くしたハードライフを生き抜いて来たであろうことは、戦後に録音されたアルバムを聴いて、その奔放でありながら深い味わいと説得力を持って迫る彼のブルースを聴けばしみじみと想像することができます。

そんな放浪生活の中で、1956年にビッグ・ジョーはセントルイスである”仲間”と出会います。

レコード・ショップをしながらちょこちょことブルースマン達のレコードを製作していたこの若者の名はジョン・ケスター。

後にマジック・サムやジュニア・ウェルズ、オーティス・ラッシュなどの新世代のシカゴ・モダン・ブルースのホープ達を育て、アート・アンサンブル・オブ・シカゴやサン・ラーなど、新鋭ジャズの大物達をも世に送り出すデルマーク・レコードの社長となる人物なのでありますが、ビッグ・ジョーの大ファンでもあり、彼が過去にレコーディングした音源も収集して、愛聴しておったところに、何とビッグ・ジョー本人が「ブルースをレコーディングしたいっていう若者がおるらしい」という噂を聞き付けてフラリとケスターの店を訪れます。

この時にはまだ他のレコード会社との契約が残っていたため、ビッグ・ジョーは「再会とレコーディングの約束」をして、立ち去っております。

ビッグ・ジョーが旅をしている恐らく最中の1958年にデルマークは拠点をセントルイスから大都会シカゴに移しますが、何とビッグ・ジョーはシカゴのケスターのレコード屋兼事務所も難なく見付け、1958年から60年代にかけて、結構な数のレコーディングを行います。

その最中のビッグ・ジョーは、ケスターのレコード屋の地下室で寝泊りしていました。


ケスターいわく「ビッグ・ジョーは酒を呑んだらタチが悪くて、よくトラブルも起こしてたし、ケンカもした・でも、あの人は何だか憎めないんだよなぁ・・・。」

二人の友情は本当に固く暖かなものだったんでしょうね。

ケスターは、戦前に活躍していたブルースマンのリサーチもしておりました。

つまりは「かつて人気だったカントリー・ブルースマン達の録音」も、切実に望んでいたんですね。

ここで、ビッグ・ジョーはその「凄まじい人脈と、放浪で培った情報屋としての力」も存分に発揮します。

ケスターが「スリーピー・ジョン・エスティスは今どうしてる?メンフィス・ミニーは?ブラインド・ジョー・タガートは?」と、次々と質問したら

「あぁ、スリーピー・ジョン・エスティスはブラウンズヴィルに住んでて、今は音楽やってないなぁ、相当貧乏してるそうだ。メンフィス・ミニーとブラインド・ジョー・タガートはシカゴにいるよ。ミニーはまだ演奏してて、ブラインド・ジョーは確かマックスウェル・ストリートの近くに住んでる。」

と、ことごとく正確に答え、その情報は多いに役に立ったみたいです。

ところが肝心の自分のこととなると実に適当かついい加減で「オレは1920年代にはもう9弦ギターを自分で作って録音してたんだ。ジャクソン・ジョー・ウィリアムスっているだろ?アレ実はオレなんだよね」「キング・ソロモン・ヒルってのはオレの別名よ」とかいう嘘情報を平然と口にして、それを間に受けて書いたライナノーツを発売後に訂正「あれはビッグ・ジョーのホラでしたすんません」という旨を追記するはめにもなって、いますが、まぁ他人に関する情報は恐ろしいほど的確で、やっぱり憎めなかったんでしょうね。

さて、いい加減アルバムの話をしましょう(汗)

デルマークには、ビッグ・ジョーのアルバムは数枚あって、そのどれもが彼の奔放な9弦ギター掻き鳴らしと、搾り出すブルースにパンキッシュな衝動を感じる良作ばかりです。初めての人はどれを買ってもよろしいですが、まず自作の9弦ギター(ピックアップをテープで付けてる!)がデカデカと写ってるジャケットのインパクトもキョーレツなコチラ。こらもう「ジャケ買い」でOKです♪


ところでビッグ・ジョーは何でわざわざ9弦ギターなる珍妙な楽器をこしらえたのか?

それは音色が独特でインパクトがあるとか、1本切れても複弦だと別に困らないとか、そういう機能的なことはもちろんありましょう。本人は「オレの奏法は特別だから、他人に真似されないように9弦ギターでオリジナルなチューニングしてあるのよ」と言ってましたが、やっぱり「営業/宣伝」のためだったでしょうね。

顔とか名前は覚えられなくても「9弦ギター弾いてるやつ」って、ほら、インパクトあって絶対忘れないじゃないですか。そこらへんのタフネスも、何かいいよなぁビッグ・ジョー。





Big Joe Williams - 44 Blues
(正に自由奔放の”掻き鳴らし!)

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/

『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』
http://5spot.info/


posted by サウンズパル at 16:46| Comment(2) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おおおぉぉぉっ!
取り上げてくだすって有難うござざいます!

ドスコイっ!!
Posted by 親方 at 2014年12月27日 18:42
こちらこそありがとうございました!

いや〜2ヶ月ぶりにビッグジョー聴きましたが、やっぱりその迫力に圧倒されました(汗)
Posted by soundspal at 2014年12月27日 20:32
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