2015年07月28日

コルトレーン(PRESTIGE)

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ジョン・コルトレーン Coltrane
(PRESTIGE)

コルトレーンを長年聴いていると、60年代以降の音源が若い頃のように思えて、1950年代初頭の、まだいわゆる「モダン・ジャズ」やってた頃の音源がベテランになってからの成熟した演奏に思える時があります。

もちろん50年代中頃までのコルトレーンは、まだ演奏そのものがどこかたどたどしく、テクニカルな煌きで「うおお!」と唸らせるタイプではない。でも私、コルトレーンのデビュー時の演奏って決して「下手だった」とはどうしても思えないんです。

コルトレーンが「練習の鬼」だったことはよく知られています。

例えば誰かの家でパーティーをやっている時、コルトレーンがサックス持って一人で別の部屋へ行き、黙々とスケール練習をしていた。とかいう話は有名ですが、恐らくサックスはじめた若い頃からとにかく練習に励み、モダン・ジャズの基になる基本的なテクニックや、チャーリー・パーカー、ジョニー・ホッジス、レスター・ヤング、コールマン・ホーキンス、デクスター・ゴードンといった、彼が影響を受けたサックスの先駆者達の演奏は、ほとんどレコードで何度も何度も聴いて、または実際に生演奏を観に行って、その技法的な部分は大体モノにしていたと思うのですが、向学心旺盛な若き日のコルトレーンは、それに一切満足せず、もっとストイックに”自分だけのサウンド”を追い求めていたんじゃなかろうかと、コルトレーンのどの音盤を聴いても、切実に感じます。

さて、今日ご紹介する「コルトレーン」は、タイトルズバリのジョン・コルトレーン30歳の時にレコーディングされた、堂々のデビュー・アルバム(実質的な初リーダー作)です。

録音は1957年5月。この頃既にマイルス・バンドで多くの”場数”を踏み、モンクのバンドで”修業中”だったコルトレーンの実力はこの頃もう既に多くの人が知る所であり、その吹きっぷりも堂々とした貫禄に溢れたものであります。そう、ここで聴けるのは見事に成熟したコルトレー流モダン・ジャズの、渋く黒光りする結晶そのものでありましょう。

辺拍子にぶっ飛ぶ1曲目「バカイ」は、イントロこそ奇抜でありますが、テーマが終わって各々のソロ・パートに入ると実に小粋!

コルトレーンのエッジの効いたソリッドな音色は、もちろんこの時代の他のテナーマンにはない個性であり、プレイ全体から自然と涌き出るブルース・フィーリングは、聴く人の心にそれとなく哀愁をバラ撒いてくれます。

個人的に、コルトレーンの「モダン・ジャズ風味をやや残しながらのサムシング・ニュー」なテナーと、そこはかとなく”どこか変”(もちろん褒め言葉です)のバリトン吹き、サヒブ・シハブとのガチな中低音のソロ合戦が楽しい「Straight Street」なんか、もー大好きなんですが、やっぱりコルトレーン者としてはバラード屈指の名演である「Violets for Your Furs」(邦題「コートにすみれを」)に触れない訳にはいきますまい。

甘ったるさやエロさを廃して、辛口にちょいと哀感をまぜて紡がれてゆく美しい旋律、無限に涌き出る切ない切ない唄心は、やっぱり「コルトレーンの原点」として、いつ聴いても新鮮な切なさに浸れます。





【パーソネル】
(@〜B)
ジョン・コルトレーン(ts)
ジョニー・スプローン(tp,@C〜E)
サヒブ・シハブ(bs,@CE)
レッド・ガーランド(p,@〜B)
マル・ウォルドロン(p,C〜E)
ポール・チェンバース(b)
アル・ヒース(ds)

【収録曲】
1.Bakai
2.Violets for Your Furs
3.Time Was
4.Straight Street
5.While My Lady Sleeps
6.Chronic Blues

(録音:1957年5月31日)


全体的に「ジャズとして完成度の高いセッション」であり、また、噛めば噛むほど味わいの出てくるアルバムです。

アタシもこのアルバムとは、もうかれこれ15年以上の付き合いになりますが、60年代の深さ激しさのレッドゾーンぶっちぎった演奏を聴き狂った後にコレを聴くと、ホッとすると共に「あぁ、コルトレーン、やっぱりこの頃からコルトレーンだわ、唄心、この頃からブレてないよ・・・」と感慨にふけっていつも遠い目になるのです。

サイドマンとしては怪人サヒブ・シハブのバリトンが、たまらんツボをずっと刺激しますが(笑)、「小粋なレッド・ガーランド」と「重厚でダークなマル・ウォルドロン」という2人の正反対の個性を持つピアニストの演奏にもぜひ耳を傾けて頂きたいと思います。





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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

posted by サウンズパル at 19:23| Comment(0) | 大コルトレーン祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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