2016年07月24日

ジョン・コルトレーン コルトレーン・サウンド(夜は千の目を持つ)

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ジョン・コルトレーン コルトレーン・サウンド(夜は千の目を持つ)
(Atlantic/ワーナー)


コルトレーンの作品の中でも、コレは異色。

何が異色かっつうと、あのですね、このアルバムは「爽やかで、朝から聴けるコルトレーン」なんですよ。

そう、コルトレーンが念願の「自分のバンド」つまりマッコイ・タイナー、エルヴィン・ジョーンズを迎えたあの荘厳で激しい”黄金のクインテット”のメンバーが、ほぼ勢ぞろいした編成での演奏にも関わらず、です(ジミー・ギャリソンだけまだ参加していない、こん時のベースはスティーヴ・ジョーンズ)。

とにかくジャケットのおどろおどろしさと、「夜は千の眼を持つ」という、何やら妖怪チックなタイトルで、かなり損をしているとは思いますし、同じアトランティックには「マイ・フェイヴァリット・シングス」と「ジャイアント・ステップス」という、2代有名盤の存在感が突出し過ぎていて、その他のアルバムのことが話題になることも、あんまりない。

というのは、ホント”あんまり”なことだと思うんですよね。

実際私も、このアルバムは何も考えず、ジャケットのイメージで「ドロドロのコルトレーンが聴けるもんだー」と思って買いました。

しかし、一発目「夜は千の眼を持つ」での、スカーっとした疾走感、続く「セントラル・パーク・ウエスト」での繊細なバラード表現、更に曲を聴き進めていくに従って、段々「コルトレーン聴いてやるぞ!」という重たい気合いが心地良く溶けて「このアルバム、フツーにジャズとしてゴキゲンだなぁ・・・」と、しみじみ感慨と共に何度も再生するようになりました。



(「夜は千の目を持つ」雰囲気はどう聴いても”朝”)

録音は1960年10月24日と10月26日。

えっとですね、ちょいと分かりやすく説明すれば、1960年の10月という時は特別なんです。

モンクのバンドでの”武者修行”を終え、古巣のマイルスバンドにはゲスト扱いで参加していたちょうどその頃、コルトレーンのバンドにマッコイとエルヴィンが参加して、これはもうようやく自分の理想とする音楽を出来るんだ!と喜び勇んで、10月の21、24、26日と3日間スタジオを押さえ(これは資金の豊富なメジャー・レーベルだからこそ出来る技です)、その時に何と一気にアルバム3枚分のレコーディングを行い、それがそれぞれのコンセプトのもと、振り分けられてリリースされたのです。

その内訳が

・マイ・フェイヴァリット・シングス(ミュージカル曲を看板に、コルトレーン流のスタンダードを楽しめるアルバム)

・コルトレーン・サウンド/夜は千の眼を持つ(モーダルなオリジナル曲とスタンダードで、コルトレーンの個性的な演奏と、新バンドが繰り出すサウンドのトータル・バランスに優れた曲を収録)

・コルトレーン・プレイ・ザ・ブルース(文字通りの”ブルース・アルバム”当時時代の最先端を行っていたコルトレーンが演奏した”古典的ブルースの新解釈”がカッコイイ)

です。

そう、タイトル曲の「マイ・フェイヴァリット・シングス」が、予想外にヒットして有名になって、コルトレーン自身も、その後ライヴなどでもお気に入りとして何度も何度も演奏しているということで、「マイ・フェイヴァリット・シングス」の人気が独走してはおりますが、アタシが声を大にして言いたいのは「一番まとまりが良くて、最初から最後までスカッと聴ける」というのは実は本「コルトレーン・ジャズ」なんだぜぇということです。




【パーソネル】
ジョン・コルトレーン(ts,ss)
マッコイ・タイナー(p)
スティーヴ・デイヴィス(b)
エルヴィン・ジョーンズ(ds)

【収録曲】
1.夜は千の眼を持つ
2.セントラル・パーク・ウェスト
3.リベリア
4.身も心も
5.イクイノックス
6.サテライト
7.26-2 <オリジナルLP未収録曲>
8.身も心も (オルタネイト・テイク)

(録音:ACEG1960年10月24日,@BD10月26日)






コルトレーンにとって、この「3日間(数日空くものの)ぶっ通しでのレコーディング」は、本人いわく

「とにかくエルヴィン・ジョーンズという素晴らしいドラマーを得たことが嬉しくてたまらなかった。彼の叩き出すあの独特の力強くも重厚なビートと、私のサウンドがどう響きあうだろう。そんなことばかり考えていたもんだから、あの時はもうレコーディングそのものが新鮮な驚きと感動にあふれていて、演奏するのが楽しくてしょうがなかった。気が付けば曲がどんどん仕上がっていた。」

みたいな、もう「大事件」ぐらいの出来事だったようです。

だからこのアルバムには、ある種独特の「明るさ」「楽しさ」が心地良いエネルギーになって、美しく炸裂しております。

とはいってもそこはコルトレーンですので、しっかりと聴き手の意識の奥底に、それなりのアツくて深いものをしっかりとブチ込んではくれますので、コルトレーン者の方で「え?明るい?う〜ん、軽いアルバムなのかなぁ・・・」とお思いの方、ご安心を。



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posted by サウンズパル at 08:56| Comment(0) | 大コルトレーン祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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