
ジョン・コルトレーン ラッシュ・ライフ
(PRESTIGE/ユニバーサル)
毎年7月の終わり頃から8月の頭、つまり1番暑い季節に聴きたくなる。
というより、「気付いたら頻繁に聴いてる」アルバムです。
前回は初期PRESTIGE盤より、代表作として「ソウルトレーン」をご紹介しました。
改めて聴いてみてもやっぱりアレは、どなたにでもオススメできる、全方位でカッコイイ名盤です。
相撲でいえば、やはり横綱でありましょう。
そこへいくと本作「ラッシュ・ライフ」は、関脇か小結クラス。
「全方位最強!」というよりも「この味が好きな人にとっては、何をさておいても贔屓したくなる味わい」を持ったアルバムです。
はい、アタシ、このアルバムの「味」大好きです。コルトレーンPRESTIGEの数ある作品の中では「好き」で言えばこのアルバムがダントツに好き。もう、一番好き。
このアルバムならではの「味」
それはそう、特にリラックスした空気感と、選曲をミディアム〜スローテンポのスタンダードに的を絞り(中盤に一曲だけ入ってるブルースもイイネ!)、趣味のいいフレーズの中に仕込まれた情念を美しく聴かせるところ。
とりあえずコルトレーン+アール・メイ+アート・テイラーの”ピアノレス・トリオ”だけで奏でられる一発目のバラード「Like Someone In Love」の、出だしのワン・フレーズだけでもいいんで聴いてください。
このテナーの”鳴り”に心揺さぶられなければ、これはもう一生ジャズとアナタは縁がないものと思って諦めてください。と、多少の毒を吐いてしまってあいすいませんが(汗)、正直初期のコルトレーンを
「どーせ真面目にチーチキやってるだけなんだろぉ?」
とナメてたアタシをボッコボコのフルボッコにしたのが、このアルバムの出だしのコルトレーンのトーンです。
Lush Life + 4
【パーソネル】
(@〜B)
ジョン・コルトレーン(ts)
アール・メイ(b)
アート・テイラー(ds)
(C)
ジョン・コルトレーン(ts)
ドナルド・バード(tp)
レッド・ガーランド(p)
ポール・チェンバース(b)
ルイ・ヘイズ(ds)
(D)
ジョン・コルトレーン(ts)
レッド・ガーランド(p)
ポール・チェンバース(b)
アル・ヒース(ds)
【収録曲】
1.ライク・サムワン・イン・ラヴ
2.アイ・ラヴ・ユー
3.トレーンズ・スロー・ブルース
4.ラッシュ・ライフ
5.アイ・ヒア・ア・ラプソディ
(録音:D1957年5月31日,@〜B8月16日,C1958年1月10日)
このトリオ、「和音伴奏楽器の束縛がない」ということで、コルトレーンが伸び伸びと、でもひとつひとつの音を丁寧に紡いでいるのがとてもイイんです。ピアノがない分「メロディ」を意識して、コルトレーンのアドリブに素晴らしい歌心で応えるアール・メイのベースも、これはもうね、恋に落ちるしかないぐらいの素晴らしいサポートであります。
レッド・ガーランド以下「お馴染みの面々」が、手堅く伴奏をする4曲目以降も、前半の流れを壊すことなく、トレーンのミディアム/スローでの魅力を見栄良く引き出しております。
バラードでは一発目の「Like Someone In Love」は、このアルバムの”味”を決定付ける名演ですが、後期のスピリチュアルな世界観の原点をかいま見させてくれるかのようなタイトル曲「Lush Life」も名バラードとして記憶して良いと思います。
”横綱級”の「ソウルトレーン」「ブルー・トレイン」そして初期でいえば大関格の「コルトレーン」もいいけど、初期PRESTIGE盤は、味で聴かせる関脇、小結クラスの隠れ名盤多いので、この辺のコルトレーンあんまり聴いたことない人は、ぜひ2枚目、3枚目に「ラッシュ・ライフ」を聴いてみてください。
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