
チャック・ベリー St Louis to Liverpool
(Chess)
1.Little Marie
2.Our Little Rendezvous
3.No Particular Place to Go
4.You Two
5.Promised Land
6.You Never Can Tell
7.Go Bobby Soxer
8.Things I Used to Do
9.Liverpool Drive
10.Night Beat
11.Merry Christmas, Baby
12.Brenda Lee
13.Fraulein
14.Little Girl from Central
15.O'Rangutang
さて、1959年に逮捕され、3年近くの”おつとめ”を終えてシャバに帰ってきます。
その間、前の記事でも述べたように、連続の不幸としかいいようのない様々な出来事がロックンロール周辺で起こり、あれほど全米のティーンエイジャーたちを熱狂させていたロックンロールのムーブメントが「つわものどもが夢のあと」のような状況になっておりました。
しかし、チャックはそんな状況など全然気にしません。
恐らく「刑期を終えたらまたひと山アテテやるんだぜ」と、その天性のポジティヴ思考をフルに活かして、ムショの中でせっせと曲を作っていたんでしょう。
1963年10月に釈放されたその翌月、書き溜めていた楽曲のノートとギターを手に、自信満々でチェスのスタジオでレコーディングに望むチャックがおりました。
世情に敏感で、おまけに商魂たくましいチャックは、もう「オレをチンケな罪で逮捕しやがったアメリカ」のマーケットのことなんか眼中にありません。
何でかというと、そう、この年に海を越えたイギリスから、世界的な大ブレイクを果たしたあるスーパーバンドが「チャック・ベリーの大ファンなんだ」と、あちこちの雑誌や新聞、そしてテレビの取材で答えていたからです。
みなさん、もうお分かりですね。
「僕たちはロックンロールが大好きさ、特にチャック・ベリーは最高だね」と、海の向こうからチャックへ熱烈なラブコールを世界中に発信したこのリバプール出身の4人組・・・。
そう「ザ・ビートルズ」です。
アメリカではロックンロールの時代が寂しく終焉を向かえましたが、イギリスではロックンロールやブルースから影響を受け、それを自分たちなりにスマートにアレンジした新しい「ロック」を演奏する若者たちが、新しい時代を切り開いておりました。
1962年、シングル「ラヴ・ミー・ドゥー」でデビューしたビートルズは、翌63年には全14曲中の6曲がロックンロールやR&Bのカヴァーというファースト・アルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」が、UKチャート30週連続の1位という前人未到の快挙を成し遂げております。
で、チャックは63年から64年の間に15曲入りの楽曲を録音し、その作品に「セントルイス(チャックの生まれ故郷)からリバプールへ」という、何とも大胆なタイトルを付けて発売するのであります。
しかも、この内容が本当に素晴らしく「ロック」なのです。
逮捕前のチャック(失礼!)の魅力というのは、ブルースやR&B、そしてカントリー、ラテンなど様々なジャンルのミクスチャーが最大の特徴だったのですが、このアルバムではそれらミクスチャーの要素は完全に融合され「チャック・ベリーのロック」といえるひとつの究極系をここで仕上げております。
ビーチボーイズとは著作権を巡ってドロドロの裁判を継続中ではありましたが、ここでは1曲目「Little Marie」から、ビーチボーイズが得意としていたコーラスワークを早速取り込んで(ビートルズのレコードも相当聴き込んでいたに違いない)、景気よくブッ放っておりますね♪
ノリノリのカントリー・ロックの「Our Little Rendezvous」そしてファーストアルバム「アフタースクール・セッション」の冒頭を飾る「School Day」のパワーアップ版ともいえる「No Particular Place to Go」投げ棄てるような唄いっぷりもカッコいい、ロックンロールの金字塔と言ってもいい必殺曲「Promised Land」、ジョニー・ジョーンズのゴキゲンなピアノも楽しい「You Never Can Tell」、ふっきれた感満載のインストナンバー「Liverpool Drive」など、ノリノリのナンバーでの一体感のあるはっちゃけぶりはもちろん、「You Two」「Things I Used to Do」「Night Beat」などの、甘めのミディアム〜スロー系のブルース・ナンバーでも唄/ギター共に一回りも二回りも成長して深みを増したチャックが聴けます。
チャック・ベリーの熱心なファンや、ロックンロールに造詣が深い人たちの間で「このアルバムこそチャックの最高傑作」とズバ抜けた評価を得ているのは、もう聴けば分かるでしょう。唄もギターも上手くなってる上に、捨て曲というものが一曲もない、おまけに「トータル・アルバム」として流れもいいし、最初から最後まで楽しくてあっという間に聴き終わってしまうのがこのアルバム。
あと重要なのは、チャック・ベリーのベスト盤は、セールスの良かった50年代〜逮捕前までの曲を中心にセレクトされてることが多いので、何はなくともせめてコレだけはぜひアルバムで聴いていただきたいと思います。
まったく個人的な話ですが、私はビートルズやストーンズが何故チャックにそれほどまでに夢中になっていたか、このアルバムを聴いて初めて「なるほど、そういうことだったのか!」と理解できました。
Chuck Berry - Promised Land
(いぇいいぇい、コレぞチャック・ベリー♪)
チャック・ベリー ロッキン・アット・ザ・ホップス
チャック・ベリー ベリー・イス・オン・トップ+11
チャック・ベリー ワン・ダズン・ベリーズ+14
チャック・ベリー アフタースクール・セッションズ+14
チャック・ベリー ニュー・ジューク・ボックス・ヒッツ
サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』
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