2015年07月21日

ジョン・コルトレーン&ドン・チェリー アヴァンギャルド


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ジョン・コルトレーン&ドン・チェリー アヴァンギャルド
(Atlantic/ワーナー)

「大コルトレーン祭」アルバム紹介が出遅れてすんませんーーー!!

という訳で、序盤の遅れを取り戻すべく、コルトレーンガンガン紹介して行こうと思います。

今年の一発目は1960年の「アヴァンギャルド」

タイトルがもう何かヤバげで、コルトレーンをこれから聴いてみようと思う人で、コレを一番最初に手に選ぶ人、多分少ないと思います。

でもね、このアルバム、数あるコルトレーンの中でも、ぶっちぎりで「楽しそうに伸び伸び吹いているコルトレーン」を堪能できる作品なんですよねー♪「アヴァンギャルド」うんうん、1960年当時の感覚で言えば、確かに斬新でドンガッてて、どこか独特の”掴めなさ”があった作品かも知れない。

でも、あれからジャズがどんどん進化していって、どころかジャズより全然奇抜でワケわかんない音楽がじゃんじゃん出てきてる今の耳で、いや、純粋に「オレぁジャズにスリル求めてんだよぉ!」と思ってる人ならば、この”ヤバさ”全然イケるしカッコイイと思えるんじゃないかと思いますんで、初心者でも全然OK、じゃんじゃんお聴きなさい。

さて、このアルバムはですね、当時ジャズ・シーンに「前衛(フリー)」という概念をブチ込んだオーネット・コールマンという人の”軍団”と、コルトレーンとの共演盤です。

ピアノレス、つまり「和音でバッキングする楽器がない」オーネットのグループは、それまでのコードやスケールの常識に捕らわれることなく、自由自在にアドリブをどんどんあらぬ方向へ解放していった。

最初は西海岸でプレイしていたオーネットが、50年代末にニューヨークに進出して来た時は、観客より先に、全NY中のジャズマン達が、クラブの最前列を陣取って、オーネット・グループの演奏をかぶりつきで観ていたそうです。

その中には単純に「新しいサウンドを体験して、それを自分の演奏への刺激にしよう」と思ってたミュージシャンもいたかも分かりませんが、「デタラメ野郎の化けの皮剥いでやる!」と思って威圧感ガン飛ばししておった連中もおったでしょう。

とにかく良くも悪くもセンセーショナルを巻き起こして、ニューヨークに出てしょっぱなでシーンを確実に震わしていたオーネットとその仲間たち。

この自由で先鋭的な演奏に触発され、真っ先にシンパシーを表明したのが、誰あろうコルトレーンでありました。

コルトレーンもまだこの当時は、マイルスのバンドから独立したばかり。

ドラッグ問題でマイルスにブン殴られていたのをセロニアス・モンクが「そんなに酷いことされるんなら、どうかね、ウチに来ないか?」と誘ったと云われておりますが、とにかくコルトレーンはマイルスのバンドを卒業して、音楽観や理論的な部分でかなり独自のゆるぎないものを持っていたモンクに、ほとんど師事するような形で音楽を学び「テナーの新しい吹き方」を模索し、夜な夜なのクラブでの演奏でそれを磨き上げ、ようやくその個性を開花させたその時期でありました。

そのひとつの成果が、めまぐるしいコード展開の中で、音符を隙間なく敷き詰める”シーツ・オブ・サウンド”というトレーン独自のスタイルであります。

これによって「マイルスのところにいた、テクはまぁまぁなんだけど、どこかシャープな吹き方の個性的なテナー吹き」から飛躍して「他の誰とも似ない個性」を確立したコルトレーンが、自分のバンドを組む前に、まずは前衛バリバリのイケイケで一気に名を馳せていたオーネット・コールマンのグループに、まぁ「共演」という形での単身での殴り込み。

いやイイ!実にイイ!このシチュエーションだけでもうサイコー胸アツじゃないですか!!

実際のところは、コルトレーンの「オーネットのグループと、まぁ出来れば一度一緒に演奏してみたい」という願いと「レーベル内の注目のグループと売り出したい若手をぶつけてやろう」というアトランティック側の利害が一致しての”コルトレーンと、オーネット抜きのオーネット・バンドとの共演作”という形になったようなんですが、いやもうきっかけなんか何だっていい。コルトレーンもオーネットも好きなアタシにとっちゃあ互いの全く違う個性がアツい火花を散らしてぶつかり合うだけでもうたまらん!なのであります。

実際に聴いてみると、変幻自在のリズムでじわじわ間合いを測りながら奇襲や強襲を仕掛けてくる”オーネット軍団”特にガンガン前に出るトランペットのドン・チェリーと、それを強烈にバックアップするチャーリー・ヘイデン、エド・ブラックウェルのリズム隊の連携がすこぶる快感です。

実際は5曲中3曲で堅実なハード・バッパーであるパーシー・ヒースがベース弾いてるんですが、ヘイデンの変化球とはまた違ったバリバリに緊張感溢れる”4”の刻みも十分にオーネット・カラーで、素晴らしいプレッシャーです。

もちろんバンドはこの軍団お得意のピアノレス。つまり和音奏でる楽器の縛りがないので、オーネットがいなくても余裕の暴れっぷり、ハジケっぷりなのであります。

で、そんな妖術みたいなサウンドに対抗するコルトレーンは、あくまで”シーツ・オブ・サウンド”での直球勝負。

実際は自由すぎるオーネット軍団の繰り出す音には、かなりの戸惑いがあったはずでありましょうが、それを振り切る凄まじい加速と音そのものの威力で、イイ勝負しています。




アヴァンギャルド<SHM-CD>

【パーソネル】
ジョン・コルトレーン(ts,ss)
ドン・チェリー(tp)
チャーリー・ヘイデン(b,@B)
パーシー・ヒース(b,ACD)
エド・ブラックウェル(ds)

【収録曲】
1.Cherryco
2.Focus On Sanity
3.The Blessing
4.The Invisible
5.Bemsha Swing

(録音:@B1960年6月28日,ACD1960年7月8日)


コルトレーンとドン・チェリー以下”オーネット軍団”の面々、どちらもお互いの手の内、というか表現したい事の全部を理解出来ていて、コンセプトが一致している訳でもない。けれどもそれはそれ、演奏聴いてると「分からないながらも互いをリスペクトし合って和気藹々と燃えているなぁ」と、感動しながらしみじみ思います。

楽曲は5曲中3曲がオーネット、1曲がドン・チェリー作曲。ラスト・ナンバーだけがセロニアス・モンク作の「ベムシャ・スウィング」なんですが、コレでの「お、お前らモンクわかってんじゃん♪」「あったりまえよー、モンクはオレらもリスペクトしてんだぜ♪」な、ゴキゲンな気持ちのやりとりが感じられて、最後まで胸アツです。

ちなみにこのアルバム、コルトレーンが初めてソプラノ・サックスをレコーディングで使った曲が入ってるアルバムでもありますんで、色んな意味でコルトレーンにとっては「転換期であり新たなスタート地点でもある作品」なんですね、アツいですね。



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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

posted by サウンズパル at 19:21| Comment(0) | 大コルトレーン祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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