2015年09月17日

ブラインド・ウィリー・ジョンソン Dark Was The Night

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Blind Willie Johnson/Dark Was The Night
(Sony)

「音楽を聴いて感動する」

という、言葉そのものは実にシンプルなんですが、アタシはこのシンプルな言葉の持っている深い意味というものを突き詰めて考えることがあります。

というのも「感動」には深度があって、そのもっとも深い部分には

「カッコイイ」

「良かった」

とかいう表面にある感慨を突き破って、いきなり心の中心部を撃ち抜かれる、或いは激しく揺さぶられ、そしてえぐられるようなものがある、と、アタシは音楽をずっと聴いてきて思うからです。

そう、感動のメーターが振り切れて、どうにかなってしまいそうなほどの強烈な”何か”・・・。

それを最初に教えてくれたのはパンクロックでありましたが、同じような衝動を次に教えてくれたのは、戦前のブルースマン達でした。

レッドベリー、サン・ハウス、ロバート・ジョンソン、ブラインド・ウィリー・マクテルなどなど・・・スタイルはそれぞれ全く別ジャンルといっていいほど違ったのですが、何かしら共通するものとしてアタシは彼らのブルースに、ある種独特の”闇”の存在を感じました。

これはブルース、なかんづく戦前ブルースを聴いて「引き込まれた」体験をお持ちの方なら分かる感覚ではあると思うんですが、聴いていてちょっと恐ろしくなるほどの”闇”の存在。これは多分、まだアメリカ南部が人種差別といった深い闇そのものに覆われていた時代独特の鬱屈とした時代の空気そのものかも知れませんし、そういった空気の中で生まれ育ったブルースマン達がリアルに持っていた感情なのかも知れませんが、とにかく戦前ブルースにはそれがあるんです。

で、ある日「名前にブラインド(盲目の)と付くブルースマンは全部ヤバい!」と思い至ったアタシは、ガイドブックでたまたまブラインド・ウィリー・ジョンソンに出会いました。

「地の底から」という形容が正にピッタリな、すり潰したかのような強烈なダミ声と、喜怒哀楽の全てをゴッソリ持っていく強烈なスライドギター。

「衝撃を受けた」という生易しい表現ではとても言い尽くせないほどに激しく揺さぶられました。

ブラインド・ウィリー・ジョンソン、戦前アメリカ南部をギターを持って唄い歩いた盲目の説教師(エヴァンゲリスト)の、魂をえぐる強烈な霊歌・・・。


説教師というのは今ひとつピンとこないかも知れませんが、要するに楽器を持ってあちこち旅をしながらスピリチュアルを唄い(教会で唄うことも多かったが、ジョンソンはよく街辻でも唄っていたようです)、キリストの教えを説いて回る職業の人です。

教会にいて説教をする牧師さんとは違い、説教師は基本教会に所属しておりません。なので、本当の意味での伝道師でありますね。

さてこのブラインド・ウィリー・ジョンソン、最初に聴いて「うぉ!?このスライドやべぇ!!てか待てこの曲どっかで聴いたことがある・・・」と思ったら、ライ・クーダーが、映画「パリ・テキサス」で演奏してた超有名な曲だったんですね。



(参考までにこの曲、声とギターはジョンソン本人ですが、演じているのは役者さんです。にしてもすごくリアル・・・)

今でもゴスペルとその他の音楽は厳格に「別もの」として分けられておりますが、戦前は更にそれが徹底しており「ブルースなんぞは悪魔の音楽だから、スピリチュアルを演奏する者はブルースを歌ってはならないし、ブルースとスピリチュアルは全く違うものとされなければならない」と、敬虔な黒人たちからは思われていました。

ですが、歌詞こそ全く違えど、この衝動、この空恐ろしさは、アタシなんかが聴けばそれこそ「ブルース以外の何物でもない」としか思えません。

それほどまでに彼の声とギターからは、底なしの”闇”が感じられてならないのです。

歌詞も単純に「神さま万歳」じゃない、人間のリアルな苦悩を生々しく唄っておりますし


俺の好きに出来るなら
邪悪な性格のままでも
もし、神様が助けてくれるなら
この建物を崩してやるのに

(「If I Had My Way I'd Tear The Building Down」)



神様、涙が止まらないのさ
たまにそうなるんだ
神よ、涙がいつまでも止まらない
時々
かなしみでいっぱいになる
そして、目から涙があふれてくる
神よ、泣かずにはいられないんだ
しょっちゅうそうなるんだ

(「Lord I Just Can't Keep From Cryin'」)



エジィーキルが車輪を見た
車輪の中にまた輪が見える
そう、車輪が見えたんだ
エジィーキルが見た車輪
輪がまたその車輪の中に
死期が近いんだろう

(「Bye And Bye I'm Goin' To See The King」)



これ、「神よ(Lord)」のところを「お前(Baby)」に変えるだけで、完璧なブルースの、もうどうしようもない歌詞ですよ。

こんな剥き出しの物凄い言葉を、強烈なダミ声と壮絶な破壊力のスライドギターでジョンソンは、聴く人の心に突きつけてくるんです。


【収録曲】
1.If I Had My Way I'd Tear The Building Down
2.Dark Was The Night
3.Lord I Just Can't Keep From Cryin'
4.Church, I'm Fully Saved Today
5.Jesus Make Up My Dying Bed
6.Bye And Bye I'm Goin' To See The King
7.Let Your Light Shine On Me
8.John The Revelator
9.I Know His Blood Can Make Me Whole
10.God Moves On The Water
11.Trouble Will Soon Be Over
12.Praise God, I'm Satisfied
13.Mother's Children Have A Hard Time
14.It's Nobody's Fault But Mine
15.Soul Of A Man, The
16.Keep Your Lamp Trimmed And Burning


歌詞本当に凄まじいんで、対訳付きの国内盤のリンクも貼っておきますね(現在中古でしかないようですが・・・)



アタシはジョンソンの”スピリチュアル”を聴いて、より深く当時の時代背景を知りたいと思い、アメリカ黒人の歴史について、色々と調べました。

そして知った”リアル”は、これはもう本当に想像を遥かに絶する、アメリカ黒人たちが置かれていた

「神にすがるかブルースに浸るしかない状況」

でありました。

そんな”Without Sunctuary”を知ってしまってから私はより深くブルースやゴスペルに、心を揺さぶられ、そしてえぐられるようになりました。

ブラインド・ウィリー・ジョンソン、本当に、聴けば聴くほど”闇”です。

でもその”闇”は「音楽で感動した」とかいう生易しい表現の及ばない、音楽の深淵をリアルに見せ付けてくれます。






『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 19:18| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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