ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2015年09月11日

ミッキー・ベイカー ザ・ワイルデスト・ギターズ


え〜、世の中には

「想像の斜め上から来た」

という言葉がありますね。

アタシは最近ネットで知って「なるほどこれは言い得て妙な言い回しですなぁ」と思って、この言葉「いつ使おうか、どういう時に使おうか」と思って身構えておるほどなんですが、まぁ「想像を超えた」ぐらいのものには出会っても斜め上からクるほどのキョーレツなもんには、フツーに生きておってはなかなかお目にかかれないもんです。

でもね、この「想像の斜め上」という言葉、今日はこのブログで何が何でも使いたくって、過去の記憶をほじくったり、CDやレコードの棚をあさくっておったらば、まぁこれはこれは処理できないぐらいの「想像の斜め上」ばかりでございました。

その中でも特にキョーレツな「斜め上からキたブツ」は、やはり何と言ってもコレでしょう。

1.1.jpg
ミッキー・ベイカー/ザ・ワイルデスト・ギターズ
(Atlantic/ワーナー)


インパクトがものすごいジャケットですよね、正に「ギターは顔で弾く」とはこのこと。

そして、これはブルースとかよくわからん人が見ても「あ、コレはブルースのレコードだね」と一目瞭然であることは明白であります。コレを見て”ブルース”を感じらん人がおったら、眼科の受診をオススメしたいぐらいにブルースなジャケットであります。


この盤との出会いは、アタシの愛読書であります「ブルース・レコード・ガイドブック」でありました。

〜アリバム・ジャケットで感じるブルースの世界〜という特集ページに、ライトニン・ホプキンスの「モジョ・ハンド」 「テキサス・ブルースマン」ボ・ディドリーの「ボ・ディドリー」などといった錚々たる天下の名盤と共に、このミッキー・ベイカーなる氏素性のよくわからない人物の、でも何か異様にカッコ良くて目を惹くジャケットが掲載されておるのを見て「ほぉ〜」と思い、早川教雄氏の「じっと見ているとミッキーの右手が動き出す!」という、シンプルだけど実に痛快な説明文を読んで「ふぉぉ・・・!」と思った次第でございます。

しかしこのレビューはあくまでジャケットのレビューでありますので、ミッキー氏がいかなるブルースをやっておるのか、当時のアタシには皆目見当も付きませんで、ただ紙に印刷されたジャケットを眺めながらイマジネーションを無限に膨らませる日々を過ごしておりました。

色々と情報も仕入れて

「スタジオ・ミュージシャン出身の凄腕のギタリスト」

「ブルースというジャンルに縛られない幅広い音楽性を持つ天才」

らしいということは知ることが出来ました。

で、ある日輸入盤でめでたくご対面!これはもう「ジャケ買い」で即ゲットしました。

「ブルースというジャンルに縛られない」

とは言っても、まぁまぁ、R&Bとか、ロックっぽいこととか、あとまぁジャズなんかもかじってるんだろうなぐらいに思ってましたが、これが完全に「想像の斜め上」からガツーンとキました!





1.第三の男のテーマ
2.ウィスル・ストップ
3.ナイト・アンド・デイ
4.ミッドナイト・ミッドナイト
5.枯葉
6.バイーア
7.ミルク・トレイン
8.オールド・デヴィル・ムーン
9.クロエ
10.ベイカーズ・ダズン
11.木の葉の子守歌
12.暗い日曜日


ピンとくる人は曲名見ただけでピンとくると思うんですが、いわゆる「ブルース曲」はほとんどありません。

どころか「第三の男のテーマ」(今は「エビスビールのCM曲のアレ」と言った方が通りがいいかも)とか「ナイト・アンド・デイ」とか「枯葉」とか「暗い日曜日」とか、ブルースとかジャズ・スタンダードの射程の中に、いわゆるポピュラー・ソングやシャンソンなんかも、コノ人ぶっこんで来ます。

しかも!全曲まさかのオール・インストですよ。

それだけなら単なるBGMの類と思われる向きもおるかもわかりませんが、タイトルに「ワイルデスト・ギター」の名を付けているだけあって、そのギター・プレイ、キレッキレのフィンガリングとチョーキング、山びこの如くガンガンに反響するエフェクトかけまくりの狂気に満ちたサウンド、そして、ポップスの殻をかぶろうがフレーズ展開が実にスマートでモダンなものであろうが、どうしようもなく滲み出てくる濃厚なブルース・フィーリング。

・・・正直ですね、最初何が何だか訳がわからんかったですよ。

いや、ゲイトマウス・ブラウンとかジョニー・ギター・ワトソンとか「ブルース」の枠に収まっていない化け物さん達の演奏はそれまで散々聴いてきたし、当時アタシはガボール・ザボというジャズ・ギター界最強の異端の演奏にシビレて”そういう音”にはある程度耐性があるだろうと自分で思ってたんですが、いや、ミッキー・ベイカーのこのアルバムにはヤラレました。

何にどうヤラレたのか、未だによくわかりませんし、このアルバムの「ジャズもラテンもシャンソンもポップスも何でもアリ!でもブルース!!」という独特過ぎる音世界を一言でどう表現すればいいのか今もってわかりませんが、恐らくこのアルバムから最も影響を受けたのはベンチャーズでしょうね。

あぁ、はい。簡単に説明すれば、このアルバムから「人間離れした、ブッ飛んだ部分を引き算して、それをとってもとっても分かりやすく、ポップな部分だけを強調したらベンチャーズになる」と、アタシは思っております。いや、こんな説明が何の説明にもなってないことは重々承知ですが、聴けば分かります。


最後にひとつだけ、ギターの音作りに関してだけ言わせてください。

このアルバムでミッキーが弾いているギターは、恐らくアルバム・ジャケットに写ってる通り、フェンダー社製のジャズマスターだと思います。

ジャズマスターは、フェンダーが「ソリッド・ボディでジャズ演奏に向いた甘く伸びのあるサウンド」を当時追究して自信満々で世に出したんですが、肝心のジャズマンにはやっぱりギブソン社製のフルアコが人気で、ジャズのために作られたジャズマスターは、どういう訳かその甘いながらソリッド・ボディ+シングル・コイル・ピックアップ特有の「カラッ」「ザリッ」としたサウンドがブルースやサーフロック系のギタリストに受けてしまったという数奇な運命を持つギターなんですが、それはまぁいい。

問題はミッキーの使ってるエフェクターです。

聴けばわかるんですが、ガンッガンにエコーがかかりまくって、ギター・サウンドが、さっきも言ったように完全に”やまびこ”しちゃってる。そう、ディレイがかかった状態で彼弾きまくってるんですけど・・・


おいちょっと待て、このアルバムがレコーディングされたのは1957年。

テープ式のアナログ・ディレイですら60年代後半にやっとギタリストが使い出してたはずだぞ!


50年代に「エフェクト効果が得られるもの」といえばバネ付きのトレモロ(ボ・ディドリーが使ってましたね)や、ヴォーカルに被せるアナログ・エコー(バカでかい家電のような代物で、エフェクターとして持ち運ぶのなんかとても無理)ぐらいのもんで、そのアナログ・エコーはまぁギターにも使えることは使えたけど、ここでミッキーがやってるような「やまびこ効果」が出るくらいの調整したら、原音が劣化しまくって完全に潰れてしまうはずだぜ、しかも音ヤセやノイズにとってもナイーブなピックアップ積んでるジャズマスターで・・・ってどんなセッティングしてんだよ。

いかん、やっぱコノ人オカシい。

考えれば考えるほど「想像の斜め上」ですわこのアルバムは・・・。




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 19:01| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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