2015年09月13日

フレッド・マクダウェル Mississippi Fred Mcdowell

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Mississippi Fred Mcdowell
(Rounder)

その昔、アタシが十代の頃の名瀬の街には、まだちゃんとしたライヴハウスもなくて、それこそ「演奏させてもらえるんならどこでもお願いします!」みたいな感じで音楽やるしかなかったんです。

その頃は今みたいに平和じゃなかったもんですから

少々ガラの悪い場所や、少々ガラの悪い人たちの前で演奏せざるを得ないとかいうことがままありました。

そんなところにアタシみたいな小僧がギターなんか持ってステージに立つと大体ヤジられたり

「うっさいんじゃこのガキが!今ドキのチャラチャラした音楽なんかやりおってからに!」

と、凄まれたりします。

飛んでくるものを避けながら演奏したりとかいうこともありました、怖いですね。

えぇ、怖かったです。あの頃の名瀬屋仁川通りというところは・・・。

しかし、せっかくの「大人の前で演奏出来る機会」そんなことぐらいでステージを降りる訳にはいきません。

そんな時、アタシは

「はいぃ・・・すいませぇん・・・」

と、なりながら、ブルースをやりました。

ロバート・ジョンソン、マディ・ウォーターズとか、もう本当に覚えたての「やっとこさ演奏できるいくつか」を必死でやると、ガラの悪い方々も

「おぉ・・・やるがな・・・」

と、一応認めてくれるというか、ビリビリした空気も”ピリピリ”ぐらいにはなってくれたもんです。


演奏終わった後

「お前やるがな、アレ、何ちゅう曲よ?」

と、訊いてくる人が、ありがたいことに必ずいたりしまして

「ロバート・ジョンソンの・・・カム・オン・イン・マイ・キッチンという曲です・・・」

と説明しても

「へー、知らんけどアレ、ブルースだろ?カッコよかったど」

という感じの反応が、大体返ってきてました。

そうなんですよね、何となくこの島には

「ブルース」

という音楽に、無条件で共感して、敬意を払う空気みたいなものが、人々の共感覚としてあるよーな気が致します。


これは何と言ったらいいか、アタシの上の世代の人たちのほとんどがロカビリー大好きで、その影響で「ロカビリーの元になったのはブルースなんど」という気持ちを何となく持っておったというのもあるんでしょうが、もっともっと理屈じゃない「血が騒ぐ」方の感覚ではないだろうかとアタシは思うんです。

数年前にNHKのど自慢が奄美でありましたが、アレ見ててひとつ気付いたのが

「客の手拍子がアフタービート」

つまり裏打ちだったんですね。

「はい手拍子〜」と言われて自然とそうなる。

つまり「体内のリズム感がブラック・ミュージックに自然と順応できるようになっている」だからブルースやレゲエ、ヒップホップとか、そういう音楽はもちろん、ロックもどこかブラックミュージック的な要素の強いものがこの島では受け容れられる傾向が強いんかなーと思っています(もちろん趣味趣向は人それぞれですので”みんながみんな”というわけではないですよ!)。


で、何でこんなことを書いているかといえば、アタシが知る限り最も「強烈なアフタービート」と「ブルースのコアな呪術的部分」を感じさせて止まない”ミシシッピ”フレッド・マクダウェルさんを今聴いておるからなんです。

アタシがこの人のことを初めて知ったのは、忘れもしない中学生の頃でした。

なんとはなしに「学校だりぃ、ブルースでも聴くべ」と思い、当時親父がやってたサウンズパルにフラッと行って

「ブルース聴きたい、何かいいやつない?」

と、何気な〜く言った一言から始まりました。

アタシは何度もしつこく書いておりますが、当時はブルーハーツを皮切りにパンクを聴き始めた程度のクソガキです。

「ブルース聴きたい」

と思ったのも、ヒロトのインタビュー記事で、彼が「ブルースかっこいいよ、パンクだよ」みたいなことを言ってたのを読んですっかりその気になった。ただそれだけの理由です。

さぁそこからが大変です。

「ブルース」

といえばウチの親父、黙っちゃあおりません。

色々と一人で物凄い勢いで(実の息子なのに完全に”客”として扱っている・・・)ブルースについて語りまくり

「これ、買え」

と、一枚のCDを棚から掴んで差し出しました。

それが「アトランティック・ブルース・ギター」というオムニバスだったんですね。


このアルバムには、B.B.キングとかTボーン・ウォーカーとか、ブルースの、そりゃもう凄い神様みたいなそうそうたる面子の演奏がたっくさん入ってたんですが、ええ、アタシもそのへんの名前見つけて「あ、何かB.B.キングとかは知ってる。じゃあ買お」て思ったんですが・・・。

アタシの心に最初のキョーレツな直撃弾を喰らわせたのは、B.B.キングでもアルバート・キングでも、ジョンリー・フッカーでもない”ミシシッピ・フレッド・・・なんとか”という、名前の読み方すら知らなかったおっさんがギター弾き語りでやっておる「シェイク・オム・ダウン」という曲だったんです。

参考までに動画貼っておきますが




その強烈なアフタービート、何をどうやってるのか分からないギターの「ジャンジャカジャカジャカ」のワン・コード弾き殴り、時々入るスライドのキュンキュンギュンギュンした音、そして独特の甲高い叫び声のような唄に

「何じゃこりゃ!ブルースとかいって、アフリカかどっかの民族音楽の音源ぶっこんでるだろこれ!」

と、割と真面目に思って、衝撃どころじゃない何か得体の知れないショックを受けました(動画のヴァージョンとCDのヴァージョンは、当たり前ですが別ヴァージョンです)。

その時の感覚は、もう理屈じゃないんです。体中の血がぐわーっとたぎるというか、もう頭ん中が完全にお祭りになるぐらい凄く興奮して、自宅にあるアコギで”それ”を再現しようとしても、何が何だかきっかけすら掴めなくて断念したほどです(当時はまだボトルネックもオープン・チューニングというのがあるということも知らなかった)。

「凄いなぁ、このミシシッピ・フレッド・・・何とかって人・・・」

と、しばらくは思いながらも、その1週間後にラストに入ってるスティーヴィー・レイ・ヴォーンの「テキサス・フラッド」のライヴ・ヴァージョンにガツンとヤラレて、ブラインド・ウィリー・マクテル、ジョン・リー・フッカー、それから数ヵ月後にようやくB.B.キング、アルバート・キング、Tボーン・ウォーカーの良さが何となく分かるようになってきて、ブルースにもハマるようになりました。

それから同時進行で興味を持ったカントリーやフォークの流れでレッドベリー、そいでマディ・ウォーターズ、ロバート・ジョンソン、ハウリン・ウルフとか、そういう大物を順に聴いて、それなりにCDとかもちゃんと集めるようになったのは上京してからでしたね。

で、ブルースはカッコ良い、コレはわかる。

と、思ってはいたが「で、オレが最初に衝撃を受けたミシシッピ・フレッド・・・何とかって人は、マイナーな人なのか?そういえばあんまり雑誌とかで名前見らんなぁ、その辺のCD屋にも置いてないみたいだし・・・」と思った時に巡り合ったのが「ブルースの世界」という本。

コレでようやくこの人はフレッド・マクダウェルという名前であり、ミシシッピ・ブルースの中でも特にディープなフィーリングを持ってる人で、スライド・ギターの名手ということを知りました。

CDもちゃんと紹介されておったんですが、ともかく「フレッド・マクダウェルなら何でもいい!」と思って埼玉の上福岡から電車に乗って池袋まで行って探し当てたのがコレ





【収録曲】
1.Done Left Here
2.All The Way From East St. Louis
3.Shake 'Em On Down
4.The Girl That I'm Lovin'
5.Good Morning Little Schoolgirl
6.Left My Baby Standing
7.On The Frisco Line
8.Write Me A Few Lines
9.Goin' Down The River
10.I Rolled And I Tumbled
11.Trouble Everywhere I Go
12.Red Cross Store Blues
13.John Henry
14.Kokomo Blues
15.Milk Cow Blues
16.Trouble Everywhere I Go (Alternate Version)
17.I've Been Drinking Water Out Of Hollow Log
18.Highway 61
19.Someday Baby
20.Como


おぉ、フレッド・マクダウェルのCDだ!しかも何かラウンダーっていうレーベルはレッドベリーのCDも何枚か出してるから信頼できるし、オレが衝撃受けた「シェイク・エム・オン・ダウン」も入ってるー!

と、即購入。

家まで待ちきれず、早速電車ん中でCDウォークマンでルンルンで聴いたら・・・。

ヤバい!!ルンルンどころでも、シェイク・エム・オン・ダウンどころではない!!

ぐらいの衝撃が、もう一曲目からキてしまいました。

弾き語りで、しかもアコギなのに、何だこのギターの音の迫力と圧力と生々しさは!

前々から思ってたけど、コレはやっぱりフツーのブルースと違う、エゲツない、パンクというより他ない!

しばらく絶句。

自分が東京にいること、電車に乗っていることすらも忘れてそのひたすら生々しい声とギター(録音が本当に素晴らしいんです、目の前で演奏してるよう)の迫力と、血が逆流し放っしの呪術的アフター・ビートの繰り返しの魔力にすっかり打ちのめされてしまいました。

フレッド・マクダウェルは、戦前からミシシッピの片田舎で活躍してたんだけど、普段は農夫として生活していて、戦後60年代になって、50歳過ぎてから発見されたんだよとか、ブルース・ロック姐さんのボニー・レイットが、スライドの奥義を学ぶべく、この人に弟子入りしたとか、マクダウェルが中心のミシシッピ”ヒル・カントリー・ブルース”は、影響力の強かったミシシッピ・デルタ・ブルースよりももっとドロドロの純粋な形で受け継がれていって、その後継がR.L.バーンサイドで、ジョー・スペンサーが「あれこそホンモノのダメージド・ブルースだ!!」と大絶賛したとか、そういうことはぜーんぶ後から知った話。


もしも自分があの純粋だった中学時代にミシシッピ・フレッド・マクダウェルと出会ってなかったら、で、18の時にこのアルバムと出会ってなかったら、こんな風にブルースにドップリにはならんかっただろうなぁと思います。

今日の記事はほとんどアタシの体験談に終始してしまいましたがどうかご容赦を、え〜と

「ブルースは考えるんじゃなくて感じる音楽だぜぇ!」

と、それらしいことを言って今日はこの辺で・・・(汗)



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 19:27| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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